『 忍れど ― (1) ― 』
「 え〜〜〜〜??? ― で できないってば 」
平日の午後、閑散としたギルモア邸に青年の悲鳴? が響きわたった。
なにごと?? と 駆け寄る人影も ない。
「 だ だ だから 無理だってば〜〜〜 できないです、 できません〜〜
むり〜〜〜〜〜 」
やたら拒否に終始する声に なにやら落ち着いた声が理詰めで
迫っているらしいのだが ・・・ よく聞こえない。
「 え? だから やったこと、ないもん むりむりむり〜〜
え? 学校で? 学芸会では ぼく ・・・ 大道具係でしたっ 」
「 わ〜〜〜 できないよ〜〜 」
「 お前は 人でなし になりたいのか 」
びん ・・ ! と張った声が 腹に響く低音で 響いてきた。
「 はへ・・・? 」
「 だから。 島村ジョー。 おぬしは 人でなしになりたいのか と
聞いておるのだ。 」
「 ひ ひとで なし・・・? 」
「 そうだ。 人非人 ともいうが。 オマエはそういうニンゲンなのか 」
「 そ そ そんな ・・・ だってなんにもしてない・・・ 」
「 だから。 吾輩の依頼を受けるに なんの支障もないな? 」
「 え?? そ そ そ〜いうワケじゃ〜〜
」
「 心配するな。 このグレート・ブリテン様が 個人指導する。
密着個人指導だ、誰でも三日で名優になれる。 」
「 ・・・ そ そういうの・・・ こだいこうこく とかいうんじゃ・・・
七日で10キロ痩せます とか・・・ 」
「 おっほん! 怪し気な痩せ薬と一緒にしないでいただきたい。
王立演劇スクール卒の名優が 手とり脚とり指導するのだぞ?
― できない は ありえない。 」
「 できない しかぼくの辞書にはないよぅ〜〜 」
「 だから 安心したまえ。 ではさっそく発声を ・・・
ヴォイス・トレーニングだ。 地下へ来い 」
「 ち ちか・・・? 」
「 ああ。 マドモアゼルのレッスン室 があるだろう?
こころよく使用の許可をくれたぞ、彼女は。 」
「 え・・・ フランが ・・・・ 」
「 おう。 存分に使ってくれ と。 そして
ジョーに しっかり演技を叩きこんでね と さ。 」
「 う ぬ ぬ〜〜〜 」
想い人の声音を完璧に真似られ 最強の ( はず ) 戦士 009は
かなり動揺した。
「 おっほん。 これは極秘だが 」
「 ・・・ え? 」
「 おぬしの相手役 は ― 決定ではないが ― おぬしの想い人
かもしれぬ。 」
「 え!? え〜〜〜 ふ フランが?? 」
「 さあ それは言えぬが。 しかし もしそうなれば ―
堂々と彼女といちゃくちゃ ・・・・できる かもしれぬなあ 」
「 え え え〜〜〜〜 ・・・ そ そう? 」
「 女子萌え の演技を指導するゆえ ―
まあ ステキ! ジョーってこんなに素敵なヒトだったの?
おぬしの 忍ぶ恋 は実を結ぶ ・・・ かもしんなあ〜 」
くわ〜〜〜〜〜ん ・・・ !
このセリフで 009はついに陥落した。
「 ・・・ わ わかったよ ・・・ 協力 する ・・・ 」
がっくり肩を落とし でもちょっとばかりはわくわくしつつ
ジョーは グレートの軍門に降った。
「 お〜〜〜 それでこそわが友 わが仲間〜〜〜
では さっそく ― トレーニング開始とゆこう! 」
「 ・・・ ・・・ 」
ジョーは 邸の地下へと<連行>されていった。
さて 007 こと 我らがグレート・ブリテン氏は ―
現在 出身地・英国倫敦とニッポンの湘南地区の双方を本拠地としている。
氏は 俳優として活躍を続けており、本国では中堅劇団で演出家としても活動、
演劇界ではかなり名も売れている。
― それでも 日本では 張大人の店『 張々湖中華大飯店
』で店員をする。
「 はん? なぜか・・と?
人間観察にはうってつけ の仕事だとは思わんかね?
中華飯店の店員 とは 役者としては最高の修業になるね 」
氏は嘯き、演劇活動と共に嬉々として中華飯店の店員や出前持ちまで
こなしているのだ。
そんな ある日 ―
ニッポンのギルモア邸にて ・・・
「 マドモアゼル 少々お付き合い願えないかね 」
「 ? なんですの ミスタ・ブリテン 」
昼下がり のんびりテイー・タイムを楽しんでいる時のことだ。
「 小生の恥を話すことになるが ・・・
叶わなかった恋 への 逝ってしまった恋人への 追善供養に・・と
『 ロミ・ジュリ 』 を上演したい 」
「 まあ ステキね。 そのエピソードもドラマみたい 」
「 ふふん ・・・ それで だ。
マドモアゼルにも手助けをお願いしたいのだが 」
「 ? ああ 地下のレッスン室でしたら どうぞご自由に使って?
わたし 今はバレエ団のリハで忙しくて・・・ 」
「 いや 忝い・・・ そのお忙しいところ にお願いなのだが。
マドモアゼル、キャストとして参加してくれないか 」
「 え ・・・ わたし お芝居はできないわ 」
「 これこれ ダンサーが何をいっているのかね? 」
「 そりゃ ・・・ 『 ロミ・ジュリ 』 は 踊ったことがあるけど
」
「 それは頼もしい 是非お願いしたい 」
「 ・・・ でも・・・ グレートが主演するの? 」
「 吾輩か? うむ 今回は 脚本・演出担当だ。 」
「 あら ・・・ 」
「 あのな 自分自身の世界を己の手で描けるという誘惑は
最大であってだな ・・・ ま それはさておき。
今回 ジュリエットを引き受けてくれるか 」
「 え〜〜〜 主演じゃない〜〜〜 」
「 いかにも。 ダンサーはアクターでもあるだろう? 」
「 それは ・・・ そうだけど。 ・・・ ロミオは?
グレートの劇団の方? それともゲストを呼ぶの? 」
「 いや 」
「 ?? 」
「 ふっふっふ〜〜 なにを隠そう、ロミオは ― 」
え〜〜〜〜〜〜〜〜 ???
それ・・・ 無理じゃない ・・・?
「 だって ・・・ 100%シロウト ってか 超ダイコン よ? 」
ジュリエットをオファされたダンサーは カノジョの恋人に対して
実に無慈悲な評価を下したので ある。
「 いや。 磨かれざる原石 かもしれん。 なにせ最新型ゆえ 」
「 う〜〜〜〜〜ん ・・・? 」
「 安心したまえ。 マドモアゼルの顔に泥は塗らぬ。
あまりにあまり・・・ な時は キャストを換える 」
「 ・・・ 最初からやめた方がいいかも よ? 」
「 いやいや ぶっちゃけ アヤツの外観は女子受けする。 」
「 外観だけ はね。 黙って立ってるだけ なら ね。 」
「 お〜〜 手痛いお言葉ですなあ マドモアゼル〜〜〜
まあ ちょっとは試してみようではないか 」
「 ・・・ いいけど ・・・ グレート、面白がってない? 」
「 ・・・・ 」
老練の名優は にやり、 と笑った。
― そんな密約?の後、 島村ジョークンの役者修業が始まってしまった
のである。
「 ・・・・ はあ〜〜〜〜〜 」
フランソワーズは ふか〜〜〜いため息を吐いた。
「 ・・・ あ あの ・・・? もう 一回 ・・? 」
レッスン室の中央では ジョーがもじもじしつつ立っている。
「 ・・・ 」
まあ なんて目 してるの?
・・・ まるで 置き去りにされそうな仔犬みたい・・・
「 も もう一回 ・・・ さっきの えっと スキップする?
あ ・・・ それとも 発声練習 ・・・ する ? 」
「 いえ。 ちょっと休憩しましょう 」
「 ホント? あ〜〜 ちょっと 上 いってきてもいいかなあ 」
ジョーは天井を指す。 上 とは 自分の部屋ということなのだろう。
「 どうぞ。 休憩は15分よ 」
「 了解〜〜〜 」
ぱっと顔を輝かせ ― 彼は実に活き活きとした表情になると
レッスン室を飛び出していった。
はぁ〜〜〜〜〜〜・・・・・
フランソワーズは 本気で文字通り < アタマを抱えた >。
「 ・・・ ここまで 芸術オンチだとは思ってなかった ・・・ 」
グレートから ジョーの < 役者へのてほどき > を 頼まれた。
「 え・・・ だってわたし、 演劇のことはわからないわよ? 」
「 いやいや ・・・ 全ての舞台芸術には クラシック・バレエがある。
ともかく〜〜 アヤツの身体を柔軟に、自由に動けるように
入門編 を 指導してほしい 」
「 ・・・ バレエ入門 なら ・・・ 」
「 それで 頼む。 その後 発声・演技は吾輩が しごく。 」
「 まあ〜〜 怖い〜〜〜 」
「 なにせどん素人を使うんだから 仕方あるまい。 」
「 動きの基礎を教えるのはいいけど ・・・
でもぉ〜〜 演劇に関しては わたしだってジョーとたいして変わらないかも 」
「 いやいや それは謙遜というもの。
長年 マドモアゼルの舞台を拝見している吾輩の目を信じてくれ。 」
「 わかりました。 それじゃ ・・・・ 立ち方、歩き方 から レクチュアします 」
「 頼む。 脚本は早急に上げるから ・・・ ジュリエット 」
「 きゃ〜〜 ・・・ でも これも勉強です お願いします 」
「 こちらこそ 」
― ということで 本人のまったく与り知らぬところで ジョーの
運命? は 決まってゆく ・・・
「 あ あの ・・・・? レッスン室へ行け・・・ってグレートが 」
ジョーが おずおずと顔を覗かせた。
「 ええ まっていたわ。 え〜と・・・・ ええ その恰好でいいけど・・・
靴下は脱いでね。 」
「 は はい ・・・ 」
「 いい? それじゃ ・・・まずリラックスしましょうか
ストレッチ しましょ 」
「 は はい ・・・ 」
「 そんなに緊張しないで ・・・ それじゃね まず座って 」
「 ハイ 」
「 身体 ほぐしましょ? 学校の時 ストレッチとかしたでしょ
」
「 ハイ ・・・ 」
「 そこに座って。 そうね 脚を投げだして広げて ・・・ 」
「 ハイ。 」
「 ? ジャージ よねえ それ? 」
「 え? これ? 」
彼は だぼだぼしたズボンを引っ張った。
「 そう それ。 」
「 ウン。 いつもジョギングの時 穿いてるヤツだよ 」
「 そらなら 柔らかい生地よね もっと脚、開くでしょ? 」
「 え ・・・・ 」
「 ほ〜ら〜〜〜 」
「 あ あ〜〜 いててててて・・・・ ! 」
フランソワーズは 彼の右脚をもって開脚の手伝いをしたのだが ―
え うそ???
009の股関節って ・・・ 固定??
「 ほら〜〜 チカラ 抜いて? こうやって〜〜 」
「 ・・・ すっげ −−− 」
すら ・・・っとごく自然に180度 開く彼女の脚に
ジョーは ほれぼれ 、 いや ひたすら心底感心して 眺めているのだ!
ぜ 003 って。
・・・ やっぱ特別仕様なんだ〜〜
「 さあ いっしょに・・・ なに見てるの? 」
「 あ! い いえ ・・・ 」
「 ストレッチして身体をほぐしましょう? いきなりレッスンしたら
筋肉を傷めるわ 」
「 れ れ れっすん??? ぼ ぼくが??
」
「 そうよ。 俳優さんは身軽に動けなくちゃ 」
「 は はいゆう?? ぼくはそんなんじゃ ・・・ 」
「 はい 左右がむずかしいなら 前後・・・縦に開いてみて? 」
すと・・・っと 前後に180度、彼女の脚はすらり、と開く。
「 すっげ〜〜〜〜〜〜 」
「 すごくなんかないわ 誰でもできるのよ ほら こうして 」
「 ? い いててててて〜〜〜〜〜 あ 脚〜〜〜 もげるぅ〜〜〜 」
ジョ―の脚は けっこう長くてかっこいいのだが。
彼女はかなりのチカラで引っ張ったり 押したりしたのだが
かっちん こっちん
!? なんで??
これ・・・ ニンゲンの股関節なの?
どうやって生きてきた わけ?
「 ・・・ ねえ わざと逆らってる? 」
「 え?? なんで?? いって〜〜よ〜〜〜〜 もうむり〜〜〜 」
「 ・・・・ 」
彼の顔は真っ赤。 冷や汗までたらたら・・・ これはどうも < マジ > らしい。
世の中には こういうヒトもいるの ね ・・・
う〜〜〜ん ・・・
博士に頼んで再改造してもらった方が・・・
003は本気で思った・・・
「 あ〜 ストレッチがムズカシイなら ・・・
そうね なにか好きなダンスとか ある? ジャズダンスとか ヒップ・ホップとか 」
「 だ だ だんす?? ・・・ やったこと、ないデス。 」
「 は?? ねえ ジョー 真面目に。
ダンス・パーティとか あったでしょう? 学生時代に 」
「 ぼく 真面目です、島村ジョー 大真面目です
だんす ぱ〜 ?? ないっす そんなの なかったよ〜〜 」
「 う〜〜〜〜ん ・・・ じゃあ 一緒に動いてみましょうか 」
ね? と 彼女は彼に手を差し出した。
わ♪ わっはは〜〜〜〜ん
フランと〜〜 手 つないで〜〜〜 るん♪
な〜んのコトはない、二人はお手々つないでレッスン室をスキップ・スキップ〜〜
して回ったのだ ・・・
・・・ なんなのよ〜〜〜〜
信じられない〜〜〜〜
これじゃ 幼稚園、いえ ベビークラス じゃないのぉ〜〜〜
「 は〜い 上手にできましたね〜〜
じゃあ 今度は ウオーキング・ステップ。 いち に いち に
一緒に歩きましょう 元気にね〜〜 」
「 う? あ・・? お? 」
! も〜〜〜〜〜
なんだって同じ側の手脚がでるの???
も〜〜〜〜
フランソワーズは 心底呆れかえってしまった が。
ジョーは 外見とは裏腹に? 生粋のニホンジン。
盆踊り と 運動会でいやいややった花笠音頭 それに マイムマイム ・・
くらいがせいぜいの < 踊り体験 >、
そんな どこにでもいる・ニッポンの青少年 には いきなりダンス は無理なのだ。
「 はあ ・・・・ 」
「 あ あの? つぎは なにすれば 」
「 あ ああ ごめんなさい。 ダンスのレッスンはこれでお終いね。
次は ヴォイス・トレーニング ね 」
「 ぼ?? 」
「 あ〜〜 発声の練習。 グレート先生がきますよ〜 」
「 あ そうなんだ 」
「 だから ちょっと待っててね〜〜 」
「 は〜い あ フランソワーズせんせい 楽しかったです♪ 」
「 はいはい ・・・ ジョーくん、待っててね 」
「 はい 」
パタン。 ドアを閉めてから
はあ 〜〜〜〜〜 こりゃ 前途多難だわ ・・・
フランソワーズは ふか〜〜〜いため息を吐いたのであった。
「 ・・・・・ 」
その日の昼ごはん時 ― 009は リビングのソファで 潰れて いた。
「 おひるごはん〜〜 ・・・? あら どうしたの? 」
「 ・・・・・・ 」
「 え なに? 」
「 ・・・ しんでます ・・・ 」
「 へえ? グレートのトレーニングはキツかったのかしらねえ
ねえ お昼ご飯 なに食べたい? 」
「 ・・・ な なんでもいっす ・・・ 」
「 あらまあ。 あ グレート? お疲れさまあ 〜 」
俳優・グレート氏は 飄々と現れた。
「 おう マドモアゼル。 こちらさんは? 」
「 ええ 死んでる のですって 」
「 ほ〜〜う ・・・? このボーイは 未体験の事に関しては
甚だしく弱い ということかね
」
「 ― 009 の 最大ウィーク・ポイント ってことね! 」
「 左様。 009殺すのに銃はいらぬ、芸術で攻めればよい ってことだ 」
「 ふふふ そうかも〜〜〜
でもね スタジオの日本のトモダチは皆 いろいろ やるわよ?
ニホンジンだけど ジャズダンスやコンテも 」
「 吾輩の劇団にも優秀な若手が多いぞ。 ・・・ この御仁は特別かもな 」
「 そう ・・・ 大変ね グレート 」
「 ・・・ 」
名優氏は肩をすくめる 両手を広げてみせた。
「 ま。 それはともかく。 ランチにしようではないか 」
「 そうね ねえ 美味しいお茶 淹れてくださる
」
「 おうよ、姫君〜〜〜 」
ぴんぽ〜〜〜ん 玄関チャイムが鳴った
「 あら? は〜〜〜い ・・・ 大人だわ〜〜 」
フランソワーズは玄関に跳んでいった。
「 ほえ〜〜〜 ええお天気さんで。 ほい 差し入れやで〜〜〜 」
「 いらっしゃい〜〜 大人 嬉しい! でも どうして? 」
「 ほっほ〜〜 嬢ちゃん。 グレートはんが張り切っておったで
ワテも応援しよ、思いましてん。 ジョーはんは? 」
「 ダウン 」
「 ほへ? そないに激しいアクション・シーン ありまっか?
裟翁はんの御作に 」
「 うう〜〜ん ・・・ 基礎レッスンで ダウン 」
「 あいや〜〜〜 ま お昼にしまほ。
グレートは〜〜〜ん お茶 たのんまっせ〜〜〜〜 」
「 おうよ〜〜 ウーロン茶がよいかね 」
「 ハイナ。 オヤツもありまっせ〜〜 」
「 嬉しいわ。 博士〜〜〜 お昼にしましょう〜〜 」
フランソワーズは 書斎に声をかけた が。
「 ほい 庭におるよ。 」
テラスから 麦わら帽子をかぶった博士が戻ってきた。
「 あら お庭にいらしたのですか 」
「 うむ。 盆栽の剪定と庭掃除 をな。
あ〜〜〜〜 ・・・ 久々にグレートの発声練習が聞けたなあ 」
「 あら ・・・ 庭にまで聞こえてました? 」
「 うむ もっともグレートの声だけ だったがな 」
「 ふふふ・・・ 練習生は 伸びてますわ 」
「 あ はは ・・・・ 」
博士も 苦笑いである。
― わいわいと賑やかなランチ・タイムになった。
「 ん〜〜〜 んん〜〜〜〜 」
ソファで伸びてたヒトも ひたすら食べまくった。
「 美味しい! ねえ この栗 ? 」
「 ハイナ この土地の新栗でっせ〜〜 」
「 これは ほう〜〜〜 いい香だな。 松茸かい 」
博士は土瓶蒸し に目を細める。
「 ハイナ ギルモア先生。 これも土地のとれとれでっせ〜〜 」
「 和牛はいいねえ・・・ 最高だ 」
「 ほっほ〜〜 えげれす人もびっくり でっか
ジョーはん どうでっか〜〜 」
「 〜〜〜〜〜〜 んん え? 」
「 え じゃのうて。 美味しいでっか ききましてん 」
「 あ! うん なんもかんもおいし〜〜〜〜〜〜ですぅ〜〜〜〜〜 」
「 お気に入り ありまっか 」
「 へ? あ・・・・ ぜんぶ! み〜〜〜んな おいし〜ですぅ〜〜
あ これも 〜〜〜 んま〜〜〜 」
「 ・・・ この食欲魔神には松茸は勿体ないと思うぞ。 大人〜 」
「 ハイナ。 この地のシイタケ、ええですやん〜〜〜
チーズ焼き どうでっか〜〜〜 」
「 たべる〜〜〜〜〜!!!! 」
「 ねえ ・・・やっぱり無理じゃない? 」
黙々〜〜と箸を動かすジョーに視線を向け フランソワーズはこそ・・・っと
呟いた。
「 ・・・ うむ ・・・・ 」
〜〜〜〜♪♪ ♪
フランソワーズのスマホが鳴った。
「 あら 誰かしら。 ― え? アメリカから??
はろ〜〜〜 どしたの〜〜 え? 」
「 ジェットからだ〜〜 ねえ ねえ なんだって?? 」
「 そ〜なのよぉ〜〜 ええ グレートの発案でね ・・・
え? あら 来てくれるの? ジェロニモ Jr. も?
まあ〜〜〜 楽しみねえ〜〜〜 あ ちょっと待ってね 〜
ねえ グレート 」
フランソワーズはスマホを持ったまま 俳優氏を呼んだ。
「 はあん? なんだね。 新大陸からか 」
「 そ〜なの〜〜 ジェットも参加したいんですって。
ジェロニモ Jr. と一緒ですってさ 」
「 ふむ・・・ 大道具作成やら 音響や 照明 ・・・
仕事は山ほどある。 うぇるかむ、と伝えてくれたまえ。 」
「 は〜い 了解。 あ〜〜 ハロウ? あ 聞こえた? 」
「 ・・・・ あの さ ぼくのことは ・・・ 言わないで・・・ 」
ジョーは 蚊の鳴くよ〜な声で訴えているが。
「 え? そ〜なのよ〜〜〜 なんと〜〜〜 ジョーがね〜 」
「 ・・・ ああ ・・・・ 」
「 はい はい お待ちしてますわん じゃあね〜〜
うふふ ・・・ スタッフも増えて 楽しみね〜〜〜 」
スマホを置くと ジョーの想い人は にっこりと微笑んだのであった。
「 ・・・ ・・・・ 」
どよ〜〜〜ん ・・・
ランチで少しはリカバーした009は 再び落ち込んでしまった。
「 あら どうしたの? 美味しいランチで元気チャージ! でしょう? 」
「 あ う うん ・・・ でも 」
「 でも? 」
「 ・・・ 皆 来るのかなあ 」
「 え? ああ 楽しいじゃない?
そうだわ〜〜 アルベルトにも声 かけようかしら。
ねえ グレート〜〜〜 音響はアルベルトに任せない? 」
ああ ・・・ ジョーは ますます絶望的なため息を吐いていた・・・
基礎的なトレーニングと平行し、 脚本読み が始まった。
原作は勿論 シェイクスピアなのだが グレートの脚色で
少し変わった演出となっている。
「 〜〜〜 ::::: ・・・・・ ? 」
恋する青年の独白 ― なのだが。
はあ〜〜〜〜 ・・・・
演出家氏は ふか〜〜〜いため息を吐く。
「 ・・・ あ あの ぼく・・・ まちがえた?? 」
「 いいや。 ちゃんと脚本通り読んでいるよ、 < 読んで > ね。 」
「 そっか よかった〜〜 」
青年は 皮肉にも気づかずにこにこ・・・している。
「 あのなあ ・・・ ちょいと聞きたいのだが 」
「 はい? 」
「 my boy、お前さんは
恋 というものを したことがないのかね ? 」
「 え?? ・・・ あ あの ・・・ して マス ・・・ 」
「 は?? なんだって?? 」
「 ・・・ だから ぼく ・・・ いま 恋して マス ・・・ 」
「 だったら 恋するオトコの切ない気持ち、表現できるだろう? 」
「 ・・・ ぼく ・・・ 誰にも言えなくて ・・・ 」
「 はあ〜〜〜 忍ぶれど ・・・ で終わりか 」
「 ?? なに??
」
「 いや なんでもない。 ブレークだ、休憩しよう 」
「 わい! ちょっとコンビニ、行ってきていい? 」
「 かまわんよ 」
「 ありがと〜〜 イッテキマス〜〜〜 」
恋する青少年 は 嬉々として出かけていった ・・・
はあ〜〜〜〜〜 こりゃ 吾輩のメガネ違い か・・・
演出家氏 は アタマを抱えた。
― そして ・・・ 主演予定のカノジョを呼んだ。
「 マドモアゼル。 男役 を引き受けてくれ 」
「 え え え〜〜〜 ?! 」
「 タカラヅカ歌劇、 知っておるだろう? 」
「 ええ 大好き! わたしね〜〜 ○組のトップの××さんが〜〜 」
「 ストップ。 それならハナシが早い。
マドモアゼル、 ロミオを引き受けてくれ 」
「 じゃ じゃあ ジュリエットはどうするのよ〜〜〜 」
「 それは 吾輩がやる。 」
え〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ???
Last updated : 10,30,2018.
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************ 途中ですが
さあ どんな 『 ロミ・ジュリ 』 になるのかな?
以前書いた 『 木曜日 』 の 変形バージョン かも
ジョーは 全く芸術ダメ でしょうね (^^)
わたくし、 グレート氏のファンなんです☆