『  忍ぶれど ― (2) ―  

 

 

 

 

 

 

 

「 じゃ じゃあ  ジュリエットはどうするのよ〜〜〜 」

「 それは 吾輩がやる。 」

 

          え〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ???

 

 

主役をオファされた彼女は 思わず仰け反り声を上げてしまった。

「 うっそ〜〜〜〜   オトコ同士で ・・・ BL?? 

 

      あ。  そっか・・・ 007ですものね

 

あらまあ おほほ・・・と 彼女はすぐに立ち直った。

「 あ どもう 失礼いたしました。

 ごめんなさい ミスタ・ブリテン、女優さんにヘンシンするのね? 

007はその能力を駆使するのであろう、と察したのだ。

「 いや。  グレート・ブリテン として演ずる 」

「 ・・・ ほ ホンキ?  ジョーなら  マジ〜〜〜〜〜 って言うわ 」

「 ホンキも本気だ。 大丈夫 しっかり正気であるよ 

「 ・・・ じゃ ・・・・ じょ 女装 する  の・・・? 」

「 女装 などと程度の低い表現をつかわないでほしい。

 マドモアゼル、この国の芸術、 歌舞伎 をしっておるだろう? 」

「 え ええ ・・・ すごいわよねえ〜 わたし タマサブロウさんのファン☆

 日本舞踊 ってすご〜〜〜く興味があるの。 ステキよねえ・・・

 一度 習ってみたいのね〜〜  」

「 さすが マドモアゼル。 一流品にはちゃんとチェックが入っておるな。

 あの世界は 男優が女性を演じる。 ご存知とおもうが 

「 ええ もちろん。  女性よりず〜〜〜〜っと女性らしいのよねえ

 すごく華やかでキレイだし ・・・ 」

「 そうであるな。 同じ演劇の世界に身をおくものとして誇らしい。 

 かねがね 吾輩はあの 女形 ( おやま ) の世界に憧れておったのだ 

「 そうなの〜〜〜 それで今回・・

  え!!  そ それじゃ わたし ・・・ グレートとラブ・シーン ・・・」

「 マドモアゼル〜〜〜 これは 芸術だ。 

「 ・・・ でした  でも。  うっぴゃ〜〜〜 だわあ〜〜 」

「 お互いに 新たなる挑戦をしようではないか。 」

「 そうね そうね〜〜  常にアタックしなさい・・・って

 バレエ団でもマダムの口癖なの。  」

「 ほう〜 やはり な。  才ある御人は常にそうあるものだ。

 では よろしくお願いします。」

「 こちらこそ よろしく 」

 

   さ・・・っと出された老練の手を白い手がしっかりと握りかえした。

 

 

「 え ・・・?  あ〜〜〜 そっか 」

ジョーは 満開の笑顔 になった ― 顛末を聞かされた途端に

ぱあ〜〜〜 っと雰囲気も明るくなった・

 

      あら〜〜〜 ・・・

      よっぽどストレスだったのね〜〜

 

      ちょっと可哀想なこと、しちゃったわね

 

「 そうなのよ〜〜 ごめんなさいね 一生懸命練習していたのに・・・ 」

「 あ! ううん ううん ううん〜〜〜〜〜〜  ぜんぜん!!!

 あ ぼく 大道具係として協力しま〜〜す、 任せて! 」

「 うふ・・・張り切っているのね 」

「 うん! ぼく 縁の下のチカラ持ちってすげ〜〜 タイプなんだ 」

「 へえ ・・・ そうだったの 」

「 ウン。 あ それじゃ ・・・ 主役は誰がやるのかい 

「 ・・・ これ ナイショよ? 」

「 うん 言わない。  フラン? 」

「 主演は 俳優の ミスタ・グレート・ブリテン と わたくし です。 」

「 ・・・・・・・・・ 」

多分 彼は心の中で叫んでいたのだろう・・・

 

       え〜〜〜〜〜〜〜 そんなの ずるい〜〜〜〜 !!

 

しかし そこは 009? ちょっと表情が曇っただけだった。

「 ・・・ これは 芝居 だもんな  」

「 え なあに? 」

「 いや こっちのこと ・・・さ 

 うん いいや きみの美しいジュリエットを よ〜〜〜く みれるんだもんな〜 」

「 うふふふ  そう ? 」

「 な なに ・・・・? 」

ジョーの想いヒトは なにも応えずに に〜〜〜〜っこり と笑った。

「 ??  」

「 あ そうだわ。 お願いがあるの。 」

「 な なに ・・・・? 」

「 あのねえ ジョーのシャツとGパン、貸してくださる? 」

「 あ な〜んだ そんなことかあ〜  うん いいよ〜

 ちゃんと洗濯したての、貸すから。 あとで部屋にもってゆくよ 」

「 メルシ ・・・ 」

 

    ちゅ。 淡いキスが頬におちてきて ジョーはすっかり舞い上がってしまった

 

 

 

 

   シャ ・・・   金色の髪が広げた紙の上に落ちる。

 

「 う〜〜ん こんなものかしら 」

彼女はドレッサに向かって さっとアタマを振ってみた。

 

    ふわり ・・・ 短くなった金色がアタマの周りにひろがる。

 

「 ふんふん・・・ いい感じ 」

 

   トントン  ― お行儀よくノックがして 暢気な声がきこえる。

 

「 フラン〜〜  シャツとGパン〜〜 もってきたよ〜 」

「 ありがと、ジョー。 開いてるわ どうぞ〜〜 」

「 あ うん ・・・ はい これ ・・・ 」

ひょこん ― 茶色のアタマが現れた。

「 まあ ありがとう〜〜  」

「 洗濯したて です どうぞ     え ???  」

彼は 彼女の < 異変 > に  ―   まんまるマナコ だ。

 

「 ど ど ど〜〜したの〜〜〜 そ その 髪 〜〜〜〜??? 」

 

「 うふ? どう?? 似合うかしら 

「 ・・・ フランの髪 ・・・ あの金色の巻き毛〜〜 

 ふわ〜〜っと背中にひろがって くるくる〜〜〜 してて しっとりしてて

 あの !  あの 金色の髪 があ〜〜〜 

「 あらあ ショートは似合わない? 」

「 ・・・ え? い いや  そんなこと ないけど〜〜

 でも ショート・カット にしても 短かすぎない ・・・? 」

「 ええ いいの。  あ シャツとGパン ありがとう〜

 ね ちょっとそこでまってて? 」

「 ?? 」

フランソワーズは ジョーからの借り着をもってクロゼットに飛び込んだ。

「 ね〜〜〜 フラン〜〜〜 どうしてそんな短く ・・・・   わ?? 」

 

  ぱん。  クロゼットが開くと ― 細身の青年が立っていた。

 

「 だ だれだっ 」

「 うふふ〜〜〜  僕。 アルヌールといいます。 よろしく 島村クン 」

「 へ??? こ 声は ・・・ フラン ・・・? 」

「 まあ〜〜 バレちゃうわねえ  ヴォイス・トレーニング しなくちゃ 」

「 ・・・ ふ フランなの ・・・? 」

「 うふふ ねえ オトコノコにみえる? 」

「 み みえる !   ・・・ ぼくが着るよかず〜〜〜っと

 ・・・ カッコイイ ・・・ 」

「 ホント? それじゃ これ ・・・ しばらく貸してくださる?

 代わりに わたしのブラウス、 どうぞ? 」

「 ・・・ どうぞ・・・って オンナノコのブラウス 着れるかい〜〜 

 で で でも なんで?? 」

「 わたし。 男役 やるの。 」

「 は ひ・・・? おとこやく・・・? 」

「 そ。  グレートのお芝居 ね、 わたくし が ロミオ なの 」

「 え ・・・?  な なに??? じゃ じゃあ じゅりえっと は ・・・ 

「 それはぁ・・ ふふふ〜〜 これは まだ極秘なんですけど♪ 

「 は はい ・・・ 」

「 ジュリエットは ね〜〜〜 ぐ れ〜 と ・・・ ! 」

「 ???   フラン  からかうのはやめてくれよ 

「 あら からかってなんかいません?

 ねえ ジョー あなたの国の素晴らしい演劇を知らないの? カブキ 」

「 あ〜〜 ・・・・ でも みたこと ないし〜〜 

「 あら みたこと ないの? 」

「 ないよ。 チケット、すっげ高いっていうし ・・・

 TVなんかでちらっとみたけど、 セリフとか何言ってるかわかんないし 」

「 ?? なんで? ちゃんと日本語じゃない? 」

「 でも〜〜〜 あれは昔の 古い日本語 ってか

 ぼく達が話す言葉とは違うし〜〜 聞いただけじゃわかんないよ 

 ? でも フランはみたこと あるの? 」

「 歌舞伎座にはいったことないけど・・・ 動画でみたの。

 グレートに詳しい解説つきの動画を教えてもらったわ。

 素晴らしいわよね〜〜〜 いつか 歌舞伎座にいってみたい ・・・! 

「 え ・・・ じゃあ スト―リ― とか 知ってるわけ? 」

「 長いものはひとつだけだけど・・・ 『 忠臣蔵 』。

 これは バレエの『 ザ・カブキ 』 を知っていたからすぐにわかったわ。

 あと 鏡獅子 とか 藤娘とか  舞踊はみんな好き!  」

「 ??? しらね〜〜や ・・・ 」

「 ジョー。  自分の国の最高芸術、勉強しなきゃ だめよ もったいない。

 ああ それでね 歌舞伎では俳優さんは全員男性でしょ 」

「 ・・・ あ   あ そっか〜〜〜

 グレートだもんね 007だもんね、 美人女優さんにヘンシンして 」

「 ふ ・・・ わたしも最初はそう思ったわ。 でもね ちがうの 」

「 ちがう ・・・? 」

「 そう。 グレートは女役をするけれど 女優さんに変身するわけじゃあ

 ないのよ 」

「 ・・・ じょ  じょそう するってわけ?? げ・・・ 」

「 ま〜あ 女装 だなんて。 ねえ 歌舞伎の俳優さん達は女性の役を

 専門にする方 いらっしゃるでしょう  

「 ・・・ あ〜〜 えっと ・・・ 女形 ? 」

「 そう それよ。  人気の女形さんは 女性よりも女性らしいの 

「 ほえ〜〜〜〜  それを目指すわけ? グレートは ・・・ 」

「 そうなですって。 だからわたしは 相手役として頼もしく!

 ジュリエットを受け止めるロミオ にならなくちゃ〜〜 」

「 ・・・ なんか ちがう 気分 ・・・ 」

「 え なあに 」

「 あ  な なんでもないよ 頑張ってね〜〜

 ぼく 大道具係に邁進します〜〜 」

「 お願いします。  ・・・ あら 電話 ・・・? 」

 

    rrrrrrr 〜〜〜〜〜〜  !!!

 

珍しくリビングの固定電話が鳴っている。

「 あ ぼくがでるよ〜〜  は〜〜〜い 

ジョーが 元気よく返事をすると階段を駆け下りていった。

「 ・・・ 返事 する必要ないのに・・・ 

 ま あれが彼の可愛いトコなんだけど〜〜〜 」

 ふ・・・・  アルヌール君は かっこつけて嘯いてみせた。

 

「 いま でま〜〜す〜〜〜  はい モシモシ? 」

駆け寄ったジョーの耳に飛び込んできたのは

 

   わ〜〜〜〜 オレも参加させろ !  キャストで だ〜〜〜〜〜〜

 

「 わ??  じぇ ジェット??? ごめ・・・ もうちょっと小さな声で

 いってくれる・・・・  え??  今 空港?  え?? 」

ジョーは受話器を押さえると わさわさ手を振ってフランソワーズを呼んだ。

「 な なあに?? まさか 事件?? 」

「 うう〜〜ん ・・・ ジェット こっちにくるって。  」

「 ええ???  ああ この前行くぞ〜〜って電話してきたけど 

「 今 空港にいるんだってさ 

「 え!? ナリタに?? 」

「 いや まだアメリカ ・・・ 」

「 でしょうね。  あ! 自前で飛んできちゃ だめっ だめよ〜〜 」

「 あ それはしないって。 で それでね とりあえず 

 アルベルトとピュンマも誘ったっていうんだよ〜 」

「 え〜〜〜〜 ってことは近日中に 皆 来るの?  ・・・グレートの

 作品のために  」

「 そうらしいよ  あ ごめ・・・ うん うん  わかった〜〜

 ちゃんと言っとくから  じゃね〜〜〜 

ジョーはご機嫌ちゃんで受話器を置いた。

「 今さ 搭乗開始〜〜 だってさ 」

「 も〜〜〜 せっかちなんだからあ  あ それじゃ 毛布とかリネン類

 出しておかなくちゃ・・・あと 晩御飯の買い出しも  」

「 ぼくがやりま〜〜す♪  わ〜〜 たのしみ〜〜〜  

ちょんちょん跳ねている。

「 じゃ お願いします。 買い物は一緒に行きましょ 」

「 うん♪ 」

 

「 ただいま ・・・ 」

 

からり、とドアが開き、着流し姿のグレートが入ってきた。

「 お帰りなさ ・・ うわ〜〜〜 どしたの グレート〜 キモノ〜〜 」

ジョーの目はまん丸だ。

「 ふん ・・・ 長唄と日舞の稽古帰りさ 」

「 な な ながう た ・・・? 」

「 左様。  ふ〜〜〜〜 まだ少しは蒸しますなあ 」

「 は??? 」

「 どないしはりましてん あんたはん 

「 え え  あ あのぉ〜〜〜  ジェットたちがきますねん 」

「 ほう ジェットはんが 

「 へえ 」

ジョーが妙なアクセントで応えるので フランソワーズは爆笑寸前だ。

「 ぷぷぷ・・・・ あのね 皆! 来るんですって。

 グレートの作品に参加したいって 」

「 ほう ・・・? 」

グレートは 手にしていた羽織りをきっちり畳み、静かにソファに腰を下ろした。

「 あ お茶 淹れましょうか 」

「 まだ 手ぇ 洗うてませんよって・・・・ それよかさっきのハナシ? 

 ジョーはん? 」

「 あ  うん、 あのさ ― 」

ジョーは勢いこんで ハナシだした ― 今度は < いつもの口調 > で。

「 ふん?  海外組も参加したい だと? 」

「 そうなのよ〜〜  キャスト希望ってことなの、役 ふやす? 」

「 キャスト か 

「 やるぜ!って張り切ってたよ 電話の向うでさ 」

「 バレエなら < 街中の踊り > とか < ロミオの友人たち > とか

 群舞は増やせるけど ・・・ お芝居は どう? 」

 

うむ ・・・と グレートは腕組みをし、しばし考えていたが ―

 

「 あ〜〜 ・・・ あの赤毛クンは 脚はあがるかね? 」

「 脚???  あ〜 まあ 身軽だから・・・ ジョーよりは 」

「 ・・・ すいません 」

「 ふむ  ちょいと意趣変更するか 

「 え  わたし、男役に燃えるんですけど〜〜  

「 ご安心召され。 主役は不動だ。 マドモアゼルと小生だ。

 ― うむ この際だ 仲間達皆に 参加してもらおう 」

「 わ〜〜〜  ・・・・ でも どうやって?? 」

 

  すっく!  グレートは立ち上がり ワカモノたちを見回した。

 

「 ミュージカル に 変更だ。 」

 

「「 みゅ みゅ〜〜じかるぅ〜〜〜〜 ??? 」」

 

 

 

 

  ぴんぽん ぴんぽん ぴんぽ〜〜ん ・・・ !!

 

玄関チャイムが忙しなく鳴った。

「 は〜い 今 でま〜〜す〜〜〜 」

ジョーが 駆けだしてゆく。 フランソワーズも後を追う。

「 はやく開けろ〜〜  おう ジョー! 」

「 ジェット〜〜〜 久し振り〜〜 」

「 ジョー 騒がしてすまない。 」

「 わ ジェロニモ Jr. も!  いらっしゃい〜〜〜 」

「 教えてくれよ、はやく! 」

「 え なに 」

「 だから〜〜〜 グレートの芝居だよ しばい! 

 オレ 参加したいって表明してるだろ 」

「 あ〜〜 あれ ね ・・・ 」

「 あれ だ あれ!  それで なにするんだ? 」

「 あのね とりあえず地下に行ってくれる 」

「 地下 だあ??  !  芝居 はカモフラージュで実はミッション か!? 」

「 ち が〜〜〜う ちがうちがう  

 ともかく 地下のレッスン室に行ってくれるかな。グレートが待ってるから 」

「 おう !  ジェロニモ〜〜 行こうぜ 

「 ・・・ 俺 スタッフがいい。 」

「 そ〜〜だよね〜〜〜 ぼくも スタッフ志望〜〜 」

「 ジョーも ジェロニモも。 皆 一緒に来てちょうだい。 」

「 は〜〜い 」

オトコ共を連れて フランソワーズは地下のレッスン室に降りていった。

 

「 おう ようこそ、諸君。 」

稽古場の鏡の前には グレート・ブリテン氏が なにやらリストを眺めつつ

パイプ椅子に腰かけていた。

「 お〜 来たぜ〜〜〜  オレも参加したいっ 」

「 ふん オーディション エントリー・ナンバー 1  名前は ?

「 ジェット・リンク!  特技は〜〜 」

「 あ それはいい。 まず センターに立ってくれたまえ。 」

「 へ?? 」

「 ・・・ そこに立って そう・・・真ん中 

アシスタントのフランソワーズ嬢が さりげなく指示する。

「 へ ここ か おう、 立ったぞ 

「 まず このステップを真似てくれ 」

グレートは ぱっと立ち上がると  目の前でリズミカルなステップ ―

 基本的なジャズ・ステップを踏んでみせた。

「 お?  ・・・ あ〜〜〜 音ナシかよ? 」

「 あら ごめんなさい CDで・・・ 

「 生で弾く。 」

 

   ぽん。  ピアノの音がした。

 

「 ?? まあ〜〜〜 アルベルト!?  今 着いたの? 」

「 ああ。 オレは早朝について、ヨコハマでのんびり朝食を楽しんでから来たのさ 

 今のステップに合う曲でいいのか  」

「 お〜〜〜 我らが ピアニスト氏〜〜 頼みます 」

「 よし・・・っと  おう 応募者、準備はいいか 」

「 おっけ〜〜 」

 

  〜〜♪♪  ♪♪  〜〜〜   タッタタタ タッタタッ!!

 

赤毛ののっぽは けっこう達者にステップを踏んだ。

「 ふん いいね。  じゃあ 次に ―  これが肝心だが。

 グラン・バットマン。 特に ア・ラ・セゴンド。 左右三回づつ 

「 へ??? ぐらん?? なに? 」

「 ・・・ こうやってみて 

目の前で フランソワーズは 耳の横まで脚を上げてみせた。

「 これを 左右三回づつ。 あ 音に合わせてね 

「 う ・・・ そ ・・・ オレ ・・・ 飛行ユニット、壊れるかも 」

「 飛ぶのに股関節は関係ないだろ〜〜 ゆくぞ 」

ピアニストが声をかけ 音楽が始まった。

「 う 〜〜〜  やっちゃる〜〜〜〜  えいっ !! 」

 

   ぶん ぶん ぶん!   ぶん ぶん ぶん!

 

アメリカンの長い脚が宙を切った。

 

「 おう〜〜〜 いいね 決まりっ  ベルナルド役は お前だあ〜〜 」

「 こんぐらっちゅれ〜しょん〜〜〜 ミスタ・リンク〜〜 」

 

「 へ?  ・・・ なんか メロドラマ やるんじゃね〜の? 

「 おう メロドラマだとも。 大メロドラマだ 

 マドモアゼルと吾輩が主役の 一大悲劇だぞ 

「 ・・・ それと 脚上げと かんけ〜あるのか? 」

「「 あるとも ( あるわ ) 

 

  だって     『 ウエスト・サイド・ストーリー  』    なんだもの ! 」」

 

 

 

 

 カチャン かちん ・・・  いい香の湯気が流れてゆく。

 

「 へぇ・・・ グレートの恋人が  ふうん ・・・ 」

チョコ・クッキーを頬張りつつ 赤毛のアメリカンは深くうなずいた。

ブリテン氏は 今回の企画の趣旨を語ったのだ。

「 まあ な。 おぬしらにもそれぞれ ・・・ あれこれあるだろうが

 甘い恋 ほろ苦い恋 忍ぶ恋 ・・・ みな人生の宝となる 」

「 ま ・・・ な 」

「 ふん 」

 

  ちょいとしんみりした空気が流れる ・・・

 

「 それを だな。今回のチャンスに昇華してほしい。 」

「 喰う わけか?? 」

「 その 消化 じゃない。 昇華 だ、ちゃんと辞書をしらべとけ 」

「 ぼく しってるよ あのね 」

「 ジョー。 自分で調べる、身に着く。 」

「 あ そっか・・・ で ぼくは大道具係で 

「 いや 今回は全員キャストだ 」

「 俺もか 

「 おう お主も頼む、ジェロニモ Jr. 

 なにせ 人種の坩堝の国が舞台ゆえ ・・・我らが仲間たちに相応しいだろ。 」

「 ふふふ〜〜〜 期待しちゃう〜〜 」

「 ミュージカルだろ?  オマエら どうするんだ? 

 グレートは女形で フランソワーズは男役 ときいたが ・・・ 」

「 あ その心配はない。 歌唱は普通に ・・・吾輩はトニー役を

 マドモアゼルは マリア役を歌う。  なに 合わせてしまえば

 わかりゃせんよ 」

 

  ( わかりますよ グレートさん ・・・! )

 

「 へっへっへ〜〜〜 なんか面白そうじゃんか〜  なあ ジョー? 

「 え ?  あ〜〜 うん ぼく、大道具とかがんばるからね〜〜 」

ジョーはポテチをぱくつきつつ 暢気に構えていた  が。

 

「 各々方 ( おのおのがた ) 今回は遠路はるばる集合していただき 忝い。 」

グレートは 立ち上がると仲間たちに深々とアタマを下げてた。

「 よ〜よ〜〜 大統領〜〜〜 

「 静かにしろ 」

銀髪が 赤毛を抑え込む。

「 おっほん、皆の衆 ・・・ 

 この芝居 ―  全員 キャスト だ。 勿論  スタッフも頼む    」

「 おう〜〜 まかせとけってんだ 」

「 黙ってハナシをきけ 

「 聞いてるって! オッサンこそうるせ〜 」

「 なにっ! 」

「 ちょっと〜〜 静かにしてよね〜〜 痴話げんかはやめて。

 え〜と それで ですね。 ほら 聞いて! 」

「 皆 〜〜 フランのハナシ 聞けよ 〜 」

「 お。 ジョーの発言〜〜 謹聴 謹聴〜〜 」

「 黙れって! 

「 はい、お口は閉じて お手々はお膝 ですよ〜〜

 それで ―   ダンス キャプテン わたしが務めさせて頂きます。

 皆さま  覚悟なさって〜〜 

「 おぅ  頼む マドモアゼル  」

  任せて!  ミスタ・ブリテン。 あ でも ・・・ 女性キャストが足りないわ  」

 「 ご安心めされ  我輩の劇団から 若い研究生を 呼んだ  」

  きゃ〜   ステキ!    ジョーもよ、アジア系の顔  必要よね  」

「 えっ ・・・      ぼく?  

「 そ!  本番は 染めてね、 黒髪ね  」

「 ・・・ ひぇ〜   ・・・ ぼ ぼく ダンスはできないよ〜〜 

「 全員キャスト と言ったではないか。

 ジョー 大丈夫だ、 おぬしはジェットの後ろのポジションだ。 

 彼の動きを  真似ろ! 」

「 ま まね ? 」

「 左様。 本来ならソリストの位置なので かなり不安はあるが ・・・

 なにせ人数が足らん。  ジョー オマエ 踊れ! 

「 う ・・・ そ ・・・ 」

「 いま 着いたよ〜 わあ  賑やかだねえ あ お茶タイム? 」

 

  パタン。  リビングのドアがあき、ピュンマがにこやかに入ってきた。

 

「 あらあ〜〜〜〜 いらっしゃい〜〜 ピュンマ。 

 グッド・タイミングだわあ〜〜  さ さ  荷物 置いてここに立って 」

「 ? なに? なにが始まるのかな 」

「 あのね。 今回は全員キャストなの。  えっと・・・ 

 ジェットここにいて 〜 ジョー その右後ろね  ピュンマは左後ろに立って 

 ん〜〜〜〜  ミスタ・ブリテン、 如何? 」

 

    はへ・・・?  なに??  ほえ〜〜〜

 

チョコチップ・クッキー  やら ポテチをもぐもぐしつつ ワカモノたちは

目をぱちくり。

 

「 ふむ・・・ よし マドモアゼルのお眼鏡に適った、ということで

 ― あのダンス・シーンは この三人に決定だ。 」

「 メルシ。 ミスタ・ブリテン。 選抜した以上は わたしが責任を持って!

 躍らせますわ。 

「 おいおい ・・・・大丈夫なのか 」

アルベルトはずっと黙って眺めていたが カップを置き ようやく口を挟んだ。

「 大丈夫 にします!

 ああ アルベルト。 あなたも キャストですから 

「 俺は踊れないぞ。 音響たのむ とグレートから依頼されている。 」

「 ええ。 舞台にね ピアノを置くの。 そこで < 音 > を弾きつつ

 ― 時には踊って!  

「 な ・・・ 冗談だろう? 」

「 い〜え わたしは本気よ。 えっと ジェロニモ Jr.、あなたは

 最重要人物だわ  

「 俺 ? 」

「 そうよ。 複数の女性をリフトしてほしいの。 

「 リフト?   ・・・ 女性をもちあげること か 」

「 そう〜〜〜〜  そうよ、 これは貴方にしかできないわ。

 それに ・・・ ジェロニモ Jr. って リズム感いいの、

 わたし 知ってるもの〜〜〜 お願いね 

「 わかった。 できるだけの協力 する。 」

「 わ〜〜〜〜 ありがとう〜〜〜 

「 ワテはな グレートはん。  皆はんの胃袋担当 でヨロシか? 」

「 おう 頼む〜〜 」

「 うふふ〜〜 心強い味方ね。  さあ〜〜て と。

 お茶の後は ボーイズ? 地下のレッスン室に集合よ! 」

 

         うへぇ     うぐ      ごくっ ・・・・  

 

              ぞぞぞ ・・・  

 

並み居るオトコ共の背に つつつ〜〜〜〜っと冷たい汗が落ちていった ・・・

 

 

Last updated : 11,06,2018.            back     /    index   /   next

 

 

************  また 途中ですが

うわ〜〜  ハナシがどんどん広がってきて・・・・

あは 楽しそう〜〜 (^_-)-

ジェットは原作 誕生編 で踊ってるよね☆