『 Puff ( パフ ) ― (2) ― 』

 

 

 

 

 

 

   キチキチキチ ・・・  リ − −−−−−

 

黒暗々 ・・・ なはずの外の闇は 思いのほか明るく

そして 賑やかだった ・・・ とても。

 

「 え・・・明るいわあ  どこか街灯があるのかしら? 」

フランソワーズは きょろきょろと周囲を見回した。

もちろん 街灯やネオン・サインなど あるはずもなく・・・

 

 ただ ふと見上げた夜空は 降るがごとくの満天の星だったのだ。 

 

「 うわ ・・・ すご・・・い   星灯 って本当なんだ? 

 街灯とかないから 余計にはっきり見えるのね 」

 

 きゅ きゅ きゅ。   カサ  コソ・・・・

 

フランソワーズは ソフト・タイプのスニーカーの足を

細心の注意を払い 進めてゆく。

 

「 ・・・ この < 音 > は 虫の声? 

 日本に来て 初めて虫の声って 知ったのだけど・・・

 ここまで賑やかだと ちょっと怖いわね 」

 

歩を進める毎に 虫の音は止むどころか どんどん大きくなってゆく。

車も通らないし 街の喧騒もない地では

それは大音声のおしゃべりであり この世界での主役だ。

 

「 ・・・ わたし達の暮らす世界とは 違うんだ ・・・

 ここは 別世界 なんだわ   勝手に踏み込んでは いけない。

 ムカシからの言い伝えって そういうことよね  」

 

フランソワーズは 沼の側で立ち止まった。

ニンゲンとしての全感覚を 最大限にオープンにして

その音を 光を 香を 肌による感触を 受け止めた。

 

   この地に 入っても いいでしょうか・・・

 

自然にそんな想いが 溢れてでてくるのだった。

 

 

コズミ教授の調査旅行に同行し北の地域までやってきた。

目的の < 湖 > は 鬱蒼とした雑木林の中に

ひっそりと静まり返っていた。

村からはかなり距離があるのだが 生活排水が流れ込み

他の地からの不法投棄なども重なったため、

そこは淀んだ沼になっている。

 

「 ・・・ 昼間も見たけど・・・ 酷い状態ね。

 これじゃ 生物もほとんどいないのじゃないかしら 」

 

彼女は 慎重に汀に寄る。

草が池の中まで伸び 半ば枯れているので 沼との境界が

判然としない。

 ずるり、 と そのまま水の中に落ち込みそうだ。

 

「 夕方 ぴりり・・・と感じたのは この汚染のせい?

 でも そこまで汚れているのかなあ ・・・ 

 院生の皆さんの予想とは違うのかしら。

 ・・・ なんだか この沼が可哀想だわ 」

 

 

   とるん。   水面が微かに揺れた。 

 

藻やら苔の生い茂る水底から 竜はじっと ― 水面を見上げていた。

 

 

 

さて 翌日。

昼間 調査旅行の面々は役場関係者との打合せやら

実施調査の段取りなどに それぞれが奔走した。

肝心の沼には 近寄るヒマもなく忙しく日が暮れていった。

 

   

   カナカナカナ ・・・・    蜩の声が夕陽を追っている。

 

北の地域では 夕陽はあっと言う間に西の彼方に沈んだ。

残照はほんのひと時 空を飾るとすぐに 夜の闇に変わった。

 

「 ふう ん ・・・ ? 」

ジョーは 沼をず〜〜〜っと見渡している。

「 どう・・・?  シマムラ君 としての意見は? 」

「 ん〜〜 アルヌールさん 」

「 明日から 計画通り実行しますか? 」

「 それなんですが。  ご相談したいと ・・・ 」

「 はい? では 実際に現場に近づきましょう 」

「 いいですね。 あ 足元、 気をつけて 」

「 おそれいります 」

仕事上のパートナーとして 二人は沼の岸までやってきた。

< 仕事 > だから 共に行動するが 会話にも気を配り

どうみても二人はただの同僚 だ。

 

「 あ〜〜 院生の方々は? 」

「 皆さん  サンプルの分類に没頭よ

 あ え〜と ・・・ タナカさん。 あの方が 沼の中をみたいですって。 

「 ふうん?  潜りたいのかな 」

「 どうかしら ・・・ 数値とかだけじゃなくて 沼に関心が

 あるみたいね 」

「 そっか ・・・ 明日の作業に誘おうか 

「 う〜ん・・・ 普通のヒト ・・・ 潜れる? 

 装具は予備もあるでしょう? 」

「 あるけど いや いきなりはやめておく。 

 ・・・ ナンかありそうだもの ここ ・・・ 」

「 ・・・ え。 なんか って・・・ なに? 」

「 う〜〜ん よくわかんないけど ・・・ 」

「 ・・・ やだ トラブル はイヤだわ 」

「 そうじゃなくてさ  こう・・・ちょっと予感。

 明日は とりあえず 状況の検分ってことで。 測量しますって

 言ってきた。 ・・・ いいよね? 」

「 あら グッド・アイディアね  そう まずは状況の確認よ 」

「 ・・・ で  どう? 003さん 」

「 ・・・ う〜〜ん ・・・  ひ どい わ ・・・

 水質調査しなくてもわかるわ 」

「 そっかあ 」

「 ・・・ でも潜るんでしょ? 大丈夫? 」

「 あ ぼくを誰だと 〜〜 」

「 うふ シツレイしました 009さん 」

「 ふふ わかっていればよろしい。 

 少し遠くから見れば 深い緑の水面が魅力的とも言えるなあ 

「 そう ね・・・ ああ 『 ジゼル 』 の二幕、

 あの沼もこんな感じだったのかしら・・・

 ・・・ なんだか ヒトを誘う雰囲気ねえ 」

 

踊りたくなっちゃうわ・・ と 彼女は ジゼル の二幕 

ウィリ―の女王ミルタの最初のステップを踏んだ。

「 ・・・ 愚かな人間よ!  真夜中にやってきたのなら

 死ぬまで踊らせて 沼に引きずり込んでやる ・・・! 」

「 ひゃ ・・・ おっかな〜〜〜い ・・・

 ごめんなさ〜い 騙すつもりじゃなかったんですゥ〜〜 」

「 オトコは皆 身勝手な存在 ・・・

 さあ 踊れ! 目が眩むまで  息が絶えるまで ! 」

 

  バサ ・・・!  

 

ミルタ、 いや フランソワーズは枝を拾って大きく振るう。

 

「 ちょい フラン〜〜  乗り過ぎ・・・ 」

「 えへ  ごめんなさ〜い  なんかすごく魅惑的な沼なんで

 ついつい・・・ ああ 本当にこの沼はヒトを誘うわ 」

「 え そうかなあ ・・・ ぼくにはこう〜〜〜

 ナンかが じ〜〜っと沼の奥から見つめている って気がするけど 」

「 やだ・・・ 妖怪 とか? 」

「 いや  もっとこう・・・ スピリチュアルな存在・・・

 なんか こう〜〜 ヒトの良心 とか 心の声 とか 」

「 そう? ・・・ ナンかヤマシイことでも おあり? 」

「 え なんで 」

「 なぜならば ですね〜  ここは 見るヒトの心の奥を写す沼 ・・・

 アナタのココロの鏡です 」

「 へえ〜〜〜 いつからそんな < 伝説 > ができたんだい 」

「 うふふ たった今〜〜 」

「 では 伝説・その二  魔法の沼は 見るモノを惹きつけ

 ひっぱり込む。 逃れるためには ― 」

「 ためには ・・・・? 」

「 方法は 一つ。 」

「 なに なに?? 」

「 それ は ― 

「 あ ・・・・  ん〜〜〜 」

ジョーは 腕を伸ばし彼女を引き寄せ ― 二人は唇を重ねた。

短い時間 ・・・ でも 深く 熱く。

 

    ・・・  ん ・・・ 

    は あ ・・・ 身体の奥が  

    

    あ  つ い ・・・ !

 

「 ・・・ も  う ・・・ 」

「 ふふ ・・・ 沼の魔法に勝ったかな 

「 うふ・・・ ジゼル が アルブレヒトを護ったように? 」

「 そ。  ぼくだってそのくらい 知ってるぞ 」

「 いいえ  余計に魅かれてしまうわ 」

「 え? 」

「 だって 身体が熱いもの。 冷やさなくちゃ ちょっとだけ・・・ 」

「 あ ・・・ おい 」

フランソワーズは ジョーから離れると沼に近寄った。

「 少しだけ   もう一度確かめたいのよ 」

「 ??? 」

フランソワーズは汀にしゃがみこみ 水面に手を延ばした。

「 あ ・・・ あぶな ・・・ 

「 大丈夫。 境界は < 見てる > から 」

 

    ぽちゃ ・・・  淀んだ面が少しだけ 揺れた。

 

「 ・・・ ん !」

彼女は 顔を顰めると急いで手をひっこめた。

「 ― やはり? 」

「 ・・・ 水が ・・・ 噛みついてきた わ 」

「 噛みついた? 」

「 ええ そんな衝撃を受けたわ 」

「 指の皮膚は? 損傷なない? 

「 ん〜〜〜〜 ・・・ 損傷ナシ。 表面はすこし赤くなったけど

 今 深部を見たけど 有毒なものの浸潤は認められないわ。 」

「 よかった・・・! けど ここの水は なんなんだ? 」

「 院生の方たちの分析結果 待ち遠しいわね 」

「 そうだね  まあ その結果を聞いてから潜る算段をしよう。 」

「 それがいいわ。  

 ・・・ ねえ ここ・・・ 本当に静かね。

 それに とても大きな沼だわ  ううん 淀んで岸辺が浅くなって

 しまったけれど 本来はかなり大きな湖だったみたいね 

「 うん。 それに水深も国土地理院の地図の数値は 一応の目安

 みたいだな。  < 底 > なんてあるのか?? 

「 やはり 伝説みたいに 底なし沼 なのかしら 」

「 おそらく ・・ でも水底のカタチも判然としてはいない 」

「 ふうん? あ  これが資料ね 」

「 そう ・・・ こっちのが詳しいかな 」

二人は タブレット端末を覗きこみつつあれこれ検討をしている。

 

  カサ カサ カサ ・・・・

 

枯草を踏みわける音がした。

「 ? ≪ 誰かくるわ ≫ 

≪ ん ・・・ 一人だ。 ≫

≪ ・・・ あ 院生の方よ お顔を覚えているわ ≫

≪ そうか ≫

二人は一瞬の交信で状況を見て取った。

 

  カサ。 足音は 二人の後ろで止まった。

 

「 やあ ・・・ こんばんは 」

黒髪の青年が ごく自然に声をかけてきた。

「 !?!  わあ〜〜 驚いたあ〜〜 

ジョーは とても驚いた顔で振り向き ― すぐに笑顔を見せる。

「 あ ああ〜〜 えっと・・・ タナカさん でしたよね? 」

「 ・・・ 島村クン 〜〜 ああ わたし

 心臓ばくばく〜〜〜 」

「 あはは アルヌールさん  案外恐がりなんですね〜 」

「 え ・・・ だってちょっとここは雰囲気が出来上がりすぎだわ  」

「 あ〜 そうかなあ・・・ フランスの方でもこういう雰囲気、

 なにか出そう〜 って思いますか? 」

「 あ わたし ずっと日本で育ったので・・・ 」

「 彼女 中身は日本人なんですよ 」

「 ああ そうなんですか。  日本語がお上手だなあ って

 感心してたんですけど 

「 日本育ちですから ・・・ ここはちょっとぞくぞくします 」

「 そっかなあ〜〜 

タナカ氏は 少し残念そうな顔で 沼を見渡している。

「 えっと・・・ タナカさん  サンプル、収集ですか? 」

ジョーは さりげなく話題を変えた。

「 ああ いや ・・・ 沼を見にきたんです。 」

「 は あ・・・ 」

「 僕は ずっとこの沼に来たかった ・・・ ずっと 」

「 あ 学術的に関心があったんですね? 」

「 それも ありますが 

 あの 僕は!  小さなジャッキー になりたかったんです 

「「 小さなジャッキー ??? 」」

ジョーとフランソワーズは 思わず声を揃えてしまった。

タナカ青年は ちょっと頬を染めた。

「 あは なんか 恥ずかしいかな ・・・ でも! 」

「 で  でも?? 」

「 ええ。  島村さん こんな歌 知りませんか?

 僕は 音楽の授業で習った記憶があるんだけど 」

 

   ぱふ  ざ まじっく どら〜ごん〜〜〜 ♪♪

 

彼は低い声で フォークソング風のメロディを口ずさんだ。

「 ・・・ あ 〜〜  なんか聞いた覚え、ある かなあ

 なんか 悲しいラスト じゃなかったですか 

「 そうなんです。 パフのトモダチは 去ってしまうんです。

 でも ・・・ 僕はパフと、竜と ずっと一緒にいたい。 」

「 ・・・ 竜?? 」

「 そうです。 これは別な話なんですが 」

ガサゴソ。  彼はポケットからスマホを出した。

「 スマホにアップしてあるんですが・・・

 これ 古いモノですけど 読めますよね 」

「「  え ・・・  」」

ジョーとフランソワーズは タナカ青年のスマホを

覗きこんだ。

その画像は − 

すこし黄ばんだ大学ノートに 万年筆で書いたのであろう

文章が 綴られている。

きっちりした文字と的確な表現に 高い知性と明確な意志を

感じ取ることができた。

 

タイトルは  竜神沼 覚書 と記されている。

 

「 わあ  これ 手書きなんだあ 」

「 ・・・ ジョー ・・・ それが普通だったのよ 」

「 あ すいません ・・・ 」

「 あは いいんです。 だってこれ 僕のお祖父さんが

若い頃に書いたものなんです。 もうぼろぼろで・・・

最近 スマホに保存しました。 」

「 これ ・・・ お祖父さまがお書きになったのですか 

「 たぶん。 僕がまだ子供のころ 祖父は亡くなってしまって

直接話を聞くことはありませんでした。

でも ・・・ 僕 中学生の頃 祖父の書棚でこれ・・・

 『 竜神沼ノート 』 をみつけました。 」

「 すごい ・・・ お祖父さまは どこにお出かけだったのですか? 」

「 実名はどこにも書いてないのです。

 でも 親戚筋が東北の方にいましたので たぶん こちらでしょう。

 山の中の沼・・・ 村の伝説の祭に行った時のことらしいです。 」

「 わあお ・・・ あ 読ませてもらってもいいですか? 」

「 勿論!  僕は いつかこの沼に行きたい と思い続け・・・

 この道に進みました。 今までも 休みのたびに 方々の小さな湖やら

 沼を巡ってきたんです。 」

「 ・・・ まあ ・・・ あら 可愛いらしい・・・ 」

フランソワーズは ページを繰りにっこりしている。

村の祭風景の写真がでてきたのだ。 浴衣をきた少女がお澄まししている。

「 ああ ・・・ 遠縁の従妹さん かな ・・・ 可愛いですよね

 仄かな初恋 かな 」

「 ふふふ そんな感じ ・・・ 

「 その沼で 祖父は竜神さまと出会ったんです。 」

「 え ・・・ 竜神さま? 」

「 ええ  これは絶対に夢や幻ではないから・・・って

 彼はこれを記したのだ、と書いています。 」

「 なるほど・・・ 」

それは タナカ氏の祖父の日記にも似た 一種の覚書 だった。

克明な描写は 読むモノをぐいぐい引きこんでゆく。

 

「 初めて読んだ時 すごいショックで ・・・

 あは ちょうど思春期真っ只中だったせいもありますが。

 そして たまたま、の パフの歌を習ったんですね 」

「 あ〜〜 ぼく 思い出したですよ〜〜

 ぱふ ざ ま〜じっく・どら〜ごん〜〜〜〜 」

ジョーが 楽し気に歌いだした。

「 そうそう! それです 

「 英語の時間に歌ったかなあ  ぼく トモダチとかあまり

 いなかったから パフと会いたいなあ と思ったなあ 

「 へえ ・・・  そうなの ・・・ 

「 ウン 楽しいメロディだけど 淋しい歌詞なんだ 

 ああ でも ホントに竜神さま はいるのかも ・・・  

ジョーは 改めて静まり返った水面に視線を飛ばす。

「 どうでしょう ねえ 」

タナカ氏は 静かに眺めている。

 

   どこかに この沼はきっとある!

   そして 竜神さまはいるんだ!

 

   僕は 絶対に ちっちゃなジャッキー・ペイパー には

   ならない ・・・!

 

それは タナカ氏がずっとずっと心の奥に堅持している決心なのだ。

 

ふ・・・っとため息を吐くと 彼は二人に微笑みかけた。

「 竜神。 ま これは仮定ですからね ・・・

 明日からの調査、宜しくお願いします。 」

「 あ こちらこそ。 潜水してできるだけ詳しく

 調べたいと思います。 」

「 こちらこそ 宜しくお願いしますね 」

「 ああ  星がキレイですね ・・・ 

「 ええ ・・・ 本当に ・・・ 

「 あは 手、伸ばしたら 取れそう ・・・ かなあ 」

「 わたしね、 あのミルキィ・ウェイ の中を歩いてみたいの。 」

「 え〜〜〜 歩くぅ? 」

「 そ♪  ざくざく〜〜 って音がするかも 」

「 あはは ・・・ フランらしいなあ 」

「 星になれるのなら 」

タナカ氏が ぽつり、と言った。

「 え? 

「 ・・・ 竜を 天 ( そら ) に上げたい ・・・

 こんなにたくさんの星座があれば 竜も淋しくないだろうな 

「 星になる か ・・・ 」

「 ・・・・・ 」

ジョーの言葉は重く フランソワーズは黙って彼に寄り添った。

 

「 ああ それにしても。  素晴らしい星空ですね 

     ニンゲン なんて ちっぽけなもんだ  」

 

タナカ氏の言葉に 二人は深くうなずく。

三人は まさに降るがごとくの星空に見惚れていた。

 

 

 

  とるん ・・・  水底がほんの少し揺らいだ。

 

「 ・・・ 

竜は 首を擡げずっと水面を見ている。

「 あのひと と よくにてる 」

竜は ずっとずっと見ているのだ。

 

  そう  茶髪の青年が この地に来てから。

 

「 にてる・・・ あのヒトと。 かみの色がちがうだけ 」

「 あのヒト ・・・ かもしれない。 

 もうずいぶんたつから かみの色がかわったのか ・・・ 」

 

 とるん。  竜が尻尾を振ったので 水がまた揺れた。

 

「 あのヒト ・・・ またきてくれたのか ・・・   

竜は長い首を胴体に沈め 思い出を手繰る。

 

   ・・・ あれは いつだったか・・・

 

あの青年とよく似た黒髪の少年と出会ったことがあった。

あの頃 − 沼の近くに ニンゲン達が住処をつくっていた。

沼の水面に きらきら太陽が当たるころ 奴らは沼の周りで

なにやら 騒いでいた。

 

「 ・・・あ? 」 

なにか黒い意志を感じ 竜は首を持ち上げた。

「 ・・・ ここを 汚すのはゆるさない 

 

    とん・・・!  竜は岩を蹴り水面にむかった。

 

 ― そして あのヒト と出会った。

黒い髪に 大地の色の瞳。  この地のものではなかったけれど

この地への愛は十分に感じられた。

 

 「 だめだ。  きみが そんなことをいってはいけない 」

 

あのヒトは そう叫び必死に止めてくれた。

「 きみ が − そんなコトをしては ・・・ 」

「 ・・・ 」

あの時 竜はもっていた百合の花を 落としてしまったことを

覚えている。

 

   あれは  いつのことだっただろうか ・・・

 

あのヒトとよく似た茶髪の青年を 竜は沼の底からじっと見ている。

 

 

 

 

 翌日 ―

 

沼を前にして コズミ・ゼミのメンバ−達は期待を込めて

水面を見つめている。

集合時間にはまだ間があるのだが のんびりなどしていられない。

誰もが もうわくわくする気持ちではち切れそうだ。

 

   トクン・・・ とくん ・・・

 

眠っていたみたいな沼が 少し揺れている。

「 あ ? 水面が・・ 波 じゃないよな 」

「 ・・・ これは 天候のせい かなあ 」

「 うん  気圧の関係 かもしれないね 

院生のヒト達は 空模様も気になっているらしい。

「 今日は この先の村は 祭り なんだってね 」

「 ああ ああ 聞いた。 だから あまり沼を怒らせるなって

 あの爺さんが言ってたぞ 」

「 沼を怒らせる?? 」

「 まあ 入ったり 潜ったりするなってことだろ 」

「 う〜〜ん ・・・ 」

「 あ コズミ教授 」

コズミ博士が のんびりと宿舎から出てきた。

「 やあ 諸君。 フィールド・ワークを始めようか 」

おはようございます −  ゼミのメンバーたちは声を揃えて挨拶をした。

「 うむ  なかなかいい日より、といいたいところだったが

 ちょいと・・・ 空模様がアヤシイなあ 」

「 はい。 でも先生、 Web上の予報では 晴れ なんです 」

「 ふむ? 」

「 局地的な雨雲 ですかねえ 」

「 ふ〜む。  まあ しかし調査に支障はあるまい 」

「 ですね。 ああ なでも 村では祭の日には必ず天候が

 崩れるそうですよ 

「 ほう〜〜〜 御祭は 雨オトコ か 」

「 いやいや  竜神さまが雨を呼ぶって言ってました 」

「 ふうむ・・・では 早めに始めようか 」

「 そうですね  あ 準備は完了しています。 」

「 ありがとう。  あ  島村君  それでは 」

「 はい。 」

潜水用のスーツを身につけ ジョーが進み出た。

「 アルヌールさん 記録 頼みます 」

「 はい。 任せてください。 」

「 では 打ち合わせ通り 中央の真下に潜ります 」

「 よろしく頼みますよ 」

「 はい 」

ジョーは すたすたと進み 沼の中に入ってゆき

 − やがて 水面下にその姿を消した。

 

≪ ジョー ・・・ どう? ≫

≪ ・・・ うん ・・・ 深度下げる。 

 あれ どんどん 水が澄んできた ・・・ ≫

≪ まあ ・・・ わたしには見えないのだけど ≫

≪ ・・・ 不思議だ ・・・ 別世界だ ・・・ 

 

   ピカッ !  がらがらがら  ド −−−−−− ン !!

 

突然 頭上で稲妻が走り 雷鳴が轟いた。

「 !? うわ〜〜〜 なんだ  急に 」

「 空 ・・・ 真っ暗だ ?? 」

 

  ・・・・ ザ ・・・ ―――――― 〜〜〜〜〜 !!!!

 

雨粒が落ちてきた、 と思ったらいきなりバケツをひっくり返したように

雨が降ってきた。

 

「 うわああ〜〜〜  機器類を持って入れ〜〜 」

「 うっそだろ〜〜〜  嵐 なんて天気予報で言ってたかあ 」

「 待って・・・ あ〜〜 ピンポイントで雷雲がでてる 」

ぐしょ濡れになりつつ慌ててスマホを確認するモノもいる。

「 落雷の危険がある。 宿舎に戻ろう 

「 ダメだよ 今 潜水してる・・・ 」

「 諸君らは 機器を持ってゆけ。 ワシが残る 」

「 コズミ教授 ・・・ 」

「 わたくしも 残ります。 皆さん 避難してください 」

フランソワーズは 毅然として院生たちを押し戻した。

 

≪  ジョー ・・・ どう?  外は突然の嵐よ ≫

≪  え??  中は 平穏そのもの さ ・・・ ≫

≪ まだ 潜れる? ≫

≪ 勿論。 あ 上 は大丈夫? ≫

≪ 隣にいるのは コズミ博士だけ よ ≫

≪ そっか 好都合かも ≫

≪ ええ  で  どう? ≫

≪ うん ・・・ 中は信じられないほど 水 澄んでる ≫

≪ ・・・ だめだわ。 眼のレンジを最大限にしても

 見えない ・・・・ なぜ?? ≫

≪ う〜〜ん ・・・ 水もね そんなに冷たくはないんだ。

 ああ 小魚とか いっぱいいるなあ ・・・ ≫

≪ え  あの水面付近からは 信じられないわね ≫

≪ うん ホント 別世界 ≫

≪ ふうん  ・・・ 今 水深は ≫

≪ えっと ・・・   えっ???? ≫

≪ ?? どうしたの ジョー ?? ≫

 

      ザ ・・・・・・・・   

 

突然 ジョーからの脳波通信は受信不能となってしまった。

≪ ジョー??  ジョー どうしたの???

 ジョー 〜〜〜〜  応答して 〜〜〜〜〜〜〜 ≫

 

     サ −−−−−−−−−−−−  ・・・・・

 

夏とは思えない冷たい雨が 汀のフランソワーズに落ちてきた。

 

   ジョー −−−−−−−−−−−  !!!!

 

 

Last updated : 08,25,2020.           back     /    index    /    next

 

 

***********  途中ですが

え〜っと ・・・・ 御大の名作は 『龍神沼』 です。

あれを読んでないと なんのこっちゃ?? かもな〜〜

あ ラストは どこおち じゃないですよお (*_*)