『 ぼうけん ! ― (2) ― 』
― パッション & ディザイア ―
さわさわさわ −−−−−−
涼やかな風が 薔薇やら藤、躑躅が咲き競う庭園を吹き抜ける。
誰もが ふ・・っと 和やかな気分になる午後だ。
「 ちょうど こんな日だった。 幼いわたしが庭園を抜け出したのは 」
明るい陽射しの中 フランソワーズ姫は低い声で語り始めた。
「 姫。 もういい、その話は 」
兄王は 穏やかに妹の声を遮った。
「 陛下。 お言葉ですが止めるわけには参りません。
わたしの罪は 決して消えるものでも、忘れていいものでもないのです。 」
「 フランソワーズ。 罪 だなどと ・・・ 」
「 いいえ 兄上。 あれはわたしの罪です。
しまむら・じょ〜 聞いてほしい。 わたしが兄上の騎士となったわけを 」
「 ・・・ は はい ・・・ 」
ジョーは 栗毛君の側で固唾をのんで畏まった。
「 わたしは 幼いころから庭園で遊び回るのが大好きだった ・・・
この庭園内は いつも庭師たちの目が行き届き安心だったので
わたしの遊びも 乳母たちもおおめに見ていたようだ。 」
フランソワーズ姫の声が 少し華やいだ。
「 そう ・・・ まだ兄上が王位を継がれる前のことだ 」
静かな口調が続く。
ふうん ・・・ お転婆さんだったってことか〜
えへへ どの世界でもフランは フランってことだね
・・・ 可愛いお姫さんだったんだろうなあ〜〜
ふ・・・っと ジョーの目の前に 小さな姫君が見えてきた。
「 え ・・・?? 」
「 ? あなたは だあれ? 」
碧の瞳が 不思議そう〜〜にジョーを覗きこむ。
ピンクのドレスが可愛らしい。 一人前に裳裾を引いている。
「 え?? あ あのう〜〜 じょー です が 」
「 じょ〜? ふうん ・・・ 新しい庭師さん? 」
「 えっとぉ〜〜 」
「 ねえ いっしょにぼうけん しない? 」
「 冒険 ですか 」
「 そうよ。 ホントは庭園からでたら叱られるんだけど ・・
こっちへきて じょ〜 」
「 は はい 」
ジョーは 首を捻りつつも 幼い姫の後を追った。
がさ がさ がさ −−−− 檜の生垣を掻き分ける。
「 ・・・ いて! 姫さま〜〜〜 大丈夫ですか 」
「 平気よ、じょ〜 こそ気をつけて・・・ ほら ここ! 」
「 ?? あ ・・・ 」
姫きみが指すそこには 生垣の陰に城壁に穴が開いているのだ。
「 うふふ〜〜 みつけちゃったの〜〜
ね わたし 森にゆきたいの。 じょ〜 いっしょにきて? 」
「 え ・・・ でも 姫さま お城から出てはいけませんよ 」
「 いいのぉ〜 森には黒い幽霊が出るって 乳母やはいうけど
そんなのこと ウソよ〜〜 ねえ じょ〜 いっしょに行きましょ 」
姫君は ジョーの袖をひっぱった。
「 姫さま いけません、危ないです。 」
「 ぷ〜ん だ。 いいわよ〜 それならわたし一人でいっちゃうもん。
ばいばい じょ〜 」
「 あ ! 」
小さな姫は 四つん這いになるとするり、と穴から出ていってしまった。
「 姫さま〜〜 お待ちください〜〜 」
ジョーも慌てて その穴に潜りこんだ。
「 うわっぷ ・・・ こりゃ ・・ 獣道じゃないか??
う〜〜わ ・・・ えい っ 」
もぞもぞ・ごそごそ奮闘し やっと穴を抜けた。
「 ふう〜〜 ・・・ 姫君?? どこです? 」
ジョーの目の前には 緑深い森が広がっていた。
彼は目をこらし 幼い姫のピンク色のドレス姿をさがした。
「 どこだ?? う〜〜〜 なんでレーダーが効かないんだ〜〜
・・・ あ いた っ ! 」
木々の間に ピンクの裳裾がひらひら・・・動きまわっている。
「 姫きみ〜〜〜〜 」
「 うふふ じょ〜 もきたのね? 」
「 姫さま 危ないです、お城に戻りましょう 」
「 いやあよぉ〜〜 わあ キレイなお花がいっぱい〜〜 」
「 花はお城の庭園にもたくさんありますよ 」
「 こんなカワイイお花 ないもん。 わ〜〜 きれ〜〜 」
「 あ 姫さま〜〜 」
ひらひら・・・ 蝶々みたいに花から花へ駆けまわる姫君を
ジョーは慌てて追いかける。
・・・ だってさ なんかこの森 ・・・
雰囲気 悪いよね?
何の予備知識もないけれど ( 初めて来た場所だもの! )
ジョーの < 戦士のカン > が アラートを発するのだ。
「 姫さま〜〜 待ってください〜 」
「 うふふ〜 じょ〜 こっちよぉ〜〜 あ あっちに白いお花が
いっぱい〜〜〜 」
「 ・・・ もう〜〜 」
ジョーは 枯葉が積り、樹の根が突出し歩きにくい森の中を 必死に駆けてゆく。
「 姫さま〜〜 」
「 ・・・ わあ〜 お日様が見えるぅ〜〜 」
「 え どこにいるんですか〜〜 ・・・ あ あっちの先が
明るくなってる! 空から丸見えじゃないか〜〜 」
彼は脚を速めた。
「 わあ〜い 気持ちいいわあ〜〜 あ 鳥さんがいるわ 」
姫君の無邪気な声が響く。
「 鳥 ・・・? 」
「 ねえ じょ〜 黒い鳥さんがいるの。 カラスさんかしらあ
お〜〜い カラスさあん〜〜 」
「 ! 姫〜〜〜 ! こっちへ戻って! 」
「 え なあに じょ〜 」
「 ・・・ フランっ こっちに来るんだっ 」
くそ〜〜〜 何だって肝心なの時に
加速装置が 効かないんだよぉ〜〜
カラス だって??
それって 黒い飛行物体 ってことじゃないか〜〜
バサ バサバサ〜〜〜〜〜
大きな羽音が 聞こえてきた。
「 ! やはり ・・・ ! 」
ジョーの視界には 黒い鳥に見える物体が空から舞い降りてくるのがはっきりと
見えた。
「 ・・・ あぶないっ ! フラン〜〜〜 」
「 ? わたしは ふらんそわーず よぉ〜 え? 」
バサァ〜〜〜〜 ぎゃあ ぎゃあ〜〜〜
「 っ きゃあ〜〜〜 」
悲鳴と共に 黒い鳥が姫君の身体をしっかりと掴み跳びあがった。
「 ! コイツ 〜〜〜 」
ジョーは 咄嗟に腰のホルスターを探ったが ― そこにはなにもない。
「 ちっ。 えいッ!!!! 」
彼は 小石を拾い投げつけよう とした瞬間 ―
ひゅん ひゅん ひゅん 〜〜〜〜〜 !!!
数本の矢が次々と 飛んできた。
「 ― フランソワーズ 〜〜〜〜〜 !!! 」
・・・?? 誰だ?
ぱか ぱか ぱか −−−−−−−
激しい蹄の音とともに漆黒の馬に跨った銀色の騎士が 駆けこんできた。
そして ボウガンを構え次々に 黒い物体に射かける。
すっげ ・・・
「 姫を 放せっ !!! 」
ぎゃあ〜〜〜 ぎゃあ〜〜
何本かの矢は黒い物体を射貫いたが ヤツはまだしぶとく姫君を
離さない。
「 う〜〜〜 なんだってスーパーガンがないんだよう〜〜
それに なんで サイボーグじゃないだ?? くそったれ!」
ひゅん ひゅん ・・・ !
せめてもの応援に、とジョーは自分自身に悪態をつきつつも小石を投げる。
「 うう〜〜〜 全然威力がない ・・・ 」
ぎゃあ ぎゃあ 〜〜〜
黒い物体はふらふら ・・・ 落下し始めた。
そして ついに掴んでいた幼い姫の身体を放りだした。
「 姫〜〜〜 !!! 」
馬上の騎士は 矢つきたボウガンを捨て鞍から腰を浮かせた。
え?? なにをする気だ ??
「 −−−− や〜〜〜っ ! 」
?? わっ あぶないよぅ〜〜〜
騎士は ジョーの目の前で馬の背を蹴って飛び ― 落ちてくる姫君を受け止め
― そのまま 地に落ちた。
ドサッ −−−− !
「 わ〜〜〜〜 だ 大丈夫ですか?? 」
ジョーは慌てて駆け寄った。
「 ・・・ ううう ・・・ 」
騎士は呻き声をあげたが 彼の腕の中にはしっかりと姫君が抱かれている。
「 ・・・ う? あ お兄さま ??? 」
「 ・・ ふ ふらんそわーず 姫 ・・・ 無事 か 」
「 お兄さま〜〜 え え〜〜〜ん 」
姫君は泣き声をあげたが 怪我をしている様子はない。
「 え え〜〜〜ん え〜〜〜ん 」
「 姫 ・・・ 無事 か 」
「 え〜〜ん お兄さま ご ごめんなさい〜〜〜 」
「 ・・・ 怖かったな ・・・ もう だいじょう ぶ だ 」
「 ご ごめんなさい ・・・ お兄さま?? ど うしたの? 」
「 なんでも ない・・ 安心せよ 」
「 え? で でも ・・・ お兄さま! しっかりして ! 」
姫君は 兄のただならぬ様子に気がついた。
彼の腕の中から起き上がり そっと顔をのぞきこむ。
「 い 痛いの?
」
「 う ・・・む 脚が ・・・ 」
「 ! お兄さま〜 わたしのせい で ・・・ 」
「 姫 ・・・ 兄もな あの抜け穴を知っているよ。 」
騎士は 痛みの中でも微笑み 妹姫の頬に手をあてる。
「 無事でよかった・・・
昔、兄もあの穴を抜けて森で遊んだのさ。 」
「 え〜〜 お兄さまも? 」
「 そうさ。 だからそなたの姿が見えない、と乳母たちが騒ぎ始めたとき
すぐにわかった ・・・ 姫は森にいる ってね 」
「 まあ ・・・ 」
「 だからすぐに馬で追ってきた ・・・ う ・・・ 」
「 ! お兄さま ! わたし 乳母やと爺やをよんでくる! 」
「 ・・・ 姫 ・・・ 」
「 まってて! 」
「 ・・・ う ・・・ 」
蒼白な顔で動けない騎士にキスをすると 幼い姫は駆けだした。
! あ 危ない 〜〜 くそう〜〜〜
ぼくは なにもできないのか ・・・!
ジョーは歯噛みをしつつ それでも、と姫君を追って走りだした。
「 姫君 ぼ ぼくにつかまって ! 」
「 ? あ じょ〜 ? 」
「 さあ お城まで ― お連れしますよっ 」
「 じょ〜〜 」
彼は ちっちゃな彼女を抱きあげた。
「 加速装置 ・・・ はできないけど。 普通に走ることはできるさ!
姫 しっかりつかまっててください ! 」
「 ・・・ じょ〜〜 」
ザザザザ −−−−−−
ジョーは 姫君を抱えると 全力疾走をしていった。
「 乳母や ・・・ 兄さまは ・・・ 」
「 し〜〜〜 姫様。 侍医たちが今 懸命にお手当てをしておりますですよ 」
兄王太子の部屋の前で 姫君は泣きべそをかいていた。
「 兄さま ・・・ 兄さまあ〜〜〜 」
「 姫さま。 静かになさいませ。 」
「 ・・・乳母や ・・・ どうしましょう わたしのせいで・・・
お兄さまが ・・・」
「 姫さま。 これからは きっと乳母やのいいつけをお守りくださいませ。 」
「 ・・・ ええ ・・・ ごめんなさい ・・・
わたしが 森になんかいったから ・・・ 兄さまあ〜〜〜 」
「 ・・・ 」
泣きじゃくる姫きみを 乳母はそっと抱き寄せた。
「 お静かに 姫様。 今は侍医たちを信じて 兄上様のご回復を祈りましょう 」
「 ・・・ わたし ・・・ なにもできない 」
「 そんなことはございません。 姫さまお祈りなさることがおできです。 」
「 ・・・ 」
姫君は きゅっと口を結ぶと 乳母の腕から離れた。
「 わたし ― つよくなるの。 兄上さまをおたすけできるように ! 」
「 ? 姫さま ・・?? 」
ビリ ビリ ビリ −−−
フランソワ―ズ姫は ドレスの長い裳裾を破りとった。
「 ドレス いらないわ。 」
「 ひ 姫さま〜〜〜 」
「 ごめんなさい お兄さま わたしのせいね
・・・ わたし。 強くなるの!
お馬にものって 剣もとって ・・・ 騎士 になるの! 」
その日から 姫君の 騎士 としての修業が始まった。
「 騎士 ですか? ― え? 」
ジョーは自分自身の声に気がつき 周囲を見れば ― 目の前には
騎士姿の、妙齢のフランソワーズ姫 がいるのだ。
あ あれれれ???
ぼく たった今まで ・・・ ちがう時間軸に いた??
「 あの日から ― わたしはドレスを忘れ 騎士となる修業を始めたのだ。
兄上の片脚をなり このパッション王国を護るために 」
碧い瞳に強い光を宿しつつ 姫君は淡々と語る。
「 修業 ・・・・なさったのですか 」
「 そうだ。 兄上に仕える騎士殿たちに 弟子入りをお願いした。 」
「 へ え・・・ 姫君が・・・ 」
「 ははは そうであったなあ〜〜 このお転婆姫が
我々のモトにやってきて 『 おねがいします 』 と
申されたのよ 」
スキン・ヘッドの騎士が からからと笑う。
「 ふふ ・・・最初はまともに走ることさえできなかった。 」
姫君も 楽しそうに破顔した。
「 あっはっは ・・・ そうだったなあ〜
しかし このお転婆姫は決して屈しない心の持ち主 ― つまり
最強の騎士になる資質を備えていたのだ。 」
白銀の騎士は くしゃり、と姫君の金髪をなでる。
「 ふ ・・・ しごかれてもちっとも辛くなんかなかった・・・
ドレスを着て 部屋で刺繍をしているよりも
馬で大地を駆け巡る方が わたしには合っている。 」
「 だよな〜〜 最強の騎士さんよ 」
赤毛ののっぽも 豪快に笑う。
「 師達は 真剣にわたしを鍛えてくれたのだ。 」
姫君は 優しい瞳でどこか遠くの空を見つめていた。
赤毛の騎士からは 空をきるように走る技を 白銀の騎士からは 百発百中の弓を
巨人の騎士からは 大地と空から力を得ることを ドジョウ髭の騎士からは
どんな時でも美味い食事をつくるワザを スキン・ヘッドの騎士は周囲にとけこみ
身を潜める術を そして 褐色の肌の騎士は水練の技を それぞれ教えてくれた。
「 へ え ・・・ すごいですね 」
「 ― わがパッション王国を黒い幽霊から護るため そして
兄上の仇、 黒い幽霊を討つためだ。 」
「 フラン・・・ い いえ! フランソワーズ姫
ぼ ぼくも 姫様の護衛の一人に加えてください 」
「 ほう じょー そなたはなにが得意なのか ?
」
「 へ?? 」
「 そなたが人並み優れている技は なにか。 」
「 ・・・ え え〜と あ 走ること かなあ 」
「 そうか。 期待している。 なにしろ そなたは伝説の
< 大地の瞳をもつ者 > なのだから。 」
「 ・・・・ 」
「 お前はさ〜〜 馬 のれるか 」
赤毛ののっぽが寄ってきた。
「 ・・・ 乗れるだけ です。 速く駆けたりは できません 」
「 お前さん 弓の腕前は 」
白銀の髪の騎士もきた。
「 ・・・ やったこと ないです すいません 」
「 謝る必要はない。 できないのなら修練すればよい。 」
姫君は穏やかに 彼らを制してくれた。
「 ふら・・・いえ 姫君。 はいっ 」
ジョーは 騎士たちのもとに駆け寄った。
「 教えてくださいっ ぼくはなにもできない ・・・
でも 姫君を護りたいんです。 」
「 よく言った。 よし。 まずは ― ああ 陛下 」
白銀の騎士は さっと身を屈めた。
ジャン王が ベンチから静かに立ち上がったのだ。
「 兄上! どうぞおかけください。 」
「 陛下 」
マリアンヌ王妃がすぐに国王に寄りそう。
「 ああ ありがとう 大丈夫だよ。 自分の脚でしっかり立つのも
訓練だからね 」
「 ・・・ 」
「 しまむら・じょー といったな そなた。 」
「 は はい 陛下 」
ジョーは さっと国王の前に片膝を突いた。
「 そなた ― 大地の瞳を持つ若者よ ・・・
姫を護ってくれるのか
」
「 は はい! ぼ ぼくは ― なにもできないですけど ・・・
いえ これから修業して フラン・・いえ フランソワーズ姫君を
護る存在に なります! 」
「 そうか ― しまむら・じょ〜 頼むぞ
姫の守護神となってくれ 」
「 は はいっ 」
「 兄上 お言葉ですが。 わたしは自分自身を護ることくらい
自分でできます 」
フランソワーズ姫が 顔を上げ兄を見つめている。
「 わかっているよ。 しかし 黒い幽霊は手強い。
援軍は多い方がいい。 」
「 ですが ― 」
「 私も一日も早く 脚を元通りにしてみせる。
その日まで 姫、 そして 騎士諸君。 王国の護りを指揮してほしい 」
は ・・・! 姫君を始め騎士たち全員が さっと身を屈めた。
「 しまむら・じょ〜。 私の援軍になってくれるか 」
「 はい ! 」
ジョーは さっとアタマを下げた。
「 ふふ ・・・ 私には素晴らしい援軍が数多くいるのだなあ 」
「 兄上。 それは兄上と義姉上が 素晴らしい方だからです。
じょ〜 兄上はご自分の危険も顧みず 幼いわたしを助けてくださった・・・
そして 義姉上も 兄上の怪我を知りつつ明るい顔で嫁いでいらした。 」
「 まあ フランソワーズさま?
この御方! と こころに決めた殿方ですもの。
その方のところに嫁げたわたくしは 世界一幸せなオンナだと思っておりますわ。 」
マリアンヌ妃は 控えめながら最高の笑顔で夫君に寄りそう。
「 わ〜〜〜 仲良しなんですねえ〜〜 あ 失礼しました 」
「 いやいや しまむら・じょ〜 私は本当に果報者だよ。
― しまむら・じょ〜 黒い幽霊退治に加わってくれたまえ 」
「 はいっ! 」
「 陛下。 そろそろ北風が出てきます。 城に戻りましょう 」
「 ああ ― 執務もまだまだ残っているしな。
姫 ・・・あまり無理をするな 」
「 ・・・・ 」
フランソワーズ姫は 頭を垂れ、黙って兄王夫妻を見送った。
「 ― ステキなカップル あ いえ ご夫妻ですねえ 」
「 ふふふ ・・・ わたしの自慢の兄上と義姉上なのだ。
民たちも 皆 慕ってくれている。 」
「 そっか〜〜 うん そうだよなあ ・・・
うん ・・・ この世界では ジャン兄さんは幸せなんだ ・・・ 」
「 ?? なんだ? 」
「 い いえ なんでも・・・
あ ぼく 騎士さん達に鍛えてもらいます。 」
「 いい心がけだ。 今日から城内に留まるがいい。
騎士たちの棟に 部屋を与えよう。 」
「 ありがとうございます ・・・ へえ 皆と過ごせるんだ 」
「 ま 覚悟しとけよ 」
姫きみは に ・・・っと笑った。
へ? ・・・乗馬と弓矢とかだろう?
そんなに大変なのかなあ ・・・
ジョーは この時点ではかなりお気楽モードだった・・・
「 え〜と ・・・ これ、どうしようかなあ 」
その夜 与えられた部屋でジョーは ポケットから小箱を取りだした。
「 いつも持っていたいけど ・・・ どうしよう? 」
部屋に置いてゆくこともちらっと考えたが やはり身につけていたい。
「 う〜〜ん ・・・ あ この革袋 ・・・ 薬かあ?
うん ここに入れて腰に付けておけばいいか
」
ジョーは グリーン・アイ のペンダントを薬籠の袋に仕舞い、
ポシェットみたいに肩からかけることにした。
「 ・・ うん これでいいや。
ふぁ〜〜〜 疲れた〜〜 もう寝よ ・・・・ 」
ベッドに転がると ジョーはたちまち寝入ってしまった。
― 翌朝から 姫君の騎士たち の特訓が始まった。
「 もっと速くっ !! 」
「 く〜〜〜〜〜〜 」
赤毛の騎士は信じられないくらい身が軽く まるで宙を飛ぶがごとく
大地を駆け抜けるのだ。
「 ひえ〜〜〜〜 ・・・まさか 加速装置 ついてるんじゃ?? 」
どうも完全生身 に戻っているらしい・ジョーは ボヤき続けだ。
「 ふぇ〜〜〜 ちょ ちょっと待って・・・ 」
「 なんだよぉ〜〜 もうバテたのか〜 」
「 い いや でも はあ ふう〜〜〜 」
赤毛クンは ほとんど息も乱れていない。
「 な なんだってそんなに 速く走れるのかなあ〜 」
「 ふん。 コツを教えてやろうか 」
「 え ・・・ は はいっ 」
「 あの な。 速く走ろう! と思うことさ 」
「 はへ ?? 」
「 オレに続け〜〜〜 」
のっぽの赤毛は 涼しい顔で駆けだしていった。
「 あ あ〜〜〜〜 ちぇ〜 ぼくだってマッハで走れる はず ・・・
なんだけどなあ〜〜〜 お〜〜い 」
ジョーは慌てて後を追う。
余談だが。 後年 彼は全く同じ言葉を 彼自身の娘から聞くことになる・・・
「 よく狙え。 お前 どこ見てるんだ 」
「 え ・・・ ちゃんと狙ったんだけどなあ 」
「 狙ってるなら当たるはずだ。 なんで外れるとおもう ? 」
白銀の髪の騎士は 少々呆れ顔なのだ。
「 え え〜と ・・ ヘタだから 」
「 だ〜〜〜 お前 全然わかってないな。 」
「 すいません ・・・ こういうの、初めてなんで 」
ジョーは 手にした弓矢を情けない顔で見つめる。
「 ちが〜うちがう。 わかってない のは お前自身のこと だ 」
「 へ?? ぼく自身?? 」
「 そうだ。 なんで毎回 とんでもない方向に矢が飛ぶのか
それを考えてみろ 」
「 ・・・ マト よく見てるんですけど 」
「 見てるだろうさ。 で 手元はどうだ 」
「 ・・・ あ。 」
「 やっと気づいたか。 的も手元も しっかり見ろ。
そして 覚えろ、自分自身の感覚を。 そうすれば ― マトだけを
見て 射ることができる。 」
ほら と 彼は自分の脚を見せた。
なんと彼は脛当てにも 矢矧を付けているのだ。
「 わ〜〜〜 膝に近いトコからも 射れるんだ? 」
「 どこからでも。 自分自身の感覚を研ぎ澄ませろ。 」
「 そっか ・・・
あ いつかフランが同じこと、言ってたよ?
あ・・・ あれは スーパーガン の撃ち方を習ってた時だっけ 」
「 ? なにをぶつぶつ言ってる? 」
「 あ スイマセン〜〜 も一度、お願いします 」
「 うむ。 」
ジョーは キリキリと弓を引き絞った。
「 大きく空気を吸って ― 耳を澄ませろ。 なにがきこえる? 」
「 うん? ・・・ あ〜〜 鳥さんの声 かなあ 」
「 それは誰もが聞く。 風の声をきけ 」
「 へ? う〜〜ん 」
巨躯をもつ騎士は その身体には似合わず穏やかな人柄だ。
彼は 空とも大地とも 会話ができるのだ。
「 地に伏せよ ― なにを感じる? 」
「 うん? ひゃあ〜〜 アリがきた 〜〜 」
「 蟻は通りすぎてゆく。 地の中の水音をきけ 」
「 え〜〜〜 う〜〜ん・・・? 」
彼は 馬術にも弓矢にも優れているが その日の天候や遠征の地への
道の様子を居ながらにして 仲間に伝えることができるのだ。
「 すご〜〜いなあ〜〜〜 魔法みたいだ 」
「 魔法ではない。 お前自身のこころを 空と大地に開いてみろ 」
「 ?? ・・・ 仲間になれってこと・・・? 」
「 ・・・ 」
巨躯の騎士は に・・・っと笑って ジョーの茶髪に手を置いた。
ドジョウ髭の黒髪は 火の取り扱いを教えてくれた。
「 ほっほ〜〜 火ぃとはなあ〜 仲ようならんとあかん。 」
「 ?? 」
「 いっつも気ぃつけてやらんとあかんのんや。
火ぃはなあ 使い方次第で頼もしい味方にも おっそろしい敵にも
なるんやで 」
「 う〜〜ん 」
「 よう見てみ 」
ぼ・・・っ!
彼は電光石火、火打ち石を操り、火矢を放った。
「 ひゃ〜〜〜 すっげ ・・・ 」
「 な。 火ぃ とは仲よう、 な。 」
「 はい。 」
スキン・ヘッドの騎士からは 身を潜める術を伝授された。
「 隠れるのではないぞ。 」
「 ?? で でも・・・ 師匠の姿、みえません?? 」
「 ふふん ・・・ 隠れてなんぞ おらん。
気配を 消せ。 」
「 ・・・ 気配を? 」
「 左様。 マスターすれば鉄壁の護身術となる。 斥候としても最高だ 」
「 う〜〜ん ・・・ 」
褐色の肌の騎士は 水練の達人だった。
「 すご・・・ サカナみたいですね〜〜 」
「 ふふふ ・・・ サカナかもしれないよ 僕は 」
「 え?? 」
「 いや。 とにかくね、水と同化することだよ。 」
「 そっか〜〜 水のトモダチになるんだ? 」
「 もっともっと ・・・ そうだなあ 鱗が生えてる気分に
なるといいかもなあ 」
「 ウロコ かあ 〜〜 」
ジョーは修業に熱中していった。
「 ふ〜〜〜 あ もしかして ・・・ 」
「 なんだ? 」
「 あのぉ
ふらん いえ 姫君もこんな修業をなさったのですか ?
」
「 そうさ われらが姫君は 筋金入りの ど根性娘 なんだ。 」
わっはっは〜〜 はははは
騎士たちは 気持ちよさそうに笑いあうのだった。
「 ! ぼくは。 なんにもできないけど。 でも!
フランを護るんだ〜 」
ほどなくして ジョーは愛馬の栗毛君 と いいコンビになり
翡翠の森をより速く駆け抜けることができるようになった。
「 行くよ〜〜 クビクロ〜 あ ごめん、 ブラウニー! 」
「
ひひ〜ん ♪ 」
― 彼らの出発の日が 近づいていた。
Last updated : 05,14,2019.
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********* 途中ですが
ジョー誕も近いのに ヘタレ・ジョー で すいません★
ぼうけん はこれから ・・??
元ネタの 基礎英語2 は ますますファンタジー してますよ〜