「 ・・・ ただいま。 」
オ−ト・ロックががちゃり、と開いてこの邸の女主人を迎えいれた。
「 ただいま。 すぴか・・・すばる? 」
玄関ホ-ルで フランソワ−ズはもう一度声を張り上げた。

「「 ・・・・ おかえりなさ〜い ・・・ お母さん ・・・ 」」

いつもなら飛び出してくる子供たち、でも今日はいやに遠くから
二人の声がひびいてくるだけだった。

「 ・・・? ・・・ 」
よいしょっと荷物の袋を持ち替え、フランソワ−ズはまた声をかけた。
「 すばる? すぴか? ・・・ どこにいるの。 」
「 おか〜さ〜ん ・・・ アタシたち、<本部屋>にいるよぉ〜〜 」
娘の甲高い声がぴんぴんと飛んできた。

・・・ 大人しくしていたのかしら。 まさか・・・あの部屋で騒いでないでしょうね。

手早くコ−トを脱ぐと、フランソワ−ズは荷物を持ったまま<本部屋>に急いだ。


<本部屋>
それは、初めは単なる納戸に近かった。
ギルモア博士が山と買い込んだ種々雑多な書籍類の保管場所だった。
そこに ・・・ メンバ−達が置いていった、それこそありとあらゆる言語の本が加わり、
ちょっとした図書室なみの<本部屋>ができあがった。
・・・ 尤も、教育上好ましくない類の雑誌も無造作に積まれていたが
これは ある日この邸の女主人に見つかり<焚書>の刑に処された。
博士の<専門書>は地下の研究室に置いていたので、本部屋は双子たちも
出入り自由にしてある。


「 ただいま。 オヤツがあるわよ。 ・・・ あら〜 ・・・ 」
「 お母さん! おかえりなさ〜い 」
本部屋のドアを開け ・・・ フランソワ−ズは絶句してしまった。
どうせ、読めそうな本を手当たり次第に書架から引き抜いているだろう、とは
覚悟していたのだが・・・
ふかふかの絨毯の上に開きっぱなしになり散乱していたのは ・・・ 数冊のアルバムだった。

「 わ〜い! オヤツってなに〜 ね〜お母さん。 」
「 すぴか。 そんなとこに登らないの。 あ〜あ・・・  」
大きな肘掛け椅子の背の上ですぴかが半分逆立ちをしている。
「 こうやって見ると〜 面白いんだもん。 」
「 ・・・椅子が傷むでしょ。 あらら・・・こんなに散らして・・・どこから出してきたの。」
どさり、と荷物を置いて母は床に散らばった写真を拾い集めた。
「 あそこ。 本棚の下の戸棚に入ってた。 ねえねえ、お母さん、オヤツ〜〜 」
「 はいはい。 さ、二人とも手を洗っていらっしゃい。 」
「 は〜い♪ 」
「 すばるも。 ・・・すばる? 」
椅子の背から飛び降りて洗面所に駆けていった姉娘とはうらはらに
弟の方は肘掛け椅子の前に座り込みじっとアルバムに見入っている。
「 ・・・あ、うん。 いま、行くよ。 オヤツ、なあに。」
「 シフォン・ケ-キ。 渡辺くんのお母さんに頂いたのよ。 」
「 わあ〜〜 ケ−キ♪ わ〜い♪ 」
「 美味しいわよ〜〜 さ、手を洗ってらっしゃい。 」
「 うんっ♪ 」
ようやく彼も腰をあげ、姉の後を追っていった。

・・・ やれやれ・・・

フランソワ−ズは溜息まじりに、床に膝をついて写真類を取りまとめた。
こんなもの・・・ 仕舞った場所も忘れていたわ。

古い写真といっても、この邸に住みだしてからのものばかり。
いわゆる家族の写真ばかりだったから、子供たちに見られても困ることはない。
それにしても・・・まあ・・・
ふと手にした一葉に目がゆき、フランソワ−ズは思わず微笑した。

ジョ−と自分が並んで写っている。
それは・・・いつのことだろう。
二人の間は微妙に空いていて、なんだかジョ−はひどく緊張した顔つきである。
所在無さ気にだらん、と両手を下げ困ったみたいにカメラを見つめている。
自分自身はにっこりと微笑んではいるが 楽しそうな雰囲気ではない。

これは <営業用にっこり> だわね。 

多分、この地に邸を構えて直のころ・・・ 勿論結婚前の写真だろう。

・・・ ふふふ。 こんな時代も・・・あったのねえ・・・

低く笑って彼女も肘掛け椅子に腰を下ろした。
大きな椅子である。

 ジョ−が捜してきた椅子。
<書斎>ってさ。 こういうカンジがいいだよな・・・
書き物机に椅子と同色のシェ−ドをつけたスタンド。
なんだかえらく楽しそうに ジョ−はそんなものを集めたのだ。
実際、博士の書斎は地下だしこの部屋に来るものは
たいていがその大振りな肘掛け椅子に収まるか ふかふかの絨毯に寝転がったりして
本を広げていた。


「「 おか〜さ〜ん オ・ヤ・ツ〜〜 」」
「 はいはい・・・ 」

可愛いデュエットに促され、フランソワ−ズはキッチンに急いだ。

「 はい・・・ 渡辺君のお母さんのケ−キよ。 」
「 わあい♪ 」
「 お母さん、それなあに。 」
フランソワ−ズが荷物から取り出したビンにすぴかが目を留めた。
「 これも・・・渡辺君のお母さんに頂いたの。
 白酒、ですって。 」
「 お酒? お父さんに? 」
「 お酒っていってもそんなに強くないそうよ。 」
「 ・・・ 飲んでみてもいい? 」
「 え・・・ う〜ん・・・ じゃあ、すこしだけね。 」
「 うん! 」
すぴかは神妙な顔をしてチロリ・・・と舐めるように白酒の味見をした。
「 ・・・ どう? 」
「 おいしい〜〜! お母さん、これ・・・すごくおいしい! アタシ、こういう味、大好き〜!」
「 ・・・ ふうん ・・・ 面白い味ね。 」
「 おいしいよぉ〜 ねえ、もうすこしいい? 」
「 だめ。 やっぱりお酒だもの、子供はちょっとだけで我慢。 」
「 つまんな〜い。 アタシ、ジュ−スとかより好きだなあ。 」
もくもくとケ−キを食べている弟の横で 姉娘な口を尖らせている。
「 大人になってからね。 さあ、シフォン・ケ-キ、食べなさい。 美味しいでしょ。 」
「 ケ−キも美味しいけどぉ・・・ しろざけ も美味しいな♪ 」

・・・あらら・・・。 このコの味覚って・・・。

子供らしくチョコレ−トやキャンディが好きなすばると
イカの燻製とかビ−フジャ−キ−に目のないすぴか。
一緒に生まれた姉弟なのに・・・ どうしてこんなに違うのだろう。

このごろどんどんと個性を見せ始めた我が子たちの成長ぶりに
フランソワ−ズは目を見張るおもいだった。



「 ・・・ あら。 ジョ−だわ? 」
オヤツを食べ終わった子供たちを、<お片付け>に本部屋へ連れ戻したとき、
表に聞きなれた車の音が聞こえてきた。

「 え〜! お父さん? わ〜〜おっかえりなさ〜〜いっ!! 」
母の呟きを聞きつけ、すばるは玄関に飛んでいってしまった。
「 お父さん? 今日は早いんだね。 お帰りなさい〜〜 」
仕舞いかけていたアルバムを放り出して すぴかも弟の後を追った。

あ〜あ・・・ 結局は片付かないのねえ・・・

拡げられたアルバムを片寄せ、フランソワ−ズもジョ−を迎えに出た。

「 ただいま。 雪だねえ・・・ 」
「「 お父さん、お帰りなさ〜い! 」」
「 はい、ただいま〜〜 」
左右から子供たちに飛びつかれ、それでもジョ−は大にこにこである。
「 お帰りなさい、ジョ−。 今日は早いのね。 」
「 フランソワ−ズ・・・ うん、たまには明るいうちに帰りたいからね・・・ 」
両手に双子をぶら下げたまま・・・ 
ジョ−とフランソワ−ズは熱い<ただいまのキス>を交わす。
これは島村家の習慣なので 子供たちも慣れっこである。

「 ねえねえ、お父さん。 僕たち〜 お写真をみてたんだ。 」
「 お父さんと〜お母さんがいっぱい写ってた。 ねえ、アタシ達がどうしていないの? 」
「 ・・・え ? 」
「 ほらほら・・・二人とも。 お父さん、お疲れなのよ。  
 これからお母さんたち、テイ−タイムだからその間に本部屋を片付けて? 」
「 なに、本部屋にいたの? 」
「 そうなのよ・・・ もう古いアルバムを引っ張り出して・・・大変。 」
「 ・・・へえ〜・・・ 」
「 さあ、お願いね? もう二年生なんだもの、<お片付け>できるわね。 」
「 ・・・ じゃあさ・・・ あとでお父さん、本部屋に来て? 」
しぶしぶすばるは父の手と離した。
「 アタシたち、<お片付け>しとくから・・・ 一緒にお写真、見て? 」
すぴかが熱心に父の顔を見上げる。
「 ああ・・・いいよ。 じゃあ、お父さんが行くまでに<お片付け>、頼むね。 」
「「 うんっ! 」」
元気に頷くと 双子は仲良く本部屋に駆けていった。

「 ・・・ あ〜もう・・・ あの子達って・・・ 一日中走ってるみたい。 」
「 ふふふ・・・元気が有り余ってるんだろ。 」
「 もう・・・溢れてるみたいよ。 ・・・さ、お茶を淹れるわ。 ケ−キがあるのよ。」
「 うん。 結構今日は冷えるね・・・ 」
ぴたりと寄り添って、背に腕を回し肩を抱き。
お父さんとお母さんは たちまち ジョ−とフランソワ−ズ に戻った。


「 ・・・ 美味しいね。 きみが焼いたの? 」
リビングに紅茶のいい香りがいっぱいにひろがっている。
ジョ−は フォ−クを止めて、御代わりのポットを持ってきた妻に振り向いた。
「 ううん・・・ 今日のは渡辺くんのお母さん製。 」
「 へえ・・・ もう、すっかりきみの味だよね。 このマカロンはきみだろ。 」
「 そうよ。 ジョ−、好きでしょ。 」
「 うん♪ この歯ごたえが・・・ いいなあ。 」
「 寒かったでしょ。 お茶の御代わりはいかが? 熱々よ。 」
「 ありがとう。 ・・・ ああ、まだ降ってる・・・ 」
「 ・・・え? あら・・・ 本当ね。 この季節にはめずらしいわね。 」
ジョ−の視線を追えば リビングの大きな窓ごしに白いものがふわふわと舞っているのが見える。
早春の淡雪とはいえ、やはりしんしんと冷え込んできた。
「 ・・・ 綺麗ね。 ここでは積もることもないけれど・・・ 」
「 ・・・ 好き? 」
「 え? 」
窓辺に立ったフランソワ−ズはジョ−の問いに振り返るとすぐ後ろに彼がいた。
ふわり、とジョ−の腕が彼女の身体に回された。

「 雪って・・・ 好きかい。 ぼくは・・・ 嫌いだったな。ずっと・・・ 」
「 ジョ− ・・・ 」
ことり、とジョ−は彼の頭をフランソワ−ズの髪埋めた。

「 ぼくは ・・・ 雪の中、教会の前で泣いていたそうだよ。 
 そんな話をきかされる前から、なんとなく雪って好きじゃなかったけどね。 」
「 ・・・・・ 」
フランソワ−ズは身体に纏わるジョ−の腕をそっと握った。
「 ずっとずっと・・・ 好きじゃなかった。 そう・・・ この身体になってからも。
 でも。 ・・・ でも、ね。
 きみは 知らなかったかもしれないけど。
 あの子達た生まれた朝も ・・・ こんな雪が降ってたんだ・・・ 」

彼の腕に力が入る。
耳元にささやく声に熱い吐息がまじってきた。

「 ぼくは ・・・ 雪の朝に ・・・ かあさんと別れたけれど
 あの子たちが・・・雪の朝にぼくの腕の中にやってきてくれた。
 それで・・・ あの日からぼくは ・・・ やっと 雪が好きになったよ。 」
「 ・・・ ジョ− ・・・。 」
「 今は こんな風にきみと眺める雪が大好きさ。 」
「 そうね・・・ そうね、ジョ−・・・ 」
フランソワ−ズは身体をずらし伸び上がってジョ−の熱い唇を受け取った。

・・・ 外は ふわふわぼたん雪。
束の間の冬景色は 夫婦二人に過去の幻影を見せていった。
それは 早春の気紛れ雪にも似てたちまちす・・・っと消え去ってしまう。

そう。 ・・・ いまは。
いま、自分の心はこんなにも暖かい。
・・・ きみが。 あなたが・・・。 ・・・ ここにいてくれるから・・・・







 - がった〜〜〜ん!!
 - ・・・ わ〜〜〜 うぇ〜〜ん〜〜〜

なにやら物が落ちた音がして・・・・
ほどなくしてすばるの泣き声が響いてきた。

な、なに???
どうした???

両親は顔を見あわせ、ともかく大急ぎで本部屋に走っていった。


「 すばる! すぴか・・・ どうしたのっ?? 」
「 おい・・・ 大丈夫か? 」

ばん、とドアあけ本部屋に飛び込んだ父と母の目の前では・・・

「 ・・・ いたぁい・・・ 」
床にぺったり座り込んだすぴかがおでこをさすっている。
側には ・・・ 埃まみれのアルバムと薄い辞書が転がっており、
例の肘掛け椅子が仰向けにひっくり返っていた。

そして・・・ その向こうですばるがやはり床に座って・・・わぁわぁ泣いている。

「 どうしたの? ・・・これ・・・ 落ちてきたの?? あ〜らら・・・おでこ、擦りむけてるわ・・ 」
「 すばる? どうした、どこか・・・打ったのかい? 」
「 ・・・ あのね ・・・ お片付けしてて・・・ 上の棚にもう一冊アルバムが見えたから
 一緒に仕舞おうって思って ・・・ 」
「 ・・・ もしかして、すぴか。 あなた、肘掛け椅子の背中に登ったの・・・? 」
「 ・・・ うん。 もうちょっと・・・って思って背伸びしたら・・・がったん〜〜って
 椅子がひっくり返ったの。 アタシ、上手に飛び降りたんだけど・・・ぽっこ〜んって本が・・・ 」
「 まあ・・・! 」
「 おい、これ・・・ こんな重いのがおでこにぶつかったのかい? 」
ジョ−は落ちている古いアルバムをよいしょ、と持ち上げた。
「 ううん ・・・ こっちのちっちゃい本・・・ いたたた・・・ 」
「 まあまあ・・・。 それで、すばるは? 」
フランソワ−ズは呆れ顔で娘のおでこにそっとキスをした。
「 すばる? びっくりしただけじゃない? 」
「 な ・・・ 。 おい、すばる? 」 
「 ・・・おとうさ〜〜ん ・・・ すぴかが ・・・ 痛いって〜〜 」
抱き起こしてくれた父に、すばるはしっかりとしがみついてしまった。
「 すばる! ほら、すぴかは泣いてないよ? もう平気だって・・・ 」
「 ・・・うっく ・・・・」
「 さあ・・ もう涙拭いて。 男の子がいつまでも可笑しいぞ? 」
「 うっく・・・だって・・・だって〜〜 」
「 ・・・すばる・・・ ごめん・・・ 」
父の腕の中でイヤイヤしている弟に すぴかはそうっとおでこをくっつけた。
「 ・・・アタシ、もう平気だから。 ちっとも痛くないから、さ ・・・ 」
「 ・・・ ほんとう ・・・? 」
「 うん♪ ほら・・・ アタシ、笑ってるでしょ。 ごめんね〜 すばる。」
「 ・・・ うん ・・・ 」
姉とちいさなおでこをくっ付け合って 弟はようやくにっこりと笑顔をみせた。

・・・ やれやれ。 もう・・・ 
ま、仲が良くていいじゃないか・・・

黙ってみていた両親はちょっとフクザツは溜息をもらした。

「 ・・・あら。 こんなところに・・・
 あなた達・・・ここでお菓子を食べてはダメって言ってるでしょう? 」
フランソワ−ズは床から、埃と一緒に落ちているチョコレ−トの包み紙を拾い上げた。
「 ?? 僕たちじゃないよう〜〜 」
「 ・・・ ほかに誰がココでチョコレ−トなんか食べるの? 」
「 だって 僕達じゃないもん。 」
「 さっきまで なかったもん。 」
「 ・・・あ。 それ・・・ 」
母の眉間に少々縦ジワが寄りだしたとき、端からジョ−が遠慮がちに口をはさんだ。
「 まあ〜 ジョ−なの? 」
「 いや・・・あ、・・・ うん。 ココで食べたんじゃない、けど。 
 それ・・・僕のなんだ。 」
「 ・・・どういうこと? 」
「 それ・・・覚えてない? ずっと・・・前のなんだけど。 」
「 これ・・・? 」

フランソワ−ズは改めて手にしていた小さな包み紙を見つめた。
・・・確かに最近のモノではなさそうだ。
なんとなく色褪せているし、あまり見かけない模様である。

「 ・・・前に・・・見たことあるかもしれないわ・・・ 」
「 きみがくれたんだけど。 」
「 わたしが・・・? いつ・・・ あ! もしかして・・・ 」
「 ・・・思い出してくれた? これ・・・きみがぼくに初めてくれたチョコなんだ。
 その・・・ ヴァレンタインの日に、さ・・・。 」
「 ・・・ そうね、そうね。 ・・・そうだったわ・・・ 」

ジョ−は前髪の陰で真っ赤になり、妻の手にある古い包み紙ばかりみつめている。
そう・・・ 夫はそのありふれた包み紙を後生大事に取っておいたのだ。

「 ジョ−・・・・ 」
「 ごめん。 可笑しいよね、捨てて? 」
「 ・・・ ううん。 これ・・・わたしの宝モノだわ。 」
フラソワ−ズはジョ−の手を取り、一緒にその包み紙を握った。
「 ぼく達の ・・・ 宝物さ。 」
「 ・・・・・ 」


「 ねえねえ! お父さん、お母さん〜〜 ! 」
「 これ! 僕たち、どこにいるの〜 」
せっかくの熱々ム−ドに チビどもは遠慮なく水をぶっかける。

「 ・・・え ・・・? 」
「 これ! ほら・・・ お父さんとお母さんの結婚式〜〜 」
「 二人ばっかり〜〜。 アタシとすばるはどこにいるの。
 あ、寝てたのかな〜〜 」

ばん、と双子が開いた古いアルバムには・・・
幸せいっぱいの花婿・花嫁が零れる笑みを振りまいている。

「 あら・・・。 どこって・・・
 これはお母さん達の結婚式よ? あなた達はまだ生まれてなかったの。 」
「 え〜〜 うそ〜 」
「 お母さん達・・・【できちゃった・こん】 じゃないの? 」
「 ・・・ できちゃった・・・こん ??? 」
思わず真っ赤になって絶句した母に 子供たちは当たり前の顔をしている。
「 そう。 ようこちゃんちも〜 まっくんちも〜 <できちゃった・こん>なんだって。
 だからね〜 ようこちゃんなんて結婚式のお写真に写ってるよ。 」
「 ねえねえ、僕たちはどこにいるの・・・
 あ! わかった〜〜 お母さんの〜このふわふわのスカ−トの中だよ!」
「 ああ、そっか♪ 」

ちょっ・・・! ジョ−〜〜 なんとか言ってよ!
この時・・・ 結婚式の時は正真正銘<二人だけ>だったんですからね!

・・・ そうだっけ? 

そうだっけ・・・って・・・!
結婚して・・・ 初めてのお正月にはキモノで初詣に行ったじゃない!

・・・・・ ・・・・・

ジョ−? ねえ、ジョ−ったら。 ・・・ 009! 応答願います〜〜
もしも〜〜し???


ご満悦の双子たちの前で 003は必死で脳波通信を送り続けたが・・・
すぐ目の前にいる009からは なんの答えも返ってこなかった。

・・・ 009? もしも〜し??

・・・・・・・・・

・・・ 003は虚しく 空白 を受信し続けていた。



  
 
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Last updated: 03,21,2006.


    **** こそこそ言い訳
    最後の行は 93二次創作の、あの!古典的名作からちょっと変えて引用させて頂きました。<(_ _)>