『 ― 愛 を! ― (2) ― 』
****** おことわり ******
たびたび申しますが・・・
このお話は 009 RE:CYBORG の 逆転版です。
映画未見の方 ごめんなさい。
アンチ・REの方 引き返すことをお勧めします。
RE:93 なのでマッパなヒトとかあまり出てきません。
それでも おっけ〜♪ という方のみ どうぞ・・・
ゴ −−−−− ・・・・・ 爆音がビリビリと窓ガラスを揺する。
大型輸送機はずっと東上を続け ― 夜の区域に侵入しつつある。
搭乗者はごく少ない。 パイロットの他、数名だ。
ジョーはコクピットに席を占めてはいるが 今回、操縦桿は握っていない。
彼は 大きな装置に腰掛け特殊な視力補強装置を顔に当てている。
≪ イワン ・・・? 聞こえるかい ≫
≪ ・・ ウン。 じょー、君ダネ? ≫
ほんの少しだけ間を置いて スーパーベビーからのテレパシーが飛んできた。
≪ そうだよ。 ・・・ この日がきてしまったね。 ≫
≪ ヘエ ・・・? 君ハふらんそわーずニ会エルノタ嬉シクナイノカイ? ≫
≪ ・・・ こんな形での再会は 嬉しくなんかないよ。
それに ・・・ 今回は無理矢理覚醒させるわけだから ・・・ ≫
≪ サラニ彼女ノ負荷ニナルカモシレナイ。 ≫
≪ ― イワン ! ≫
≪ 事実ダモノ、仕方ナイヨ。 ≫
≪ ・・・それは そうだけど ・・・・ ≫
ジョーは一旦 通信を切った。
三年毎の覚醒と記憶のリセット ― それはジョーとフランソワーズの共に生きる証 となっていた。
きっと アナタが起こしてね ・・・ その言葉を残し、彼女が最初の < 眠り > に入ったのは
何年前のことだったろう。
< 眠り >といっても 実際に眠っているわけではない。
現実に普通の10代の少女として市井の生活をしているだけだ。
しかし 彼女自身はサイボーグであることや 仲間達のこと ― ジョーの存在すら忘れて
日々を送ってゆくことになる。 二人にとっては < 眠っている > のと同じだった。
その < 眠り > の期間が満了する時こそが めざめ なのだ。
約束通りジョーは 彼女の目覚めの時にはいつも側にいた。
「 ・・・ う ・・・ ん ・・・? 」
彼女の瞼がぴくり、と動き ほんのわずかに身じろぎをする。
「 ・・・ ! 」
ジョーは 彼女の頭部に付けられた端子から送られてくるデータをチェックしつつ
細心の注意を払い、 彼女の様子を見守っている。
「 ・・・ こ ・・・ こ ・・・? 」
今度は 腕がゆっくりと動きだす。
「 ― 気がついたかい? フランソワーズ ・・・? 」
「 ・・・ あ ・・・・? 」
見開かれた碧い瞳が 次第にはっきりと焦点の合った光を結び始める。
「 ・・・ フラン ・・・ 」
「 ・・・ まあ ジョー ・・・ 」
「 フラン! ああ そうだよ。 」
「 ジョー ・・・ ジョー なのね? 」
「 うん ・・・ そうだよ 」
ジョーは涙と吹き飛ばしつつ うんうんと頷き、彼女の手をにぎる。
「 ・・・ わたし ・・・ また 目覚めたの ね? 」
「 ・・・ ウン ・・・ 」
「 まあ? なんて顔 しているの? ・・・ ねえ ? 」
「 ・・・ うん? 」
「 少し 屈んで? 」
「 うん? ・・・ こんな風でいい ? 」
「 ええ。 お は よ う ・・・ ジョー ♪ 」
するり、と白い手が伸びてきて ジョーの首に絡まる。
「 ! ・・・ おはよう フランソワーズ ・・・! 」
「 起こしてくれて ・・・ ありがとう ・・・ 」
「 ・・・ ウン ・・・ 」
「 何て顔、してるの。 しばらく一緒にいられる ・・・ でしょう? 」
「 ・・・ そ そうだ ね ・・・ 」
「 笑って ジョー。 今だけでも ・・・ 次の<眠り>の 楽しい思い出のために・・・ 」
「 フランソワーズ ・・・ 」
「 さあ 起こして? わたしの王子さま♪ 」
「 ・・・ どうぞ? ぼくの眠り姫。 」
彼女はゆっくりと身を起こし ・・・ そのままジョーに抱きついた。
― そして二人は 彼女が<次の三年間> に出発するまでの数日、蜜月を過す。
・・・ そんな繰り返しが 何回続いただろう ・・・
ジョーはぼんやりと考える。
耳をつんざく輸送機のエンジン音も彼のもの想いの邪魔にはならないらしい。
彼女の現在位置は確認できた。
― カチ。 彼は視覚補強装置を外した。
ちらり、と見たコンソールの計器類は 彼に目的地が近いことを告げていた。
今回は ・・・ いつもとは ちがう。
強制覚醒してもはたして彼女は <思い出す> だろうか。
いや それよりも強制覚醒によって
なにか ― 彼女の精神に悪影響を及ぼすのではないか・・・
だったらいっそ・・・今のままの彼女を
ぼく達が秘密裏に護る、 という選択肢もあるな。
「 けど。 そんなコトしたのがバレたら・・・またすげ〜 怒るだろうなあ ・・・
それよりなにより 彼女ナシでのミッションは ― 特に今回みたいな件は 不可能だ。
だから どうしても。 < 起きて > もらわないと。 」
ジョーはぶつぶつつぶやいていた独り言を止めた。 そして精神を集中する。
≪ ・・・ イワン ・・・ ? 聞こえるかな イワン ≫
すでに脳波通信の稼働区域は越えてしまっているが ジョーはイワンへの念をとばし
イワンからのコンタクトを期待したのだ。
≪ ナンダイ じょー ≫
待つほどもなく ジョーの心にイワンの <声> が飛び込んできた。
≪ あ・・・ 聞こえるかい。 随分離れてしまったけれど ≫
≪ 僕ノちからニハ 物理的距離ハ無関係ダヨ。 ・・・ ふらんそわーずノコトダネ? ≫
相変わらずヒトを食ったような物言いだが この際、気にしないことにした。
≪ そうなんだ。 彼女に一番負荷をかけない方法で覚醒しないと ・・・ ≫
≪ 強制覚醒ダカラネ。 負荷ガカカラナイコトハアリエナイヨ。 ≫
≪ ・・・ そんな ・・・ ≫
≪ 仕方ナイダロ。 じょー、君ガ起コセバ 少シハ ・・・ ≫
≪ そう・・・ なのかい ≫
≪ イヤ。 君ノ希望的観測ヲ言葉ニシテミタダケ。 ≫
≪ おい イワン!! ≫
≪ アハ ・・・ ゴメンネ。 チョットカラカッタダケダヨ。
彼女ノ現地点ノ座標ヲ 送ッテクレルカイ。 マズじぇろにもヲソコ二飛バス。 ≫
≪ 飛ばす? ・・・ ああ テレポートするんだね。
でも今 ・・・彼は機上のヒトだよ、日本に向かっている最中・・・ ≫
≪ コノ際、仕方ナイサ。 次ニ −−−− ≫
ジョーはイワンの作戦に集中した。
ゴ ーーーーーー・・・・・! 輸送機は爆音を撒き散らしつつ 夜の領域を滑空してゆく。
ガシャーーーーーン ・・・・ ド −−−−−ン ・・・! グワッシャ ・・・・・
きゃ〜〜〜 !! 助けて 〜〜 うわぁ〜〜〜〜 あ〜〜〜!!!
高層ビルの展望台は文字通り阿鼻叫喚の坩堝 ( るつぼ ) だった。
そんなに混雑していなかったのが唯一の救いで、 見回した限りでは重傷の怪我人はいない。
ただ 皆パニックになりなんとかビルから脱出しようと右往左往している。
だめだ! エレベーターは全部止まっている!
え〜〜 階段で降りろっていうのか!? ここは 51階だぞ!
・・・ なんか・・・爆発物だって。 現場は ・・・ 44階らしいって ・・・
ここ ・・・ 崩れるんじゃない?
展望台に残された人々は次第に集まりはじめた。
中にこの階のガードマンが数人いたのが救いだった。
「 みなさん! 階下 ( した ) へ降りるのは危険です! 途中で階段が崩れている可能性もある。
屋上に出て救援を待ちましょう! 」
屋上まででも 5階はある。 しかし今はそれしか方法がなかった。
人々は互いに助け合いつつ・・・若者は自発的に老人や子供をおんぶした。
「 ― こっちよ! 」
亜麻色の髪の若い女性が りんとした態度で非常口を示した。
「 俺が支えている。 早く 上がれ。 」
いつの間に現れたのか 屈強な巨躯の持ち主が非常口をがっしりと押さえている。
「 ・・・ あなた は? ガードマンさんですか? 」
「 ちがう。 しかしお前を護りにきた。 ― ここを上がれ! 」
「 ・・・ わたし ・・・・ あなたを 知ってる ? ・・・ いえ! 今は避難が先だわ!
みなさん! ここから屋上へ逃げましょう! 」
「 おっしゃあ〜〜〜 よぉ〜〜し! さあ 婆さん、おんぶしな! 階段のぼるよっ! 」
「 ・・・ 兄ちゃん ・・・ すまんです すまんです・・・ 懐中電灯で足元、照らすから ・・・ 」
「 サンキュ! 行くぜ! 」
「 坊主〜 オレにかじりついてろ! 」
「 う うん! おにいちゃん! 」
暗い灯しかない非常階段を 人々は必死に登ってゆく。
「 さあ お嬢さん、あなたも逃げなさい。 」
「 ガードマンさん ・・・ はい。 あら? あの大きなヒトは・・・? 」
「 うん? ああ さっき怪我人をおぶって上がって行ったようです。 」
「 そうですか。 よかった ・・・ 」
亜麻色の髪の乙女は ガードマンと殿 ( しんがり ) を務めて屋上に向かった。
ブワ −−−−−− ・・・・・! ザザザザ −−−−− ・・・・!
「 きゃあ〜〜〜 とばされる 〜〜〜 」
「 もっとこっちにこい! 皆で固まって! 」
高層ビルの屋上はごうごうと強風が吹きぬけている。
時折 まだ階下から小さな爆発音も響いてきて 人々はその度にびく・・・っと震えた。
「 ― さっき救助を要請したが ・・・ はたして ・・・ 」
「 うむ。 恐らくトウキョウ消防庁 か 自衛隊 に要請しないと無理 ・・・ 」
ガードマンたちは救出の手立てや人々の安全確保に必死だ。
「 ― 来る ・・・! 」
最後に屋上に避難してきた亜麻色の髪の女性が低く呟いた。
「 え? なにが。 」
隣の女性が聞き返したか 彼女はただ一心に空を見つめている・・・ 真っ暗な空を。
「 ・・・ 誰 ・・・? わたしを呼ぶのは ・・・ だれ ・・・?
・・・え ?? あ ・・・ わたし ・・・ 知ってる?
この声 ・・・ この暖かい声 ・・・
― < あの声 > とは全然ちがう わ。 自爆を命じた・あの声 とは・・・
誰 ・・・ ねえ ここに ・・・ 来るの?
顔 ・・・ 見せて? あなた 誰? 顔を見たい ・・の ・・・
・・・! あなた ・・・ わたし、しってる ・・・?
この瞳 ・・・ 大地の色の ひとみ ・・・
この声 ・・・ 風よりも強く やさしい ・・・
― あなた ・・・ は ・・・
「 ― ・・・・ あッ !? 」
彼女は一瞬 小さな悲鳴をあげ、顔に両手を当てて蹲った。
「 !? どうしたの? 大丈夫!? 」
「 ・・・ 目 ・・・ 目が ・・・ 」
「 目?? 目がどうかしたの?? あ! なにか落ちてきてぶつかったのかしら。 」
「 ・・・ ちが ・・・ 目の奥・・・ 頭の中が ・・・ 耳 耳が ・・・ 」
「 え?? 今度は 耳? ねえ 大丈夫?? 」
「 ― 来る ・・・ 来るわ! 」
「 なにが ・・・?? 」
周囲の困惑など全く意に介さず、 彼女はすっと立ち上がり天を仰ぐ。
「 もうすぐ救助の飛行機が来ます。 気を強く持って待ちましょう。 」
「 え・・・ だってなにも ・・・ 見えないぞ? 」
「 連絡きてないんだけど ・・・ 君はどうして 」
恐怖に固まっていた人々の顔に少し生気が浮かんできた。
彼女は集団を離れ すたすたと屋上の中央に進みでた。
−−− ここ よ。 わたし は ここ。 −−−
暖かい色の瞳と くり色の髪をした ― アナタ ・・・
柱の影には ひっそりと巨躯の男が彼女を見守っている。
「 了解。 20:00に降下します。 」
ジョーはパイロットに告げると コンソール前の席から立ち上がった。
「 〇〇ビルの屋上に 一般市民が救助を求めています。
そちらをお願いします。 はい 詳しい座標は ― 今手元に送りました。 」
「 ― ありがとう! 了解! 」
ジョーはごく普通の足取りでコクピットから後部ハッチへと歩いてゆく。
≪ イワン ・・・ ! 聞いてくれ。 ぼくは今から − 降下する。 ≫
≪ ワカッタヨ、。 大丈夫、彼女ハチャント覚醒シテイル。 君ヲ受ケ止メテクレルヨ。 ≫
≪ あは・・? 彼女が? うわあ〜〜 大丈夫かなあ ・・・
ま、いいさ。 覚醒しているのなら ― 彼女を目標に 飛ぶよ。 ≫
≪ じぇろにもハサッキアノびるニてれぽーとシタヨ! 彼ガ助ッ人シテクレル! ≫
≪ ― まあ いいさ。 空中で加速かけてイッキに降りる! ≫
ゴガ −−−−−−−−− !! ゴ −−−−− ・・・・!
ジョーはすたすたと後部デッキに近づき ― いささかの躊躇いものなくさっさと進んでゆく。
≪ 三年にはまだチョット早いけど。 フラン〜〜〜 待っててくれ ・・・ ! ≫
カンカン カン ・・・ カン カンカン ・・・!
足音高く彼は最後尾のハッチを開き ― 夜の空という眼下に広がる<海>を眺める。
「 ― あぶないっ!! 東経 ××° 北緯 △△°に、 誤差 ― 修正 ! 」
・・・ え? ・・・ な なんなの?
今 わたし ・・・何を言ったの ・・・?
咄嗟に口から飛び出した言葉に 発言者本人が驚愕している。
「 ・・・ わ わたし ・・・ あ。 み 見える ・・・! ジョルジュ???
ううん 違う ・・・ 似てるけど 違う・・・!
あれは ― あの懐かしい姿は ・・・!
・・・・ ジョー ・・・・!!!
バチ っとなにか硬質な音が耳の奥で爆ぜた。
そして 彼女は ― 彼女の頭の中には記憶と情報が洪水のように噴き上げてきた。
「 ― わたし ・・・ そう よ! わたし、 わたしは サイボーグ003。 」
フランソワーズはしばらく瞑目していたが やがてゆっくりと顔を上げた。
今 ・・・ 彼女の碧い瞳には 強い意志の光が漲っている。
「 ジェロニモ Jr! ジョーが降下してくるわ! 」
彼女は 柱の陰に身を潜めている巨人に声をかけた。
巨人は 一瞬躊躇ったがすぐに彼女の元へと大股で歩いてきた。
≪ 003。 そう呼んでいいか。 ≫
≪ ええ。 わたしは視聴覚強化サイボーグ 003 よ。 ≫
≪ むう ・・・ 待っていた。 ≫
≪ ふふ ・・・ お待たせしました ≫
ええ ー 思い出した わ。ちゃんと ・・・・
アナタは 005。 怪力の持ち主ね。
「 むう ・・・ それでどうする? 」
「 ジョーに ここを目標に降りて、と伝えるわ。
そして ― わたしが <見つける> から。 アナタはわたし達を支えて! 」
「 ムウ。 」
「 あの高度だと ・・・ かなり難しいけど。 大丈夫、彼を信じましょう。
だって彼は 009。 一番優秀なサイボーグですものね。 」
「 ・・・ むう ・・・ 」
「 ん? まあ ・・・ 見て! ん 〜〜〜〜 ・・・・ あ。 」
フランソワーズは 夜空の一点を凝視している。
「 ― ・・・ 来た わ! ・・・ みつけた・・!
≪ ジョー ! ここよ ! ≫
0.1秒ほどの間があって 懐かしい<声>がフランソワーズの脳内に響く。
≪ ― フラン! 思い出したんだね!? ≫
≪ ええ ・・・ ねえ? 今回は随分と荒っぽい覚醒だわねえ・・・ ≫
≪ あ ・・・ ご ごめん ・・・あの 非常時なんだ。 ≫
≪ 知ってるわ。 自爆テロ でしょう? ≫
≪ ああ。 見てごらん。 この西新宿の高層ビル群だけじゃない。
あそこ ― 六本木・ヒルズ も ・・・ ≫
≪ ― ええ ・・・・ ≫
フランソワーズの深い溜息を ジョーは脳波通信で拾った。
≪ ど どうしたのかい ・・・? ≫
「 先 越されちゃった ・・・ 」
いきなり 彼女は通常の音声会話に切り替えた。
≪ なんだ??? ≫
≪ わたしが あそこにいたかもしれないのに ・・・ ≫
≪ え?? なんだって?? ≫
≪ ふふふ なんでもないってば。 それよりも ・・・ わたしが見える? ≫
≪ え〜と・・・・ レーダースコープがないダメかな〜 ≫
≪ 了解。 今から詳しい座標を送るわ。 目標にして ― 飛んできて。
わたし ― 受け止めるわ! ≫
≪ そ そんなの無理だよ〜〜 ≫
≪ へえ〜〜 ?? 最新型が何いってるのよ? ≫
≪ フラン〜〜〜 ぼくはもう < 最新型 > じゃないんだ。
それにね、 無理 なのはきみの方! ぼくを受け止める、なんて暴挙だぜ? ≫
≪ 大丈夫 わたし、しっかり覚醒したわ。 ジェロニモ Jr.も支えてくれるわ。
さあ ジョー! さっき送った座標めがけて ― きて ! ≫
≪ 了〜〜解! ふふふ・・・ きみってすご〜く 積極的なんだねえ? ≫
≪ ・・? あ! ジョー 〜〜〜〜 !!!!! ≫
彼女は一瞬、きょとんとしていたが すぐにジョーの際どいジョークに気が付き 耳の付け根まで
真っ赤になった。
≪ あは ・・・ごめんごめん♪ ちょっとジョーク〜〜 おっと・・・それは後だ。
じゃ 頼む な。 ≫
ジョーは黒尽くめ ― 革ジャンもスボンも手袋も 全身が黒だ。
≪ ねえ ジョー・・・ あなた、 防護服じゃないのね。 ≫
≪ うん。 アレはちょっと・・・目立ちすぎるから。 それじゃ ・・・! ≫
≪ オッケー〜〜 さあ どうぞ? ≫
・・・・瞬間 空を横切った姿は、そのままフラソワーズが居たビルに一直線に降下してくる。
「 ・・・・ んん 〜〜〜〜 さすがね、ジョー。 予定コースぴったりだわ。 」
「 うむ。 」
屋上の隅で 二人は上空を見つめ続けている。
「 ・・・ あ!! 」
「 どうした、 003? 」
「 風が ・・・ このビルからの爆風で ジョーの落下コースが ― ズレてしまったわ! 」
「 うむ? おい 003?! なにをするつもりだ?」
突然 ビルの端から中央の消火栓へと彼女は走った。 頑丈そうなワイヤー入りのホースを引き出す。
「 コレ・・・を! ジェロニモ Jr. お願い、支えていて !
わたしは これを掴んで ― ジョーを抱きとめるから。 」
「 003。 それは とても危険だ。 」
「 大丈夫。 アナタが支えていてくれるから。 行くわ! 」
ちらり、とジェロニモを振り返ってからフランソワーズは ビルの先端から真っ暗な空を見つめる。
ウェストから肩にかけて 長いホースを絡め、その元はしっかりとビル自体に固定。
ビルの端に立つジェロニモ Jr. がしっかりとホースを踏みしめ微動だにしない。
ジョー ・・・! わたし、めがけて ・・・ 降下してきて!
≪ ・・・ き きこえる か・・・? こちら 009! ≫
ジョーからの脳波通信が飛び込んでくる。
≪ 降下のコースが気流に押されてズレてしまった! ≫
≪ 了解しています。 こちらからも <飛び>ますので 合流してください。 ≫
≪ と 飛ぶ?? き きみが かい?? ≫
≪ ええ。 ジョーのコース、トレースできたわ! だから ≫
≪ うお・・・ やるなあ。 ぼくはこのままの落下コースを維持する。 ≫
≪ 了解! 003と005はスタンバイ オッケーです! 出ます! ≫
≪ ありがとう! それじゃ のちほど〜〜 ≫
ゴ −−−−−−− ・・・・・!
風を切って落下してくるジョーの軌跡めざし、 フランソワーズは 跳んだ ・・・!
フランソワーズ −−−−− ・・・・・・!
・・・・・ −−−−− ジョー 〜〜〜 !
二人の落下の軌跡が ぴたり、と一点で交わった。
・・・ むう ・・・・ ッ !!
ぐん! とワイヤーが伸び、大きな力が伝わってくる。
ジェロニモ Jr. はがっしりと脚を踏ん張って ワイヤーを支える。
グワ −−−−− ・・・・ ン ・・・・!!
ワイヤーは 急に新しい力が加わったことにより、左右に大きく振れ始めた。
「 う ・・・! くゥ 〜〜〜〜 ・・・! 」
「 フランっ! だ 大丈夫 か !? 」
ワイヤーに、 いや 彼女に飛びつき ジョーはそれでも彼女を心配する余裕がある。
「 う ・・・・ うう ・・・ん ・・・ くゥ・・・ ! 」
「 ごめん! ぼくに掴まって〜〜 だんだん揺れは小さくなるよ。 」
「 ・・・え ええ ・・・ ふぅ 〜〜〜 」
右に左に 二人を大きく振上げていたワイヤーは 次第にその動きを小さくしてゆく。
「 ・・・ ジョー ・・・ やっと 会えたわ! 」
「 フラン! フランソワーズ ・・・! 無事で よかった! 」
「 あなたこそ・・・ ホントに無茶なひとねえ・・・ 」
「 あ〜〜 それはきみのことだろ〜〜 まさかきみが 飛ぶなんて〜 」
「 うふふ ・・・ ジョーに抱きついた だけ♪ 」
「 あっは ・・・ うん、 ぼくはきみを抱き上げた だけ さ♪ 」
「 んんんん 〜〜〜〜〜〜〜 ・・・! 」
二人はワイヤーにぶら下がったまま ― 熱いキスを交わした。
「 ・・・・んふ ・・・・ 変わらないのね、 ジョー。 」
「 き きみは ・・・ ちょっと若くなった?? 」
「 ううん ・・・ 三年分、 おばあちゃんになっただけ よ。」
≪ おい! 引き上げるぞ! ≫
屋上の彼から相変わらずぶっきらぼうな返事が届いた。
「 あ〜〜 ごめん!!! ぼく ・・・・ここじゃ飛べないんで 」
「 うふ♪ ごめんなさ〜〜い 〜 」
「 へへへ・・・ もうすぐ揺れの幅がうんと狭まるから ― その時に引き上げくれ〜〜 」
≪ 了解 。 ≫
― ぐい ぐい ぐい −−−−−!!!
足元の地面が 少し揺れた。
しかしワイヤーにぶら下がった二人は無事に引き上げられていった。
バラバラバラ ・・・・ ゴ −−−−−・・・・!
輸送機は屋上に避難していた人々を救助・収容すると、すぐにトンボ返りで発進していった。
「 ・・・ よかった ・・・ 」
フランソワーズは 柱の陰からその様子を見守っていた。
「 ふう ・・・ なんとかなった ね。 」
ジョーが こそ・・・っと近づいてきた。
「 ええ ・・・ なんとか ね。 もう ・・・・ 本当に無茶な人ねえ・・・ 」
「 あは。 それはきみの方だろう? でも ― ありがとう! 」
二人はじっと見つめあう。 夜の帳の中 お互いの瞳だけが炯々と輝いている。
「 きみ だね。 フランソワーズ。 」
「 ええ。 ジョー、あなた ね ・・・ 」
どちらともなく 腕を絡めあい 引き寄せあい ・・・
お帰り。 フランソワーズ
ジョー ただいま やっとあなたの腕の中に・・・
重ねた唇からは 熱い吐息が漏れる。
ふううう ・・・・・ はあぁぁぁ ・・・・ んんんん ・・・・ くうぅぅぅ ・・・
二人は名残惜しそうに 唇を離した。
「 ・・・ ジョルジュ? 今日はわたしがリフトしたわね? 」
「 ― え ? ・・・きみ その ・・・ジョルジュのこと・・・ 覚えて・・・いるんだ? 」
「 あら。 彼とはずっと ・・・ ず〜〜〜っと 一緒 だったもの。 」
「 うん ・・・ そうだった ね。 きみの側に居たくて・・・イワンに頼んだんだ。
きみにぼくのイメージを送ってくれって ・・・ でも目覚めたときにはすっかり忘れているだろう
って言われていたんだ。 」
「 そうだったの ・・・ 」
「 ウン。 そして今回まで ― きみは目ざめれば ジョルジュのことは忘れていたよ。 」
「 でも 今日はしっかり覚えているわ。 」
フランソワーズは 改めてジョーの手を取った。
「 ふふ この手、この手だわ・・・ パ・ド・ドゥを踊るときに、いつもわたしを的確なポジションに
押し出してくれたの。 誰よりも高くリフトしてくれたわ。
ねえ ・・・ あなたがジョルジュだったのね。
ふふふ ― 踊ってくださいます? フロリモンド王子サマ? 」
フランソワーズは 彼の手を取ったまま、くるり、と一回転した。
「 ぼくの眠り姫♪ さあ 次にくる輸送機でイスタンブールに戻ろう。 」
「 イスタンブール ・・・ ・・・ 博士の研究所 ね。 」
「 うん。 ちゃんと思い出したんだね。 」
「 ええ。 ジョルジュともう踊れないのはちょっと残念だけど ・・・ また皆に会えるわね! 」
「 ああ。 みんな 待っているよ。 ― 行こう。 」
「 ええ ― 」
二人は寄り添って 夜空を見上げた。
ド −−−− ン ・・・!! ガシャ −−−− ン ・・・・!!
眼下の街では まだ時折爆発音が響き、夜空に白い煙があちこちから立ち昇る・・・
首都・トウキョウの安全神話が崩れ去った日 ― フランソワーズは 003 に戻った。
ゴ −−−−−− ・・・・・・・ !!!
夜の帳を掻い潜り輸送機は滑空して行った。
「 すこし 休め 」
「 うん ・・・でも大丈夫だから。 ジェロニモ Jr.こそ先に休んでいいよ? 」
「 いや。 俺は大丈夫だ。 」
「 じゃあ ・・・ フラン、先に休んでくれよ。 」
「 いいの? イスタンブールまでまだ数時間掛かるわ。 わたし、いろいろ情報を整理して
置きたいし。 それでは先に休息を取らせて頂きます。 」
「 わかった。 では3時間後に交代だ。 」
「 了解。 」
フランソワーズは素直に立ち上がり 二人に会釈をするとコクピットを離れた。
ジェロニモ Jr.は 微かに表情を和らげた。
「 ジョー。 お前も休め。 ― ここは俺に任せろ。 」
「 ・・・ ジェロニモ ・・・ 」
「 帰ったら ゆっくりしているヒマはない。 ― 今だけだ。 」
「 ― ありがとう! それじゃ ・・・ お言葉に甘えるね。 」
「 ムウ ・・・ 」
ジョーはモニターにちらり、と視線を向けてから静かにコクピットから出て行った。
カン カン カン ・・・・
輸送機の中ではどうしても足音が大きく響く。
ふん ・・・ こんな時に 機械の身体 を認識させられるってのもなあ・・・
もうとっくに慣れてしまっているはずだが ― 時に単純な音が神経をぴりり・・と逆撫でする。
「 今更 ・・・だらしないぞ、 ジョー ・・・ 」
ジョーはぼそぼそ呟き気分を紛らわせた。
― カツン ・・・? 彼の足が止まった。 曲がり角に誰か いる。
いや ・・・ 誰か じゃない。 彼女が いる。
「 ・・・ ジョー? 」
白いコートがふわり、と翻り 淡い笑顔が彼を迎えた。
「 あ ・・・ ああ フランソワーズ ・・・ もうとっくにキャビンに行ったのかと 」
「 ― 行っても ・・・・ いい? 」
「 へ?? ど どこへ??
イスタンブールへは皆で行くんだけど・・・ 」
「 ちがうわ。 あの ・・・ ジョーの キャビンに行っても いい? 」
「 う? い ・・・い いいけど・・・ でもあのその ・・・ 狭いよ? だって一人用 」
「 いいの。 ジョー ・・・ わたしだけ三年分、歳をとってしまったの?
あの ・・・ と 年上 は ・・・ イヤ? 」
「 え!? そ そ そんなコト・・・! いや むしろぼくの方が・・・
きみは だって < 眠って > いたわけだし ・・・ 」
「 だったら ・・・ 確かめて? わたしが三年前と変わっていないかどうか ・・・
ジョーだけが ― 知っている でしょう? 」
「 フランソワーズ ・・・ 」
彼女はもう真っ赤になって俯いてしまっている。
「 ごめん。 きみにそんなコト、言わせて ・・・ カレシ失格だよね。 」
ジョーはこそ・・・っと彼女の髪を撫でるとゆっくりと抱き寄せる。
「 ・・・ 待ってた。 ずっと ・・・ 指折り数えて。 また きみをこうして抱ける日を。 」
「 ・・・ ジョー ・・・! 」
「 こんなとこで ごめん。 ムードもへったくれもないよね。 」
・・・けど、 と ジョーは言葉を一旦、途切らせた。
「 ?? 」
碧い瞳が少しだけ不安そうに 彼を見上げる。
「 けど。 言わせてくれるかな。 あの さ ―
このミッションが終ったら。 一緒になろう。 結婚してくれる ? 」
「 ・・・・・・・・・・・・ 」
大きな瞳がますますかっきりと見開かれて ― やがて透明なガラス玉みたいな涙が
ほろほろ ほろほろ 伝わり落ちはじめた。
「 あ ご ごめん! あの ぼく、なにか気に障るコト ・・・ 言った? 」
思ってもみなかった彼女の反応に ジョーはおろおろしている。
「 そ そうだよね ・・・ こんなトコでいきなり ・・・ 乙女心めちゃくちゃだよね・・・
ごめん ・・・ あの。 わ 忘れて ・・・ 」
「 ― いや。 」
ほろほろ ・・・ ガラス玉をちらばせつつ、彼女はきっぱりと言う。
「 へ?? ・・・ あ あの ・・・? 」
「 そんなの、いや。 いや って言ったの。 」
「 ・・・ あ そ うか。 そうだよね ・・・ うん わかった。 はっきり言ってくれてありがとう。
あ これからもずっと仲間として ― わ!? な なんだ〜〜 」
― きゅ!!! ぶつぶつ言っているジョーにいきなり彼女が抱きついてきた。
「 だから イヤ って言ったの。 わ ・・・忘れる、なんて いや。 」
「 ・・・ ふ フラン ・・・ 」
「 もう〜〜 なんて慌てん坊さんなの? ヒトの発言はよ〜く聞かなくちゃだめでしょ。 」
「 だ だって き きみ ・・・ってば 」
「 わたし ― 待ってた ・・・ ずっと ずっと ― こんなおばあちゃんだけど けど ・・・
わたし。 やっぱりどうしてもどうしても ジョーが好き なの! 」
「 フラン 〜〜〜〜 ! 」
ジョーは我が胸に張り付いているたおやかな身体を ぽ〜ん・・・と抱き上げた。
「 あは あははは ・・・・! ぼくもなんだ、 大好きだよ、 フラン〜〜! 」
「 ジョー ・・・ ちゃんとお返事するわ。 Oui, Monsieau 〜〜〜♪ 」
「 ありがとう 〜〜〜 めるし〜〜〜 うわあ〜〜〜い♪ 」
ジョーは彼女を抱き上げたまま ― 割り当てられた狭いキャビンに入った。
「 こんなトコで ごめん ・・・ 」
「 あら。 わたしの方が先に希望したのですけど? 」
「 ・・・ あ そうだったね♪ 」
ジョーはすい・・・っと小さなキスを盗んだ。
「 うふ♪ ― ジョー ・・・ 待ってたわ。 三年ごとの < 目覚めの時間 > だけが
わたしの生きる喜びだったのよ。 」
「 ・・・ フランソワーズ ・・・ 」
二人はそのまま狭いベッドに倒れこんだ。
一旦 堰が溢れれば ― もう二人の間に言葉はいらなかった。
ジョーは 彼女の金に輝く髪に顔を埋め、その甘い香りを胸いっぱいに吸い込む。
彼の頬に 指に 口に てろてろと金糸が纏わりつく。
やがて彼は 指で 口で 嗅覚で 味覚で ― 彼女をなぞり 思い出す・・・
ああ・・・ ! この香り だ ― ずっと ずっと 飢えていたんだ・・・!
ぼくが僕自身を埋没させている底なしの泉 ・・・
フランソワーズは 彼のすべすべした胸板に頬をおしつけ その熱い鼓動を聞く。
たとえそれがツクリモノであっても、 その熱さ 速さ 逞しさ を練り上げてきたのは彼自身だ。
やがて彼女は 香りで 唇で 肌で 奥深い泉で ― 彼を捕え 味わいつくす・・・
・・・ おもい だした わ ・・・
ずっと ずっと ・・・ 探していたわ、 求めていたわ ・・・欲しかったわ!
捕まえた ・・・! わたしの愛しいひと ・・・
戻ってきたよ。 ぼくの ・・・ 愛するひと
二人は肌を重ねお互いの肉体を感じることで 精神をも共有した。
濃密な時間に ジョーもフランソワーズもどっぷりと浸かり 溺れた。
そして・・・ 微かに歓喜の悲鳴をあげて 共に弾けたとき ―
二人はやっと同じ世界に戻ってきたことを しっかりと感じたのだった。
心地好い疲労のあと、 ジョーは眠りにおちた。 それはほんの数分のことだったが ―
彼に最大のエネルギーを与え 身体だけでなく心をも充足した。
フランソワーズはそんな彼の寝顔を愛しげにながめ 彼女もまた体中が瑞々しく潤ってくるのを知った。
「 ・・・ う ・・・ ん ・・・? 」
深い眠りは また心地好い覚醒を用意してくれた。
「 ・・・ あれ ・・・? ぼく ・・・? 」
暖かい色の瞳が ぼ〜〜・・・っと見開かれ ゆっくりと光が戻ってきた。
「 お目覚め? ジョー ・・・ 」
碧い瞳が 隣で微笑をふくんでいる。
「 ・・・ あ ・・・ フラン ・・・? 」
「 うふふ ・・・ 相変わらず寝起きが悪いのねえ 」
「 ・・・え? あ。 きみ ! あの ・・・ ぼくってば その ・・・ 」
「 さあ 目が覚めた? ・・・ ありがとう ジョー。 」
「 え ・・・ あ あ〜〜 」
「 そして ― お は よ う ♪ はい あまぁ〜〜い キス♪ 」
彼女はくすくす笑って なにか小さなものをジョーの口に放り込んだ。
「 え?? ん 〜〜〜〜 ・・・ 甘♪ これって 」
「 ええ。 お早う のキス♪ 」
「 あは きみのお気に入りの 」
「 そうよ。 ほら ・・・ キス・ショコラ♪ 」
彼女は袋いっぱいのチョコレートを見せた。
「 ふふ ・・・ 下にはとんでもないモノが入っているのだけど ・・・ 」
「 ?? 」
「 そろそろ 仕度しましょう 」
「 うん。 もうすぐ だね。 」
ゴ −−−−−− ・・・・・! 輸送機の轟音がまた高まった。
もうまもなく東洋と西洋の接点とも言われる都市・イスタンブール・・・!
「 自爆テロ ・・・ だって? 」
ジョーは 思わず声を上げていた。
イスタンブールのギルモア研究所に着き、 しばしの邂逅を果たしたのだが ・・・
近況報告で 初めに彼女の口から出てきたのが ― その言葉だった。
「 ええ そうなの。 わたしはあの日 ・・・ 本当なら六本木のビルを ・・・
わたしがずっと <家族> と暮してきた、と信じていたビルを 爆破する予定だったの。 」
「 な ・・ぜ・・・? なぜ きみがそんなことを!? 」
「 ― 声 を。 あの声を聞いたから ・・・ 」
「 ・・・ 声?? 誰の? なんの声だい。 」
「 ずっと ・・・ ずっとあの声は ・・・ 博士からの指令だと思い込んでいたの。
ああ でも・・・ なんの根拠もないの、ただそう・・・直感的に思ってて・・・ 」
「 それ ・・・で ・・・自爆テロ を?
しかし きみは西新宿の高層ビルにいただろう? 」
「 ええ。 それは ・・・友達が誘いに来て ・・・ こっちのビルでもいいやって思ったのよ。
< 自爆テロ > が あの声 の指示だったから・・・ 」
「 ・・・・・・ 」
ジョーは言葉もなく ただ ただ彼の愛しいヒトを見つめるのだった。
「 今はもう <声> は聞こえないわ。
あの <声> は ・・・ わたしが普通の人間だ、と思い込んでいたから 聞こえたのかしら・・・」
フランソワーズは円卓の前で項垂れた。
「 きみの責任ではないよ フラン。 」
「 でも ・・・ わたしのやろうとしたことは・・・! 」
「 フランソワーズ。 お前がその ・・・ 声 を聞いたのは今回が初めてなのか。 」
「 はい 博士。 わたし ― それまでと同じに・・・ごく普通に両親と兄と・・・暮していました。
リセの卒業間近で ・・・ バレエの舞台も近くて ・・・ そんな日々を送っていたのに・・・
なぜか あの声を唯々諾々と受け入れていたのです。 」
「 ・・・ う〜む ・・・・ 」
「 博士! 思念コントロールとか・・・ そんな新手の攻撃なのでしょうか。 」
「 いや ・・・ ここに来た時にイワンが心理スキャンをしているが ― そのような兆候は
見つけてはいないよ。 」
「 では ・・・ なにが ・・・・? 」
「 わからん。 ワシにも フランソワーズ、お前は以前のままの ・・・
ワシの可愛い一人娘 ・・・ としか思えんのだよ。 」
「 博士 ・・・ 」
博士は大きな手で フランソワーズの髪を撫でる。
いつもは冷徹な科学者の目も、今は慈愛にみちた老父の瞳になっている。
「 わからんが ― 全力で解明しよう! 皆にも協力を頼んで な。 」
「 ありがとうございます ・・・ あら? でも ・・・ 皆は ? まだ到着しないのですか? 」
フランソワーズは改めてミーティング・ルームを見回した。
最後にここに居た時には ― メンバーズ全員が揃っていた。
しかし 今は ・・・ ジョーとジェロニモ Jr. と 自分だけ なのだ。
「 あ うん ・・・ 張大人はね、先行調査に出てて・・・ もうすぐ戻ってくるよ。
アルベルトはピュンマと合流してから来るそうだ。 」
「 ふむ。 ・・・ グレートは休暇が取れ次第、と連絡しておったな。 」
「 そう ・・・ ― ジェットは? 」
「 ・・・ あ ・・・ 」
「 うむ ・・・ 」
一瞬 部屋に気まずい空気が流れた。
「 あの ・・・? なに か ・・・? 」
「 あ ああ うん、あのね。 彼は ― ここを去って故郷 ( くに ) で仕事してるんだ。 」
「 ・・・ え。 去った ・・・? 」
「 ウン ・・・ 」
「 それって ・・・ どう して ? 」
「 それが だな ・・・ 」
≪ ・・・すくらんぶる!!! 核みさいるガ 発射サレタ!! ≫
突然 全員の脳内にイワンの悲鳴に近い声が響きわたった。
「 !? な なにごとじゃ!? 」
「 ・・・この声 ・・・ イワン ・・・ イワン ね? 」
「 イワン! 詳しい情報を ・・・ あ そうだ ・・・ 」
ジョーも一瞬 顔色を変え立ち上がったが、 すぐにフランソワーズに向き直った。
「 忘れてたよ。 情報収集のプロがここにいるってこと。 」
「 ― え? 」
「 そして この席はきみの指定席だってことも ね。 フランソワーズ。 」
ジョーは部屋の中央にある大きな装置の中の椅子を指した。
「 ・・・・! ・・・・・ ダイブ・ギア ・・・! 」
フランソワーズはゆっくりと近づき、すとんと座った。
「 わたし達のミッション ― 開始ですね。 」
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updated : 01,15,2013.
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********* 途中ですが・・・・
ひえ〜〜〜ん ・・・ 終りませんでした〜〜
あとちょっとなんですが ・・・ほら あの♪ ラスト♪
すいません、 お宜しければあと一回! お付き合いくださいませ。
・・・いろいろ・・・例によって 嘘80000000♪
諸事 お目こぼしくださいますよう〜〜〜 平に ・・・ <(_
_)>