『  沼  ― (5) ―  』

 

 

 

 

 

 

 

   トポポポ ・・・・  馥郁たる香が ふわ〜〜んと広がった。

 

 

「 まあ ・・・・ ああ いい香・・・ このお茶は特別なのですか? 

フランソワーズは 目を瞑って漂う香を楽しんでいる。

「 いいえ?  一般的なお茶ですよ?  人々が日常的に飲むご普通のお茶です。

 ・・・ああ この村で栽培されたお茶ですけれど 」

「 まあ それで・・・ とっても美味しいです。 」

薄い上質の茶碗の中の金色の液体、まろやかなその味を楽しみ 彼女はゆっくりと口にふくむ。

「 ありがとうございます。 外国に方なのに日本の食べ物がお好きなんですねえ・・・ 」

青年は また感心しきりに座卓の上のお重を眺めている。

「 この国の食べ物は皆美味しいなあ〜って思います。 

あ ・・・ 食べられないモノもありますけど ・・・ 

それにこの 散らし寿司は家族からは < 洋風散らし寿司 > なんて

いわれてますから きっとホンモノとは違うのだと思いますわ。 」

「 いやいや ・・・ いまどきこんなに美しい金糸卵の掛かった寿司を

 貴女のようなお若いお嬢さんが作られたとは ・・・ もうこれは感動モノですよ 」

「 うふふ ・・・ あのね、ご感想は召し上がってから お願いします? 

 案外  『  これは散らし寿司じゃない! 』 なんて思われるかも ・・・ 」

フランソワーズはもうクスクス笑いだしている。

「 そうですか ・・・ では御持たせですが ご一緒に頂きましょう。 」

食器をもってきます、と青年は座を立った。

 

   サ ・・・・・ ・・・・・

 

座敷の中から ふと庭を眺めると沓脱石が濡れていた。

「 あら ・・・ 雨 ? 」

そっと廊下に立って ガラス戸を繰ってみると細かい雨が落ち始めている。

「 まあ ・・・ せっかくの御祭なのに ・・・・ 夕方までには止むかしら 」

今朝は真っ青だった空は すこし灰色がかった白に変っていた。

「 う〜〜ん ・・・ そうだわ! 帰ったらテルテル坊主、つくりましょう!

 あ ・・・ あれって前の日に作らないとダメなのかしら 」

「 お待たせしました ・・・・ あ なにか? 」

青年が静かにふすまを開けてもどってきた。

「 あ ・・・ 失礼しました。  雨 降ってきましたわ 」

「 ・・・ ああ ・・・ この時期は ね 」

「 夏ですのに。  それに今晩はオマツリでしょう? 」

「 夕立に似て ・・・・ 山間ではよく俄雨が降るのですよ  ・・・ さあ どうぞ? 」

「 あ  はい ・・・ 」

二人は座敷で 早いお昼を始めることにした。

 

「 これは 私からの御礼です。  どうぞ? 」

食後 青年は塗りのお皿に懐紙を敷いて鄙びた和菓子を差し出した。

「 まあ ・・・ これは  クッキー ですか? 」

「 いえいえ  これはそば粉で作った 落雁 というお菓子です。 どうぞ 」

「 はい いただきます。  」

コリ  ポリリ ・・・ 白い歯が気持ちよい音をたててかみ砕く。

「 おいしい〜〜   甘くて美味しい〜〜〜♪ 

「 お気に召しましたか?  よかった ・・・ 」

「 ・・・ 美味しい〜〜〜  これ ち 父にももってかえっていいですか? 」

「 どうぞ どうぞ・・・ 」

「 ありがとうございます ・・・ あ いけない〜〜 すぐに失礼するつもりでしたのに

 長居をしてしまいましたわ 」

フランソワーズは慌てて腰を浮かした。

「 いえいえ とても楽しくて 美味しい時間でしたよ。  

 お帰りの前に ・・・ もう一杯お茶をいかがですか。 

気に入ったといってくださったモノを 淹れ直しますから 」

「 まあ ・・・ すみません。 ありがとうございます 」

「 ・・・では 入れ替えてきますから 」

 

   ―  そして 新しいお茶を楽しんだあと。  

 

「 ・・・ ああ ・・・ 美味しい ・・・・ ふぁ ・・・・ あ ごめんなさい       ・・・

・・・・  しつれい  し  まし  た ・・・ 」

 

ことん。   彼女の茶碗が転がった。  そして 彼女自身も ・・・

 

「 ・・・ おやおや ・・・ 張り切ってご馳走を作られてお疲れでのようですね?

 ではすこし御休みなさい。 」

青年は 彼女を抱き上げると隣の部屋を開けた。

襖の向こうには 青畳の香もたかい客間だった。

「 夕方 ・・・ 祭が始まる頃にはお目覚めになるでしょう ・・・ 」

延べてあった客用布団に 気持ちよさ気に眠る彼女をゆっくりと横たえた。

「  ―  遠くにゆきましょう  ・・・ ご一緒に 」

「 ・・・・・・・ 」

からり、と襖を締めればほんのり伽羅のかおる客間は静かな 静かな空間となった。

 

 

 

「 ・・・ ないなあ 〜〜〜  ほんとうにここで落としたの? 

ジョーはずっと地面を探していたが ついにネを上げた。

「 え〜〜〜〜  そう〜〜です〜〜〜〜  ず〜〜〜っと一緒だったコなの ・・・・

 ひとつだけのカタミなんですぅ〜〜〜  ベル ・・・ 」

少女は 完全に泣きべそだ。

「 ・・・ もうちょっと範囲を広げようか ・・・ 」

「 はい♪ 」

「 ・・・・・・・ 」

少女は一瞬にして笑顔になった。  

 

   ? ・・・・まあ  な。 大切な < かたみ > だものな ・・・

   疑っちゃ悪い か ・・・

 

「 あ〜〜〜ん 暑い〜〜〜 」

「 ちゃんと帽子をかぶっていないとダメだよ 君。 」

「 はあい♪  」

すがり付きはしないが 距離がイッキに狭まった。

 

   ・・・ ? なんなんだ ・・・?

 

「 君  やっぱりインフォメーション・センターの遺失物係に届けた方がいい。

 その方がみつかる確率が高いよ 」

「 え〜〜〜〜 でもぉ〜〜〜〜  あんなモノ 本気でさがしてくれるかしらあ〜〜 」

「 大丈夫 ・・・・ うん? 」

 

   わんわんわん〜〜〜  茶色毛の中型犬が駆けてきた。

 

「 あれ 誰かが放したのかなあ・・・・ 困るなあ 

「 ・・・ ! 」

わんわんわん〜〜〜  キュウ〜〜〜〜〜〜 わんわん♪

犬は少女の元に駆け寄ると さかんに彼女の足元にじゃれつきはじめた。

「 ・・・ベル〜〜〜 こらあ 〜〜 」

「 えみちゃ〜〜〜ん  ベルを捕まえててえ〜〜〜〜 」

後ろから 家族らしき人々が近づいてきた。

「 アナタの後を追いかけていっちゃったのよ〜〜  あら ・・・ お友達? 」

「 あ う  ううん  あの  ・・・・ 」

少女は 真っ赤になっている。

 わん?  !  〜〜〜 わん〜〜〜〜〜 ♪

茶色毛の犬は 一瞬首をかしげてジョーをみたが、すぐに彼の靴に鼻づらをこすり付け始めた。

 きゅう〜〜〜〜♪

「 あらあら〜〜〜 ごめんなさ〜〜〜い  ベルったら普通はこんなに知らないヒトには

 なつかないのですけど〜〜 あらら・・・ よほど気に入ったのかしら ・・・ 」

少女の母親らしき中年の女性は 笑いつつ茶色毛の犬を抑えた。

「 あ・・・ ぼくも大好きですから ・・・・  よしよし・・・ ベル ・・・ 」

 くう〜〜〜〜〜〜ん♪

「 ベルったらあ〜〜〜〜  もう〜〜〜 」

「 ・・・・・ 」

ジョーはまっすぐに少女を見つめた。  穏やかな眼差しだ。

「 ・・・ あ ・・・の 

「 !   可愛がってあげてくださいね。 ベルのこと ・・・ 」

「 え・・・ 」

「 < カタミ > なんて悲しいです。ずっとベルと楽しい日々を過ごせるといいね・・・ 」

「 あ   あの ・・・ 

「 ―  もうぼくは用済みだろ? 」

「 ・・・ ぁ ・・・・ 」

  くぅ〜〜〜ん ・・・  茶色毛の犬がハナを鳴らして少女の脚にまとわりついている。

ジョーは くるりと踵を返すと早足で 出口ゲートに進んだ。

 

 

 

 

   ゴロゴロゴロ ・・・  お昼過ぎにはとうとう遠雷が聞こえ始めた。

 

「 ほう ・・・ やはりなあ〜〜 言い伝え通りに祭には雨、というわけか ・・・ 」

ギルモア博士は 白眉を寄せて空をみている。

「 ギルモア君 ・・・ お嬢さんは フランソワーズさんはまだもどらんのかな。 」

「 え?  ああ ・・・ 買い物にでも出たのじゃないかな ・・・

 玄関には彼女の靴があるし。 勝手口から出ていった様子じゃし 」

「 ふむ・・・ お手製の 散らし寿司 はたいそう美味じゃったが ・・・

 食事の前に遠出とは ちと解せぬなあ 」

「 なにやら  お隣さんにお裾分け と言っておったよ?  」

「 お隣さん??   この家に 隣 はないですぞ。 ず〜〜〜っと雑草ぼうぼうの地

 いや 以前は桑畑だったそうですが・・・ もう養蚕はしておらんそうじゃ 」

「 ふうむ?  とすると ・・・ ここから上は もう山間地じゃしなあ ・・・ 

 ああ 例の沼の周辺には 誰も住んではいないのかな 」

「 地元の人間では そんな酔狂な輩はおらんでしょう。

 いや まあ 近年都会からやって来た人は別じゃろう ・・・ ちょいと聞いてみますかな。 」

「 土地の古老に かい? 」

「 古老は古老でも ・・・ スーパーの手前にあるタバコ屋・・・

 あそこでばあさんが退屈そうに店番をしとった。  

ちょいと水を向ければぺらぺら喋りましょうよ 」

「 ふむ ・・・ ? 」

 

コズミ博士は傘を差して出かけて行き  ― 好みではない煙草を幾つか買い求め ・・・

目的の情報を得てきた。

 

   「 ああ?  うんにゃ。  ご別荘より山側にヒトの住む家は ねえだよ 」

 

「 なんじゃと? 」

「 それが さ。 その婆さんは何気なくそう言った後で 何回も繰り返したんですな〜

 ヒトの住む家は な …と ね。 」

「 それじゃ ・・・ 狐狸妖怪の類の住処ならある、ということか 

「 おそらく な。  あの沼は ヌシの住処と言われておるが ・・・ 」

「  !  ちょいと見てくる。  」

ギルモア博士は 全部聞かないうちに腰を浮かせた。

「 あのコは ・・・ 好奇心に駆られて きっと見にいってしまったのでしょう ・・・

 どこかで迷っておるかもしれん。  ちょいと見に ・・・ 

「 いや ・・・ この雨じゃ 少し待ったほうが ・・・ 」

「 ほえ? 」

 

    サ −−−−−−−−  ・・・・・

 

小雨はそろそろ本降りになり始めていた。

「 ほ ・・・ いつの間に ・・・ 

「 やはり 言い伝えの通りじゃな。  まあ 夕方までには一旦 止むじゃろうよ 」

「 しかし!  ・・・ お?  ・・・・ ジョーからじゃ ・・・ 」

ギルモア博士はポケットの中から携帯を取りだした。

「 ・・・ ぁ〜〜〜〜 ワシじゃ ・・・ ジョー そっちはどうじゃな? 」

「 ・・・・ ・・・・・・」

「 ほい、 それはよかった。 しかし慌てるなよ? 」

「 ・・・ ・・・・? 

「 あ ・・・ フランソワーズは なあ ・・・ ちょいと今出かけておって ・・・

 ?  お おい〜〜〜  今 新幹線の中じゃろう?? 加速はダメだぞ!  」

博士は 携帯を握りしめ宙をにらんで絶叫している。

「 ・・・ そうじゃ・・・ きちんと最寄り駅まで公共の交通手段で

 のんびりきなさい。  なに?  フランソワーズ?   あ〜〜〜 いま ちょっと なあ ・・・

 うん ・・・ 地元の知り合いのところに でも訪ねていったの ・・・ かも ・・・ ? 

「 おい ジョー君!  加速装置はダメですぞ〜〜〜 あと 脳波通信もお止めなさい。

 なにか他の機器に影響が及ぶかもしれん ・・・ 安心して・・我々でお嬢さんは探して

 おくで の ・・・ あ。 」

「 コズミくん〜〜〜〜〜〜〜 」

 ギルモア博士が コズミ氏を小突いた時には  ―

「 ・・・ もしもし??? ジョー???  おい 返事しろ〜〜〜 」

ジョーからの電話は ぷつり、と切れてしまった。

「 まさか〜〜〜〜 新幹線の気密ドアをこじ開けて ・・・ 

「 いや ・・・ いくらなんでもそこまではやらんでしょう。

 アイツじゃとて 社会人 として仕事をしておるのですから、その程度の弁えはあるはず・・・」

「 では 地元の駅から が ・・・ 

「 おそらく。   玄関のドアを開放しておきますワ ・・・ ヤツはおそらく

 すっぱだかで飛び込んできますからなあ・・・ 」

「 防護服は ・・・ 

「 うむ ・・・おそらくフランソワーズがもってきている と思う。 

 ちょいと見てくるわい。 

「 よろしゅう〜〜  ・・・ ああ 少し小ぶりになってきた が ・・・

 この雲の具合じゃと 宵の口に雷雨か ・・・・ 」

コズミ博士は 憂鬱そうに空を見上げた。

 

 

  ― 夕方、 やはり次第に雨は強くなってきた。

 

  ぴ ぴ ぴ〜〜〜ひゃらら〜〜〜 どんどんどん ・・・

 

お囃子の音はそれでも雨脚をついてきこえてくる。

「 ほう・・・ 昼間よりも力強くなってきた風に聞こえるがなあ ・・・ 」

「 左様 左様。  雨に 天に負けまいとの心意気でしょうなあ。

 雨を止めることはできんが 雨ごときには負けないという気持ちが強い 

「 なるほど ・・・ 畏れもあるが 抵抗心もちゃんとある、か。 」

「 ― と 思うがね。 そうやって彼らは長い長い歳月 この地に暮らして来たのでしょう。」

「 ふうむ ・・・  お? 」

ギルモア博士の携帯が鳴った。

「 ワシじゃが ・・・  おお ジョーか。  地元駅に着いたか ・・・

 あ なに? この家?  駅前でタクシーを拾って ・・・ え? 住所? 」

「 ○○町 3-9 じゃよ。 」

「 おお ありがとう!  え 聞こえた?  玄関を開けてあるから ・・・ おい ジョー?! 

ギルモア博士は携帯に向かって声を張り上げたが ・・・ なんの返答もなかった。

「 !  ・・・ も〜〜〜 アイツはフランソワーズのことになると〜〜 」

「 ほっほ さっそく加速装置稼働 ですかな。 」

「 ご明察。  ほれ もうすぐ飛び込んできます。 」

「 久しぶりじゃのう・・・ 」

老博士たちがのんびり話しているうちに ・・・

 

     シュッ ! ・・・・・  ドン。

 

一陣の旋風が 飛び込んできた。

「 うわ ・・・ 」

「 お ・・・ いらっしゃい〜〜〜 」

「 博士!! 」

特殊な空気のニオイと少々の焦げ臭さとともに ― 009が居間の真ん中に立っていた。

 

「 博士!!!  フ フランソワーズは!? 」

「 おお ジョー ・・・ ほら 着ろ。 」

ギルモア博士は 手元に置いてあった着替えを彼にさしだした。

「 あ ・・・ どうもすいません ・・・ 」

ジョーは やっと自分自身の状態に気づき、顔を赤らめつつ服を受け取った。

「 ・・・ あのう〜〜 防護服のほうが・・・ 」

「 お前、 すぐにでも捜索にでるつもりじゃろう?

 人目の煩いこの村では あの服は目立ちすぎると思わんか。 」

「 ― です ね。  ・・・ じゃ いってきます! 」

さっと服を着ると 彼はそのまま家を飛び出そうとした。

「 おいおい・・・ やみくもに探してもどうにもならんよ。 」

「 左様 左様 ・・・ 一応近所の地理を説明しますがな ・・・

 それと ・・・ 例の 沼 を。 」

「 ああ そうじゃな。  このまま 雨が続きピンポイント豪雨になれば

 沼近辺で水害が起こる可能性が高いのじゃ。 」

「 水害!?  」

「 左様  小さな沼のですが 氾濫をおこすと鉄砲水になって ・・・ 地域を破壊します。」

「 そ その沼にフランが??? 」

「 待て待て ・・・ まだそれはわからんよ。  

 彼女は昼前に おそらくほんの近所まで、の心積りで出かけて ― 戻ってこんのだ。 」

「 左様。  散らし寿司を詰めたお重をもって なあ ・・・ 」

「 散らし寿司???  フランの、 あのお得意ですか!? 」

「 そうじゃ。  念の入った作りで 大層美味じゃったがの〜〜 」

「 ・・・ 誰かにもっていったんだ ・・・! 」

ジョーは 一瞬俯いたが すぐに博士を見つめた。

「 探してきます!  やっぱりこれ、下に着てゆきますから。 」

彼は部屋の隅に置いてある防護服を指した。

「 ああ そうかい。 しかし 気をつけろよ?? 」

「 はい 大丈夫ですよ 」

さささ・・・っと < 着替え > をし、 ごく普通の青年の姿で ジョーは家を

飛び出していった。

「 ・・・ GPSで追跡するか 

「 お嬢さんにその機能は 」

「 ない。  戦闘時は小型万能GPS搭載のチップを手首に巻いてもらうのじゃが

 < 日常 > では 彼女はそれをいやがるしの 

「 でしょうなあ ・・・ どれ ・・・ 」

「 うむ 」

二人は モニター画面に目を凝らした。

 

 

 

  ザ −−−−− ・・・・  サ ・・・・・

 

雨は強くなったり時には弱まったり・・・ 気まぐれに降り続く。

「 ・・・ フラン 〜〜〜 ≪ フラン〜〜〜〜〜〜 !!! 返事 してくれ〜 ≫ 」

ジョーはずっと脳波通信で呼びかけ続けているが 彼女は回路を開いた様子もない。

「 どうしたんだ??? どこかに ・・・ 監禁?? まさか ・・・ 」

彼は 傘を傾けつつ 山道を登ってゆく。

  

  チョロ チョロ ・・・・  路肩に細い水が流れだした。

 

「 ! ・・・ マズイなあ ・・・ 」

「 お客さん 」

「 !? 」

路脇の薮影から 突然村の青年が姿を現した。

「 お客さん ・・・・ ここから上には なんもねぇだよ ・・・

 こんな雨ん時は 足もとが危ねえ・・・ 戻った方がええ 」

「 あ ・・・ 君はこの村の ・・・ひとですか 」

「 んだよ。 この村で生まれ育っただ。 

「 そうか! それじゃ ・・・ あの〜〜〜〜 金色みたいな髪で 空色の瞳の女の子、

 見なかったかい? 」

「 ・・・!! 

彼は 突然口を閉ざし固まってしまった。

「 君?  どうか したのかい ? 」

「 ・・・ そ そのお嬢さん ・・・ いなくなっただか? 

「 ちょっとね ・・・ 戻ってこないんだ〜 

「 !!!  やっぱり!  ヌシ様に 浚われただ〜〜〜〜 」

「  ―  なんだって ・・・・??  」

ジョーは 仰天した。 ― 青年の言葉にではなく 彼の表情に ・・・

 

  彼は  心底絶望し哀しみに溢れた顔で ジョーを見つめていた。

 

 

 

Last updated : 04.28.2015.                 back    /   index    /    next

 

 

*********  途中ですが

ホントにホントにすみませぬ〜〜〜〜

風邪っぴきと多忙で毎晩寝落ち ・・・・