『  願い  ― (3) ―  』

 

 

 

       

    「  ずっと ・・・ 見守っていますわ  」

 

 

             ―  ほんわり笑ったのよ、あのコ達

 

 

 

 

サイボーグ達の予想通り、ドンパチはすぐに始まった。

009も派手に敵のボスとやりあったが 決着はつかなかった。

かなりのダメージを与えはしたが 009自身も無傷ではない。

「 ジョー ・・・!  大丈夫 ? 」

「 ははは ・・・ 見損なうなよ? あの程度でやられるもんか。 」

駆け寄ってきたフランソワーズには 余裕の笑顔を向けてはいたが ・・・

「 しかし ― アイツが・・・ あのボスが敵の正体なのか???

 今回の敵は BG  なはずだ。 とすると 本当のボスは ― スカール! 」

「 え ・・・ でもスカールは 」

「 ヤツが完全にくたばったって証拠はないんだ。 

「 そう だったわ ね ・・・・ 」

「 009! 無事か 」

「 アルベルト。 ウン なんとか ・・・ 今度対決するときには

 きっと斃す。 」

「 ふん その息だ。 」

「 アイヤ〜〜〜  ジョーはん、お家が滅茶苦茶やで〜〜〜〜

 ジョーはんが建てはった新しいお家が 〜〜〜 」

「 ふふ ・・・ また建てるさ。 それより皆無事かい? 」

「 おう〜〜 全員 ドルフィンに飛び乗った! 」

「 左様 左様〜〜 地下の基地はまだ無事であるよ。

 海中から浮上したら お前さんがあの蜘蛛男とどんぱちやってる最中だったのでな〜

 ばりばり〜〜〜っと援護射撃したわけさ。  」

「 グレート。 助かったよ ・・・ ありがとう! 

「 いやいや ・・・  しかし ―  この嬢さん達が  」

「 え ?  け 怪我でも??? 」

「 いやいや ・・・ 仰天モノのハナシ さ。 」

「 ??? なんなんだい? 」

 

 

    <  フランソワーズの独白  >

 

もう びっくり の連続だったわ〜〜

そうなのよ、 ヘレンには < 事情 > がた〜〜っぷりあったの。

現れたそっくりな女の子は ヘレンの妹だって言ったわ。

 

    ああ  やっぱり・・・

 

そのそっくりな顔を見ていて なぜかそんな気持ちが先に湧き上がってきたっけ。

だけど <  双子姉妹 > は やっぱりそれだけ じゃなかったのよ。

仰天モノな < 事情 > が 隠されてて・・・・

さすがにわたし達  ふ〜〜ん・・・て感心しちゃったりしたわ。

 それは つまり ― 

ヘレンは 催眠術みたいにコントロールされてて  彼女が 見聞きしたことは妹も共有してたの。 

というより姉妹の間で感覚や情報は全て < 同じ > だったのね。

つまり 別の場所にいても妹はヘレンの目や耳を通して わたし達のことを見聞きしていたわけなのね。

「 ・・・ う〜〜ん ・・・ それは 

「 そう来たか。 むむむ 敵ながらあっぱれ としか言えんなあ 」

「 ふん。 ヤツらが狡猾で卑怯だってことは わかっているさ。

皆 ぶつぶつ言ってたけど・・・ 悔しいけどしてやられたってことよ。 

ある程度予想はしてたわ  だけど こちらの行動がすべて筒抜けってのは かなり衝撃よ。

    すみません   みなさんを裏切って 」

 泣きながら謝ってるあのコに  それでも優しいのよ、 ジョーって人は。  

そこが 彼の魅力・・・でもあるけれど。

 

    ああ やっぱり ・・・

 

またもそう思ったわよ。

そりゃゃ ヘレン自身の責任じゃないし、むしろ彼女もBGに利用された被害者だけど

・・・やっぱりね、こちらとしてはかなり複雑な心境になったわ。

 でも そんな時でも ― ジョーは 優しく微笑んで言うことができるの。

   

   「  気にするなよ。 君のせいじゃない、 ヘレン 」

 

勿論 演技とかじゃないわ、彼ってば本心からそう思っているのね。

・・・ わたしだったら あんな風に言われてにっこりされたら かえって辛いわよ。

仲間たちは そんなジョーの気質を知っているから肩を竦めて受け流していたっけ。

 

そっくりな妹が加わって 利点もあったわ。

彼女は 彼女なりにかなり詳しく BGの内部を見ていたのね。

姿形はそっくりでも 中身 というか 性格は姉妹でかなり違うみたいだったわ。

妹は かなり勝ち気で 実際冷悧なコ。 勇気もあるわ。

 出発の時 ちょっとしたメカニックトラブルがあったのだけど ビーナはなかなか勇敢だったわよ

それでね ・・・ ふふふ ・・・  あの時からかな〜  彼女、アルベルトしか見なくなった。  

すぐにわかるわ、 女の子なら ね。

え? アルベルト?  彼は変わらずに素っ気ない素振りだったわよ。

でもね 彼だって木石でできているんじゃないもの、ちょっとは心を惹かれていたわね。

 

お決まりのドンパチやった後、 わたし達はドルフィン号で地下へ ― あの運命の帝国へ

出撃して行ったの。

 

 

 

 

 ズズズズ −−−−   ゴ −−−−− ・・・・

 

暗い岩盤で頭上を蓋われたその空間には 常に腹の底にひびく音が漂っていた。

最初は気になるが すぐに慣れてしまう ― しかし それは次第に闖入者たちの

感覚を 瘴気のように蝕むのだった。

 

「 ・・・ なにか 聞こえない? 」

「 なんだ 」

耳を蓋うフランソワーズに アルベルトが怪訝な顔をした。

「 この 音 ・・・ よ 」

「 ああ 岩盤の上をキャタピラで進んでいるからな 

「 いえ そうじゃなくて ・・・ 空気を振動させている音 ・・・低い音なんだけど

 ずうっと聞こえているのよ 」

「 ふん お前、 スイッチを切っておけ 

 ・・・ 今のところはドルフィンのレーダーで十分だ。 」

「 え でも ・・・ 」

「 どうせ ドンパチ始まれば付けっ放し状態になるんだ。 少しでも休めておけ。 」

「 ありがとう ・・・ 」

ぽん、と アルベルトの固い手が細い肩に置かれた。

「 ふん ・・・ 休む時には休む。  いいな。  」

「 ウン ・・・ 」

ぽろん ・・・ 飛び出した涙を 彼女はそっと払った。

 

「 ・・・・・ 」

そんな兄妹みたいな二人を ビーナはじっと ― ただじっと見つめていた。

「 − ジョー 」

彼女の視線が煩くて そして余計な誤解を避けたかったので

フランソワーズはことさら明るい声で パイロット席に寄っていった。

「 かなり深く潜ってきたわね? まだ進むの? 」

「 うん?  ああ。  まだまだ序の口ってところさ。 」

「 そう ・・・ 」

「 大丈夫、今度のドルフィンは最新設備だからね、安心して任せてくれ。 

「 スピードは控えめに ね。 ドライバーさん 」

「 オッケ〜  しかしこのペースだとPPは無理だなあ〜〜 」

「 ふふふ・・・ レース・クイーンが応援しているんですけどね? 」

「 あは ・・・ それじゃあ頑張らないとなあ 」

「 もう一人 ドライバー いるんだけどな〜〜 」

サブ・パイロット席から のっぽの赤毛が声を上げた。

「 あらあ ライバルは常に必要でしょ? 」

「 違いねぇ〜〜 オラオラオラ〜〜〜 覚悟しろよ〜〜 」

 あはは  うふふ  ・・・  小さな笑い声がおきた。

  ― そんな細やかな余裕があったのは  この時が最後だった。

 

「 あら 随分と大規模ながけ崩れの跡だわ。  う〜〜ん ここからは 

003は パイロット席の隣で全方位サーチをした。

「 ・・・ どこもかしこも岩盤だらけ ね ・・・? 」

「 あの ・・・ 」

同じ声が二つ、後ろから聞こえた。  おずおずした声と きっぱりした声が。

「 なんだい? 」

「「 私達が案内します。 」

「 え? 」

ヘレンとビーナが 立っていた。

「 ここは 一種のカモフラージュなんです。 あと少しで帝国への入口の

 大洞窟にでますわ。 」

双子の妹が きっぱり言った。

「 あ〜〜 そっか〜〜〜 アンタらには ホームへの道だもんな〜 」

ジェットが やったぜ! とテンションを上げた。

「 !  あんなトコ・・・ ホームなんかじゃありませんわ 」

「 ・・・ あ  わりぃ〜 

きつい視線を返した彼女に ジェットは素直に謝った。

「 ごめんなさい ・・・  あなた方はなにもご存じないのですものね 」

「 気にするな。 コイツは心底単純なヤツなんだ。  」

「 え ・・・そうなんですか? なんか ・・・ 楽しい方ね。 」

「 楽しいというか かる〜〜いのさ、ココもな 」

ちょん・・・とアルベルトはコメカミを突く。

「 まあ・・ ふふふ 」

「 んだとぉ〜〜〜〜 てめ ・・・ 」

「 ジェット! 自動操縦だけどよそ見するなよ〜〜 」

メイン・パイロット席から ジョーが生真面目に注意した。

「 へいへい〜〜〜 すんませんね〜〜  おい フラン〜〜〜 

 んなコマかい男と一緒になるのは 考えモンだぜえ〜〜 

「 ! な なによ〜 ジェット!  勝手に推測しないで頂戴! 

「 へ〜〜〜 」

「 そ そうさ。 ぼ ぼく達なそんなんじゃ・・・ 

「 お? < ぼく達 >  へ〜〜〜〜 そ〜いうコトか〜〜 」

「 ち ちが ・・・ 」

「 チガウ のかよ? 」

「 ・・ ちがわ ない ・・・けど 」

パイロット席で 今度はジョーが真っ赤になっている。

「 おい!  なんでもいいがお前までよそ見するな! 

「 あ ごめん ・・・! 」

 

 クスクスクス ・・・ へへへ  フフフ  ハハハ ・・・ 

 

小さな笑いがそこここから湧き上がり ドルフィン号の中の空気は少し軽くなった。

 

  ―  皆 軽い談笑に興じる風にして、無理矢理明るくふるまっていた。

 

 

 

 

  <  フランソワーズの独白 

 

 

焼け跡って 酷い臭いがするのよ。

今までに何回も焼野原に立ったことがあるけれど その凄惨な眺めよりもあの臭いに

わたし、いつも顔を顰めていた・・・

 けど。 今回はそんなもんじゃなかったわ。

地下帝国って ・・・ 天井が塞がれているでしょ、全て籠ってしまうわけ。

メカやら 住居やら 施設やらの そして ・・・ 生き物の焼けるニオイ ・・・!

もう堪らなかったわ。

単純に クサイ なんていう段階を遥かに超えていたわ。

 

「 ・・・ フラン ・・・ 大丈夫か 」

「 ジョー !  あなたこそ ・・・ 大丈夫? 」

「 あは ・・・ ぼくは 大丈夫だ。 心配はいらない。 

「 ・・・ ジョー ! 」

ジョーは 笑ってみせたけど ― 生彩なんかなかったわよ。

「 ぼくは ― まだまだくたばるわけには行かないんだ! 」

「 無理しないで ・・・ ここはわたし達に任せて頂戴。  

「 だが ― 」

「 本当に 009のチカラが必要な時のために。  ね? 」

「 ― ありがとう ・・・ 」

009は 素直に瓦礫に 腰をおろしたわ。

彼は もうズタボロだった ― 全て黙って引き受けて先頭にたって闘って・・・

そりゃ BGの基地もかなり叩けたけれど。

 

  もう 滅茶苦茶だった。  こんなのってあんまりだわ!って叫びだしそうだった

 

けど!  そんな余裕はなかったわ。 

そうよ ―  < 泣く > って かなり精神的にも余裕があるってことなんだな〜って

わたし、あの時チラっとアタマの隅で感じていたわ。

 

地下帝国に降りてから それこそびっくり仰天の連続よ! 

ヘレン達はね 実際には 五人姉妹、 それも五つ子 だったのよ。

そして 地下は ―  なんとそこはね 気味の悪いオオトカゲに支配されていたのね。

トカゲって ・・・ 地上をちょろちょろするアレだってあんまり好きじゃない・・・

遠くで眺めている程度だったら平気だけど 触ったりなんかしたくないし。

ほら バッグやらベルトやらになっているモノもあるけど わたしは苦手だわ。

それが めちゃくちゃ大きくてニンゲンよりも上位で しかも支配をしていたっていうのよ。

 

     本当なの???  BGが吹きこんだ妄想じゃなくて?

 

最初は半信半疑だったけど ―  ビーナたちの言動で納得が行ったのよ。

「 BG様は ザッタンを追い払ってくださったのよ! 」

「 ざったん?? 」

「 BG さまぁ?? 」

「 < くださった >  だとぉ〜〜〜?? 」

「 そこまで洗脳されてるって訳なのかい? 」

皆は 彼女の発言に大反論 …  そうね〜 ネットとかだったら 大炎上 よ!

わたし達 それまではどこかヘレン達、 地底人の人々のこと、疑っていたわ。

そうね 100%は信用できていなかった・・・

彼らは BG に踊らされているのだろう 洗脳されているに違いないってね。

 

  けど。  「 ― 私達は ザッタンの食用肉 だったのよ!  」

 

あの言葉で ― 全員、アルベルトでさえ 息を呑み、彼ら地底人の地上に出たい!って

願望を もうストレートに信じたのよ。

 

それにしても ひどい戦況だったわ。

BGはね 実に巧みにわたし達を包囲して行ったわ。

さすが・・・というか、わたし達ゼロゼロ・ナンバーサイボーグを < 作った > 側だもの、

こちらの弱点も特製も全て知っているわけよ。

だけど ― 負けるわけにはゆかなかったわ。 負けって つまり 殺されるのよ!

 

「 ― 009 ! 」

「 004〜〜 よかった 皆無事かい〜〜 」

二手に分断されて 戦力は半減、オマケにザッタンの催眠術なんかにも罹ってしまって・・・

もうさんざんだったけど ともかくなんとか ― 再合流できたわ。

これで 反撃! と思ったんだけど ・・・

 

「 004 !!! 

「 !! ―  ア  アルベルト ・・・! 」

「 ―  無事か  ビーナ ・・・ 」

駆け寄ったビーナに アルベルトは必死で声をかけてた・・・

そうなのよ!  彼ってばビーナを庇って ― もうズタボロ。

ぎりぎりで足のマイクロ・ミサイルを発射して なんとか切り抜けたんだけど・・・

「 ご ごめんなさい!   私が足手纏いになったばっかりに ・・・ 」

「 そんなことはない。 おい ・・・ 泣くな。 」

「 ・・・ で でも ・・・ 」

「 俺は俺の意志でしたことだ。  お前が負い目を感じることはない。 」

「 負い目だなんて そんな ・・・ だって  」

「 お前が助かって ・・・ よかった ・・・ 」

「 !!  ア アルベルト 〜〜〜  」

がっくり動きを止めてしまった004に ビーナは齧り付いてたわ。

 

   僕ガ少シノ間 しすてむだうん サセタヨ。 004ハ 休養ガ必要ダ。

 

イワンの通信がすぐに飛び込んできたの。

お邪魔かな〜〜とも思ったけど そんなことかまっている場合じゃないからね、

わたし 二人の間に割り込んだわ。

「 ビーナ? さ 彼を運ぶのを手伝って 」

「 ! あ そ そうですね  」

「 う ・・・?  」

アルベルトは少し目を開けたの。

「 だ 大丈夫  ・・・ 自分の脚で  ― クソ ・・っ 」

「 危ない!  ともかく博士のところまで運ぶわ! 」

「 ― すまん  

「 どうぞこっちへ!  あの洞窟はあまり知られていませんから 」

ビーナはすぐにてきぱきと行動をおこしたわ。

 

  ババババ −−−− ・・・・!

 

奴らは執拗に追ってきたわ。 絨毯爆弾的に攻撃してきたの。

「 裏切り者ども  っ ! 」

敵のボス、ボグートはヘレン達を狙う撃ちし始めたわ。

「 !  危ないッ ! 」

ジェロニモ Jr. が 彼女達5人の盾になり庇ったわ。

 

   ババババ −−−− !

 

「 きゃあ 〜〜〜〜 」

「 ムウ ・・・ だ 大丈夫。 俺 護る。 」

005の鋼鉄の身体は なんとか5人姉妹の命を守ったけれど なにせ至近距離でしょう?

彼自身は かなりのダメージを受けてしまったわ。

「 ジェロニモさんっ ! 」

「 しっかりして〜〜〜 」

5人姉妹は 必死で005の巨体を瓦礫の陰に運んできたの。

「 ジェロニモ !! 」

「 ・・・俺は 大丈夫 だ ・・・ 」

大丈夫じゃないことは すぐにわかった。 わたし、博士を呼びに飛び出していったわ。 

「 クッソ〜〜〜 オレが相手になってやるぜ〜〜 」

「 ! やめろ  002 !!  

キレてしまったジェットは アルベルトの声なんか聞こえなかったみたい。

攻撃してきたボグートに向かって 飛び出し手いったわ。

「 もう〜〜〜 なんて短気なヤツなんだ〜〜〜 」

 

   シュ −−−ッ !   カチッ !

 

ジェットとボグートの姿はすぐに見えなくなったわ。

そうよ 二人とも加速して闘い始めたの。

「 ・・・ ぼくが加勢する ・・・! 」

「 ジョー! だめよっ 今の状態で加速したら 完全に破損してしまうわ ! 」

「 しかし  」

「 シッ。  静かにしろ。 

「 アルベルト ?? 」

ズタボロ状態の004は なんとか這いずって002が対決している場所に近づいていったの。 

そしてじっと − 集中していたわ。

 

    あ。 音を聴いているの ね!

 

わたし、彼の表情をみていてわかったわ。

「 ・・・・ 」

 

  「 ! 」   ヴィ −−−−!!    

 

アルベルトのスーパーガンが一点に向かって炸裂したわ。

 ズサ ・・・。  一瞬の静寂の後、空間から突然アイツが、ボグートが倒れ出た。

そして次の瞬間、 今度はジェットが転がってきたの。

「 ! ジェット ・・・ ! 」

「 待て。 」

ジョーはわたしを押しとどめると、念のためにボグートを完全に破壊したの。

「 ふう ・・・ なんとか仕留めた。 」

「 よかったわ!  ジェット ! しっかりして! 」

わたし、もうパニックになりそうだった。

「 ・・・ サ サンキュ ・・・ でも なんでわかったんだ オッサン

 か 加速中だぜ オレらは ・・・  

「 ふん。  お前の走る音を知っているからな。 」

「 音? ・・・ は はは ・・・ そっか ・・・ 」

「 そうだ。 」

そうなのね。 アルベルトには加速中の二人の姿は見えなくても 音は聞こえるでしょ。

< 知らない音 > の方を狙って撃ったわけ。

ともかく 敵のボスは斃したけど ・・・ ジェットの損傷も激しかったわ。

加速装置も使用限度オーバーで ズタボロ。

辛うじて無事なのは 足のジェット・エンジンだけ、でも 身体があの様子では

飛ぶなんてとても無理だった。

「 オッサン ・・・ サンキュ 」

「 バカ。 アイツを斃す絶好のチャンスだっただけだ。 」

「 は はは ・・・ そんでもよ〜 」

「 だ 大丈夫か  ジェット ! 」

「 アイヤ〜〜〜 ボロボロやんか〜〜 」

ズタボロで 憎まれ口をききあっている二人のところに 仲間達もなんとか寄ってきたの。

「 ・・・ や  やあ  皆 無事 かい 」

「 ピュンマ! ど うしたの !? 」

ピュンマは ぐっしょり濡れていたわ。 なんか・・・ヨロヨロしてた・・・

「 は ・・・ はは  地底湖に潜って ・・・ ヤツらの基地を叩いてきた んだけど

 ・・・ あの水は 浸蝕して くる  な ・・・ 

「 え??  しっかりして ! 」

彼は そのまま膝をついてしまったの。

「 !?  水に入ったのですか?  だ ダメです!  あの海は猛毒です!  」

ヘレンが悲鳴に近い声を上げたわ。

「 な なんですって??  博士〜〜 」

「 今 診る。 」

あの状況で 一番冷静なのはギルモア博士だったかもしれないわ。

 

      皆  集マレ! 僕ノ周リニ! 早ク!

 

突然 イワンの声が頭に飛び込んできたの。

「 え?? な なに?? 」

 

     ―  ハヤク !!!

 

「 !  ヘレン  ビーナ!  あなた達も! 」

「 はい!  妹たち、皆さんに手を貸してさしあげて! 」

「 はい 姉さま。 」

5人姉妹は ボロボロのサイボーグ仲間に手をかしてくれたの。

そして イワンを中心に固まったわ。

 

   死ね!!  ネズミども〜〜〜〜 !!!!

 

魔人像が 熱線で総攻撃してきたの。  でも イワンが必死で張ってくれたバリヤーで

なんとか切り抜けたわ。

 

   ふん !  どうせお前らは もうお終いだ!

   あと数分で 地下帝国は消滅する。

   あちこちに仕掛けた爆弾が炸裂するからな!

 

   はははは ・・・  さらばだ ネズミ共〜〜

 

 ドドドドド −−−−− !!  魔人像は 喚き散らすと岩盤の間から地上へ飛んで行ったの。

 

「 ば 爆発??? 」

 

  あ!?   ―   次の瞬間  意識が消えたわ。 

 

 

 

 

 

  ヴィ 〜〜〜〜〜  ン ・・・

 

低い機械音が聞こえる。

「 ・・・ う  う ・・ん ・・・? 」

「 あ ・・・ 気がつきましたか フランソワーズさん 」

「 え ・・・ ここ ・・・? 」

気がつくと 目の前に同じ顔がいくつも心配そうに覗きこんでいた。

「 ??  あ ・・・ ああ  ヘレン ・・・ 」

「 はい。  ここは 魔人像の中ですわ。 」

「 !  え えええ ??   ど どうやって?? 」

「 私達 五人揃うと超能力が使えるんです。 

「 ま  あ ・・・!! 」

「 一人一人だと テレパシーくらいしかできないけど ・・・ 姉妹一緒なら

 テレポートできます。 

「 それで … 魔人像へ?? 」

「 はい。 ごめんなさい、一番近くにいらしたフランソワーズさんも同調して

しまったのかもしれません。  一緒に 魔人像の中へ  ・・・ 」

「 ああ それで ・・・ 」

「 でも ご安心ください。 私達が地上へお帰ししますわ。  

    そして ― この魔人像を破壊します。 」

「 な なんですって?? 」

「 し…!  ここはヤツらの基地の中枢なんです。 

「 ・・・ ああ 思い出したわ! わたし達 地下帝国に取り残されて・・・

 魔人像が飛び去ってゆくのを 歯噛みをして見上げてたら 急に意識が・・・

 え あれって あなた達が?? 」

「 私達だけではとても無理です。 あの赤ちゃんのイワンちゃんに助けてもらいました。」

「 まあ!  001がテレポートしてくれたのね!  

 あ ・・・  009は? 他の皆は ・・・ 大丈夫? 」

「 はい。 皆さんは無事に地上にテレポートしました。

 フランソワーズさん、あなたをこの魔人像の中にお連れしたは多分イワンさんです。 」

「 !  ・・・ そう。 わかったわ。 」

フランソワーズは 一瞬く・・・っと息を呑んだ風だったが すぐにぱあ〜〜っと笑顔になった。

「 ありがとう!  さあ これからはわたしの仕事よ ! 」

 

   001。 わかったわ ― わたしにこの魔人像を破壊せよってことでしょ。

   

   ええ 喜んで引き受けるわ!  だってわたししかいない。

   索敵はわたしの任務。  敵の本拠地を徹底的に破壊するわ!

 

「 あの ―  それは私達、姉妹に任せてください。 」

「 え? 」

「 この闘いは 私達自身の闘いなんです。 

 騙されていたとはいえ BGに加担していたのですもの。 その責任はとりますわ。」

「 だって! それはあなた達の責任じゃないわ。 」

「 いえ 私達 ― そうしたいんです。 」

  こくん。  ヘレンの言葉に妹たちは皆 こくり、と頷いた。

「 それは わたしも同じなの。 これは わたし達、ゼロゼロ・ナンバー・サイボーグの

 完全な解放のための闘いなのよ。 」

「 それなら ― 一緒に。 

「 望むところよ! ヨロシク。 」

    きゅ。   娘たちはしっかりと手を握りあった。

 

「 サーチは任せてね。 」

「 お願いします。 」

最後の闘いが始まった。  

  ― 激闘の末 五人姉妹に援けられフランソワーズはついにBGのボス、スカールと対峙していた。

「 ははは ・・・ オンナだてらによくここまで来たな! 

 ココがお前の墓場となるのだ〜〜〜 」

「 く ・・・! 負けるものですかっ 」

彼女はじっとり汗ばんだ指をスーパーガンのトリガーに掛けた時 ―

 

「 お〜っと。 ここはぼくに任せてくれたまえ。 」

 

「 ???  ジョー ????  」

突然 009 が二人の前に現れた。

「 な なんだ?? 」

「 お前なあ〜〜 オンナだてら なんて差別発言だぜ?  くらえっ 」

「 ?  うわあ〜〜〜〜 ぁ  

009のスーパーガンが炸裂した。

「 ジョー?? だってどうして?? 」

「 ぼくが 望んだんだ。 フランソワーズの側へ! って。

 そうしたら ―  ここに来てたよ。 」

「 テレポート??  イワンが?? でも ・・・ 」

「 わかんないけど  お〜っと 」

再び 彼の銃が火を噴いた。

 

  !  ば バカなぁ〜〜〜 ・・・・・ 

 

スカールは断末魔の叫びと共に動かなくなった。

「 やった ・・・! 

「 いえ ― 本当のボスは ここの中枢部に居る < 脳 > なのです 」

「 ヘレン?? じゃあ ソイツを  ―  う ・・・ ! 」

ジョーは 立ち上がろうとしたが 膝を突いてしまった。

彼はもう 限界を超えていた。

「 ジョー !!! 」

「 ・・・ くそ ・・・っ 

ジョーと彼を支えているフランソワーズの側に 五人姉妹が駆け寄った。

「 私達に任せて 脱出してください!   」

「 さあ あなた達は地上へ。  」

「 この魔人像を爆破します。 」

「 いくら BG の中枢でも生存できませんわ。 」

「 これで私達 ・・・ 願いが叶います。 」

「  ― では 」

 

「 え?? 」  「  そんな・・・ 」

ジョーとフランソワーズは たちまち宇宙空間に放りだされた。

「 ・・・ あ  ああ?? 」

「 わあ ・・・??? 」

 

   −−−−−−   目の前で 大きなモノが爆発し消滅して行った。 

 

 

   フラン ・・・ フラン、 見てごらん ?

 

   え ・・・?

 

   ほら。 BGの最期だ ・・・ 宇宙の花火だ!

 

    ! ・・・ へ ヘレン達は ・・・

 

   ・・・ あの中で ・・・

 

 ≪  ジョーさん   フランソワーズさん ・・・ さあ 地上へ ≫

 

二人の心の中に 五つの声が流れてきた。

 

 ≪ 今から お送りします。  さようなら そして  ありがとう !! ≫

 

  え??   へ ヘレン 〜〜〜 !!

 

  フラン、 ぼくにつかまれ!

 

ジョーとフランソワーズはしっかりと抱き合ったまま ―  意識を失った。

 

 

 

気がつけば ジョーの家に近い崖に座っていた。

「 ・・・ フラン ・・・ 

「 ジョー ・・・ わたし達 ・・・ 」

「 ウン。  戻ってきた  んだ  な  」

 

   ぎゅ。  二人は固く抱き合った。

 

「 あ 。   見て  流れ星 ・・・ 」

「 ウン ・・・ キレイだ 」

「 ねえ わたし。  きっとね、神様は 憐れに思い 五人を天 ( そら )にあげ

 星座 にしてくださると思うわ。 」

「 そう・・・だね・・・ 憧れの星になって ・・・ 」

「 そうよ  そして いつまでも姉妹仲良く輝いているのよね 

 

  その夜は 一際みごとな ―  降るような星空だった。

 

 

 

*****************************   Fin.   *****************************

 

Last updated : 09,08,2015.          back      /     index

 

 

**************   ひと言  **************

え〜〜 こんな ヨミ編 は如何?

原作 を下敷きにしているので

平ゼロとはちょっち違うかも ・・・