『 忍ぶれど ― (3) ― 』
〜〜〜〜♪♪ ♪♪〜〜〜〜〜 ♪ !!!
やたら激しく でも 超〜〜〜〜〜 楽しそうなダンスのビデオが終わった。
「 えっと? これは映画版ね。 だいたいがこの振りですけど
舞台用に少し変更します。 オッケ? 」
フランソワーズはビデオを止め、出演者たちを見回した。
「 ・・・・・・ 」
返答がない。 オトコ共は ただ ぼ〜〜〜〜〜〜っと もう消えてしまった
巨大モニター画面を眺めている。
「 おっほん? 皆さん、 わかったの? ・・・ ジョー? 」
「 ・・・ え? あ は はい ・・・え〜〜と
」
「 もう〜〜 ジェット!? この真ん中 踊るのよ しっかりして! 」
「 ・・・ あ あ あ〜〜〜〜 おう 」
「 ねえ ちゃんと見てた?? 今のビデオ! 」
「 お おう 」
「 それじゃね 音楽はアルベルトに少しアレンジしてもらうけど
だいたい同じ。 そして 振りは ― わたしが変更してみました。
踊るから よ〜〜く見ててね。 わかった!? 」
「 は はい ・・・ 」
なおもず〜〜っと ぼけっとしてたオトコ共は 慌てたコクコク・・・
頷いてみせた。
それじゃ ・・・と フランソワーズはレッスン室の中央に出た。
「 ジョー? 音だし お願いします 」
「 あ は はい ・・・ いいですか〜 」
「 待って ・・・ はい お願い 」
♪♪ ♪〜〜〜〜 端切れのよい音楽が始まった
シュッ シュッシュッ トンッ !!!
躍動感いっぱいの音楽ともに 細身の金髪が激しく踊る。
脚は耳の横 〜〜 グラン・ジュッテは高く、 アチチュード・ターンは速い。
地を這うようなステップから 一気に宙に舞う
ひぇ・・・・ ほぇ 〜〜〜
オトコ共は ぽっか〜〜〜〜ん ・・・ お口をあけて眺めていた。
「 〜〜 っと。 まずはこのシーンから行きましょ。
すご〜〜〜く有名だから 音楽くらい聞いたこと、あるでしょう? 」
「 ・・・ ・・・ 」
オトコたちは ほぼ無意識・かつ自動的に頷いていた。
「 でしょ〜〜 それじゃ えっと ジェットからね。
ピュンマ、ジョー 一緒に動いて覚えて! 」
「 マジかよ〜〜 おい 」
「 だって音楽 知ってるんでしょ? 」
「 そりゃ ・・・ 聞いたことはあるけどよ〜 」
「 映画だって見たこと あるんじゃない? レンタルだって
動画配信サイトでだって 」
「 ・・ オレ 古いヤツはあんまし見ねえんだ 」
「 なにか言った? 」
「 ・・・い いや なんも ・・・ 」
「 はい それじゃ いい? 一緒に動いて!
はい ワン ツ〜〜 でゆくわよ っ 」
「 う ・・ げ ・・・ 」
これがニンゲン技か?? と 疑いたくなるほど 高く自由に腕やら脚を
上げて踊る < アルヌール君 > の後を のっぽの赤毛が必死に追う。
「 ・・・ ここで ターン ・・・ ふうん? あら ジェットってば
なかなか切れがいいじゃない? 」
「 ・・ くっそ〜〜〜〜〜 」
わあわあいいつつも さすが地元民? ジェットの動きは結構サマになっていた。
「 そう そう ・・・ いい感じ ・・・
このまま最後まで通してみるから ついてきて! 」
「 うげ??? くっそ〜〜〜〜 ××× ! ※※※ !!!( 伏字 ) 」
下品なヤジ?を自分自身に飛ばしつつ 彼はだんだん夢中になって
踊り始めた ・・・
〜〜〜 ♪♪ ♪ ♪
なんとなく懐かしいテンポの音楽 なのだ。 最近聞いているモノとは
大分違うが ・・・ どうも肌に合う・・・
な なんか ・・・
妙〜〜〜な 気分だぜ ・・・
ココはニッポンで 一緒に踊ってるのは フランのヤツで
オレは ・・・ 002 だぜ もうずっと・・・
けど なんか ・・・ あ ?
彼の心の中に 懐かしい光景が蘇る ― とっくに忘れたはずなのに。
「 ・・・ ああ あの頃 ・・・ 毎日 背中の毛を逆立ててたぜ ・・・・
け。 意気がっちゃってよ くだらね〜〜〜 」
不意に ほんの少し甘い気持ちが盛り上がってきた。
路地にたむろして ケンカに明け暮れる日々 でもあったけれど
「 ・・・ そんでも それなりに ・・・ 面白れ〜こと あったんだ
・・・ あのコ ・・・ 好きだったんだ 気が強くて美人で
でも 涙脆くてよ〜 ・・・ 下のコにはめっちゃ優しい姐さんだったなア
年下のコは それとなく庇ってたんだ アイツ。 」
「 アンタ こんなことやってちゃダメだよ 」
ストロベリー・ブロンドの少女が つん・・とジェットの胸を突いた。
「 へっ! ナニサマだと思ってんだ てめ〜 」
「 ナニサマだっていいさ。 とにかく ここから抜けな 」
「 大きなお世話だっ 」
「 アンタ まだ若いんだろ 」
「 てめ〜だって たいしてかわんね〜だろがよっ 」
「 そんなこと 聞いてない。 アタシはいいんだ ・・・ ここで腐るから。
けど アンタは ! さっさとお日様の下に 戻りなっ 」
「 ― 腐る なんて いうな 」
「 ・・・ え? 」
赤毛とストロベリー・ブロンドは 初めて真正面から見つめあった。
そして ― その時から ふたつのココロは。
「 ・・・ アイツ ・・・ シアワセなババアになれたかなあ・・・
笑って目を瞑れただろ〜か ・・・ ナタリー そんな名だったっけ。 」
「 あれは ホントの恋とかじゃなかったのかもしんね〜けど ・・・
でもな マジ18のオレは 恋してたんだ 」
「 ジェット! どこみてるの〜〜 」
聞きなれた声が飛んできた。
「 ・・・? ! やべ ・・・ 」
「 音、外したらだめでしょ、 いま見本をやってもらってるのよっ
集中して〜〜〜 」
「 ・・・ ! っかったよ〜〜 ちっくしょ〜〜〜〜 」
バ・・・ッ ! 赤毛のアメリカンは 長い脚を耳の横まで蹴り上げた。
「 う〜〜ん さすがね〜〜〜 地元民はこう〜〜 リズムが身についてるっていうか
ね ジョー ピュンマ だいたいのカンジは掴めたかしら 」
「 ・・・ う〜〜ん この音楽は知ってるよ。 映画も見たと思うけど・・・
ダンスの振りまでは ・・・ 」
「 あら ピュンマ でも見たことはあるのね? 」
「 うん ま〜ね 音楽はいいなあと思うよ 」
「 それじゃ ダンス がんばって! アナタのリズム感なら簡単でしょ? 」
「 ど〜してそういう理論になるのかなあ 」
「 なんでもいいの。 ともかく ― 踊って。 」
「 へいへい あ〜〜 女王様には勝てないよなあ 」
「 なんですって? 」
「 いえ ・・・ なんでもありません。 あ〜 ジェット?
もう一回踊ってくれる? 一緒に動いてみたいんだ 」
「 お〜〜っとぉ〜〜 さすが〜 ピュンマ☆
ほんじゃ〜 も一度 やるぜ。 ヘイ ジョー ミュージックスタート! 」
「 あ うん・・ 」
「 ジョー。 わたしがやるから。 あなたも一緒に動いて!
一回でも多くやってみて! 」
「 ・・・ へ? ぼ ぼく? 」
「 そうよ ぼく! さあ ピュンマの隣で 合わせてみて〜〜 」
「 は は はい ・・・ 」
ジョーは おずおずとピュンマの横に立った。
「 ・・・ お お願いシマス ・・・ 」
「 おうよ〜〜 野郎ども〜〜 いくぜっ! 」
「 音 出ます〜〜 」
〜〜 ♪♪ ♪♪ ♪
歯切れのよい音が 弾みつつ流れだす。
「 お〜らおらおら〜〜 行くぞ〜 」
赤毛のアメリカンは すっかりリズムに乗って踊り始めた。
「 お〜っと ・・・ ふうん そうか・・・この繰り返しなんだな〜
っと 右右左〜〜 と 」
「 ふんふん ・・・ こう〜〜っと ? ああそのまま踏み込むんだな・・
いい感じじゃん〜〜〜 」
ピュンマは冷静に分析し すぐに理解し動く。
「 ・・・ ダンスなんて 初めてだけど ・・・
故郷 ( くに ) で踊っていたのは ― あれは儀式だったかなあ
うん 迷信とか伝説とか そんな要素もあったけど
でも あれは ・・・ 僕たちのしきたり、伝統なんだ 」
あ ・・・ ?
迷信、という言葉と共に 一人の若い女性の顔が浮かんできた。
「 ああ ・・・ タタ ・・・ そんな風に呼んでたっけか
うん あの出会いだって ・・・ 運命 かな やっとそう思えるようになったよ
タタ・・・ ねえ たのしかった よ ね ・・・? 」
「 どのくらい一緒にいたのか ・・・ それすら覚えていない けど。
でも ― 熱い太陽の光だった タタは ・・・ うん
僕にとって 君は ひかり だったんだ ・・・ ! 」
「 ひかり は ― しっかりと僕を包んで温かかったよ
そうなんだ 僕は 幸せだったよ タタ ・・・ ! 」
「 おい ピュンマっ! 反対だぞっ 」
「 ・・・え? あ ごめ〜〜ん いっけね・・・・
・・・っと〜〜 次は左にターン だったね! 」
「 おう さっすが〜〜〜 海の中とはちっとちがうけど
すいすい〜〜〜 だぜ 」
「 あっはっは〜〜〜 そりゃ 泳ぐようはいかないけど〜〜
って ターン を三回〜〜 」
「 すご〜〜い ピュンマ〜〜〜 いい感じよぉ〜〜
ほら ジョー 一緒に動いて〜〜 いつまで見てるの! 」
< アルヌール君 > の 厳しい言葉が届く。
「 へっ? あ あのぉ〜〜〜 ぼく ・・・ 」
「 とにかく! 音にのって動いてみてっ 」
「 え え え??? 」
「 ん〜〜〜 じゃあ もう一回 アタマから流すから 」
「 ひ え〜〜〜 」
「 ちょい 休みくれえ 水飲みタイムだ 」
「 あらあ〜〜 もうバテたのぉ? 」
「 ふ ふん ・・・ ま〜 コイツのことも考えてやれよ
パニくってるぜぇ〜〜 」
「 え? ・・・ あらァ・・・ 」
稽古場の隅っこで ジョーが真っ青な顔でステップを繰り返している。
・・・ いや 単にうろうろ・右往左往してる ― ように見えてしまう。
しかし 本人は超〜〜〜真剣、本マジってやつなのだ。
「 少しは振り、アタマに入ったかし ら ・・・ あ??
・・・ あ ・・・・ 」
フランソワーズは 言葉を失った
あ あ〜あ・・・ また・・・
なんだってこのヒトは 手と脚、同じ方が出るのかしらねえ
あ〜あ ・・・ 盆踊り じゃないんですけど〜〜
「 ( え〜〜い ! もうこうなったら 習うより慣れろ! だわ。 )
さあ みんな〜〜〜 アタマからやってみましょ 」
パンパン ― 彼女の手打ちにオトコ共は さっと集まってきた。
「 まだ初回のリハですから。 雰囲気を感じてもらえばいいです。
振りは多少なら変えて頂いて結構です、デタラメは困るけど 」
「 ひゅ〜 ひゅ〜〜〜 」
「 ジェット 静かにしろよ。 あ 振り付け通りじゃなくてもいい? 」
「 皆さんの創作が 素晴らしければ それを採用します。 」
「 お〜〜〜〜 いいぜ〜 NYっ子の意気をみせてやらあ〜〜
二人とも いっか〜〜〜
」
「 ふふふ・・・ 僕は故郷 ( くに ) の踊りを少しいれてみる いい? 」
「 もちろんよ〜〜 大歓迎。 あ ジョー ? 」
「 ・・・ は はい? 」
「 あの ね ボン踊り は 遠慮してくださる? 」
「 ぼ ぼんおどり? ・・・ やってないデスけど ・・・ 」
「 あ ちがうの・・・・ いえ なんでもないわ〜〜 それじゃ
音〜〜〜 出すから。 三人で踊ってみて? 思い通りでいいのよ
イメージが大切です、イメージ ! 」
行きます〜〜っと フランソワ―ズはCDプレイヤーを操作した。
〜〜〜♪♪ ♪ ♪♪ ♪
三人の 不良少年ズ が踊り出す。
「 ふ ・・・ ん ・・・ あら なかなかいいじゃない?
さすが〜〜〜 ジェット! 雰囲気抜群〜〜〜ね うわお〜〜
ピュンマって ・・・ 身体能力すごい ・・・ あ ら 」
< アルヌール君 > は 不良少年ズの動きにじっと目を凝らす。
ふうん ・・・? ジョーってば 案外動いているじゃない?
棒立ちかなあ と思ってたけど ・・・
「 なんかいい雰囲気よ〜 ほら次は! 有名なシーンよ〜
ジョー!
アームス 上! 脚 耳の横! 軸脚
伸ばして〜 膝よ 膝!
ジェット
音 よく聴いて
はや〜い! はやいってば。
ジョー 脚 低い! もっと そう!
ピュンマ
アームス ! 肘 曲げない! そう 勢いよく〜〜 」
「 へっ・・・ なかなか キツいダンス・キャプテンさんだ な ! 」
「 ふ ・・・っ ジェット はやいよ〜〜 音より! 」
「 わ〜〜っかったってば お ピュンマ おめ〜もなかなか・・・ 」
「 ふふ これでも部族一の踊り手だぜ? 」
「 ひょえ〜〜〜 おい ジョー ついてこいよっ 」
「 ・・・・ 」
「 ? ジョー?? 大丈夫かい? 」
「 ぴゅ ピュンマ ・・・ な なんとか・・・
う?? うわ???? え え え〜〜〜〜〜???
ジェット〜〜 ちょっとまって 振り ちがわない??
さっきフランはあ〜〜〜 こっち側にいっぽ踏んでから わ わ〜〜 」
「 い〜んだ いんだ 雰囲気でオレ様 ノリノリ〜〜〜 はっ! 」
「 え え?? わ〜〜〜 」
ジョーは オタオタ〜〜しつつもなんとか 仲間たちに着いていっている。
「 うん ・・・ いいわね。 ね わたしも参加するわ! いい? 」
「 おうよ〜〜 音 終わっちゃうんぜ? 」
「 ヘイ ぼ〜いず!? 」
細身のアルヌール君が 華麗なアレグロ・ステップを披露する。
う わ〜〜〜 フラン すご〜〜い〜〜〜
えへ ・・・ なんか楽しいな♪ ジェットの後ろでも いいや
えいっ!! ほら 〜〜〜 ぼくだって 脚 あがるよぉ〜〜
長いシーンを踊り終わる頃には ジョーも笑顔になっていた。
「 〜〜〜〜 ん! いいわ この調子で行きましょ!
あとね 女子が加わるから リフトとかよろしく ! 」
「 お〜〜〜 レディス 歓迎〜〜〜〜♪ 」
「 いいね 華やかになるよね リフトって こう〜〜 持ち上げたりするんだろ?
コツ 教えてほしいな 」
「 え え じょ 女子〜〜? ・・・ コワ・・・ 」
「 うふふ 皆さんなら大丈夫。 あ リフトは基礎的なものしか入れませんから
すぐに 覚えられるわ。 」
「 で どこのレディスなんだよ お相手はさあ 」
「 ふふふ〜〜〜 プロの俳優さん志望の方たちよ。
グレートがこっちでも劇団を主宰してるの 知ってるでしょ 」
「 ああ なかなかいいモノを上演してるよね、評判もいい。
ネット動画で観たよ 僕。 」
「 まあ さすがピュンマ〜〜 その劇団のね 若手女優さんに
お願いします。 午後 皆で移動よ 」
ひ え〜〜〜〜 なんつ〜〜 行動力〜〜〜〜
「 じゃ 皆 シャワーして ・・・ えっと30分後に玄関に
集合ね。 持ち物、 新しいTシャツとスウェット上下。
靴は ・・・ ああ いいわ、靴下必須。 オッケ? 」
お おっけ ・・・
不良少年ズ は こくこく 頷くしかなかった。
「 お〜〜 ようこそ 我が劇団へ 諸君 」
「 ミスタ・ブリテン。 ハロウ? フランソワ・アルヌールです 」
「 いらっしゃい 」
都心にほど近い沿線都市。 グレートが主宰する劇団に
四人の! 青少年がやってきた。
「 ミスタ・ブリテンの作品に参加できることを 大変光栄に思います。
あ こちら ジェット君 ピュンマ君 ジョーくん です 」
「 よろしく、ボーイズ! ウェルカム〜〜〜
さあ わが劇団の新鋭女優たちを 紹介しよう〜〜 」
グレートの後ろには すっきり細身の女性たちが立っていた。
「 ミスタ・ブリテン ・・・ 」
「 おう。 こちらから シンシア嬢 ヘレン嬢 キキ嬢 」
「「「 よろしくお願いします
」」」
「 お〜〜〜〜〜〜 オレらこそ〜〜〜〜 」
「 わあ いいねえ・・・ どうぞお手柔らかに頼みます 」
「 ・・・ わ あ ・・・ は はい ・・・ 」
「 で〜〜は さっそくだが まず音を聴いてもらおうかな。
おっと その前にボーイズ、着替えて 」
「 はい 皆 行こう 」
「 お おう 」 「 あ うん 」「 え ・・・ 」
四人は ( 四人 だよ! ) 男子更衣室に入った。
「 ・・・ん〜〜〜っと じゃ お先〜〜 」
ドアを閉めるなり上下をするり、と脱ぎ捨てると
アルヌール君はさっさと稽古場に出ていってしまった。
「 な ・・・ なんだ〜〜 下に 」
「 全部 着こんできたのかあ 」
「 ・・・ あ は ・・・ よかった ・・・ちょっとがっかりだけど 」
「 さ〜〜 オレらもとっとと着替えようぜえ〜〜 」
「 そうだね 」
「 う うん ・・・ 」
不良少年ズ は そそくさ〜〜と着替えた。
〜〜〜〜♪♪ ♪♪♪ 〜〜♪ ♪♪〜〜
稽古場には たちまち歯切れのよい音楽が響き始めた。
「 フランソワ・アルヌールです、ダンス・キャプテンを務めさせていただきます、
どうぞよろしく 」
金髪の少年が さっと挨拶をする。 女性たちは ぱちぱち〜〜拍手で迎えてくれた。
「 ありがとう!
えっと ペアで踊るシーンの前に ・・・ まず ガールズ ボーイズに分かれて
踊ってください。 では ボーイズ? お願いします 」
「 おう〜〜 野郎ども ゆくぜっ 」
赤毛のアメリカンは にやっと笑った。
「 ・・・ も〜〜 乗りすぎだよなあ ジェット 」
「 わ わ〜〜〜 ぼく達からぁ? うわ〜〜 」
ぶつくさ ごそごそ〜〜 いいつつも 少年達はちょっとばかり得意気な笑顔で
稽古場センターに出た。
「 え〜と。 彼らはダンス初心者なので 振りは基礎的なものに変えてます。
ガールズ、カバーしてくださいね〜〜 」
「 はい アルヌールさん。 」
「 あ フランソワで結構。 じゃ 皆 行くよ? 音 アタマから〜 」
「 おう ! 」
〜〜〜♪♪ ♪♪ ♪ 〜〜〜♪
「 おら〜〜 行くぜ 」
さ・・・っと 赤毛が飛び出し 勢いよく踊り始めた。
「 わ 〜〜〜 」
「 え すご ・・・ 」
「 きゃいん 」
興味深々〜〜 で見つめていた女子たち 次第に < 目がはあと > に
なってきた!
・・・ なんか 雰囲気 よくない?
うんうん シロウトさんとは思えない〜〜〜
ね? あの茶髪クン ・・・ かわい〜〜〜
アタシ、黒人の彼 いいな〜〜
すっご・・・ 赤毛クン 脚 あがるね〜〜
〜〜〜〜 ♪! ぱっと音が終わり三人はなんとかポーズを決めた。
ぱちぱちぱち〜〜〜 自然に拍手が盛り上がった。
「 ありがとうございます。 なにせ初心者の集団ですので・・・
演技等 プロフェッショナルな皆さまで カバーしてください。
皆 ! 礼 !! 」
金髪青年の掛け声で 男子ズはささ〜〜っとお辞儀をした。
「 いやあ〜〜 けっこう けっこう〜〜
さあ 我が女優の卵さん達、 上手く絡んでいただきたい。 」
グレートも拍手しつつ 女性たちを招き寄せた。
「 全員で相談して あ〜〜 アルヌール君?
ダンス・キャプテンとしてまとめていただきたい。 」
「 はい。 ミスタ・ブリテン。 それじゃ 皆 集まってくれたまえ 」
アルヌール君の颯爽とした姿に 全員が ほわ〜〜〜ん となっていた・・・
〜〜♪♪ ♪!! ♪〜〜〜!!
「 はい そこもう一回! ボーイズ、 女性たちをリフトっ そう! 」
「 ジョー! しっかり女性のウェストを持つ ! 」
「 ガールズ〜〜 前でカバーしてください、派手に飛んでみて? 」
「 そう そのかんじ! 次 三組でアンサンブル〜〜〜
ボーイズ、 よく見て! 同じ動きをするっ そう! 」
ぽんぽん・・・小気味のよい指示が飛ぶ。
全員が夢中になって ― かの名作を元にしたダンス・シーンに
取り組んでいった。
「 ・・・っと。 ああ ごめん ちょっとレスト〜 」
ぱん。 アルヌール君は手を叩き、音楽を止めた。
「 はあ〜〜〜 キビし〜〜〜〜 」
「 ふぁ〜〜 でもいい気分だね 」
「 ねえ これ! 飲みませんか〜〜 」
ガールズが冷えた飲料を持ってきてくれた。
「 おう〜 すまねえな〜〜 えっと・・・ ミス・シンシア 」
「 うふ シンシア でいいの、ミスタ・ジェット。 」
「 オレ ジェット。 こいつは ピュンマ で あっちが ジョー 」
「 ピュンマ〜〜〜 すご〜〜いのね リズム感〜 」
「 そうそう ターンのタイミング 最高です〜〜 」
たちまちワカモノたちは親しく盛り上がる。
「 あ ら えっと ジョー ? ・・・ あらァ 」
「 ! 見て みて 〜〜 」
「 え? あ・・・ 」
稽古場の隅では 金髪青年と茶髪ボーイがなにやら話し込んでいる。
「 ・・・ ジョー ごめんなさい ・・・
無理矢理にこんな事に誘って ・・・ いやでしょう? 」
「 え そんなことないって。
フランこそ〜〜 大変だね でも すごい〜〜 」
「 あ は もういっぱい・いっぱいよ ・・・
わたし クラシックしかしらないし 」
「 へえ〜〜 でも 皆 ぱしっときみの指示で動いてさ 」
「 皆が優秀なのよ ・・・ 」
「 ぼく 嬉しいんだ〜〜 」
「 え? 」
「 あの
ね! きみのいる世界 少し味わえ 幸せだよ。 」
「 わたしの? ・・・ 踊りの世界ってこと? 」
「 そう! ぼく!
楽しいよ〜 かっこいいね フラン!
なんか ぼく 自分の事みたく 嬉しいんだ 」
「 ・・・
ジョー … 」
「 ぼく 全力で 応援しちゃう これからもず〜〜っと だよ! 」
「 ジョー ・・・ ! 」
すとん。 細い身体がジョーの腕の中に落ちてきた。
「 す き だよ 」
「 ・・・ え? 」
「 えへ なんでもなあ〜〜い♪ 」
何でもない、と言いつつ、 彼は きゅ っと 抱きしめてくれた。
「 ・・・ ねえ あの二人 ・・・ 」
「 そ〜なのよぉ〜〜 うふふ〜〜〜 生BL って初めてよぉ〜〜 」
「 ねぇ ねえ すっごく絵になる と思わない?? 」
「 もうとっくに 写メ 完了よ〜〜
」
目端の利く若いお嬢さん達は すぐに気づいた らしい。
こ〜れは 後にこの劇団での < 伝説 > になった とか・・・
さて リハーサルは順調に進み ― 主役二人も参加することとなる。
ダンス・シーンは ワカモノたちに任せ、
マリア と トニー は 演技と歌唱力 に集中した。
「 グレート ・・・ 演技、自信ない かも ・・・ 」
「 吾輩に任せなさい、 トニー君よ
あのジョ―も 善戦しているではないか 」
「 そ そうね ジョーも頑張ってるんですものね 」
「 左様 左様〜〜 凛々しい トニー〜〜 」
「 ああ 愛しいマリア〜〜〜 ( ジョーのつもり! ) 」
「 トニー ・・・ 」
え・・ ? グレート よね ・・?
でも。 目の前にいるのは < 乙女 > だった。
グレートは 巧みな表情と動き そして 卓越した演技で
完全に < マリア > になってゆく。
すっご〜〜い〜〜〜〜〜〜 ・・・
! わ わたしも ・・・!
フランソワーズ いや フランソワ は 演技に集中していった。
「 トニー ・・・ 愛しいヒト 」
グレートは演じつつ 次第に気持ちが温かくなってきた。
・・・ ああ こんな日も あったよなあ
恋に恋していた 若き日よ ・・・
グレートさん ・・・
不意に ― 爽やかな声が 彼の心に響いてきた。
「 ?? だ 誰だ? 」
「 ワタシ。 えりこ 」
「 え え えりこさん?? 」
「 ええ。 ねえ ワタシ 知っていたの。 」
「 へ?? 」
「 うふ・・・ ワタシね グレート・ブリテン の 大ファンだったのよ?
知ってた? 」
「 ・・・・ 」
「 舞台 何回も拝見したわ。 貴方の演技力に感動していました。
だから ― 最初はちょっとびっくりしたけど・・・でも 嬉しかったわ 」
「 えりこさん ・・・ すまん ! 」
「 まあ 可笑しな方・・・ なぜ謝るの?
ワタシ ・・・ 本当の恋は あれが最初で最後だったわ 」
「 えりこ ・・・ 」
「 ありがとう、グレート。 とっても とっても幸せでした 」
「 ・・・ えりこ 俺も 俺も だよ ・・・ ! 」
「 恋は 最高ね ・・・ シェイクスピアの言う通り 」
「 そう 恋は 最高 さ 」
「 グレートさん ・・・ ありがとう ! 」
「 えりこ えりこさん ・・・ あり が とう ・・・ 」
― そして 熱心なリハーサルを重ねた後
『 恋をしようよ! ― ウエスト・サイド・ストーリーより ― 』 は
銀髪のピアニストによる生ピアノ、 そして 褐色の巨人の巧みなドラムが
加わることとなり ― さあ 幕があがる。
恋をしてるかい? 片想い でも 悲恋 でも 忍ぶ恋 でも
あのヒトを想う甘やかな時間 ( とき ) は 永遠の宝モノ
ああ 恋を してたぜ
恋をしてたかい? 叶わぬ恋 も 別れの恋 も 苦い恋 も
あの頃のこと ・・・ ねえ 覚えてる?
おぼえてる ちゃんと 覚えているよ
恋をしようよ
えへ ・・・・ 好きだよ〜〜〜〜 フラン♪
ナイショだけど ね〜〜〜 ね?
うふふ ・・・ ジョーってば。
恋? あ〜〜 ぼく達はそんなんじゃ ・・・
わかってるよっ!!!
しのぶれど 色に出でにけり わが恋(こひ)は
ものや思ふと 人の問ふまで
**************************** Fin. ****************************
Last updated : 11,13,2018.
back / index
***************** ひと言 *****************
この舞台 ワタシも 観たい〜〜〜〜〜 (^^)
ハナシがどんどん広がってしまったです〜〜
でもさ ジェットとかピュンマとか、踊れそう〜♪