『 ぼうけん ! ― (3) ― 』
― パッション & ディザイア ―
ばさ ばさばさ ばさ −−−−
青空の下 鳩を思われる鳥が一羽、苦し気に羽ばたいていた。
「 ? あれ・・・ どうしたのかなあ 翼を傷めてる?
ほら おいで おいで〜〜〜 」
ジョーは 厩舎の庭で空に手を差し伸べた。
すっかり仲良くなった < 相棒 > の 世話をしていたのだ。
ひひ〜〜〜ん ぱか?
彼の側にいた 栗毛君、ブラウニー君も一緒に空を見上げている。
「 ブラウニーも誘ってくれる? ほら おいで〜〜〜 」
ばさ ・・・ ばさ −−−−−−
鳩はとうとう羽ばたくことができなくなり くるくると落下してきた。
「 わ ! 〜〜〜〜 っとぉ〜〜 大丈夫かい? 」
駆けだし なんとか鳩を受け止めた。
「 ・・・? 翼に怪我は ないよなあ ・・・
あ もしかしてすごく長い距離を飛んできたのかなあ ・・・
ほら 水 飲もうね 」
彼は鳩を抱いて厩舎に入っていった。
「 ― これは 挑戦状 だ 」
「 へ?? だって鳩ですよ? 」
厩舎に顔をだしたフランソワーズ姫は 彼の手元をみるとすぐに断言した。
「 そう 鳩だ。 その鳩の脚を見てみよ 」
「 脚? あ ! なんか巻き付いてる〜〜
」
「 丁寧に外してほしい。 」
「 はい。 ・・・ ほ〜ら 怖くないよ〜〜 」
ジョーは 案外上手に扱ったので鳩は大人しくしていた。
「 ・・ えっと〜〜 これ ですか。 わあ これ手紙? 」
「 そうだ。
」
「 ・・・ あ これ 姫君宛ですよ どうぞ 」
「 ありがとう 」
ジョーは 封筒を姫君に差し出した。
「 ! これは 封がしてある。 」
「 封? 」
「 そうだ。 これは錠前と同じで暗号なのだ 」
「 え〜〜〜 暗号?? 」
「 暗号を解かなければ手紙は読めない。 」
「 暗号・・・って だってこれ、手紙ですよね? 」
ジョーはもう一度封筒を観察する。
手紙には 薄い錠前のようなものが付いていて
暗号を入れないと開かない仕組みとみえる。
封筒には 宛名の下に 鍵はフランソワーズ姫に送った と書いてある。
ジョーと姫君は顔を見合わせる。
「 わたしに? ― 受け取っていないな。 」
「 ・・・あ! も もしかして ・・・ これかも〜〜 」
ジョーは ポケットの奥からあの封筒、横須賀の骨董店でもらった封筒を
引っ張りだした。
「 じょ〜 が持っていたのか? ・・・ わたし宛だ 」
「 え〜っと ・・・ そう ですねえ 」
フラン宛 なんだけど ・・・
うん この姫サマだって フランだから いっか
「 開けてよいか 」
「 どうぞ。 姫君宛です 」
「 うん ・・・ 」
果たして ― 封筒の中の古びた紙には数字が記してあった。
え〜〜〜 あのバアさん 保証書だって言ってたじゃん?
・・・ やっぱ ハメられたのかな ぼく・・・
「 009003。 なんのことだ? 」
姫君は数字を読み 首を傾げている。
「 あ ・・・ あ〜〜〜 さ さあ・・・?
( ! なんだってぼく達のナンバーを知ってるんだ!? )
ためしにこの数字を使ってみたらいかがですか 」
「 そうだな。 ― ! 開いた! 」
「 わあ〜〜 やっぱり! 」
「 ・・・・ 」
姫君はすぐに中の書面に目を通したが ― さっと顔色が変わった。
「 姫さま ・・・? 」
「 やはり な。 黒い幽霊 からだ。 」
「 え!? 」
「 ― 騎士たちを集めてくれ。 」
「 は はい! 」
ジョーは 城内の騎士達の住まいへすっとんでいった。
う〜〜〜 加速そ〜〜ち! って なんで出来ないんだ〜〜
「 姫君。 全員集まりました。 」
白銀の髪の騎士が 報告する。
「 ありがとう。 皆 聞いてくれ。
先ほど ― この 挑戦状 を受け取った。 黒い幽霊 からだ 」
おお〜〜〜 歴戦の騎士たちもどよめく。
「 あンのヤロども〜 いい加減に 」
「 静かにしろ 」
逸る赤毛を スキン・ヘッドが諫める。
「 けどよ〜〜 」
「 まずは姫君の話を聞け。 」
「 う〜〜〜
」
姫君は 穏やかな表情で騎士たちを眺めている。
「 姫君 失礼しました。 どうぞ お続けください 」
「 ありがとう ― 皆 聞いてほしい。 」
カサリ。 灰色の用紙が開かれた。
パッション王国 フランソワーズ姫
我は 黒い幽霊なり。
永年の望み、碧の瞳の姫を所望する。
我と勝負せよ。 隣国の王子を捕らえた
お前が勝てば 王子を解放しよう
「 なっ !! なんだと〜〜 あンのヤロ〜〜〜 」
「 無礼な・・・ 黒い幽霊のごときが! 」
「 ふふん 負け犬の遠吠えだ。 」
「 隣国の王子は ご無事か? 」
「 ふ〜ん 大きくでたねえ〜 こりゃ面白いかもな 」
騎士たちはわいわいと騒ぎたて ― でもその実、なんだか嬉しそうだ。
「 しまむら・じょ〜。 じょ〜 はどう思うか? 」
姫君は 黙って騎士たちを眺めていたが ふっとジョーを振り向いた。
「 へ? あ ・・・ ぼ ぼく ですか? 」
「 そうだ。 しまむら・じょ〜 は この挑戦状をどう思う? 」
「 え 〜〜っと。 あの〜〜 ぼくからも伺っていいですか 」
「 なんなりと。 」
「 ありがとうございます。 碧の瞳・・って。 黒い幽霊は姫君に
執着しているんですか? 」
「 ああ ・・・ 幼い日のわたしを浚い損ねて以来な 」
「 あ あの時から! 」
「 ?? 」
「 あ 失礼しました〜〜 黒い幽霊はずっと姫サマを狙っているのですか 」
「 ふふん 」
「 じょ〜 ヤツはなあ 無礼にも 姫君が16歳の祝いの日に
ぬああ〜〜んと 求婚してきたのさ! 噴飯モノであるな 」
スキン・ヘッドの騎士が 教えてくれた。
「 ・・・?? ふんぱん ・・・? 」
「 めっちゃ可笑しい ってことだよ 」
褐色の肌の騎士がこそ・・・っと耳打ちした。
「 あ そうなんだ? ありがとうです〜〜〜
え きゅ 求婚 ・・・って 婚活 ですか?! 」
「 ? なにかつ? 」
「 あ いえ ・・・ そのう〜 それで? 求婚は 」
「 ふん。 四人の求婚者が来たが 断わった。 」
「 もうな〜〜 すっげクールによ〜〜 薔薇の花をぱあ〜〜っと投げてよ〜
超〜〜 く〜〜る ! 」
「 ・・・ よかった・・・ 」
「 なにが? 」
「 い いえ なんでも ・・・ 」
「 しまむら・じょ〜? そなたは独り言の習性があるのか? 」
「 あ い いえ・・・ あのう 隣国の王子様って ・・・? 」
「 ああ ディザイア王国の世継ぎの君だ 」
「 浚われたちゃったんだ ・・・? 」
「 ヤツらは 狡猾で卑怯ものだ 」
「 そっか〜〜 じゃあ その王子様 助けるのですね 」
「 そうだ。 彼はわたしの婚約者だから 」
「 え?? え〜〜〜〜 こ こんやくしゃ?? 」
「 うむ。 生まれる前から わたしの父王と隣国の国王閣下が決められた 」
「 そ そ それで 姫サマは その王子様 を・・・? 」
「 うん? 」
「 そのう ・・・ 好き なんですか? 」
「 さあ わからない。 」
「 え?? だ だって婚約者 ・・・ 」
「 婚約者だが 逢ったことはないからな。
ディザイア国民には なかなかの人気で 大層ハンサムだ、というウワサだ。 」
「 ・・・ ハンサムな王子サマ か・・・ くっそ〜〜 負けないぞ! 」
「 なんだ? 」
「 い いえ ・・・ じゃあ そのハンサム王子さんを助けるのですか 」
「 ああ。 あの挑戦状は受けてたつ!
なにしろ わたし宛に届いたのだから 」
わ〜〜 それでこそ我らが姫君〜〜 わいわい〜〜
騎士たちは喝采する。
「 しまむら・じょ〜 そなたも一緒に来てほしい 」
「 姫さま! ・・・ あ で でも ぼく・・・ 弓もまだまだだし・・・
皆の足 ひっぱるだけ ・・・ 」
「 いや じょ〜は 大地の瞳を持つもの なのだから。
わたしを援けてほしい 」
「 うっわ〜〜〜 で でも ・・・ 」
「 しまむら・じょ〜 そなたは 王国を救う伝説の少年 なのだから 」
「 伝説の? う〜〜ん それは どうかなあ ・・・
で でも ぼくは なにがあっても姫君を護りますっ 」
「 お〜〜 よく言ったな 少年よ 」
スキン・ヘッドの騎士が どん、と背を押してくれた。
「 ありがとう しまむら・じょ〜。
では 騎士諸君! 我々は明日、 黒い幽霊退治に出立する。
王国の安泰のために そして 翡翠の森の平安のため
奴らを掃討し ディザイア王国の王子を救出するのだ 」
お〜〜〜〜 !!!
姫君の宣言に 騎士たちは奮い立つのだった。
ジョーも 元気に拳を振り上げた。
うっわ〜〜〜 フランってばカッコいいなあ♪
覚悟しろ〜〜 ぶらっく・ご〜すと め !
♪ ちゃかちゃん ちゃららっちゃちゃ〜〜〜♪
ジョーのココロの中で BGM が鳴り響く☆
「 ふきす〜さぶ♪ っとぉ あ。 婚約者 とか言ってたな・・・?
どんなヤツなのかな〜〜 けど オトコのくせに
敵につかまっちゃう なんて 弱すぎないか? だらしないヤツ〜〜 」
「 なにぶつぶつ言ってるんだい? 」
褐色の肌の騎士が 聞きつけたみたいだ。
「 あ ・・・ あのう〜〜〜 隣の国王子様って ・・・
なんか弱っちくありませんか? 」
「 う〜〜ん 僕達もあんまりよく知らないんだけどね
でも 姫君が決めたことだからさ しっかりガードするのが
僕たちの使命さ。 」
「 あ そうですよね〜〜 うん なんかカッコいいなあ 」
「 ほらほら しっかり準備しておかなくちゃダメだよ。
黒い幽霊 は 北の荒地の洞窟に住んでいるからね
討伐の旅は結構長旅になるよ。 」
「 へえ そうなですか・・・ え ずっと馬で行くのですか 」
「 ?? 歩いてゆくつもりかい? 」
「 え そういう意味じゃ ・・・ クルマはないのかあ 」
「 クルマ?? なんだい それ 」
「 い いえ ・・・ はい さあ クビクロ〜〜 おいで 」
ジョーは愛馬の栗毛君を呼んだ。
「 クビクロ?? ブラウニーだろ そのコは 」
「 え うん まあ ニック・ネームみたいなもんですよ
さあ おいで〜〜 」
ひひ〜〜ん ・・・ おいでおいで〜〜
鼻づらを押し付けてくる愛馬と一緒に ジョーは厩舎に戻っていった。
― 翌朝 フランソワーズ姫 と 騎士たち一行は出発した。
矢筒にたっぷりと矢を補充し 非常食に、と殻ごとのクルミが配られた。
「 これは 妃が手づから拾い集め 陽に乾したものだ 」
ジャン王は騎士たち一人一人に 配った。
おお〜〜 忝い 〜〜〜 ありがとうございます
彼らは片膝をつき 恭しく頂戴した。
「 兄上 ありがとうございます 」
「 姫 ・・・ 」
ジャン王は 万感をこめて妹姫をみつめている。
「 兄上。 では行って参ります。 」
「 うむ。 姫、気をつけて。 騎士の諸君。 宜しく頼むぞ 」
「 陛下! 」
兄、ジャン王の見送りをうけ 彼らは意気揚々と王城を後にした。
翡翠の森は 相変わらず鬱蒼としていたが
大勢で進んでゆくので 彼らは明るく勇壮な雰囲気に包まれている。
小暗い森を抜けると 荒地が広がっていた。
ところどころに 薮がこんもりとしていて陰を作っている。
「 じょ〜 気をつけろ。 薮の陰には魔が潜むというぞ 」
スキン・ヘッド氏が ジョーに声をかける。
「 あ ・・・ ども ・・・ クビクロ 大丈夫かい 」
ひひん〜 栗毛君は元気な返事をしてくれる。
「 あの・・・ 魔って なんですか 」
「 うん? ああ この先にはゴブリンの森があって ・・・
そこはゴブリンの住処なのだ。 」
「 ゴブリン? ・・・ 鬼 ?? 」
「 まあね ちっこいヤツらだけど 通行人にちょいちょいワルサを
するのさ。 じょ〜 気をつけろよ 」
「 は はい ・・・ ふうん 鬼、かあ ・・・
あ あれ ・・・・ これ は 」
ジョーは目の前に落ちた白いハンカチに気づいた。
「 誰のかなあ 」
彼は身軽に馬から降りると 拾いあげた。
「 わあ 〜〜 レースのハンカチだあ〜〜 ふ ・・・ いい香・・・
あ もしかして姫君の かな
」
「 しまむら・じょ〜 はぐれるなよ〜〜 」
「 あ はあい 」
ジョーは ハンカチをポケットに突っ込むと急いで再び馬に戻った。
かぽ かぽ かぽ ・・・
一行は荒野を抜けて また薄暗い森に入ってゆく。
こぽ こぽ こぽ ・・・ ちゃぷん
「 あ ・・・? 水音がしますね 」
「 お。 よく気がついたな。 ゴブリンの森の手前には
水晶の泉 があるのだ。 」
白銀の騎士が じょ〜 を振り向く。
「 しまむら・じょ〜。 すまんが水を汲んでおいてくれるか 」
「 はい! 」
「 そこの脇道の先に泉がある。 我々は先に進むが 歩みを緩めるから
急がなくていい、追いかけておいで。 」
「 はい ! 」
初めて < 仕事 > をもらい ジョーは張り切って
栗毛君とともに 脇道に入った。
「 ・・・ あ 水面がみえた! わぁ〜〜〜 キレイな水だなあ
あ クビクロ、 お前もたくさん飲みなね 」
ひひん 〜〜〜
彼は 馬上から降り、革袋を担ぎ、泉に近づいていった。
ちゃぽん ・・・
透明な水面は周囲の緑と空の青を映し取り、涼し気に揺れている。
「 ひゃあ〜〜 冷たいなあ いい気持ちだな 」
ジョーは手を浸し 水の感触を楽しむ。
「 あ〜ら オトコ前の兄さん 少し休んでゆかない? 」
不意に背後から声が飛んできた。
「 ? ! だ 誰だ っ ? 」
「 うっふっふ〜〜 わたくし? わたくしは たまぁら。
ゴブリンの森の王女よぉ〜〜 」
「 た まあら?? 」
驚いて振り向けば 薄紫の衣をまとった薄紫の髪の女が立っていた。
「 お前はだあれ。 勝手にわたくしの泉に手をつけたわね 」
「 え・・・ この泉は 森の泉 なんじゃないんですか?
森にあるものは ここを通る生き物、すべてのものだと思いますけど 」
「 そんなこと 誰が決めたの?
わたくしは この森の女王〜〜 だからこの森のものは全てわたくしのものよ 」
「 げ〜〜〜 やっちゃらんね〜な〜〜〜 コイツ。 じゃあいいよ。
別の水源で水をくむから。 」
ジョーはむっとしたが ―
こんなの、相手にしてるヒマ ないもんね〜〜
と 切り替え、クビクロの側に寄った。
「 お待ち。 お前とその馬が飲んだ水も お返し。
この泉の水はぜ〜〜〜んぶ わたくしのものよ 」
「 はあ?? なに言ってんだ? そんなに拘るんだったら立ち入り禁止、の
立て札でも立てておくんだな〜 知るかっての! 」
ジョーは 紫オンナを無視し 馬に乗ろうとした。
「 あ ・・・ 待って ・・・ ハンサムな騎士さ〜〜ん
ごめんなさい 気を悪くして? 」
「 ・・・ あったりまえ。 そこ どいてくれます? 」
愛馬の前に寄ってきた紫オンナ、いや 魔女・たまあら に
ジョーは素っ気なく言った。
「 ああ〜〜ん そんな顔 しないでぇ〜〜〜
ん〜〜 いいわ アナタなら。 どうぞ この馬さんもたくさん飲んで 」
「 ・・・・・・ 」
「 ねえったら そんな目で見ないで・・・
わたくし ・・・ とても困っていますの。 」
「 ・・・ え 」
「 ずっと・・・ ゴブリンに捕えられていて ・・・
ええ この森は以前は肥沃な畑が広がるわたくしの国の領土でした ・・・
でも ある日やってきたゴブリン共に占領されてしまい ・・・
わたくしはこの泉の側に幽閉されてしまって ・・・ 」
「 そ それはお気の毒に 」
「 でしょう??? お願い 助けて・・・ 」
「 助けるっていっても ・・・ ぼくはなにもできません。
仲間たちと先を急ぐので 失礼します。 さあ 行こう クビクロ 」
ジョーは さっと愛馬に跨った。
「 あ・・・ ねえ お願いしますわ・・・
ゴブリンの呪いは わたくしを真に愛する殿方の < 愛の力 > で!
消えてなくなるのです〜〜〜 」
「 ・・・ 誰か他の人に頼んでくださいよ じゃ 」
「 あ 待って ・・・ じゃあせめて お土産をどうぞ?
ほら・・・ この森で採れた野イチゴです。 どうぞ? 」
たまあら は 籠に山盛りの真っ赤な野イチゴを差し出した。
「 ・・・ じゃ じゃあ 一つだけ 」
かなり咽喉が乾いていたので ジョーは一粒だけイチゴを摘まみあげた。
「 ほら ほら〜〜〜 召しあがれ? さあ 」
「 ・・・ 」
ジョーはじ〜〜っと掌のイチゴを見つめている。
魔女・たまあら はチラチラ・・・ その様子をながめつつ
満面の笑みですり寄ってくる。
「 ねぇ〜〜 このイチゴを食べて この森に棲まない?
一緒に暮らしましょうよう〜〜〜 そして共にこの森を統べてくれる?
わたくし達の素晴らしい子孫たちが この王国を支配するようになるわ 」
「 え。 ― ここはディザイア王国の領土ですよ? 」
「 いいえ〜〜 もともとはわたくしの土地だったのです。
千年も前からここは わたくしの地 ・・・ 」
「 せ 千年?? ってことは ・・・・ 」
ぽとり。 ジョーの手から野イチゴが落ちた。
ひひ〜〜ん かっ! そこをすかさず愛馬の栗毛君が蹄で蹴散らした。
「 あ・・・ わあ 〜〜〜 なんだ?? 」
潰れた苺からは ・・・ 毒々しい黒い汁が飛び散り周囲の草はしゅうしゅうと
煙を上げだした。
「 ! こ これがのイチゴの正体か 〜〜 」
「 ・・・ くっそ〜〜〜〜 こうなれば一撃で憑り殺してくれるぅ〜〜〜 」
ぼわわ〜〜ん ・・・・ 薄紫のオンナ消え でかい蛇が現れた。
「 うっぴゃ・・・ コレがアイツの正体かあ〜〜
どけっ! むやみな殺生をしたくない。 森の奥の巣にでも帰れ! 」
「 ヴ〜〜〜〜〜 覚悟せよ〜〜〜 」
シャア〜〜〜〜 蛇が鎌首を擡げ 真っ赤な口を開け襲ってくる。
「 む ・・・ これでもくらえっ ! 」
ジョーは腰に付けていたクルミを殻ごと投げた。
「 ぐ・・・? ぐう〜〜〜〜 」
「 ふん。 ぼくには ちゃんと想いをよせる女性 ( ひと ) がいるんだ〜
このヒトのために ぼくは生きているんだから〜〜 」
ひらり ひらり。 彼は 小さなハンカチを振った。
ほわ〜〜〜ん ・・・ 花の香、芳香が漂う
「 あ ・・ これ フランの好きな香りだよ〜〜う ・・・
フラン〜〜 ぼくはどこに居ても フランを護るんだあ 」
ちゅ。 ジョーは ちょこっとだけそのハンカチにキスをした。
「 ぐ わあ〜〜〜〜〜〜〜〜 愛のチカラ には ・・・ 」
しゅう〜〜〜〜 ・・・ 大蛇はみるみる縮みミミズくらいの大きさになった。
「 へえ〜〜〜 ホントはこんなちっぽけな姿なのか?
さあ もうワルサするんじゃないよ。 森の奥に帰れ 」
ジョーは むじむじ這いずってゆく小蛇を見逃してやるのだった。
「 ふん ・・・ あ いっけね〜〜〜 水 水〜〜〜
ごめん クビクロ〜〜 も一回 泉まで戻ってくれるかい? 」
「 ひひ〜〜ん ! 」
「 ありがとう! 皆の水だもんな たくさん持って行かなくちゃ 」
「 ぶるるるる 」
泉で たっぷりと水を汲んだ。
清んだ水は 本当に冷たく、火照った身体を鎮めてくれる。
「 ・・・ ん〜〜〜〜 美味しい ! クビクロ 飲んだかい 」
「 ぶ〜〜るるるる ! 」
ぱしゃり。 クビクロは蹄で水を跳ね飛ばす。
「 あはは そうか 気持ちいいか〜〜
よおし ・・・ ちょっと重いけどしばらく頑張ってくれよ〜〜 」
「 ひひ〜〜ん 」
かぱ かぱ かぱ 〜〜〜〜〜
栗毛色の馬は 勢いよく駆けだした。
「 姫君 〜〜〜〜 」
「 ・・・ ? ああ しまむら・じょ〜 水汲み ごくろう。 」
「 遅くなりました。 水は皆さんに配りました。 」
ジョーは フランソワーズ姫一行にほどなくして追い付いた。
騎士たちは 冷たい水に喜び ジョーの背をぱんぱん叩いてくれた。
「 あ あのぅ ・・・ これ ・・・ 」
ジョーは報告をしてから あのハンカチを取りだした。
「 もしかして 姫君のですか ? 」
「 ああ 拾ってくれたのか ありがとう。 しまむら・じょー のものだ 」
「 え?? 」
「 じょ〜 が それを持っていておくれ。 」
「 は は はい〜〜〜〜♪ 」
わっはは〜〜〜〜〜ん ♪ ぼくのお護りだあ〜〜〜い♪
「 あ あのう〜〜 この花 どうぞ! 」
ジョーは 数本の白い花を差し出した。
「 ? ああ 可愛い花だなあ 」
「 さっきの泉の側に咲いてて・・・ お好きかなあ〜〜って。
どうぞ 受け取ってください 」
「 ・・・ ありがとう しまむら・じょ〜 」
フランソワーズ姫 は 微笑んでその花を受け取りそのまま襟元の
ボタン・ホールに止めた。
うっひゃ〜 可愛いなあ〜 うっひゃあ〜〜
ジョーは その笑顔にほけ〜〜〜っと見とれてしまう。
「 わあ〜〜 よくお似合いですぅ 」
「 ありがとう。 皆のもの 出立しよう。 先は長い。 」
「 は はいっ 」
おう〜〜 騎士らは声をあげ 馬達の首を廻らせた。
カッ カッ カッ ・・・・ カッポ カッポ
姫君と騎士たちは ゴブリンの森 の中を進んでゆく。
「 この森は深いのですか? 」
殿をゆくジョーは 隣の褐色の騎士に尋ねた。
「 あ〜 そうだねえ 森の向うに荒野があってその北端に洞窟があるんだ。
そこに 」
「 あ そこに 黒い幽霊 が? 」
「 そうなんだ〜〜 」
「 ふうん ・・・ あ 黒い幽霊 ってどんなヤツです? 」
「 うん・・・ 正体はよくわからないんだ。 いつも黒装束でさ・・・
そうそう アイツってばフラン姫の16歳の祝いの席にやってきたんだよ
」
「 へ ・・・え〜〜〜 でも よく王宮に入れましたね 」
「 まあ 祝賀の宴は仮面舞踏会だったからね〜 」
「 あ 皆 顔を隠してるから ・・・ 」
「 そうだよ とんでもないヤツさ。 」
「 で どんなヤツだったですか? 姫君に気があったのでしょ? 」
「 う〜〜ん 僕らにはわからなかったけど ・・・ 」
「 素顔はわからない しかし
ダンスは下手だったな。 」
「 へ?? あ 姫さま 」
いつの間にか横に下がっていた姫君が ぼそり と言った。
「 そ〜なんですかあ〜〜〜 ふ〜〜ん・・・・
あ〜〜〜 きっと姫サマに首ったけなんですよお 」
「 ・・・ アイツは なにより金ピカモノが好きなはずだ。
黒い幽霊は強欲でも有名なのだ。 」
「 へえ・・・ そんなヤツが隣国の王子様を捕らえるなんて! 」
「 仔細はわからない。 しかしあの挑戦状はわたし宛だ。
行かねばならない。 」
「 はい! ( うっぴゃ〜〜〜 フラン かっこい〜〜〜 ) 」
カポ カポ カポ −−−− 一行はゴブリンの森を抜けてゆく。
「 道をお急ぎの御方〜 」
またまた妙な声が 道脇の薮から飛んできた。
「 何者かっ!? 」
赤毛の騎士が鋭く誰何する。
「 お〜〜っと のっぽのお兄さん。 そんな怖い声、ださないで 」
「 何者か。 答えよっ 答えないのなら 」
カチャン。 赤毛はボウガンを構えた。
「 お〜〜っとぉ〜 危ないなあ・・・
わかりました ― 私は AI国の か〜る王子 〜〜 」
ガサ ゴソ ・・・
薮の中からキンキラキンの衣装に身を固めた人物が 現れた。
Last updated : 05,21,2019.
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*********** 途中ですが
え〜〜 元ネタの 基礎英語2 は ますます混迷?
こちらは ゼロナイ展開〜〜〜 (*^^)v
まだ 続きます〜〜〜 ☆