『  ―  愛 を!  ― (3) ―  』

 

 

 

 

 

 

******* おことわり  ******

再三申し上げますが このお話は  009 RE:Cyborg  の 逆転版です。

そして RE:93 ですので ドバイ上空での 29シーン♪ や

< まっぱ君のぼうけん > シーン はスキップしていますので

皆様 どうぞ脳内補填をお願いいたします <(_ _)>

 

 

 

 

 

 

   ドドーーーーン ・・・!!!  ガシャ −−− ン ・・・・!

 

銃撃の音の合間に 建物全体が激しく振動し壊れてゆく音が聞こえる。

フランソワーズは冷静に目を凝らし、 耳を澄ます。 侵入者の様子を具に観察する。

 

    うわあ・・・ これは酷いわねえ ・・・

    随分と派手にやってくれましたわ 〜〜

 

    ふん! 賠償請求先は NSA でいいのかしら? 

 

彼女はダイブ・ギアに掛けたまま 背筋を伸ばした。

緊張する時、集中しなければならない時に それは彼女の習慣でもあった。

ぴん、と背筋を伸ばし、首をすっと起て かっきりと瞳を見開き ― 真正面から < 見つめる >

一歩踏み出す先が 舞台であれ戦場であれ、フランソワーズにとっては同じことなのだ。

 

    さあて。   本番 ね。

    ジョーが無事に戻ってくるまで守らなければ。

 

 

 

世界各地で勃発した超高層ビルの爆破事件 ―  その根源は 彼の声とは 何なのか。

いや それよりも今はなんとしても <次> を阻止しなければならない。

サイボーグ達は再び ギルモア博士の元に集い <闘い> を開始していた。

  ― ただ  赤毛のアメリカ人だけは彼らから離れていった。

 

「 なぜ??  そんなこと ・・・ 聞いてなかったわ! 」

「 うん ・・・ きみが最初に < 眠り > に入るときには ・・・ そんなことはなかったんだけど 」

「 じゃあ 何があったの??  ねえ ・・・ ジョー、教えて。

 わたし達 ・・・ たった9人しか、世界中で9人しかいない仲間なのよ?

 それなのに ・・・どうしてジェットは ・・・! 」

「 ・・・ うん  ・・・ あの ・・・ 」

ジョーは妙な顔をして言い澱んでいる。  仲間のことなのに ・・・

「 ねえ ・・・ なにか、あったの? もしかして ・・・ 重大な損傷  とか・・? 」

「 いや。 ヤツはピンピンしている。 」

アルベルトが すぱっと言い切った。

「 まあ そうなの? それなら安心だわ。  ・・・ でも  なぜ? 」

「 ・・・ うん ・・・ 彼は ―  」

「 マドモアゼル?  まあ ここは ・・・ 男のメンツを立ててくれんかな。 」

「 ・・・? どういうこと、 グレート? 」

「 いや そのまんまさ。   男ってヤツは ・・・ どうしようもなく幼稚なトコがあってなあ

 幾つになっても意地っ張りなんだ。 」

「 意地っ張り? ジェットのことならよ〜くわかっているわよ。 そんなこと、気にしないわ。 」

「 マドモアゼルは平気でもなあ〜  まあ その〜 ご婦人には聞かせたくないコトもあってな。

 いやいや ・・・ そういう話じゃないよ、 ただ単に子供っぽすぎて恥ずかしいってとこだ。 」

「 子供っぽい??? なんなの、ますます判らないわ。 」

「 あ〜〜 単純に言えば、だな〜・・・ お山の大将はオレだ!ってことサ。 」

「 !?? お・・・おやまのたいしょう??? 」

フランソワーズはますます意味が判らない。

「 ・・・ ごめん、 フラン。   あの ・・・ 実は 」

「 ジョー。 言わなくていい。  フラン、俺たちに免じて ― ヤツを待ってくれ。 」

「 左様 左様 ・・・ アイツは必ずまた ―  戻るさ。 ジョー、そんなに気にするな。 」」

「 ・・・ グレート!  アルベルト!   ありがとう ・・・ 」

オトコ達はどうもそれ以上は話してくれる意志はまったくないらしい。

 

    ふ〜ん ・・・ ちょっとばかりシャクだけど ・・・

    無理に詮索しても 仕方ないわね。

 

    ・・・ ま いいわ。 今は 物分りのいい・女子 になっておきましょ。

 

「 ― 皆が そう信じているのなら ・・・ わたしはこれ以上詮索しないわ。 」

「 ・・・ごめん、ごめんね フラン 〜〜 」

「 すまんな フランソワーズ。 」

「 おお〜〜さすがに我らがマドンナは 寛容なお心の持ち主であるなあ〜〜 」

男共は一様に ほっとしている様子だ。

 

  ― ふん。 調子がいいんだから! と 彼女はしばらくは腹を立てていたが ・・・

 

 やがて。  そんなコトに拘っているヒマはなくなった。

 

    ― 局面は自爆テロ から 世界を巻き込んだ闘い になろうとしていた。

 

その中で ジョーは大規模な核兵器使用を阻止するために ドバイに飛んだ。

ドバイにはジェットも < 飛んで > 行ったはずだ。

なんとか二人とアクセスをとろうとフランソワーズは焦っていた。  

 

     ジョー ・・・  ジョー ・・・ 聞こえる? 

  

     ジェット!  ねえ脳波通信をオンにして?

 

     ジョー ・・・ ジェット!  

 

     わたし達 ・・・ 世界でたった9人しかいない 仲間 なのよ!

 

ダイブ・ギアからの彼女の呼び掛けに ジェットどころかジョーも反応を返さない。

 

     無事なの!?   ジョー ・・・!  ジェット ・・・!

 

      ―    あ  ・・・?

 

突然 とても静かな・そして寂寞とした透明な感情が押し寄せてきた。

それは ひたひたと満ちてくる大潮にも似ている。

フランソワーズの目の前に ぱあ〜〜・・・っと清明な空間が広がる。

「 ・・・ な  なに??   わたし ・・・ どこにいるのかしら ・・・

 風 ・・?   ううん これは  波の音 ・・・ 寄せては返す波の音 ・・・ 」

「 ん??? フランソワーズ、 どうしたのだね。 」

博士が声をかけても 彼女は宙に視線を当てたまま呟き続けている。

「 ・・・ 淋しいの?  ちょっと違う ・・・・わね?

 この感情 ・・・ 彼の透明な哀しみ ・・・ ああ  < 切ない >、 そう言うのね、ジョー ・・ 」

「 ? ジョー だと?  フランソワーズ! 彼と連絡が取れたのか? 

博士は勢い込んで話かけるが  彼女の感覚は完全にこの場所から離れ浮遊している。

「 おい? フランソワーズ? 」

「 フランソワーズはん?  どないしたんや〜〜 」

「 !  おい、003! しっかりしろ。 」

  ピ・・・っと アルベルトは軽く指で彼女の頬を叩いた。

「 ・・・  !    あ ・・・ ああ?? ここ  ・・・ 」

碧い瞳がやっと焦点を結んだ。

「 正気に戻ったか。 」

「 アルベルト ・・・ わたし、ずっとここにいた? 」

「 ああ。ず〜っと、な。 オレたちと同じ時空間にいたぞ。 」

「 ・・・ そう ・・・  あの  わたし・・・わたしの意識はあの地にいたの。 」

「 ―  あの地  ? 」 

「 わたし ・・・ ううん、わたし達 ・・・ 海の側にいましたの・・・ 」

「 海?  ・・・ もしかして ・・・ドバイの海 か!? 

博士の顔色が変わった。

 

 

しかし 今そのことに拘っている時間はなかった。

アメリカ政府は爆破テロ事件の責任を全てゼロゼロナンバー・サイボーグたちに

擦りつけようとしていた ・・・!

狡猾な情報操作の結果、イスタンブールの博士の研究所は攻撃の目標になっていた。

大規模な攻撃が 今始まってしまった。

ギルモア研究所は鉄壁に近いセキュリティ体制を敷いているが要塞ではない。

大規模な軍事的攻撃には抵抗しきれない。

 

     ド −−−−− ンっ!!!   ガシャ −−−ン ・・・!!

 

「 フランソワーズはん!  ココ、ヤワになるのんも、時間の問題やで! 」

「 フランソワーズ! 博士とイワンを連れて ― 脱出しろ。 

「 張大人 ・・・  アルベルト ・・・! 」

彼らは硬化テクタイト使用の入り口で 懸命に防戦に努めている。

しかし 後から後からラザロ共が押し寄せてくる。

「 多勢に無勢 ・・・ っちゅうトコですかいな。 

「 ああ。  コイツら ・・・ 始末に悪いぜ。  弱点はどこなんだ? 

 さあ フランソワーズ。  脱出の用意をしておけ。  博士! イワン ! 」

「 ま まって、アルベルト!  ジョー  ・・・ ジョーがきっと ・・・ 」

「 しかし 通信は途絶したままだ。  ドバイは多分 ・・・ 核爆発で 」

「 アルベルトはん?  ダイジョブや。 我らが009はなあ、きっと脱出するで。

 ええか? どんな時やかて 正義の味方 は負けへんのやから! 」

大人は 小気味良くレーザーガンをヒットさせている。

「 なあ、 フランソワーズはん?  ちょいと頼まれてんか〜  」

「 大人 ?  」

「 ふん。 そうだな。  よ〜し。 もうちょい、ここで踏ん張ろうぜ。 

 フラン? ちょいと <見て> くれ。 」

「 ええ お安い御用よ。  で なにを <見る> の? 」

「 ふん、 アイツらさ。 あのゾンビ野郎どもの動力源はどこだ? ソレを潰せば 

 アイツら、ただのデク人形だぜ。 」

「 了解! ちょっとだけ待ってね。   ・・・・・・・ 」

フランソワーズは ダイブギアから飛び降りると、 入り口に迫るラザロ共をじっと見た。

 

  「    ・・・    !     わかった。 

 

彼女はほんの数秒 目を閉じ ― そして再びかっきりと、その碧い瞳を見開いた。

 

「 アルベルト!  張大人! 今から脳波通信でヤツらのウェーク・ポイントを送るわ。

 そこを ヒットすればアイツらは動かなくなる。 二人の腕なら ものの数秒で完了でしょ? 」

「 ダンケ。   ―  ・・・・ ・・・・ ・・・ ・・・・・ ・・・  !    了解〜〜 ♪ 」

「  ― お願いします。 」

「 コイツが。 すぐに始末するさ。  さあ 脇に退いてろ! 」

アルベルトは にやり、と笑うと右手のマシンガンを ぽん、と叩いた。

「 ・・・・ ・・・  ・・・・・・ ・・・・・!!  ワテにも届きましたで♪ 」

大人は ぶふん! と鼻息荒く、頷く。

「 了解。  博士! ここはもう戦場です、 イワンを連れて脱出を! 」

「 し しかし ・・・ 」

「 大丈夫ですわ。  ここには ・・・ 屋上に格納スペースがあります。 

 中に ・・・ え〜と・・・ああ、小型のヘリがありますわ! アレを拝借しましょ♪ 」

「 ふふん ・・・ そうと決まれば ― 後顧の憂いナシ! だな。

  さあ 急いで!  ―   と彼女がダイブ・ギアから立ち上がった時。

 

    !?  あ ・・・ く 来る ・・・・あれ は・・・

 

再び彼女の脳裏に映ったその光景とは ―  ズ ・・・・  ズ ・・・・ ド −−−− ン!!!  

 

     ・・・ なに?  これは どこなの ・・・・?

     あ   さっき見た場所 ね  ・・・

     わたし ・・・ 何を見ているのかしら

 

     ! ちがうわ。  < 見て > いるのじゃない ・・・

     感じている ・・・ 心に映った光景を 感じているんだわ

 

     ―  ここは どこ? 

 

     知らない場所 ・・・  知らない空気 ・・・

 

     ・・・・ なにも  ない ・・・ なにも ないわ ここ ・・・

 

     ―  !!  あなたの こころ、なのね!

     ・・・ いいえ いいえ ・・・ あなたは空っぽなんかじゃない

     あなたの心にはいつだって 熱い想いが 暖かい愛が 満ちているわ

 

     ええ あなたは無力なんかじゃ ない!

     あなたは ひとりぼっちじゃないわ。   

 

      ―   ジョー ・・・・ !

 

「 ?? フランソワーズはん? どないしはってん? 」

トントン ・・・と肩を叩かれ フランソワーズは我に帰った。

「 ・・・ あ ・・・ ああ !  ここは ・・・ 研究所 ね ・・・ よかった〜〜〜  」

「 なんだ? 寝ぼけているのか!? ドンパチの最中なんだぞ! 」

アルベルトはマシンガンの銃弾を補充しつつ 怒鳴った。

「 ご ごめんなさい ・・・ ああ でもこのイメージは ・・・誰のものなの? ・・・ ジョー? 」

彼女は頭を抱えて 蹲ってしまった。

「 フランソワーズ? 大丈夫かね? 」

博士があわてて駆け寄ってきた。 

「 ・・・ は  はい ・・・・ でも あの ・・・ なんだかよくわからないイメージが急に・・・

 わたしの意識の中に飛び込んできて・・・ 」

「 ・・・・ ふむ? そのイメージとはどこなのかね。 」

「 ・・・ わかりません。  ただ、そこには  ― なにもなかった。 」

「 なにも?? 」

「 はい。  砂漠 ・・・ とも違うのですが ・・・ 強いて言うのなら 月世界?? 

 あそこには生命の煌きの一欠けらすらも 見当たりませんでした。 」

「 そんなにはっきりと <見え > たのかね。 」

「 はい。  こう ・・・わたし自身ではなく、他の誰かの 眼 で見ていて・・・

 他のヒトの 耳  で聞いている みたいな感覚です。 」

「 ふむ ・・・? 」

「 わたしは ―  そのヒトと共に 数多の生命が奪われゆく様を < 見て > いました ・・・ 」

「 そのヒト、とは  ・・・ 誰じゃね。 」

「 ・・・ 分かりません。  そのヒトが あんまりにも哀しそうだったので ・・・

 わたし。  寄り添ってみました。  彼は ・・・  彼 は ・・・! 」

 

    ドン ・・・・  ドーーーーーンッ !  メキ ・・・・ メキ メキ ・・・!

 

入り口の硬化テクタイトの扉が 破られつつあった。

「 !  くそ〜〜ッ  おい、006!  破られたら同時に俺が連射する。 」

「 了解やで。  ワテは最高温度で火炎をお見舞いや。 金属でん、融ける温度やで〜 」

「 よし。 タイミングを合わせよう。 」

「 ハイナ〜〜 」

「 ―   カウントするぞ。   ・・・ ん?  なんだ どうした?? 」

「 ??  ヤツラが ??? 」

「 !?  お?  おお! 」

004と006は 攻撃態勢のまま、ドアの外を凝視している。

 

   ザ ・・・・ッ。    ぎっしりと入り口を包囲していたラザロ共がばたばたと倒れてゆく。

 

「 な ・・・?    あ ! 」

「 そや!  あないなコト、でけるのんは 〜〜 」

「 ―  ただいま! 」

しゅ・・・   独特のにおいの空気を纏い、 彼が  戻ってきた。

「  ジョー 〜〜〜〜〜 !!! 」

≪ 遅くなって ごめん。  ここいらのゴミを片してから 入るから ・・・ ちょっと待って? ≫

≪ はっはっは  了解〜〜 ゴミ掃除、ご苦労さん! 

≪ うん、 じゃ ちょっと待ってて〜〜 ≫

脳波通信が一旦切れた後  ―  研究所に侵入したラザロ共はたちまちのうちに 

本来の姿 ・・・ 骸にもどった。

 

    シュ ・・・・ !   ドアが開いた。

 

「 やあ ・・・ すいません、予定より少し遅れてしまったな 」

「 いや 丁度これからティー・タイムにデモ・・・と思っていたとこさ。  なあ? 」

アルベルトは仲間たちを見やり にやり、と笑った。

「 ほっほ〜〜 そりゃええなあ。  ほんならワテが腕、振いまっせ〜〜 」

大人が 腕捲くりしている。

「 おお おお  ジョー・・・ 無事じゃったんだな! 」

「 博士 ・・・! 」

「 ・・・ジョー ・・・  お帰りなさい ・・・! 」

「 ―  ただいま  フラン ・・・・ そしてどうしても言わせてくれ!

         あ  り  が  と  う   !  

「 ?  え ・・? 」

「 ふふ・・・ドバイで。  きみがぼくを再び立ち上がらせてくれた。

 なにもかも ・・・ あらゆる生命が失われたあの地で ぼくは ・・・

 自分自身の無力さに打ちのめされ どん底の底まで落ちていたよ。

 きみのイメージがなかったら きみの声が受け止めてくれなかったら・・・

 ぼくは ―  二度と這い上がれなかったと思う。 」

「 ・・・ まあ・・・ じゃあ  あれは。  ジョーの心だったのかしら ・・・ 」

「 ・・・?? 」

「 あの ね。 わたし。 多分 ジョーの側まで飛んでいってたわ。 」

「 フラン ! ・・・ ああ だから、ぼくは生きる元気と勇気と取り戻すことができたんだね。 」

「 わたし ・・・ よくわからない。 でも ― 愛に勝るものはなにもないのよ。  」

「 うん。  そうだね。  ― 愛 を ・・・ ありがとう! 」

「 ・・・・・・・ 」 

一瞬 ― フランソワーズは眼を瞬いていたが  すぐに満面の微笑 ( えみ ) で応えた。

 

     「  待っていたのよ。  さあ ― ミッションの発動よ! 」

 

 

 

研究所への攻撃は次第に止んでいった。

「 ふう ・・・ これで当面はなんとか ・・・ 」

「 ほっほ。 ジョーはん、 そん油断がイノチ取りになるのんや〜  用心せなあかんで。 」

「 あ ・・・ そうだね〜 」

「 ふふん ・・・ しかしここはもうダメか?  破壊の規模が  ―  」

「 いいわ ジェット気付けでNSAに請求書、廻します。 」

「 あはは そりゃいい〜〜〜 」

ほっとした空気が ぼろぼろになった研究所に流れた。   ―  しかし それも束の間・・・

 

   「  !! 大変よ!!  核ミサイルが ・・・! 

 

ダイブ・ギアから降りようとしていたフランソワーズが 悲鳴を上げた。

「「「   ― なんだって!?  」」」

 

 

 

「 ・・・ よし。それで行こう。 」

ギルモア博士が全員を見回した。

アメリカの原子力潜水艦が  彼の声  に従って核ミサイルを発射する、という交信を最後に

消息を絶った、というのだ。

「 人類をやり直す? ― ふん、勝手に決めるな! 」

「 ・・・ここでも 彼の声 か・・・ 」

なんとしても未然に発射を食い止めたいが原潜は所在不明なのでそれは不可能に近い。

博士の作戦により、やはりアメリカ軍のイージス艦から迎撃ミサイルを発射して阻止することになったのだ。

「 わかりました。 ぼく達でイージス艦に乗り込みます。 」

ジョーが 防護服姿でマフラーを後ろに投げつつ 言った。

「 うむ ・・・ あまり無茶をするでないぞ。 」

「 博士  そもそも初めから無茶なことの連続ですぜ? 俺たちはイージス艦の奪取に

 向かうんだから。 」

「 それは ・・・ そうじゃが ・・・ 」

「 ・・・ す て  き ・・・♪    ジョー ・・・ やっぱり防護服にマフラー棚引かせるのが

 一番ステキ 〜〜〜   はァ 〜〜〜♪ 」

フランソワーズは ぼ〜〜っとジョーに見惚れているのだ。

「 ??  なんだ、フランソワーズ?  ― お前、顔が赤いぞ? 眼も潤んでる。 」

「 え?? 大丈夫かい、フラン〜〜〜 風邪かな・・・あ! インフルエンザかなあ〜〜

 ちょっと熱 ・・・ おでこ、貸してね。 」

「 え ???   ・・・ きゃ ・・・ 」

ジョーはつかつかの彼女に歩み寄ると 抱き寄せオデコとオデコをごっちん☆させた。

「 〜〜〜〜 ん 〜〜  大丈夫! これくらいなら・・・ でもちゃんとコート、着てった方が・・ 」

「 あ わ わかったから〜〜〜 は 離して ・・・ 」

フランソワーズはますます真っ赤になり 慌ててジョーの腕から逃れた。

「 そうかい? ちょっと嵩張るけど・・・防護服の上にダウンでも羽織って・・・ 」

「 ! へ 平気よ!  大丈夫!  ・・・ ジョーの側に居れば ・・・ 」

「 ??? そうかい? それじゃ ― 索敵、頼むね! 」

「 任せて! 」

「 それじゃ イワン。 テレポート、頼む。 」

≪ 了解。 ・・・ ウン 座標ハワカッタ。 成功ヲ祈ル ≫

ジョー、アルベルト そして フランソワーズが  ―   飛んだ。

「 頼むぞ ・・・ < やり直し > は 誰もが自発的に行うものだ ・・・

 他人の人生を勝手に奪う権利は何人にもありはせん。 ・・・ ありはせんのだよ・・・ 」

 

アイザック・ギルモアは 我が子達が出立した跡に佇み、罪深い己の手をじっと眺めていた。

 

 

「 ―  よし。 このシステムを使って核ミサイルを迎撃しよう。 」

ジョー達は ハワイ沖に停泊していたイージス艦のコントロール・ルームの占拠に成功した。

ほどなくして高性能のレーダーが 原潜からのミサイル発射をキャッチした。

「 !  ミサイル確認!  ― 直ちに迎撃体勢に入ります! 」

「 了解。 」

コンソールの前に座ったフランソワーズの指が矢継ぎ早に指示を打ち出してゆく。

「 ・・・ 迎撃ミサイル 発射します。 」

「 うむ。  ― 打ち損じるな ・・・! 」

三人は食い入るようにモニター画面を見つめている。

「 ・・・あと ・・・ 三発  ・・・・ あと 一発 ・・・ 」

 

       ・・・・!  一発 打ち損じたわ ッ  !!!

 

「 な ・・・ んだって!? 」

「 今からじゃ 追尾しても間に合わない ・・・ 」

「 くそ〜〜   んん??  これは ・・・なんだ? 」

「 !? ・・・ アッ  この飛行波長は ・・・ ジェット ・・・!? 」

「 なに〜〜〜?? ヤツが飛んでいるというのか! 

 

「 ― ぼくが 行く。 

 

「「  ジョー ??? 」」

ずっと黙ってモニターを見つめていたジョーが はっきりと言い切った。

「 イワンにテレポートしてもらう。  この ・・・ 核ミサイルまで。 

 そしてぼくがこのミサイルを <始末> してくるよ。 」

「 ば! 馬鹿な! ― それなら 俺が行く!  俺の体内には核爆弾が 」

「 だめだよ、アルベルト。  加速装置を駆使しないと、飛行中の核ミサイルには追いつけない。

 これは ― ぼくの仕事だ。 

「 ・・・ ジョ −  わかったわ。  いってらっしゃい。 」

「 フランソワーズ!!  お前 ・・・ 正気で言っているのか!? 」

「 ええ。  だって ・・・ ジョーは。 このミッションにために ― 」

「 うん、フランソワーズ。  ありがとう !  

 ぼくが行って 核弾頭を爆破してくる。  ― フラン、 キス・しょこらの袋、借りてもいいかな。 」

「 え? キス・ショコラ? いいけど  ・・・ ジョーってばショコラ 好きだったの? 」

「 ふふん ・・・  ほら、ビルの入り口の検査をうまくすり抜けただろ?

 あの 中身♪ アレを ― 持ってゆく。  アレで核弾頭を爆破してくる。 」

「  !  し しかし ジョー ・・・ 」

「 それしか方法はないよ。   ≪  やあ イワン〜〜 聞こえるかい?  

≪ じょ〜?  ウン ハッキリキコエルヨ。 ≫

≪ そうか よかった!  イワン、頼みがあるんだ。 ≫

≪ ナンダイ ≫

≪ あは ・・・ わざわざ聞かなくてもわかっているだろう? ≫

≪ じょー?僕ハ勝手ニ仲間ノ心ヲ読ンダリシナイヨ? ≫

≪ ああ ごめん ごめん。  あのー  ≫

≪ イワン?   ・・・・ もうわかったでしょう? 彼の望みをかなえてあげて。 ≫

≪ フランソワーズ?   イイノカイ。 ≫

≪ ええ。  それが 彼の望みなのだから。 ≫

「 フラン!?  きみ ・・・・? 」

ジョーは、無意識のうちに音声会話に切り替えていた。

「 ― ジョー。  行くのでしょう?  」

「 うん。  ごめん ・・・ 」

「 ほらほら またあなたの悪いクセがはじまった。 」

「 ― え? 」

「 その  ごめん  よ。  なんで謝るの?  あなたはあなたの信じる道を行ってね。 」

「 フラン ・・・ ありがとう。  きみはいつだってぼくの最大の応援団だ! 」

「 まあ・・・ もうちょっと気の利いたこと、言ってくれればいいのに ・・・

 いいわ でも。  さあ ― !  行ってらっしゃい、 ジョー。 」

「 ん。  フランソワーズ。 」

ジョーは真正面から かっきりとフランソワーズを見つめた。

そして 静かに彼女の手を握り抱き寄せた。

「 ―  いつもいつも きみがいてくれるから ぼくは 」

「 もうなにも言わないで ・・・ 」

片方の白い手がするりと彼の首に絡みつく。

「 うん。 」

「 ・・・ ジョー ・・・・ 」

二人は熱く唇を合わせた。 その瞬間に お互いの思念の波がどっと押し寄せあう。

 

    ・・・ !  フラン ・・・ きみ?

 

    ええ。 きっと。  

 

    ん。  わかった。 

 

ジョーの身体が次第に金色の光に覆われ始め ―   消えた。

「  あ ・・・・    いってらっしゃい   ジョー ・・・ 」

虚しく残された手をみつめつつ、残された温か味を彼女はそっと握り締めた。

 

 

 

「 ―  ・・・!   こ   ここ   は ・・・! 」

ジョーは 自分自身の声ではっきりと覚醒した。

一瞬のブラック・アウトの後 気がつけば 宇宙空間に漂っていた。

「 そうだ ・・・!  ぼくは ― 」

彼はゆっくりと体勢を立て直し 進むべき方向を見つける ―  あれだ!

「 よし。  なんとしてもアレに追いついて・・・始末するんだ!  加速装置! 」

ジョーは奥歯を噛み締めフル・パワーで核弾頭に追いついたが ・・・

   ―   ガクン ・・・ ガクン ・・・

「 ?  ああ 〜〜 しまった、ノーズ・コーンの離脱だ! ・・・ うわあ〜〜〜 」

弾頭から落下するノーズ・コーンと共に ジョーも放り出させてしまった。

「 ・・・ う〜〜 ここまで ここまで来たのに ・・・! あともう一歩だったのに! 」

ジョーは宇宙空間を慣性の力により ゆっくりと落ちてゆく。

仰け反って落ちる彼に視界から 核弾頭が次第に遠くなって行った。

 

    ・・・! くそ〜〜〜 !!

    こ こんなところで ・・!!!  

    ぼくは  ぼくの最大の使命を 果たせず ・・・!

 

ジョーはひとりもがき 喚いていた。

 

≪  ―  おい! ギブ・アップにゃ ちょいと早すぎるぜ〜〜 ≫

 

突然 聞き覚えのある <声> が ジョーの頭の中にがんがん響いてきた。

「 ?!   ―  ジェット?? 」

≪ おうよ。  俺様がいるってこと、忘れてもらっちゃ困るぜ! ≫

≪ ジェット!  しかし ・・・ ≫

次の瞬間 ジョーの手はがっしり掴まれ同時に、ぐん!と身体全体が前へ押し出される。

≪ へッ  よけいなコト、言うなよ、ジョー。   口、閉じろ。

 いいか  今 するべきことは ― たった一つ ! ≫

≪ ・・・ ジェット!  ああ ジェット 〜〜 ≫

≪ ふふん ・・・ ナンかしらんけどよ! オレらがテロの黒幕〜〜とか ・・・ 冗談じゃねェぜ?

  今、やることは  ― アレをぶっ潰す! ≫

≪ あは ・・・ そうだよ、 そうなんだ! ≫

≪ 俺たち二人なら ― アイツをやっつけられる! 行くぜ、 ジョー! ≫

≪ ん!  了解〜〜 !≫   

ジェットに押され引っ張られジョーも腹を 括った。

 

      ここ  まで 来た。

      ああ やっとココまで!

 

      おうよ。  へ! 

      オレら ゼロゼロナンバーの本気、思い知れ!    

 

二人は支えあいつつ 懸命に核弾頭を追う。

≪  ・・・ く ・・・そ・・! あと 少し 〜〜 ≫

≪ へ! いいか ジョー〜〜 オレ様の底力を  みてろ! ≫

≪ ― ジェット?    あ?  うわあ〜〜 ・・・ よしっ! ≫

ジョーは突然、強烈な力を感じ それと共に自分自身の加速装置を限界突破までアップした。

≪ く ・・・・!  〜〜〜〜   ゆ 指が ・・・   つ  つかんだっ!! ≫

なんとか ジョーの片手が核弾頭の突起を掴んだ瞬間  ―  ジェットの身体が離れた。

≪ 捕まえた!  捕まえたよ、ジェット?  ・・・ ジェット ・・・?  

 おい ジェット??  どうしたんだ? なんとか 言ってくれ !  ≫

必死で核弾頭にへばりつきつつ ジョーは僚友の姿を求めて振り返った。

 

   !!   あ  ・・・ あ  あああ  −−−−−  ・・・・!

 

ガシャ ・・・ ガクン ・・・ ガシャッ! ・・・・ !!

小さな爆発を繰り返しつつ ―  < 彼 > は 落下してゆく。

大気圏からの脱出にエネルギーを消耗した上に 成層圏でのオーバーブーストに

彼のジェット・エンジンは耐えられなくなっていた。

二人の手 ―  たった今までしっかりと繋ぎあっていた二人の手は  どんどん離れてゆく。

 

     ≪ !  ジェット !  ジェットォ −−−−−−− ・・・・ ! ≫

 

 

「 ・・・! 」

じっと宙を睨んでいたフランソワーズが ぴくり、と身体を震わせた。

「 ?  どうした、 フランソワーズ。 」

「 ―   わたしが 行くわ。 」

「 なんだ、なにを言っているんだ? 

アルベルトの問いかけにも彼女は全く応えようともしない。

「 わたしが 行きます。  これはわたしの仕事だわ。 」

「 行く って まさか、お前!? 」

フランソワーズはほんのり微笑み話だした

「 わたし ・・・わたし ・・・ ね。  わかったの。 全部のテロ事件と 関連があるのね。

 わたし  この時のために ― 生かされてきたの。 」

「 な  ・・・ んだって ・・・! 」

「アルベルトも知っているでしょう?  わたしのこの27年間のこと・・・

 わたし、何回も眠りを繰り返し 時を隔てて生きてきたの。  それは ― 」

彼女は言葉を切ると 虚空に向かって思念を飛ばす。

≪ イワン。  テレポートを。 ≫

≪ ・・・ ダ メ ダ ヨ!  ダメダァ〜〜〜  ふらんそわーず! ≫

クーファンの主は断固として拒否をする。

   ―  イワン。  聞こえないの?  イワン !!! 」

「 ・・・ ン  ンン −−・・・・・ 」

碧い瞳が強烈な光を放ち、はるかな空間を越えてじっと赤ん坊を凝視した。

「 さあ。  わたしを ― 愛しいひとの 側 へ!  イワン !!  」

 

    ・・・ぼう・・・っとイワンの身体が浮き上がった。

 

「 ?? ど どうしたんじゃ イワン??  今の今まですっかり眠っておったのに・・・ 」

ギルモア博士が慌てふためいているが 赤ん坊は一顧だにしない。

≪ イイノカイ、ふらんそわーず。  コレガ僕ノ最後ノてれぽーとニナルヨ ≫

≪ イワン。  ええ ええ お願い。 ≫

≪ ―  ・・・ ワカッタ。   ふらんそわーず? ≫

≪ なあに。 ≫

≪ ・・・ アノサ ・・・ きすシテクレルカナ ≫

≪ え? ・・・ まあ〜 甘えん坊さんね♪  それじゃ ・・・ ≫

フランソワーズはイメージの中でクーファンに身を屈め 赤ん坊のオデコに唇を寄せ ―  

 

    そして 彼女は <消えた>

 

   

 

 一瞬閉じた瞳を開ければ  ―  そこは宇宙空間、 核弾頭の上だ。

必死で取り付いていたジョーは眼を見張ったが 莞爾として微笑んだ。

≪  フラン!  ・・・ やっぱり 来たんだね。 ≫

≪ ええ。  ジョー、 早く!  ジェットを追い駆けて! 完全に燃え尽きてしまう前に! ≫

≪ しかし この核弾頭を ≫

≪ わたしがやるわ。 ≫

≪ !? 

≪ わたしが始末する。  わたし、この為に この時にために生かされてきたの。 

 ジョー。  あなたはあなたにしかできないことを ― ジェットを救って。 ≫

≪ わかった。  きみも ― きみにしかできないことを  頼む。 

≪ ええ。  ―  ジョー。  愛してるわ。 

≪ ぼく も  フランソワーズ ・・・  えへ ・・・ぼくの未来のお嫁さん♪  ・・・ 頼んだ! ≫

ジョーは はにかんだ微笑みを残し ―  宇宙空間に落ちていった。

 

    あ ・・・。    ああ  あああああ ・・・・

 

フランソワーズは核弾頭の上から  流れ散らばる一筋の流れ星を見送った。

 

    ―  ねえ ジョー。  ジェットと ・・・ 何処に落ちたいの ・・・?

 

転がり落ちた涙は 成層圏で凍りつき砕けた。

彼女は ゆっくりと立ち上がる。  そして 大きく両腕を上げてから跪いた。

 

   ・・・ みんな ・・・ みんなに幸せを!   神よ ・・・! 

   

   人は 確かに愚かで罪深い存在です 

   でも たったひとつ。  素晴しい点があります。

 

   それは ― 愛するということ。  愛することができること。

 

   いま わたしはここで一つだけ 神よ、あなたにお願いします。

 

 

        ・・・ ただ   ― 愛 を!!! 

 

 

 

    ゴ −−−−− ・・・・ 

音のない音に包まれ彼女の姿は光の中に 消えていった。

 

 

 

 

 

   

  ピチュ ・・・ ピチュ ピチュ ・・・

 

どこかで鳥の声が聞こえる。  薄目を開けてみれば ― 陽の光でいっぱいの部屋だ。

「 ・・・ う ・・・ん ・・・    あれ ・・・・ ここ ・・・ 

ジョーはしばらくぼ〜〜〜っと天井をながめていたが、やがてこそっと手を動かした。

「 ・・・ 動く  よ?  これ ・・・ぼくの手 だよなあ ・・・ 

動いた手をそのまま 目の前まで持ってくる。  目の前に翳す。

なぜか袖が長すぎて 手を半分以上覆っている。

「 あは? ・・・ やあ ・・・ ぼくの 手だ。  指も ・・・ちゃんと全部あるし 別々にうごく ・・・ 」

彼は珍しいオモチャをもらった子供みたいに、しげしげと我が手を見詰め指を動かすコトに熱中していた。

「 ・・・・ う  ・・・ ん ・・・・  な んなのォ ・・・ 」

「 −−− ???! 

すぐ側から 眠そう〜〜な女性の声が聞こえる。

 

     ―  え??? 

 

この一瞬で ジョーははっきりと覚醒した!

「 な な な なんなん  ・・・?? 」

  もぞ  もぞもぞもぞ ・・・   ジョーが掛けていた毛布が反対側で揺れている。

それと共に ジョーの毛布の中へと 暖かさが流れ込んできた。

 

      わ?  わわわわ ・・・・????

 

      ―  あ  あれ?  この ・・・ 匂い ・・・ しってる かも??

 

毛布の中で硬直してしまい すぐ横を見ることができない ― いや 見る勇気が ない。

  ごそ ごそ〜〜 ・・・ 毛布は大きく引っ張りあげられ ジョーの身体は半分はみ出てしまった。

 

「 ふぁ 〜〜〜〜・・・・・  よく寝たわァ〜〜  今日は土曜日よねえ〜〜 」

「 !!! ふ  ふ  ふらんそわーず??? 」

「 はい?  おはよ〜〜  ジョー ・・・ 」

寝起きに少しぼんやりした碧い眼が にっこり笑いかける。

「 お  おはよ ・・・ あのあの ・・・ぼく ・・・ ぼくときみ ・・・? 」

「 う〜〜ん ・・・ 今 何時ぃ?  ・・・ ジョー、 お腹空いた? 」

「 え?  ・・・ あ ああ ・・・・ うん、空いてる・・・ かも。 」

「 うふふ・・・ ねえ? ・・・ それで たまごは めだまやき、それとも  たまごやき? 」

「 ・・・ あ  きみのたまごやきがいい♪ 」

「 りょ〜うかい・・・ 

彼女はまだ目をまん丸にしているジョーの鼻先にキスをすると するり、とベッドからすべり降りた。

「 !?  う  わ ・・・ 」

輝く肢体に ジョーは真っ赤になり慌てて目をそらす。

「 あ あの ・・・・ 」

「 〜〜〜 ん 〜〜 なあに? 」

着替え中のセーターの中から 彼女の声がもごもごと聞こえる。

「 あ あの ・・・  ねえみんなは? 」

 ― すぽ ・・・  セーターから首を出して彼女は微笑む。

「 うふ?  ジョーとわたしの願いの通りになったわ。 

「 ・・・ ねがい? 」

「 ほら ・・・ 」

彼女は窓辺に駆け寄り 外を指してまた笑う。

「 ・・・え ・・? 」

ジョーはあわてて起き上がり 改めて部屋の中を見回した。

見たことのない 異国風の部屋 ・・・ しかし妙に懐かしい雰囲気で満ちている。

チェストの上の写真立やらちょっとして置物 ・・・ そして花瓶には花 ・・・

「 ここ ・・・? 」

「 ここはわたしのセーフ・ハウスよ。  ジョーが目覚めるのをずっと待っていたの。 」

「 ずっと ・・・ ?  あれ? 」

ベッドから降り立って 彼はなんだか笑いが込み上げてきた。

「 あは・・・ なんだ〜〜 コレ??  おっかし〜〜 」

上着は袖が長いし スボンはつんつるてん・・・ジョーの足がにょっきり出ている。

「 うふ ・・・ ごめんなさい、 お兄ちゃんのお古なのよ。 

 お兄ちゃん、手が長いのね。 それにズボンはリセの時のだから・・・  」

「 そうか〜〜    え。 お兄さん ・・・ ここにいるのかい。 」

「 うん、 この運河の向こう側のアパルトマンにいるわ。 あとで呼ぶわね。 」

「 ・・・ うわ ・・・ おっかない ・・・ 」

「 やだ〜〜 そんなコトないわよ。 」

「 ウン ・・・ ちゃんとお願いする。  フランとのこと。 」

「 ジョー  ありがとう〜〜♪ 」

「 約束だっただろ? このミッションが終ったら・・・って。  あ! 皆は?? ジェット・・・ 」

「 ・・・・・ 」

フランソワーズは笑って窓を開けた。 

「 ほら・・・ 」

「 ・・・・ ああ ・・・!!  お〜〜〜い ・・・!! 」

駆け寄ったジョーが 開かれた窓の外に見たものは  ―  石畳の街に佇む仲間達の笑顔。

 

「 ねえ ジョー。  何回だってやり直せるわ  ―  愛さえあれば。 」

「 うん。 そうだね。 」

「 神様は そのことを教えてくれたんだと思うの ・・・ 」

「 ―  そうだね   フランソワーズ ・・・ 」

二人は寄り添って 青く晴れ渡った空を見上げた。

 

 

        そう  ―  愛があれば。    ただ ・・・ 愛を ・・・!

 

 

 

****************************     Fin.   ***************************

 

Last updated : 01,22,2013.                  back        /      index

 

 

 

**********   ひと言   *********

やっと終りました ・・・

天使は出てこないし〜 まっぱ君の活躍はないし〜

こんなん RE: じゃね〜! ・・・ってすみません〜〜

でも ど〜しても 93メイン で書きたかったのです♪

何回でも観たくなる不思議な映画でしたね ・・・