『 ぼうけん ! ― (1) ― 』
― パッション & ディザイア ―
ドサッ ・・・ !
いきなり投げ出されたところは ― 緑深い草の中だった。
咄嗟に受け身の体勢を取ったけれど かなりつよく草地に身体を打ち付けてしまった。
「 ・・・って〜〜〜〜〜 」
ジョーはしばらく動かなかった。 いや 衝撃で動けなかったのだ。
身体へのショックを感じつつ 彼は五感を磨ぎ済ませ周囲を窺った。
「 ・・・ ここは 未知の空間だな。
!? 視覚が 広がらない。 聴覚もだ! そういえば
地面に転がっただけなのに ― なんでこんなにショックを感じているんだ? 」
ジョーは そろそろアタマを動かしてみた。
「 うう ・・・ いって〜〜〜 ?? 痛い? あのくらいのことで?? 」
後頭部に鈍い痛みを感じつつ ゆっくりと周囲をみまわす。
気が付けば 身体の周りは咽せかえるような草木の匂いだ。
そういえば視界は圧倒的に 緑色 で覆われている。
? ここは 森 の中なのか ・・・・?
え〜〜〜 横須賀にこんな森 あったっけ??
そもそも ぼくは ― 街の路地を歩いてた はずだ?
― その日、そろそろ夜になるころ 島村ジョーは横須賀の街を歩いていた。
というのも ・・・
「 すまんがのう〜 ジョー。 ちょいと頼まれてくれんか 」
午後も遅い時間にギルモア博士が彼を呼び止めた。
「 はい なんでしょう。 」
「 こんな時間にすまんが。 横須賀の病院まで届け物をしてほしいのじゃ。 」
「 はい すぐに出られます。 横須賀のどこですか? 」
「 ありがとう! 本当にすまんなあ ・・・
他の物なら宅急便を使うのじゃが これは精密機器なのでな
手渡しが一番 先方のドクターには
ワシの助手がゆく と伝えておくから 」
「 はい! 細心の注意でお届けします。 病院の場所とお届け先を
教えてください。 」
「 うむ ・・・ 横須賀の 〜〜病院小児科 ドクター・サトウ じゃ 」
「 小児科 ですか 」
「 ああ。 じつは小児用人工義肢のパーツなんじゃよ。 」
「 ・・・ 子供用の義足 ですか 」
「 そうなんじゃ。 事故に遭った六歳の子供に ・・・と頼まれてな。
今 ワシの持てる最高の技術を駆使したよ 」
「 すごい・・・! 」
「 実はなあ 明日がそのコの誕生日なんだと。 じゃから 」
「 うわあ 最高のプレゼントになりますね! 」
「 ・・・ そうなるといいのじゃが ・・・
せめてものワシの罪滅ぼしだ。 」
「 博士。 そんなことは言わないでください。
博士の力で たくさんのヒト達を幸せにできますよ ! 」
「 ・・・ ありがとうよ ジョー。 」
「 じゃあ 行ってきます。 え〜と このパッケージは水平を保ちますか? 」
「 いやいや 派手にぶつけたりしない限り大丈夫じゃよ。
ま・・・ 加速装置は勘弁しておくれ。 」
博士は に・・・っと笑った。
「 了解です〜 地味〜〜にバスと電車で行ってきます。 」
「 頼む。 気をつけてな。 」
「 はい 行ってきます〜〜 」
ジョーは お気に入りのパーカーを羽織り キャップを被ると
すこしばかり嵩張る荷物を持って 意気揚々と出かけて行った。
目的の病院は 横須賀の街外れ、崖の途中に建っていた。
「 いやあ〜〜〜 わざわざ届けてくれて・・・ ありがとうございます!
えっと・・・ 島村クン でしたよね 」
担当の サトウ医師は30代、新進気鋭の青年医師だった。
「 ギルモア博士から ヨロシク・・・って。
あのう ・・・ 患者さんの誕生日に間に合ってよかったです。 」
「 あ そうなんですよ〜〜 いやあ〜〜 喜びますよ、彼。 」
「 オトコノコなんですね 」
「 うん、やんちゃ坊主さ。 また 走り回れるようになる。 よかった!
ギルモア博士の技術には本当に瞠目していますよ。
・・・ きみも医学生ですか ? 」
「 え あ ・・・ まだ助手というか手伝いというか ・・・ 」
「 あんなすごい方の側にいるんだ、是非是非医学の道を志してほしいですよ 」
「 ぼくは そんなにアタマ よくなくて・・・ 」
「 ははは 僕だってそうだよ? 情熱と希望があれば ― 夢は叶うよ。 」
「 情熱と希望 ・・・ 」
「 うん。 あ ごめん、お喋りで引き留めてしまった・・・
本当にありがとうございました。 」
「 いえ ・・・ あ 患者さんは? 」
「 そろそろ夕食の時間なんで ・・・ あ ちらっとでも見てゆきますか?
入院している子供達用の食堂があります、そこにいるはずです。 」
「 邪魔にならないようにちょっとだけ 」
「 どうぞ。 次には あのコが駆けて寄って歓迎してくれますよ。 」
「 わあ〜〜 すごいな 」
ジョーは 案内され天井も壁もクリーム色のコドモ食堂を見学していった。
あ あのコかあ ・・・
くるくる癖っ毛の少年が カレーを美味しそうにたべていた。
「 ・・・ ふう ・・・ 」
お使いを済ませて
病院を出れば 海に近い町は 黄昏時 ・・・
暮れそうで暮れない春の夕暮れ、所謂
逢魔が刻 という時分だった。
― きみも医学生ですか
さきほどのサトウ医師の言葉が 蘇る。
「 医学生 かあ ・・・ う〜〜〜ん ・・・
ぼくにそこまでのアタマはないよ、マジで。 」
サイボーグの <頭脳> を使えば その道を目指すことは可能だろう。
しかし ―
「 ・・・ でもそれって アンフェア だよね?
みんな自分自身の力を振り絞って努力しているのに さ。
ぼくは ― 博士の下働きってとこが相応しいよなあ 」
「 ぼくの ・・・ 夢って なにかなあ ・・・
フランと そのう〜〜 付き合いたいなあ〜って そんな夢 ヘンかな
あ〜〜 でも 叶わないよなあ ・・・ ぼくなんかなあ ・・・ 」
考え事をして歩いているうちに どうやら道を間違えてしまったらしい。
「 ?? あれ?? こんな道 通ったっけか? 」
薄闇の迫る中 ジョーはきょろきょろ辺りを見回した。
「 ?? 崖を右に見て降りてきたはず なんだけどなあ ・・・
え〜〜 この辺りって街灯少ないなあ 」
ほとんど無意識に 視覚の精度をアップしよう ― と思ったとき。
ん ・・・?
左手に路地をみつけ その奥にほんわり飴色の灯が点っているのが目についた。
え 店? あ んてい〜〜く しょっぷ だって
「 へえ〜〜〜 こんなトコに ・・・・
ふうん ・・・ あ フランにお土産 ・・・いいの、ないかな〜 」
ジョーの脚は自然に その細い路地へと曲がってゆくのだった。
マジック・ドラゴン アンティーク・ショップ
ぼんやりとした灯の下には 黒いドラゴンのレリーフの看板があった。
「 まじっく・どらごん? へえ〜〜 面白そうだな 」
チリリ― ン ・・・ ドアベルを鳴らし、彼は店内に入った。
「 ・・・暗いな 」
店の灯は ほとんどがフロア・ライトだった。
床に這うように 少々甘ったるい香りが流れている。
「 ・・・ これって 香 ・・・かな? 随分独特の香だなあ 」
カツン カツン ・・・ 固い床を歩いてゆく。
「 ふうん ・・・ いろんなモノがあるなあ ・・・ ここは
わあ 短剣?? いや ペーパーナイフかあ あ こっちは
ジュエリー? へえ〜〜〜 ずいぶん古めかしいデザインだね
ぼくが見てもわかるもんなあ ・・・ でもキレイだな 」
ジョーは ガラスの陳列台にオデコをくっつけるみたいにして見ていった。
ガーネット ペリドット 紫水晶 ・・・
「 ふうん? あんまり聞かない名前だけど 」
彼は深い光を放つ古びたアクセサリーたちをみてゆく。
「 あ。 これ ・・・ フランの瞳と同じ色 ・・・ 」
隅っこに輝いていた碧の石のペンダントに彼の目はくぎ付けになった。
わあ ・・・ キレイだなあ・・・
古風な細工だけど ・・・ 好き だな・・・
この石 なんだろう?
エメラルド じゃないなあ 翡翠 でもないぞ?
・・・ グリーン・アイ? へえ ・・・
聞いたことないな 新しい宝石なのかなあ
ジョーは 魅入られたがごとく、そのペンダントに見入っていた。
「 お気に入りの品が ありましたかの 」
突然 老いた声が響いてきた。
「 ・・?? 」
驚いて振り向けば 老婆が腰をかがめて立っていた。
「 あ ・・・ こ こんにちは ・・・ 」
「 はい いらっしゃいませ ・・・ ヘイゼルの瞳のお兄さん 」
「 あ え〜〜 あのう〜〜 」
「 はい? 」
「 あの その〜 このペンダントが 綺麗だなあ〜って思って 」
ジョーは 碧の石を指した。
「 ほっほっほ これはお目が高い。
・・・ どなかた想う女性 ( かた ) へお贈りなさるか 」
「 ・・・ そうしたいんですけど ・・・ あのう・・・ 彼女の瞳と
この石が ・・・ 同じ色なんで 」
「 それは それは ・・・ 」
暗い灯の陰で 老婆はに・・・っと笑った 風にみえた。
「 あ でも 〜〜 これはちょっと・・・ぼくには手が出そうもないです
お金 ないんで ・・・ 」
「 これは 持ってほしい方だけにお分けすることにしていますよ。
どうぞ。 」
「 え??? 」
「 お代は アナタさまの思う金額で結構ですよ 」
「 え・・・ ほ ホントですか?? 」
「 はい。 運命の持ち主に どうぞこの石をお渡しくだされ 」
「 ・・・ え わ〜〜〜 いいのかなあ ・・・ 」
「 このような歳月を経た石には その石の想いがございますよ
石は 石自身が望む御方の胸に 飾られたいのです 」
「 そっか ・・・ それなら ・・・ すいません、これしか
持ち合わせなくて 」
ジョーは恐縮しつついくばくかの紙幣を置いた。
「 ありがとうございます。
― さあ どうぞ。 このコをアナタ様の想う御方にお渡しくだされ 」
「 ・・・ 」
赤いベルベットの小箱に収まった碧のペンダントには
なにやら古めかしい印章つきの封筒が着いていた。
「 ? ん ・・・ これは? 」
「 なに 保証書ですがな 一緒にお持ちくだされ 」
「 はい。 」
「 ・・・ あ〜 レゼントのお相手は?
ほっほ・・・ここに記しておきましょうよ。 」
「 え そうですか 」
ジョーは ちょっと赤くなりつつ 彼女の名前を告げた。
「 ・・・ よいお名じゃ ・・・ 」
老婆は 古めかしいペン先でとても流麗にその名を書いた。
「 どうぞ。 」
「 わあ ・・・ ありがとうございます! すっげ〜〜 カッコいい〜〜 」
チリリン −−−−
ドアベルを鳴らし出ていった若者に 老婆はそっと十字を切った。
「 ― あのヘイゼルの瞳の青年に 神のご加護を ・・・ ! 」
「 えへへ ・・・ いい買い物 しちゃった♪
あ なんか美味しそうなモノ 買ってこっと。 え〜と ・・・
どぶ板通りにでるには? 」
ジョーは 路地から出てきて周囲を見回した。
薄闇はすでに 夜の色を深め始めていた。
どっちだっけ ・・・?
ぶわ〜〜〜〜〜〜〜 ご〜〜〜〜〜〜 !!!
突如 一陣の風が彼を足元から煽った。
「 うわ ・・? え ?? あ あ〜〜〜〜〜〜〜 」
なんと ― サイボーグ009 ともあろうものが突風によろめいてしまった。
あ 〜〜 な なんだ??
!! 足元が ・・・ 崩れる???
うわあ〜〜〜〜〜〜〜 ・・・ !
ジョーは 緑深い崖っぷちからずり落ちていった。
― そして 気がつけば 緑深い草の中、 というわけだ。
かぽ かぽ かぽ。 かぽ かぽ かぽ
軽やかな蹄の音が聞こえてきた。
「 ?? う 馬?? こ こんなトコに ??? 」
ジョーは さらに身を低くし小さな薮の裾まで匍匐前進していった。
かぽ かぽ かぽ ・・・・
緑の木々の間から 白い馬が現れた。
ひえ〜〜〜〜 よ 横須賀に 馬ぁ??
え!? 乗ってるのは !!!
・・・ え?? ま まさか うそだろ〜〜
009ともあろうものが 目はまん丸 口はぽか〜〜〜ん ・・・ と開けて
思わず 身体を起こしてしまった。
「 誰だ?? そこにいるのは! 」
白馬に跨った凛々しい騎士が すぐにジョーをみつけ誰何した。
騎士は羽根のついた大きな帽子をかぶっているので 顔が隠れがちである。
「 あ あ あのう〜〜〜 」
「 うん? 見慣れない風体のモノだな。 わがパッション王国の者では
ないな? 」
「 ・・・えっと ・・・ ぼくは しまむら・じょー です。
あのう ・・・ ここは どこですか 」
「 しまむら じょー?? 変わった名前だな。
ここはパッション王国、 王城に近い 翡翠の森 だ。 」
「 ・・・ ぱっしょん王国?? 世界史で習った ・・・ かな?・・・
あのう・・・ぼくは 横須賀の街に帰りたいのですが 」
「 よこすか?? 聞いたことがない。 そなたは道に迷ったのか? 」
「 ・・・ はい 多分 ・・・ 」
「 それなら我が王城に来い。 その よこすか とかいう町を
知っているものがいるやもしれぬ。 」
「 は はい ・・・ 」
「 そなたは馬に乗れるか? 」
「 ・・・ 多分。 」
「 そうか では ― 」
ヒュウ −−− 騎士は強く口笛を吹いた。
ぱか ぱか ぱか ・・
ほどなくして 緑の木々の間から栗毛の馬が駆けてきた。
「 お 来たな。 十分 遊んだか? 」
栗毛の馬は 騎士の手に鼻づらをこすりつけている。
ひゃ〜〜〜 わんこみたいだあ〜〜〜
すっごく慣れてるなあ
へえ ・・・ キレイな毛並だね
あは 首のとこだけ黒いんだ?
「 さあ そなた ・・あ〜〜〜 しまむらじょ〜
この馬にのるがよい 」
「 へ?? は はい ・・・ 」
「 我が王城に案内するぞ。 」
「 は はい ・・・ あのう〜〜〜 」
「 なんだ? 」
「 あのう ・・・ あなたは? 白馬の騎士さま 」
「 ― 我が名は フランソワーズ。 パッション王国の姫だ。 」
ふぁさあ〜〜〜
騎士は羽根飾りのついた帽子を取った。
金色の巻き毛が青いチュニックの上に豊かに広がる。
その女性 ( ひと ) は どこから見ても ― 彼女 なのだ。
うっそ〜〜〜〜〜 やっぱ フラン だよう〜〜〜
でも でも なんで??
ジョーは ぽか〜〜〜ん と目を見張りまじまじ・・・ 彼女を見つめている。
「 どうした? さあ ゆくぞ ルナについてこい 」
「 るな? 」
「 ああ わたしの愛馬の名前だ。 ああ そなたの馬の名はブラウニーだ。 」
「 へえ ぶらうに〜 か。 よろしく〜〜 」
ジョーは 栗毛君の首をそっと撫でた。
ひひ〜〜ん ・・・ !
さあ 乗って、とばかり栗毛クンは彼の側に立った。
「 お ありがと。 え〜と ・・・ よっ! 」
「 よいか? さあ わたしの後に続け 」
「 は はい〜〜 」
ぱかぱかぱか こぽこぽこぽ
白馬と栗毛馬は 緑深い森の中を進んでゆく。
「 ・・・ あ あのう〜〜〜 ふらんそわ〜ず姫さま 」
「 なんだ 」
「 あのう〜〜 伺ってもいいですか 」
「 かまわぬ。 申してみよ。 」
「 ハイ ・・・ あのう なんだって見ず知らずのぼくを
連れてきてくださったのですか? 」
姫君はジョーを振り向くと 微笑してくれた。
わ♪ かっわいい〜〜〜 フラン〜〜
「 ― わがパッション王国には 古からの言い伝えがあるのだ。 」
「 いいつたえ? 」
「 そうだ。 王国の民なら 誰でも知っているのだが。 」
姫君は 透きとおった声で歌い始めた。
「 翡翠の森は 黒い幽霊から王国を護っている。
その森で大地の色の瞳をした少年に出会うとき、悪しき時代は終わる。
彼は碧の瞳の守護者となり 王国を護るのだ ・・・ というものだ。 」
「 ・・・ へえ〜〜〜〜 」
「 そなたは 大地の瞳を持っている。 」
「 へ? あ ああ ・・・そう かな? 」
「 この王国には 翡翠の森に踏みこむ民はいない。
森の警備と守護は 王家の仕事なのだ。 」
「 そうなんですか ・・・ え〜〜 と でも そのう〜〜
お姫様の仕事 なんですか? 」
「 わたしは この国を護らねばならぬ。
ああ 王城が見えてきたな。 ゲートがみえるか 」
「 はい 」
「 よし 小さな門から入る。 そなたは黙ってついてまいれ 」
「 ハイ 」
ジョーは栗毛君にゆられつつ 姫君の後を追った。
追いつつ つくづくと彼女の後ろ姿をみつめる。
う〜〜〜ん ・・・ どう見ても フラン だよなあ?
あの髪の具合とか 肩のカンジとか・・・
声だって さ。 ね フラン?って言いたくなっちゃう
でも 話し方が全然ちがう。
態度も さ。 マジ ぼくのこと ・・・ しらない?
それに ― 偏光レンズ眼 も スーパー聴力 も 効かない。
そもそも脳波通信さえ まったく稼働しない !
ぼくは ― この身体は いったい・・?
全くの生身だよね どうなってんだ?!
馬の背に当たる尻に 微妙〜〜な痛みすら感じつつ
ジョーは 白馬のフランソワーズ姫 の後について馬に揺られてゆくのだった。
ギギギ −−−−−− 城のゲートがゆっくりと開く。
「 フランソワーズ姫さま お帰りなさいませ〜〜 」
門番の衛兵が 片膝をついて挨拶をする。
「 今 帰った。 ああ これはわたしの連れだ。 」
「 ・・・ 」
衛兵たちは 黙ってジョーに向かってもアタマを下げた。
「 あ ども ・・・ 」
「 ここがわがパッション王国の王城だ。 」
「 へぇ・・・・ わ〜〜〜〜 すごいキレイな庭ですね〜〜
薔薇かなあ〜 あっちのは え〜〜と・・・ 藤だったっけか 」
「 よく知っているな そなたは 」
「 えへ・・・ ふら、いえ ぼくのトモダチが庭いじりとか好きなんで・・・
すごいなあ〜〜 立派な庭園ですね 」
「 ありがとう。 庭師たちが丹精してくれている。 」
「 そうなんですか ・・・ ああ 気持ちがいいなあ 」
「 ・・・ そなたは面白いな 」
「 え そうですか? ・・ ふら、いえ トモダチもそう言います。 」
「 ほう その人とは意見が合うな 」
「 え ええ ・・・ おんなじヒトだと思うんだけどなあ 」
「 ? なんだ? 」
「 ・・・いえ 」
タタタタ −−− ダダダダ −−−
庭園の四方から足音が飛んできた。
「 ? だれか きますよ? 」
「 ああ。 皆の者、わたしはここだ〜〜 」
「 は? 」
姫君! お帰りなさいませ ! 姫さま〜〜〜
「 う わ?? 」
二人の前には それぞれの狩装束に身を固めた騎士たちが現れた。
ザ ッ −−−− !
全員が さっと片膝をついた。
「 フランソワーズ姫 お帰りなさい。 」
「 うむ 今戻った。 皆 出迎えご苦労 」
姫君は 鷹揚に頷き、 騎士たちに温かい眼差しを向けている。
「 ・・・ うわ〜〜〜 すげ 〜〜〜〜 」
「 姫? コヤツは?? 」
赤毛ののっぽが キツイ視線を向けてきた。
「 姫。 胡乱なヤツではありませんか 」
白銀の髪のオトコが ジョーの前に立った。
「 いや。 彼は しまむら・じょー。 翡翠の森で出会った。
彼は ― 大地の色の瞳 を持つものだ。 」
「 ・・・!!! 」
居並ぶ騎士たち 全員が息を呑み、 ジョーをみつめた。
「 あ あ〜〜 ども。 しまむらじょー ですぅ 」
ジョーは ぺこり、とアタマを下げた。
ひえ〜〜〜〜 なんなんだ〜〜〜 このヒトたち・・・
彼はドギマギしつつも 騎士達をそっと見回した。
な んか 皆 どっかで見たコト、 ある ・・??
長身赤毛は青の目を 白銀のオトコは薄い水色の、 そして
褐色の肌の青年と ドジョウ髭の中年オトコは 黒い眼、
見上げる巨躯の持ち主は灰色の目、 スキン・ヘッドの中年は灰色がかった
青の眼差しを持っていた。
! < みんな > じゃないか 〜〜〜
皆 こすぷれ とかしてるわけ???
お〜い ねえ 皆〜〜〜 ぼくも混ぜてくれる?
「 ・・・・ 」
ジョーは 精一杯のキモチを込めて 彼らに笑顔を向けてみたが
返ってきたのは 鉄の棘を含んだ視線だった。
「 じょー。 彼らはわたしに仕えてくれている騎士たちだ。 」
「 姫君、 よい友人たちをお持ちですね 」
「 ― 友人 ? ほう そなたはなかなか鋭いな 」
「 へ? 」
「 いや なんでもない。 皆〜〜 ご苦労 ・・・ 」
ザ。 騎士たちは再び 姫君に会釈をした。
「 じょー はこの王城に留まる。 いろいろ面倒をみてやってほしい。
大地の瞳の じょーを加え 我らは ― 黒い幽霊どもを 倒す。 」
お〜〜〜〜〜〜 !! 騎士たちは剣を振り上げる。
「 な な なに?? 」
「 わがパッション王国と 隣国のディザイア王国は 長い間
黒い幽霊どもと闘ってきたのだ。 」
「 おうよ 若いの! オレたちはヤツらを追い詰めてるぜ〜〜 」
赤毛ののっぽが口を挟んだ。
「 へえ ・・・ 」
「 ふふふ 彼らはいつもわたしを援けてくれている。
我らは なんとしても奴らを倒す!
そして 捕らわれの隣国の王子を助けださねばならない。 」
「 おう〜〜 我らは常に姫の力となるのだ〜〜 」
騎士たちは 意気盛んだ。
「 は ・・・ あ ・・・ 」
?? なんなんだ???
隣国のおうじ?? ・・・ ファンタジーか?
・・・ こういうの、女子向きだよなあ・・・
ちょっち 苦手かも・・・
「 そのためには そなたの力が必要なのだ しまむら・じょー 」
フランソワーズ姫が まっすぐにジョーを見つめた。
「 へ ??? ぼ ぼく?? 」
「 そなたと共に 黒い幽霊退治に出かける。 」
「 おう! 」
「 それは 危険だ、 フランソワーズ姫。 」
落ち着いた声が 薔薇のゲートの向うから聞こえてきた。
「 ― 兄上 ! 」
「 陛下 」
騎士たちは 全員がざ・・・っと片膝を突いてアタマを下げる。
姫君は 軽い足取りで声の方へ駆けて行った。
「 ジャン兄上〜〜 いえ ジャン国王陛下。 ただいま戻りました。 」
「 お帰り フランソワーズ姫。 おや 客人かな 」
「 はい。 しまむら・じょー です。
じょー こちらは わがパッション王国の国王、ジャン陛下です。 」
「 ( ひえ〜〜〜 ) あ・・・お おめにかかれて光栄です 」
ジョーは ぎくしゃくとその人物に向かって頭を下げた。
あにうえってことは ・・・
うわ〜〜〜 フランの お兄さん じゃないかあ〜〜〜
国王陛下 ・・・? だっぴゃ〜〜〜
「 ようこそ しまむら・じょー わがパッション王国へ。 」
「 兄上。 彼は < 大地の瞳を持つ > 青年なのです。 」
「 おお ・・・ そうなのか。
フランソワーズ。 聞こえてしまったぞ。 」
「 兄上、 いえ 国王陛下。
お願いします。 わたくしとこの騎士たちを 幽霊退治に遣わせてください。 」
「 陛下。 我々からもお願いいたします。 」
白銀の髪の騎士が さ・・っとアタマを下げた。
「 黒い幽霊を退治し ディザイア王国の王子を救出して参ります。 」
「 フランソワーズ・・・ 」
「 大丈夫、 わたくしには頼もしい騎士たちと この しまむら・じょー が
おります。 」
ひぇ〜〜〜 ぼ ぼく ??
ジョーは驚愕で口 あんぐり、だ。
「 しかし ・・・ 」
国王は ゆっくりと薔薇の元にあるベンチに歩みよった。
あ ・・・? 脚 が・・・?
ジョーは 身を低くしつつも気が付いていた。
ジャン王は 片脚を庇い跛行をしているのだ。
「 兄上! 」
フランソワーズ姫は すぐに兄王に手を貸し、ごく自然に国王を
ベンチへと導いた。
「 ああ ありがとう 姫。
じょー? 見ての通りだ、私は片脚が自由に動かない。 」
「 ・・・ わたくしのせいです 」
「 姫。 もうそれは言わぬ約束だぞ。 」
「 でも ・・・ 」
「 そうですよ 姫君。 」
「 あ ・・・ 」
薔薇のアーチの向うから 若い女性が進みでてきた。
「 陛下。 お散歩は如何ですか 」
彼女は ジャン王に向かって腰をかがめ会釈をした。
「 ああ 気持ちがいい。 マリアンヌ、 そなたもこちらへ ・・・ 」
「 ありがとうございます。 」
「 じょー。 義姉の・・・ マリアンヌ王妃です。
姉上さま こちらは しまむら・じょー
黒い幽霊退治に同行してくれるモノです。 」
「 まあ そうですの? ありがとう しまむら・じょー 」
王妃は 輝く笑顔でそっと夫君のジャン王に寄り添った。
うわ〜〜〜 なんかいい感じだなあ 〜〜
ジョーも つられてにこにこ・・・してしまった。
「 しまむら・じょー。 聞いてほしい。 」
「 は はい? 姫君さま。 」
「 兄上は わたしを黒い幽霊から護ってくださって ― 」
「 はは 脚の一本より妹の方が遥かに大切だ。 」
暗い顔をした姫に ジャン王は明るく笑いかけた。
・・・ なんか ・・・ 皆 いい感じだね ・・・
Last updated : 05,07,2019.
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********* 途中ですが
珍しくも! ファンタジー ? です☆
実は この設定、 基礎英語2 から拝借してます〜〜
ええ 勿論今後 ゼロナイ展開 しますけど !(^^)!