『  ぼうけん !  ― (3) ―  』

     ―  パッション ディザイア ― 

 

 

 

 

 

 

     ばさ ばさばさ  ばさ  −−−−

 

青空の下 鳩を思われる鳥が一羽、苦し気に羽ばたいていた。

 

「 ?  あれ・・・ どうしたのかなあ  翼を傷めてる?

 ほら おいで おいで〜〜〜 」

ジョーは 厩舎の庭で空に手を差し伸べた。

すっかり仲良くなった < 相棒 > の 世話をしていたのだ。

 

    ひひ〜〜〜ん  ぱか?

 

彼の側にいた 栗毛君、ブラウニー君も一緒に空を見上げている。

「 ブラウニーも誘ってくれる?  ほら おいで〜〜〜 」

 

      ばさ   ・・・ ばさ  −−−−−−

 

鳩はとうとう羽ばたくことができなくなり くるくると落下してきた。

「 わ !  〜〜〜〜  っとぉ〜〜  大丈夫かい? 」

駆けだし なんとか鳩を受け止めた。

「 ・・・? 翼に怪我は  ないよなあ ・・・

 あ もしかしてすごく長い距離を飛んできたのかなあ ・・・

 ほら 水 飲もうね 」

彼は鳩を抱いて厩舎に入っていった。

 

 

「 ― これは 挑戦状 だ 

「 へ??  だって鳩ですよ? 」

厩舎に顔をだしたフランソワーズ姫は 彼の手元をみるとすぐに断言した。

「 そう 鳩だ。 その鳩の脚を見てみよ 」

「 脚?  あ !  なんか巻き付いてる〜〜  

「 丁寧に外してほしい。 」

「 はい。  ・・・ ほ〜ら 怖くないよ〜〜 」

ジョーは 案外上手に扱ったので鳩は大人しくしていた。

「 ・・ えっと〜〜 これ ですか。 わあ これ手紙? 

「 そうだ。 

「 ・・・ あ これ 姫君宛ですよ どうぞ 」

「 ありがとう 」

ジョーは 封筒を姫君に差し出した。

「 !  これは 封がしてある。 

「 封? 」

「 そうだ。 これは錠前と同じで暗号なのだ 」

「 え〜〜〜 暗号?? 」

「 暗号を解かなければ手紙は読めない。 」

「 暗号・・・って だってこれ、手紙ですよね? 」

ジョーはもう一度封筒を観察する。

手紙には 薄い錠前のようなものが付いていて

暗号を入れないと開かない仕組みとみえる。

封筒には 宛名の下に  鍵はフランソワーズ姫に送った  と書いてある。

ジョーと姫君は顔を見合わせる。

「 わたしに? ― 受け取っていないな。 」

「 ・・・あ!  も もしかして ・・・ これかも〜〜 」

ジョーは ポケットの奥からあの封筒、横須賀の骨董店でもらった封筒を

引っ張りだした。

「  じょ〜 が持っていたのか?  ・・・ わたし宛だ 」

「 え〜っと ・・・ そう ですねえ 」

 

    フラン宛 なんだけど ・・・ 

    うん この姫サマだって フランだから いっか

 

「 開けてよいか 」

「 どうぞ。 姫君宛です 」

「 うん ・・・ 」

果たして ― 封筒の中の古びた紙には数字が記してあった。

 

    え〜〜〜 あのバアさん 保証書だって言ってたじゃん?

    ・・・ やっぱ ハメられたのかな ぼく・・・

 

「 009003。 なんのことだ? 

姫君は数字を読み 首を傾げている。

「 あ ・・・ あ〜〜〜  さ さあ・・・?

 ( ! なんだってぼく達のナンバーを知ってるんだ!? )

 ためしにこの数字を使ってみたらいかがですか  」

「 そうだな。   ―  !  開いた! 」

「 わあ〜〜 やっぱり! 」

「 ・・・・ 」

姫君はすぐに中の書面に目を通したが ―  さっと顔色が変わった。

 

「 姫さま ・・・? 」

「 やはり な。  黒い幽霊 からだ。 」

「 え!? 」

「 ―  騎士たちを集めてくれ。 」

「 は はい! 

ジョーは 城内の騎士達の住まいへすっとんでいった。

 

    う〜〜〜 加速そ〜〜ち! って なんで出来ないんだ〜〜

 

 

「 姫君。 全員集まりました。 」

白銀の髪の騎士が 報告する。

「 ありがとう。  皆 聞いてくれ。

 先ほど ― この 挑戦状 を受け取った。 黒い幽霊 からだ 」

 

   おお〜〜〜  歴戦の騎士たちもどよめく。

 

「 あンのヤロども〜 いい加減に 

「 静かにしろ 

逸る赤毛を スキン・ヘッドが諫める。

「 けどよ〜〜 

「 まずは姫君の話を聞け。 」

「 う〜〜〜  

姫君は 穏やかな表情で騎士たちを眺めている。

「 姫君 失礼しました。  どうぞ お続けください 

「 ありがとう  ―  皆 聞いてほしい。 」

 

   カサリ。  灰色の用紙が開かれた。

 

 

    パッション王国  フランソワーズ姫 

 

      我は 黒い幽霊なり。 

      永年の望み、碧の瞳の姫を所望する。

      我と勝負せよ。 隣国の王子を捕らえた 

      お前が勝てば 王子を解放しよう  

 

 

「 なっ !! なんだと〜〜 あンのヤロ〜〜〜  」

「 無礼な・・・ 黒い幽霊のごときが! 」

「 ふふん  負け犬の遠吠えだ。 」

「 隣国の王子は ご無事か? 」

「 ふ〜ん  大きくでたねえ〜 こりゃ面白いかもな 」

 

騎士たちはわいわいと騒ぎたて ― でもその実、なんだか嬉しそうだ。

 

「 しまむら・じょ〜。 じょ〜 はどう思うか? 

姫君は 黙って騎士たちを眺めていたが ふっとジョーを振り向いた。

「 へ? あ ・・・ ぼ ぼく ですか? 」

「 そうだ。 しまむら・じょ〜 は この挑戦状をどう思う? 」

「 え 〜〜っと。  あの〜〜 ぼくからも伺っていいですか 」

「 なんなりと。 」

「 ありがとうございます。 碧の瞳・・って。 黒い幽霊は姫君に

 執着しているんですか? 」

「 ああ ・・・ 幼い日のわたしを浚い損ねて以来な 」

「 あ あの時から! 」

「 ??  」

「 あ 失礼しました〜〜  黒い幽霊はずっと姫サマを狙っているのですか 」

「 ふふん 」

「 じょ〜 ヤツはなあ 無礼にも 姫君が16歳の祝いの日に

 ぬああ〜〜んと 求婚してきたのさ!  噴飯モノであるな  」

スキン・ヘッドの騎士が 教えてくれた。

「 ・・・??  ふんぱん ・・・? 

「 めっちゃ可笑しい ってことだよ 」

褐色の肌の騎士がこそ・・・っと耳打ちした。

「 あ そうなんだ? ありがとうです〜〜〜

 え きゅ 求婚 ・・・って 婚活 ですか?! 」

「 ? なにかつ?  」

「 あ いえ ・・・ そのう〜 それで? 求婚は 」

「 ふん。 四人の求婚者が来たが 断わった。 」

「 もうな〜〜 すっげクールによ〜〜  薔薇の花をぱあ〜〜っと投げてよ〜 

 超〜〜 く〜〜る ! 」

「 ・・・ よかった・・・ 」

「 なにが? 」

「 い いえ なんでも ・・・ 」

「 しまむら・じょ〜?  そなたは独り言の習性があるのか? 」

「 あ い いえ・・・ あのう 隣国の王子様って ・・・? 」

「 ああ ディザイア王国の世継ぎの君だ 」

「 浚われたちゃったんだ ・・・? 」

「 ヤツらは 狡猾で卑怯ものだ 」

「 そっか〜〜   じゃあ その王子様 助けるのですね 」

「 そうだ。 彼はわたしの婚約者だから 」

「 え?? え〜〜〜〜 こ こんやくしゃ?? 」

「 うむ。 生まれる前から わたしの父王と隣国の国王閣下が決められた 」

「 そ  そ  それで   姫サマは その王子様 を・・・? 」

「 うん? 」

「 そのう ・・・ 好き なんですか? 」

「 さあ わからない。 」

「 え?? だ だって婚約者 ・・・ 」

「 婚約者だが 逢ったことはないからな。 

 ディザイア国民には なかなかの人気で 大層ハンサムだ、というウワサだ。 」

「 ・・・ ハンサムな王子サマ か・・・ くっそ〜〜 負けないぞ! 」

「 なんだ? 」

「 い いえ ・・・ じゃあ そのハンサム王子さんを助けるのですか 」

「 ああ。  あの挑戦状は受けてたつ! 

 なにしろ わたし宛に届いたのだから  」

 

  わ〜〜 それでこそ我らが姫君〜〜  わいわい〜〜

 

騎士たちは喝采する。

「 しまむら・じょ〜  そなたも一緒に来てほしい 」

「 姫さま!  ・・・ あ で でも ぼく・・・ 弓もまだまだだし・・・

 皆の足 ひっぱるだけ ・・・ 」

「 いや じょ〜は 大地の瞳を持つもの なのだから。

 わたしを援けてほしい 」

「 うっわ〜〜〜  で でも ・・・ 」

「 しまむら・じょ〜 そなたは 王国を救う伝説の少年 なのだから 」

「 伝説の? う〜〜ん それは どうかなあ ・・・ 

 で でも ぼくは なにがあっても姫君を護りますっ 」

「 お〜〜  よく言ったな 少年よ 」

スキン・ヘッドの騎士が どん、と背を押してくれた。

「 ありがとう しまむら・じょ〜。

 では 騎士諸君!  我々は明日、 黒い幽霊退治に出立する。

 王国の安泰のために そして 翡翠の森の平安のため 

 奴らを掃討し ディザイア王国の王子を救出するのだ 」

 

     お〜〜〜〜  !!!

 

姫君の宣言に 騎士たちは奮い立つのだった。

ジョーも 元気に拳を振り上げた。

 

     うっわ〜〜〜  フランってばカッコいいなあ♪

     覚悟しろ〜〜 ぶらっく・ご〜すと め !

 

 ♪ ちゃかちゃん ちゃららっちゃちゃ〜〜〜♪  

ジョーのココロの中で BGM が鳴り響く☆

 

「 ふきす〜さぶ♪ っとぉ    あ。 婚約者 とか言ってたな・・・?

 どんなヤツなのかな〜〜  けど オトコのくせに

 敵につかまっちゃう なんて 弱すぎないか? だらしないヤツ〜〜 」

「 なにぶつぶつ言ってるんだい? 」

褐色の肌の騎士が 聞きつけたみたいだ。

「 あ ・・・ あのう〜〜〜 隣の国王子様って ・・・

 なんか弱っちくありませんか? 」

「 う〜〜ん 僕達もあんまりよく知らないんだけどね

 でも 姫君が決めたことだからさ しっかりガードするのが

 僕たちの使命さ。 」

「 あ そうですよね〜〜 うん なんかカッコいいなあ 」

「 ほらほら しっかり準備しておかなくちゃダメだよ。

 黒い幽霊 は 北の荒地の洞窟に住んでいるからね

 討伐の旅は結構長旅になるよ。 」

「 へえ そうなですか・・・ え ずっと馬で行くのですか 」

「 ?? 歩いてゆくつもりかい? 」

「 え  そういう意味じゃ ・・・ クルマはないのかあ 」

「 クルマ?? なんだい それ 」

「 い いえ ・・・   はい さあ クビクロ〜〜 おいで 」

ジョーは愛馬の栗毛君を呼んだ。

「 クビクロ??  ブラウニーだろ そのコは 」

「 え  うん  まあ ニック・ネームみたいなもんですよ

 さあ おいで〜〜 」

 

   ひひ〜〜ん ・・・   おいでおいで〜〜

 

鼻づらを押し付けてくる愛馬と一緒に ジョーは厩舎に戻っていった。

 

 

 ― 翌朝   フランソワーズ姫 と 騎士たち一行は出発した。

矢筒にたっぷりと矢を補充し 非常食に、と殻ごとのクルミが配られた。

「 これは 妃が手づから拾い集め 陽に乾したものだ 」

ジャン王は騎士たち一人一人に 配った。

 

   おお〜〜 忝い 〜〜〜  ありがとうございます

 

彼らは片膝をつき 恭しく頂戴した。

「 兄上  ありがとうございます 」

「 姫 ・・・ 

ジャン王は 万感をこめて妹姫をみつめている。

「 兄上。 では行って参ります。 」

「 うむ。 姫、気をつけて。 騎士の諸君。 宜しく頼むぞ 」

「 陛下! 」

 

兄、ジャン王の見送りをうけ 彼らは意気揚々と王城を後にした。

翡翠の森は 相変わらず鬱蒼としていたが

大勢で進んでゆくので 彼らは明るく勇壮な雰囲気に包まれている。

 

小暗い森を抜けると 荒地が広がっていた。

ところどころに 薮がこんもりとしていて陰を作っている。

「 じょ〜 気をつけろ。 薮の陰には魔が潜むというぞ 」

スキン・ヘッド氏が ジョーに声をかける。

「 あ ・・・ ども ・・・ クビクロ 大丈夫かい 

  ひひん〜  栗毛君は元気な返事をしてくれる。

「 あの・・・ 魔って なんですか 」

「 うん?  ああ この先にはゴブリンの森があって ・・・

 そこはゴブリンの住処なのだ。 

「 ゴブリン?  ・・・ 鬼 ?? 」

「 まあね ちっこいヤツらだけど 通行人にちょいちょいワルサを

 するのさ。  じょ〜 気をつけろよ 」

「 は はい ・・・ ふうん 鬼、かあ ・・・ 

 あ  あれ ・・・・ これ は 」

ジョーは目の前に落ちた白いハンカチに気づいた。

「 誰のかなあ 」

彼は身軽に馬から降りると 拾いあげた。

「 わあ 〜〜 レースのハンカチだあ〜〜  ふ ・・・ いい香・・・

 あ もしかして姫君の かな  

「 しまむら・じょ〜 はぐれるなよ〜〜 」

「 あ はあい 」

ジョーは ハンカチをポケットに突っ込むと急いで再び馬に戻った。  

 

 

  かぽ かぽ かぽ  ・・・

 

一行は荒野を抜けて また薄暗い森に入ってゆく。

 こぽ こぽ こぽ ・・・ ちゃぷん 

「 あ ・・・?  水音がしますね 

「 お。 よく気がついたな。  ゴブリンの森の手前には

 水晶の泉 があるのだ。 」

白銀の騎士が じょ〜 を振り向く。

「 しまむら・じょ〜。  すまんが水を汲んでおいてくれるか 」

「 はい! 」

「 そこの脇道の先に泉がある。 我々は先に進むが 歩みを緩めるから

 急がなくていい、追いかけておいで。 」

「 はい ! 」

初めて < 仕事 > をもらい ジョーは張り切って

栗毛君とともに 脇道に入った。

「 ・・・ あ 水面がみえた!  わぁ〜〜〜 キレイな水だなあ 

 あ クビクロ、 お前もたくさん飲みなね 」

   ひひん 〜〜〜

彼は 馬上から降り、革袋を担ぎ、泉に近づいていった。 

 

    ちゃぽん ・・・ 

 

透明な水面は周囲の緑と空の青を映し取り、涼し気に揺れている。

「 ひゃあ〜〜 冷たいなあ  いい気持ちだな 」

ジョーは手を浸し 水の感触を楽しむ。

 

「 あ〜ら  オトコ前の兄さん 少し休んでゆかない? 」

 

不意に背後から声が飛んできた。

「 ? !  だ 誰だ っ ? 」

「 うっふっふ〜〜 わたくし?  わたくしは たまぁら。

 ゴブリンの森の王女よぉ〜〜 」

「 た まあら?? 」

驚いて振り向けば 薄紫の衣をまとった薄紫の髪の女が立っていた。

「 お前はだあれ。  勝手にわたくしの泉に手をつけたわね 」

「 え・・・ この泉は 森の泉 なんじゃないんですか?

 森にあるものは ここを通る生き物、すべてのものだと思いますけど  」

「 そんなこと 誰が決めたの?

 わたくしは この森の女王〜〜 だからこの森のものは全てわたくしのものよ 」

「 げ〜〜〜  やっちゃらんね〜な〜〜〜 コイツ。   じゃあいいよ。

 別の水源で水をくむから。 」

ジョーはむっとしたが ―

 

    こんなの、相手にしてるヒマ ないもんね〜〜

 

と 切り替え、クビクロの側に寄った。

「 お待ち。 お前とその馬が飲んだ水も お返し。

 この泉の水はぜ〜〜〜んぶ わたくしのものよ  」

「 はあ??  なに言ってんだ? そんなに拘るんだったら立ち入り禁止、の

 立て札でも立てておくんだな〜  知るかっての! 」

ジョーは 紫オンナを無視し 馬に乗ろうとした。

 

「  あ ・・・ 待って ・・・ ハンサムな騎士さ〜〜ん 

 ごめんなさい 気を悪くして? 」

「 ・・・ あったりまえ。 そこ どいてくれます? 」

愛馬の前に寄ってきた紫オンナ、いや 魔女・たまあら に

ジョーは素っ気なく言った。

「 ああ〜〜ん そんな顔 しないでぇ〜〜〜 

 ん〜〜 いいわ アナタなら。 どうぞ この馬さんもたくさん飲んで 」

「 ・・・・・・ 」

「 ねえったら そんな目で見ないで・・・

 わたくし ・・・ とても困っていますの。 」

「 ・・・ え 

「 ずっと・・・ ゴブリンに捕えられていて ・・・

ええ この森は以前は肥沃な畑が広がるわたくしの国の領土でした ・・・

 でも ある日やってきたゴブリン共に占領されてしまい ・・・

 わたくしはこの泉の側に幽閉されてしまって ・・・ 」

「 そ  それはお気の毒に 」

「 でしょう???   お願い 助けて・・・ 」

「 助けるっていっても ・・・ ぼくはなにもできません。

 仲間たちと先を急ぐので 失礼します。 さあ 行こう クビクロ 」

ジョーは さっと愛馬に跨った。

「 あ・・・ ねえ お願いしますわ・・・

 ゴブリンの呪いは わたくしを真に愛する殿方の < 愛の力 > で!

 消えてなくなるのです〜〜〜 」

「 ・・・ 誰か他の人に頼んでくださいよ  じゃ 」

「 あ 待って ・・・ じゃあせめて お土産をどうぞ?

 ほら・・・ この森で採れた野イチゴです。 どうぞ? 」

たまあら は 籠に山盛りの真っ赤な野イチゴを差し出した。

「 ・・・ じゃ じゃあ 一つだけ 」

かなり咽喉が乾いていたので ジョーは一粒だけイチゴを摘まみあげた。

「 ほら ほら〜〜〜 召しあがれ? さあ 」

「 ・・・ 」

ジョーはじ〜〜っと掌のイチゴを見つめている。

魔女・たまあら はチラチラ・・・ その様子をながめつつ

満面の笑みですり寄ってくる。

「 ねぇ〜〜  このイチゴを食べて この森に棲まない?

 一緒に暮らしましょうよう〜〜〜  そして共にこの森を統べてくれる?

 わたくし達の素晴らしい子孫たちが この王国を支配するようになるわ 」

「 え。  ― ここはディザイア王国の領土ですよ? 」

「 いいえ〜〜 もともとはわたくしの土地だったのです。

 千年も前からここは わたくしの地 ・・・ 」

「 せ 千年??  ってことは ・・・・ 」

 

  ぽとり。  ジョーの手から野イチゴが落ちた。

  ひひ〜〜ん かっ!  そこをすかさず愛馬の栗毛君が蹄で蹴散らした。

 

「 あ・・・ わあ 〜〜〜 なんだ?? 」

潰れた苺からは ・・・ 毒々しい黒い汁が飛び散り周囲の草はしゅうしゅうと

煙を上げだした。

「 !  こ これがのイチゴの正体か 〜〜  」

「 ・・・ くっそ〜〜〜〜  こうなれば一撃で憑り殺してくれるぅ〜〜〜 」

 

   ぼわわ〜〜ん   ・・・・ 薄紫のオンナ消え でかい蛇が現れた。

 

「 うっぴゃ・・・ コレがアイツの正体かあ〜〜

 どけっ! むやみな殺生をしたくない。 森の奥の巣にでも帰れ! 」

「 ヴ〜〜〜〜〜   覚悟せよ〜〜〜 」

 

  シャア〜〜〜〜  蛇が鎌首を擡げ 真っ赤な口を開け襲ってくる。

 

「 む ・・・ これでもくらえっ ! 

ジョーは腰に付けていたクルミを殻ごと投げた。

「 ぐ・・・?  ぐう〜〜〜〜 」

「 ふん。 ぼくには ちゃんと想いをよせる女性 ( ひと ) がいるんだ〜

 このヒトのために ぼくは生きているんだから〜〜 」

 

  ひらり ひらり。 彼は 小さなハンカチを振った。

 

    ほわ〜〜〜ん ・・・ 花の香、芳香が漂う

 

「 あ ・・ これ フランの好きな香りだよ〜〜う ・・・

 フラン〜〜 ぼくはどこに居ても フランを護るんだあ 」

 

     ちゅ。 ジョーは  ちょこっとだけそのハンカチにキスをした。

 

「 ぐ わあ〜〜〜〜〜〜〜〜  愛のチカラ には ・・・ 」

 

    しゅう〜〜〜〜 ・・・ 大蛇はみるみる縮みミミズくらいの大きさになった。

 

「 へえ〜〜〜 ホントはこんなちっぽけな姿なのか?

 さあ もうワルサするんじゃないよ。  森の奥に帰れ 」

ジョーは むじむじ這いずってゆく小蛇を見逃してやるのだった。

 

「 ふん ・・・  あ いっけね〜〜〜 水 水〜〜〜

 ごめん クビクロ〜〜 も一回 泉まで戻ってくれるかい? 」

「 ひひ〜〜ん ! 」

「 ありがとう!  皆の水だもんな たくさん持って行かなくちゃ 」

「 ぶるるるる  」

泉で たっぷりと水を汲んだ。

清んだ水は 本当に冷たく、火照った身体を鎮めてくれる。

「 ・・・ ん〜〜〜〜 美味しい !  クビクロ 飲んだかい 」

「 ぶ〜〜るるるる !  」

 ぱしゃり。  クビクロは蹄で水を跳ね飛ばす。

「 あはは  そうか 気持ちいいか〜〜

 よおし ・・・  ちょっと重いけどしばらく頑張ってくれよ〜〜 」

「 ひひ〜〜ん 

  

    かぱ かぱ かぱ 〜〜〜〜〜

 

栗毛色の馬は 勢いよく駆けだした。

 

 

「 姫君 〜〜〜〜 

「 ・・・ ?  ああ しまむら・じょ〜  水汲み ごくろう。 」

「 遅くなりました。 水は皆さんに配りました。 」

ジョーは フランソワーズ姫一行にほどなくして追い付いた。

騎士たちは 冷たい水に喜び ジョーの背をぱんぱん叩いてくれた。

 

「 あ あのぅ ・・・ これ ・・・ 

ジョーは報告をしてから あのハンカチを取りだした。

「 もしかして 姫君のですか ? 」

「 ああ 拾ってくれたのか ありがとう。 しまむら・じょー のものだ 」

「 え?? 

「 じょ〜 が それを持っていておくれ。 」

「 は は はい〜〜〜〜♪ 」

 

    わっはは〜〜〜〜〜ん ♪  ぼくのお護りだあ〜〜〜い♪

 

「 あ  あのう〜〜  この花  どうぞ! 」

ジョーは 数本の白い花を差し出した。

「 ?  ああ 可愛い花だなあ 」

「 さっきの泉の側に咲いてて・・・ お好きかなあ〜〜って。 

 どうぞ 受け取ってください 」

「 ・・・ ありがとう  しまむら・じょ〜 」

フランソワーズ姫 は 微笑んでその花を受け取りそのまま襟元の

ボタン・ホールに止めた。

 

    うっひゃ〜 可愛いなあ〜  うっひゃあ〜〜

 

ジョーは その笑顔にほけ〜〜〜っと見とれてしまう。

「 わあ〜〜 よくお似合いですぅ 」

「 ありがとう。  皆のもの 出立しよう。 先は長い。 

「 は はいっ 」

 

  おう〜〜  騎士らは声をあげ 馬達の首を廻らせた。

 

 カッ カッ カッ   ・・・・ カッポ カッポ 

 

姫君と騎士たちは ゴブリンの森 の中を進んでゆく。

 

「 この森は深いのですか? 」

殿をゆくジョーは 隣の褐色の騎士に尋ねた。

「 あ〜 そうだねえ  森の向うに荒野があってその北端に洞窟があるんだ。

 そこに  

「 あ そこに 黒い幽霊 が? 」

「 そうなんだ〜〜  」

「 ふうん ・・・ あ 黒い幽霊 ってどんなヤツです? 」

「 うん・・・ 正体はよくわからないんだ。 いつも黒装束でさ・・・ 

 そうそう アイツってばフラン姫の16歳の祝いの席にやってきたんだよ  

「 へ ・・・え〜〜〜  でも よく王宮に入れましたね 」

「 まあ 祝賀の宴は仮面舞踏会だったからね〜 

「 あ 皆 顔を隠してるから ・・・ 

「 そうだよ とんでもないヤツさ。 」

「 で どんなヤツだったですか? 姫君に気があったのでしょ? 

「 う〜〜ん 僕らにはわからなかったけど ・・・ 」

 

「  素顔はわからない  しかし ダンスは下手だったな。 」

 

「 へ??  あ 姫さま 」

いつの間にか横に下がっていた姫君が ぼそり と言った。

「 そ〜なんですかあ〜〜〜  ふ〜〜ん・・・・ 

 あ〜〜〜 きっと姫サマに首ったけなんですよお 」

「 ・・・ アイツは なにより金ピカモノが好きなはずだ。 

 黒い幽霊は強欲でも有名なのだ。  」

「 へえ・・・ そんなヤツが隣国の王子様を捕らえるなんて! 

「 仔細はわからない。 しかしあの挑戦状はわたし宛だ。

 行かねばならない。 」

「 はい! ( うっぴゃ〜〜〜 フラン かっこい〜〜〜 ) 」

 

   カポ カポ カポ −−−−   一行はゴブリンの森を抜けてゆく。

 

「 道をお急ぎの御方〜  」

またまた妙な声が 道脇の薮から飛んできた。

 

「 何者かっ!? 」

赤毛の騎士が鋭く誰何する。

「 お〜〜っと のっぽのお兄さん。 そんな怖い声、ださないで 」

「 何者か。 答えよっ 答えないのなら 」

 

    カチャン。  赤毛はボウガンを構えた。

 

「 お〜〜っとぉ〜 危ないなあ・・・

 わかりました ―  私は AI国の か〜る王子 〜〜 」

 

   ガサ ゴソ ・・・  

 

薮の中からキンキラキンの衣装に身を固めた人物が 現れた。

 

 

Last updated : 05,21,2019.          back    /   index  /   next

 

 

***********   途中ですが

え〜〜 元ネタの 基礎英語2 は ますます混迷?

こちらは ゼロナイ展開〜〜〜  (*^^)v

まだ 続きます〜〜〜 ☆