『 それから・ウチの庭 ― (2) ― 』
ごろん ごろん ごろん ・・・
でこぼこした黄色い果実が た〜〜くさん勝手口に転がった。
「 お〜い フラン ・・・ 今年の分 収穫したよ 」
「 わ〜〜〜〜〜 なに??? 」
すぐにすぴかが すっとんできた。
「 夏ミカン だよ。 ほら ご門の側に生えてる大きな木、あるだろ 」
「 うん! トゲトゲのきでしょ 」
「 そうだよ あの木の実さ。 」
「 なつ みかん ? おみかん といっしょ? 」
「 まあ 蜜柑の親戚かな ほおら 」
「 ・・・ すご〜〜〜 おっき〜〜 でこでこでこ♪ 」
「 うわ〜〜 ごろん〜〜〜 すご〜〜〜 」
すばるもやってきて 大きな実を転がしている。
「 まあ ジョー。 今年もたくさん獲れたわねえ 」
フランソワーズもにこにこ・・・ バケツを持って現れた。
「 うん 豊作だね さあ〜〜〜 恒例のマーマレード作りだあ! 」
「 ふふふ お願いします♪ わたし ウチのマーマレードが
世界一だと思うわ 」
「 ふふふ〜〜ん♪ 実はぼくもそう思ってマス♪
シンクに入れておいてくれる? 手を洗ってくるからね 」
「 ま〜まれ〜ろ? 」
すぴかの目は もうこぼれ落ちそうなくらいまん丸だ。
「 そうよ 毎朝 食べてるでしょ 黄色の甘酸っぱいジャム 」
「 すき〜〜〜!! もしゃもしゃ〜〜 すき! 」
「 僕もすき〜〜 あまあ〜〜い♪ 」
毎朝 パンにのっけるマーマレード、 すぴかはたっぷり入っている
果実の皮が すばるはとろとろのジェル部分が 大好きなのだ。
「 さあ すぴか すばる お父さんのお手伝いしましょ
美味しいマーマレード、作りましょ 」
「「 はあい 」」
「 じゃあ まずエプロン つけよっか 」
「「 わあい 」」
ごろん ごろん ごろん〜〜〜
キッチンのシンクは 黄色のでこぼこした果実で満員になっていた。
「 よ〜し まずは水洗いだな 」
「 アタシ〜〜 おてつだいするぅ〜〜 」
「 僕も僕も〜〜 」
「 お〜〜 頼もしいなあ じゃ 一緒に夏ミカンを洗おう!
この皮が美味しいマーマレードになるからね 」
「「 うわ〜〜 い 」」
まあ おじゃま虫なのだが チビ達は大きな夏ミカンに触って
そのでこでこした表面をしげしげと見ている。
ま これも学習ってことだな
よ〜〜く触ってごらん
ジョーは にこに・・・子供たちを見ていた。
< ウチのマーマレード > は この邸に住み始めたその年から
作っている。
最初に、門の脇の夏ミカンの木に気付いたのは ジョーだった。
「 あのさあ 門のとこにあるおっきな木、あるだろ?
あれ・・・ 夏ミカンだから切らないでほしいなあ 」
庭づくりを始めたころ 彼はぼそ・・・っと言った。
「 なつ みかん?? 実がなるのね? 食べられる? 」
「 あ〜 うん でも実はさあ めっちゃ酸っぱいからさ〜〜
マーマレードにする方がいいんだ 」
「 へえ ・・・ ジョーって マーマレード 作ったこと あるの? 」
「 ウン 庭にでっかい木があってさ・・・
毎年 手伝わされた ・・・ でもね めっちゃオイシイよ! 」
「 すご〜い ねえ レシピ教えて? 」
「 あ ぼく やるよ。 ちょっと砂糖の量 調べるね 」
「 わあ お願い 」
スマホを操作している彼を ちょっと違う目で見てしまう。
庭に大きな木? ・・・ ふうん
イイとこのぼんぼんなのかしら・・・
きっと毎年お母さんの手伝いをしていたんだわ
・・・ 彼のママンなら美人ね!
お料理上手でめっちゃ優しいママン か・・・
彼女のアタマの中では このセンの妄想がしっかり出来上がっていた。
― 以来。
門のところの夏ミカン は マーマレードの供給源として重宝されている。
毎年 自家製マーマレードは 世界中に散った仲間たちの元に届けられ
この邸に家族が増えてからは すぴかはほろ苦い皮部分が好き、
すばるはとろとろ〜〜ジェリ―部分がお好みである。
ジョーは 山ほどの果実を実に丁寧に洗い皮を剥き・刻み
砂糖を加え丹念に煮込んでゆく。
夏ミカンの皮は結構分厚いし 白い部分を落とすのも案外チカラワザだ。
皮は薄く切って 激すっぱい中身を絞るのだから 手間がかかる。
でも 彼はその工程をとてもとてもとて〜〜〜も
楽しそう〜〜に うれしそう〜〜〜〜に 進めてゆくのだ。
― やがて
コトコト コトコト ・・・
大鍋では 甘酸っぱいジェル状のものが煮詰められてゆく。
「 ・・・ ふ〜〜〜ん ・・・ ああ 好い匂い(^^♪ 」
「 フランってば 大好きだよねえ 」
「 ええ 最高に美味しいもの♪ わたし 今までにこんなにオイシイ
の食べたことなかったわ 」
「 ふふふ ・・・ ぼくとしては きみが作る苺ジャムも好きだよ 」
「 ありがと。 あれはね ウチのイチゴがオイシイから よ 」
「 ははは それなら マーマレードも あの夏ミカンの木 の
お手柄ってことになるな 」
「 そうね〜 ・・・ ああ 本当にウチの庭は最高だわ 」
「 そうだよねえ ぼくらは本当に恵まれているよね 」
「 ― このお家 大好きよ ここで暮らせて シアワセだわ 」
「 う〜ん ま ぼくとしてはどこだっていいけど 」
「 ・・・ え。 ここ ・・・ 好きじゃないの? 」
「 いや? 好きさ。 ってか ここしか考えられない 」
「 え それならどこでもいいって・・・? 」
「 ん ・・・ だってさ きみがいてチビ達がいるトコなら
どこでも・・ってことさ。 なあ・・・ 」
ジョーは 腕を伸ばし愛妻を抱き寄せる。
「 んふふふ ・・・ ん〜〜〜 あ 味見 したでしょう?
今日のベーゼ ( キス ) は マーマレード気分♪ 」
「 あは ・・・ バレたかなあ 」
「 ステキだわぁ〜〜〜 ねえ ? 」
フランソワーズは するり、と彼に抱き付いた時 ―
「 おと〜さ〜〜〜ん できたァ? 」
すぴかがガス台の下から 跳ねて伸びあがってくる。
「 こらこら ぴょんぴょんしないよ うん もうちょっとだよ。
ほうら 見てごらん 」
ジョーは ガスを細めてから ひょい、と娘を抱き上げた。
「 うわ〜〜〜〜 ぷつぷつぷつ〜〜って 」
「 な? いい匂いだろ 」
「 うん! なつみかんさん〜〜〜 たべたい! 」
「 あは あれはめっちゃ酸っぱいからダメだよ 」
「 ふうん ・・・ 」
「 僕もぉ〜〜〜〜 」
「 ほいよ、 いいかい そうら・・ 見てごらん 」
「 ・・・ あっつ〜い けど あま〜〜いにおい♪ 」
「 こうやってね あの美味しいマーマレードができるんだよ 」
「 いいにおい〜〜〜 ね〜〜〜 なめて いい? 」
「 おっとぉ〜〜 熱いから触ったらダメだよ。
もう少し 煮込まないとね 」
「 ちょっとだけ〜〜 ねえ おと〜さ〜〜ん 」
にこぉ〜〜 天下無敵?のすばるの笑顔が炸裂した。
「 ・・・ うわぁ ・・・そ そうだねえ ・・・
それじゃ ・・・ ほんのちょっとだけ 」
「 うわあい♪ 」
ジョーは 小皿にとろ〜〜〜り 作りかけのマーマレードを
垂らすと ふ〜ふ〜〜してから息子に渡した。
「 まだ 熱いからね 気をつけて舐めるんだよ 」
「 ん ・・・ ん〜〜〜〜 ・・・
ねえ おと〜さん? おさとう、 もっといい? 」
にこぉ〜〜〜〜 ♪
この天使の笑顔 に父は即行完敗で、もうすぐに砂糖を振りかけてしまう。
「 ・・・ さ これでどうかな 」
「 ウン♪ ・・・ あ〜〜〜〜〜〜 おいし〜〜〜〜 」
「 そうかい そうかい よかったなあ 」
ムスコの笑みに ジョーはでれでれなのだ。
・・・ さすがにジョーの息子ね!
天然タラシ だわ、 すばるって。
側で観察してる母は 妙〜〜に納得した気分に浸っていた。
< 最強・すばるのにっこり > に気付いたのは
まだ生後間もない時だった。
まだ 寝て 飲んで 出して の繰り返しだけの時期なのだが。
んぐんぐんぐ〜〜〜〜〜〜
「 ほうら ・・・ すぴかさん いっぱい飲んで大きくなあれ・・・
ま ・・・ キレイなお目目ですね〜〜 」
ミルク中、すぴかはあの大きな碧い瞳でじ〜〜〜〜っと母を見つめている。
「 ん? オイシイかな〜〜〜 え もっと飲む? 」
くちゅくちゅ くちゅ 〜〜
「 はいはい すばるクン もっと飲みましょうねえ
・・・ あらあ〜〜 ほらほらあとちょっと 」
すばるは 顔をあげしっかりと母を見て にこ〜〜〜〜 っと笑う。
・・・ きゃ〜〜〜〜〜〜
なに なに これ〜〜
て 天使だわ! この子本当に天使 ・・・
いや〜〜〜ん どうして?
すぴかもすばるも 可愛いすぎる〜〜〜
神様 どうかこの天使たちを
わたしから取り上げないでください ・・・!
母はすぐに二人の特性を感じ取り めちゃくちゃに愛情を注ぐ。
結果 ― すぴかは なんでも見るよ! な 大きな碧い瞳が魅力
そして すばるは − その笑顔に敵うものはいない天然タラシ・ボーイ
となりつつある。
このちっちゃな・タラシ君 は両親と < おじいちゃま > を
生後数日で 陥落させ次は近所の掛かり付け小児科医・ヤマダ医院の老先生。
そして 若先生に看護士さん達 もちろん 受付のおね〜さん も☆
さらには 地域の交番のお巡りさんズ を全員蕩ける笑顔にし
・・・ 着々と進攻の手を広げつつあるのだ。
ウチの双子って ・・・
― 最強だわ !
母はしみじみ思っている。
やっぱり ジョーの子 なのねえ・・・
自分の中で育て産んだ存在なのに 彼らの中には紛れもなく
ジョーの姿がある。
・・・ なんだか不思議 ・・・
命って とっても神秘的だわ
「 おいし〜〜〜〜〜!! おと〜さん ・・・ 」
「 そうか そうか よかった〜〜 」
「 ん〜〜 ねえ もっと〜〜〜 」
「 おっとこれはしばらくお預けだな。 」
「 なんで〜〜〜 おと〜さん 」
すぴかが 父のエプロンをツンツン引っ張る。
「 あのね お昼寝してもらうと も〜〜っと美味しくなるのさ 」
「 ふうん ・・・? 」
「 すぴかもすばるも お昼寝すると元気になるだろ?
マーマレードさんも一緒さ 」
「 ふうん ・・・ アタシ もしゃもしゃ すき! 」
「 僕 あま〜〜いとろ〜〜 すき! 」
「 うんうん お父さんも好きだよ。
さあそれじゃ すぴかとすばるもお昼寝しようか 」
「 え〜〜〜〜 まだあそぶ〜〜〜〜〜 」
「 僕ぅ・・・ ま〜まれ〜ろ たべるぅ〜〜 」
「 なあ 二人とも。 マーマレードさんは もっともっと美味しくなるために
これから瓶の中でしばらくお昼寝するんだ。
だから すぴかとすばるも もっと元気になるために
しばらくお昼寝しようよ 」
「 ・・ ん〜〜〜 ・・・ 」
「 ま〜まれ〜ろ〜〜〜 」
「 すばる おひるね しよ? 」
「 ・・・ ま〜まれ〜ろ ・・・ 」
「 おいしくなったの たべよ〜〜 」
「 僕ぅ〜〜 ま〜まれ〜ろ〜〜 」
「 あとで !! 」
「 ・・・ ったあい すぴか ぶったあ〜〜 」
「 ぶってないもん 」
「 ぶったあ〜〜 」
「 こらこら ケンカするなよ ほらほら 」
チビ達はまだぐずぐず言っているが ジョーはさっさとエプロンを取り
二人の手を引く。
「 さあ トイレ 行ってこようね〜〜 」
「「 ・・・・ 」」
むす〜〜っとしつつも トイレを済ませ戻って来れば
ふぁ 〜〜〜〜 あふ・・・・
キッチンでの活躍の後なのだ、小さな欠伸が湧き上がってくる。
「 おや〜〜 オネムかな〜〜〜
じゃ 今日はここのソファでお休みなさい かな〜〜 」
「 ・・・ ん ・・・ 」
「 ・・・ くちゅう〜〜 」
ジョーの両隣で すぐに色違いのアタマは沈没してしまった。
「 あは ・・・ もう寝ちゃったよ〜〜 他愛ないねえ 」
「 ・・・ ジョー すごいわあ 〜〜 」
「 え なにが 」
「 なにって チビ達の扱いよ。
わたし 毎日お昼寝タイム、大変なのよ〜〜
全然 ねんねしないんだもの 二人とも! 」
「 あ〜 いっぱい遊んでオヤツ食べれば
まあ 普通 ニンゲン誰でも眠くなるさ。 」
「 そうだけどね・・・ 」
ほっんとに 小さい子の相手が上手なのよね
・・・ そうだわ。
最初に出会った時にも 思ったのよね
イワンの世話、すごく手際がいいって
若いオトコの子が ・・
他人の赤ん坊のオムツなんか替えれる フツ〜?
・・・ 触るのも苦手って多いはずよねえ
そうよ だからあんなコト、訊いたのよね
まだ出会って間もない頃 ― 声を掛けるにも気を使っていた頃。
それでも どうしても聞かずにはいられなかった・・・
「 あ ・・・ ぜ 009? 」
「 ? あ ・・・ え〜〜と ・・・? 」
茶髪の少年は 赤ん坊を抱っこしつつこちらを見た。
・・・ にこにこして。 ほっんとうに嬉しそうに。
「 え ・・・ 003 よ 」
「 あ そうだったね 3番さん。 なに? 」
「 ええ あのう ・・・ 」
「 うん? 」
「 009は赤ちゃんの相手が上手ね 世話も 」
「 え〜〜〜? だってさ なんかこう・・・
赤ん坊って ほんわかしない? 可愛いよね〜〜
ってもっとも彼の中身はスゴイけど 」
彼は 屈託なく笑うのだ。
「 ええ そうね ・・・ でも とても手際がいいのね 」
「 そうかなあ まあ 慣れてるから さ 」
「 そうなの? ふうん ・・・ 」
その時はそのまま 何気なく話題を変えてしまったけれど ー
慣れてる って 赤ん坊の世話が??
ベビー・シッターのバイトとかやってた??
でも男の子が ・・・
あ トシの離れた弟とか いたのかしら
「 そっか・・・ 」
広い庭のある邸宅で ( 例の夏ミカンの木とか生えていて )
立派で優しい両親と 小さな弟と 仲良く楽しく暮らした・・・?
もう彼女の妄想は止まらない。
きっとそうだわ!
きゃ〜〜〜 なんか 物語の主人公だわねえ・・・
もしかして・・・
上流階出身で 貴族とかなのかしら?
苗字に ド とか デ とかついてないけど・・・
お城に住んでいたのかも・・・
! でも。 ・・・ こんなコトになって。
ご両親はさぞかし ・・・
ずきん、と胸の奥が痛む。
一番最後に 彼が < 仲間 > になったのは つい最近 なのだ。
「 ・・・ あの ジョー? ジョーはこの辺りの出身なのでしょう? 」
「 あ うん そうだね〜 湘南育ち さ 」
「 ・・・ あの ・・・ お家に 帰らない の・・・? 」
「 え ー 」
「 だって ・・・ そのう ご両親 すごく心配しているでしょう??
探していらっしゃるのでは ないかしら 」
フランソワーズは ものすごく言葉を選んで選んでしまう。
「 ご ごめんなさい 余計なコト言って・・・でも 」
「 ううん 気にしてないから 」
にこ・・・ 彼は屈託なく微笑んだ。
そして ―
「 ― あ ぼく。 親の顔、知らないんだ 」
「 ・・・ え ・・・? 」
「 知らなかった? ぼくさ 教会の施設で育ったんだ
赤ん坊のころからさ ・・・ 」
「 ・・・ え ・・・ 」
「 だから ぼくが行方不明になっても気にかけてくれるヒトなんか いない 」
「 ・・・ ・・・ 」
フランソワーズは 固まってしまい、思考もなにもかも一瞬停止してしまった。
から〜〜〜ん ころ〜〜ん♪
次の瞬間 フランソワーズのココロの鐘が 高らかに鳴った。
このヒト この笑顔が 好き。
― わたし 彼に出会うために
彼を愛するために
サイボーグになったんだ ・・!
どうしてそういう風な思考に至ったのか ― 全然わからない。
でも! 直観的に感じてしまったのだ 閃いてしまったのだ。
そして ― しっかりと思い込んだ、瞬間に。
女子の思い込み は鉄壁だ。
たとえBGのミサイルでもどこかの超能力者の攻撃でも 難攻不落。
一見 忘れたかに見えるが と〜〜んでもない。
地下に隠し密に温め続ける ― それが 女子の思い込み!
その強さ 持続性の長さ を 多くのボンクラ・♂どもは気付いていない。
― それから まあ 紆余曲折が多々あったけれど
彼と彼女は 家庭を築き子供たちに恵まれた ・・というワケなのだ。
ほっんとうに ・・・
< お父さん > になるために
生まれてきたんじゃないの ジョー?
フランソワーズは 感心しきって夫の姿を眺めてしまう。
「 ・・・ あは もう二人ともぐっすり だよ 」
「 ・・・ すごい ・・・ 」
「 え? なにが 」
「 ジョーってば すごいわあ 天性の保育士さんだわ 」
「 え〜〜 なんで 」
「 だってチビ達の扱い方、天才的よ? 」
「 それは さ。 あのチビ達が きみとぼくのコドモ達だから だよ 」
「 そうなの? でも イワンの世話も上手だったでしょ 」
「 あ〜れは。 慣れ だってば。 施設でさんざんやってたから。
きみだってさ 最初から見れば随分手早くなったじゃん 」
「 ・・・ そりゃ。 毎日 二人分 ですから 」
「 二人分 シアワセだよなあ ・・・ 涙 でちゃうよ 」
「 ・・・ え ? 」
「 一人だって可愛いのにさ ウチは × ( かける ) 2 なんだぜ?
も〜〜〜 めっちゃ幸せじゃん ♪ 」
「 ・・・ ジョーってば ・・・ 」
彼は 本気で シアワセ 〜〜 と思っているのだ。
二人を同時に育てる 超〜〜〜大変さ は ジョーにとってはシアワセニ倍。
すご ・・・ い ・・・
大変さを楽しんでいる ってこと?
そうよねえ オムツ替えやら 夜中のミルク、
ちっともイヤな顔 してなかったわね
なんか楽しそう〜〜に やってたっけ・・・
「 わたし すばるが心配 」
「 え 」
「 だって めちゃくちゃ可愛いわよ?
あの笑顔に 勝てないもの。 ワガママを通してしまって・・・ 」
「 ふふふ ぼくも即行敗退だからな〜〜
でもさ 大丈夫だよ 多分。 ― ちゃんと テキ はいるよ 」
「 え て 敵? 」
「 う〜ん 敵 というか、最大の味方かなア 」
「 ?? 誰?? 」
「 あは 常に側にいる彼の半身 さ。 」
「 え あ すぴか ?? 」
「 きんこ〜〜ん♪ すぴかはさ 最強の守護の天使だな 」
「 しゅ 守護の天使ィ〜〜?? 」
クリスチャンの彼女には 常に背後に控える翼をもった存在を
連想してしまい 目を白黒している。
「 そ。 神様ってすごいなあ〜〜って思わない? 」
「 ・・・・ はあ・・ そう ねえ 」
天下無敵の笑顔のすばるクン ― でもね 神様はちゃ〜んと 天敵 を
遣わされている。
それが 同じ日に同じお父さん・お母さんから生まれた 姉。
島村 すぴかさん である。
彼女に すばるの笑顔 は 通じない。
ま〜 彼女にとってすばるは半分自分自身みたいな存在だから
自分が笑って それがなに?? ・・・という気分らしい。
「 だめ〜〜〜〜 おか〜さん だめ っていった。」
「 やあだ。 すぴかがさきだからね〜〜〜 」
「 すばる! ごはん たべなくちゃ だめ 」
すばるに対しては完全に指揮管理下におき、時に暴君・・・でもあるけれど
外敵からは 雄々しく?? 彼を護る。
すばるにちょっかいを出そうものなら すぴかは憤然と立ち向かってゆくのだ。
「 すぴか ・・・ ケンカしたらだめでしょう? 」
「 すばるのこと いじめた! あの子、すばるのかみ ひっぱった〜 」
「 そういう時にはね やめてね って言うのよ 」
「 いった! でも またひっぱったから ・・・ 」
「 それなら オトナの人に言うの。 わかった? 」
「 ・・ ぶ〜〜〜 」
元気と情熱のカタマリ、島村すぴか嬢は 正義の味方 でもあるのだった。
今 母は彼女の 暴走? を押されるのにあたふたしている。
双子達の行動範囲はどんどん広がってゆく。
裏庭は 温室だの洗濯モノ干し場だのハーブ畑だの・・・
ごたごたいろいろあるのだが ― それが楽しいらしい。
チビ達は わいわい・・・走り回っている。
すぴかなんか ちょいと転ぶくらいなんとも思っていない。
擦り剥いた膝小僧は 自分で舐めて治す! もちろんちゃんと完治する。
「 あ すぴか! その木はまだ登れないよ〜〜 」
「 え〜〜 」
すぴかが裏庭にある細っこい木に取りついている。
その木はすら〜〜〜っと伸びて 枝を上の方に広げている。
樹皮はつるり、といしていて 足を掛けるところもない。
さすがのすぴかも コアラみたいに抱き付いているだけだ。
「 まだ細いからね〜〜 無理に登ったら折れちゃうよ 」
「 ・・・ ふうん すぴかね〜 このはっぱ すき
つるつる ぴかぴかなんだもん。 」
つやつやした大きな葉っぱを すぴかはそう〜〜っと撫でている。
「 キレイだよねえ これはね 柿 さ。」
「 かき ? 」
「 そ。 秋に食べたの、覚えているかな〜〜〜 」
「 ・・・わかんない 」
「 オレンジ色の実なんだ 美味しいよ〜〜
」
「 このきに なるの ? 」
「 あ〜 これはまだだな〜〜 まだちっちゃいんだ
すぴか達と同じさ 」
「 ふうん ・・・ いつ なる? 」
「 う〜〜ん 柿 八年っていうからなあ 」
「 ??? かき はちねん ??? 」
「 そ。 そうだなあ すぴかが小学生になってから かな
」
「 ふうん・・・ 」
ジョーのリクエストで植えた 小さな柿はなんとか生育しているが
まだまだ 実を結ぶには至っていない。
その日から すぴかは毎日 < かき > に お水をあげて
周りの草を引き抜いたり している。
「 かきさあ〜〜ん おっきくなあれ〜〜 おっきくなあれ〜〜 」
「 すぴか これ なに 」
「 すばる〜 かきさん だよ。 おいしいみがなるんだって 」
「 え! あまい かな〜 」
「 あまいよ! ・・・ きっと 」
「 すばるもお水 あげる〜〜 あま〜くなあれ〜 」
表庭も裏庭も 家族の歴史と共に変わってゆく。
Last updated : 06.14.2022.
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********** 途中ですが
賑やかな時代、 庭の方もどんどん賑やか?に・・・
夏ミカン・ママレード作り は かつて名人の友がいました
・・・ どうしているかなあ ・・・ ( 遠い目 )