『 ぼうけん ! ― (4) ― 』
― パッション & ディザイア ―
ズサ −−−− カッ カッ カッ !
騎士たち全員が 姫君を囲む布陣を敷いた。
「 お〜や 怖いですねえ〜〜〜 皆さん
」
「 ― 何者だ っ 」
「 だ〜〜から 言いましたよぉ 名前は か〜る☆
AI国の 王子サマ ですってば
」
「 ふん そんな国の名前は聞いたことがない。 」
「 え〜〜〜 遅れてるぅ〜 」
「 なんだと? 」
「 あ〜 なんでもな〜い〜〜 ちゃんとした国ですよぉ〜〜
ばーちゃる だけどさ 」
「 ? ば〜〜?? 」
「 バーチャルなら ・・・ あんた オタクさん? 」
一番後ろから ジョーが声をあげた。
「 あっは〜〜 バレたあ? ぢつは 僕 オタクなんですぅ 」
金ピカの若者は くね〜〜〜っとシナを作った。
「 げ★ キモいヤツ〜〜〜 」
「 ふ〜ん そのなんちゃら国って オタクが作ったんでないの? 」
ジョーは 前にでてその金ピカ野郎に詰め寄った。
「 あ わかったあ? 僕 くりえ〜た〜 でもあるんだぁ 」
「 じゃ 一人で遊んでろよ。 さあ 皆さん 行きましょう 」
ジョーは 先輩たちを振り向く。
「 そこを退いてもらおう。 我らは先を急ぐ旅なのだ。 」
白銀の騎士の声音がぐっと低くなった。
お やっべ〜〜〜 おっかね ・・・
危険 危険〜〜〜 待避・・・?
若い騎士たちの顔が引き締まった。
「 先を急ぐ? 」
「 我々はこの森を抜け 北の荒地を目指している。 」
「 へえ〜〜 北の荒地?? あんなトコ なにしに行くんです? 」
「 お前の知ったことではない。
さあ そこを退け。 我らを通せ。 」
カツ ・・・・ ! 白銀の騎士の漆黒の馬が蹄を鳴らす。
ひぇ・・・ 蹴散らすのか?
「 あ〜〜 そんなら 僕、ショート・カット、
知ってるんだけどぉ? 」
「 しょ〜と かっと?? 」
「 ・・・ 近道 ってことです 」
ジョーが ひそ・・っと先輩たちに解説する。
「 教えてあげてもいいですよぉ? 」
「 必要ない。 我々は案内図を持っている。 退け 」
「 ん〜〜〜 そんな怖い顔 しないでぇ〜〜
ねえ なんでみなさんは 北の荒地にいらっしゃるんです? 」
金ぴかオトコはなかなかしつこい。
「 〜〜〜 るせ〜〜な〜〜
俺たちは 黒い幽霊討伐にゆくんだよっ 以上。 そこをどけ 」
短気な赤毛がついにキレた。
「 ほう〜〜〜 黒い幽霊討伐 ですか〜〜 すばらし〜い 」
「 ・・・・ 」
「 北の洞穴までは長旅ですよ 不肖・ワタクシめは近道を存じております。 」
「 必要ない と言ったぞ 」
「 お教えしますってば〜〜〜 楽に行けた方がその後の討伐も
優位に立てますよ〜〜 ねえ? 」
「 それは本当に近道なのか? 」
「 そりゃ もう〜〜 僕はず〜〜〜っとこの森に棲んでいるんですから 」
「 ふん・・・ 王子サマが森に棲むのか 」
「 ま〜〜 諸事情ありってことで。
ねえねえ 近道、聞きたいでしょう? 」
「 なぜそんなに教えたがる? 」
仲間内で一番の巨躯の持ち主が すっと前に出てきた。
「 あ〜〜ら でっかい騎士さん〜〜 」
「 なぜ 教えたがる 」
ぐ・・・っと睨まれ ― 金ピカ男は さすがにすこしたじろいだ。
「 あ〜ん 睨まないでぇ 〜〜〜
あの ですねえ、実は喜んでお教え・・・といいたところですが。
実はワタクシも お助け願いたいことがありまして ・・・ 」
「 ふん やはりそんな裏があるのか。 退け。 道を開けろ 」
「 あ〜〜〜 行かないでくださいよぉ〜〜〜
実は僕ってば 愛の秘薬 を作っているのですが 」
アナタの愛 が必要です〜〜〜〜
ちゃらいオトコは 騎士たちの真ん中にいる姫君の前に駆け寄った。
「 ! 無礼モノ〜〜〜 下がれ 」
騎士たち全員がいきり立ったが ―
「 ・・・・ 」
姫君自身が 彼らを制した。
「 お前が望む 愛 とはなにか 」
「 え〜〜〜 決まってるじゃないですかあ〜〜〜
僕が愛する姫君〜〜〜 僕に愛をください 〜〜 」
「 お前なあ 本当に王子サマなのか?
少しはオトコらしくプライドを持てよ 」
スキン・ヘッドの騎士が呆れ顔をしている。
「 ぷらいど?? なに それ オイシイ? なにかの足しになる?
愛の秘薬 があれば 誰の愛だって自分のモノにできます〜〜 」
金ピカ男は なぜか自信たっぷりなのだ。
「 愛とは ― 他から強制されるものではない と思っている。
強引に押し付けるモノは 愛ではない 」
「 わ〜〜〜〜 そうだ そうだ〜〜〜 」
ジョーは思わず拍手してしまった。
「 ・・・ あ 失礼しました ・・・ 」
「 そんな冷たいコト おっしゃらないでぇ〜〜
だって 僕はアナタを熱愛しているんですよう 〜〜 」
「 って思いこんでるだけじゃね? 」
「 はあ? 」
「 だ〜から〜〜〜 」
「 まあ 待ちなよ。 」
褐色の騎士が ジョーと金ピカ男の間に入った。
「 アンタは 愛の秘薬 とやらを作りたいんだろ? 」
「 そうです〜〜 あは 知的なお兄さ〜〜ん
」
「 何に使うのかい 」
「 え そりゃ〜〜〜 こちらの姫君さまの愛をげっとしたいんですぅ〜 」
「 それでどうする? 」
「 え・・・ でぇ〜〜 らぶらぶ〜〜になって
この王国の金ピカお宝を ・・・ っと そうじゃなくてえ
姫君さまの愛が〜〜〜 ほしい〜〜〜 ♪ 」
「 アンタ 言ってるコトに論理が通ってないよ? 」
「 え〜〜ん そんな野暮 言わんといてぇ〜〜 」
金ピカ男は さかんにくねくね〜〜 している。
「 アンタさ、 自己主張するならちゃんと論理を組み立ててからにしな。
でまかせに付き合うほど 僕らは暇じゃね〜んだよ 」
「 そんな冷たいコト 言わないでくださいよ〜〜う
ああ ああ 美しい りりしい お姫さま〜〜〜
僕はアナタ様を熱愛しています〜〜〜 ですからぁ〜〜
僕にも 愛を〜〜〜 」
「 ハナシにならんな。 そこを退け。 さあ出発するぞ。 」
白銀の騎士が シビレを切らし前に馬を進めてきた。
「 あ・・・ ん ねえ 近道、知らいでいいのぉ? 」
「 くどい。 ノー サンキュウ。 我々は地図を持っている
騎士たちは呆れはて 次第にイライラし始めている。
あ ヤバいなあ〜〜
いっくらなんでも このヒトを蹴散らしてくワケにはいかないし
一番後ろで ジョーはハラハラしていた。
ポッポウ 〜〜〜 ぐるるる〜〜〜
軽い羽音とともに 鳩が一羽飛んできた。
「 あ ? 手紙ともってきた鳩さん ・・・ 元気になったかい? 」
ジョーが手をのばすと 鳩は全く躊躇いもせずに止まった。
「 さっき置いてきたパン屑・・・食べたかい?
泉の水も飲んだ? 」
「 ポッポゥ ! 」
「 よかった・・・ さあ お家にお帰り 」
「 ポッ !! 」
鳩は バサ ・・・っと羽根を揺らす。
「 え〜〜 一緒に来るって? だって君は ・・・ もしかして
そのう〜〜 黒い幽霊さんちから来たんだろ? 」
「 ポッ ! 」
鳩は少し怒った様子だ。
「 ・・・ ちがう? 」
「 ポッポウ ! ポッ ! 」
ジョーの手から飛び立つと ― 鳩は金ピカ男目指し 飛び降りた。
そして ― ツンツン !!! 彼のアタマをつつく。
「 わ!? わあ〜〜〜〜 あ 〜〜〜〜 」
金ピカ男は 騎士たちが驚くほどたじろぎ喚きだし ・・・
ぼわわわ 〜〜〜〜ん しゅう 〜〜〜〜
わ ぁ 〜〜 ・・・・・
灰色の煙が上がると ・・・ 男の姿は。
「 あ あれれ??? 」
「 ? アイツはどうした 」
騎士たちの目の前からは あの金ピカな姿は 消えていた。
「 ?? 逃げた のか? 」
「 さ さあ 〜〜 」
バサ バサバサ 〜〜〜〜 鳩が地面に舞い降りた。
「 ん? どうしたの、鳩さん? あ ? 」
ジョーは鳩の側に駆けよった。
果たして地面には ― 一匹のカナブンが蹲っていた。
「 え〜〜 これって 金色のコガネムシ?? 」
「 なんだって? 」
全員が ジョーの足元に注目した。
「 ― それで あの金色だったのか 」
姫君は笑いを含んでいる。
「 とんでもないヤツだな。 」
「 ふふん カナブンだからな 言ってることも滅茶苦茶ってことだ 」
「 ほうら ・・・ 葉っぱの裏にでも隠れてな〜〜〜 」
褐色の騎士が つん、と弾くと カナブンはよれよれ 〜〜 動きだし ・・
ぷう〜〜〜〜ん ・・・ 森の木立の中へと逃げていった。
ポッポウ〜〜〜
バサバサ〜〜〜 灰色の鳩はさっと飛び立ちジョーの愛馬の背に止まった。
ひひ〜〜〜ん ポッポウ〜〜〜
「 あれ もう仲良しなんだ? 一緒に行くかい? 」
「 しまむら・じょ〜 そなたはケモノや鳥に好かれるのだな 」
姫君が 笑顔を向けている。
「 え あは ・・・ なんでかなあ〜〜
ぼく、子供のころからなんだかわかんないけど やたらにわんこ・・・
いえ 犬やら猫に好かれるんです 」
「 そなたは優しいニンゲンだから 」
「 え?? 」
「 ― いや。 さあ 行こう。 」
「 はいっ 」
ザ ザ ザザ −−−−
騎士たちの一行は 馬を進めてゆく。
「 ゴブリンの森には小鬼が棲んでいる、って思ってたんですけど 」
一番後ろで ジョーは隣の褐色の騎士に こそ・・・っと尋ねた。
「 あは そうだねえ なんか〜小物ばっかりでてきたね 」
「 うふ・・・ 小ヘビとか カナブンとか? 」
「 ウン。 でもねえ ちゃんと化けて出てきたトコが面白いよね 」
「 だから ゴブリン なんですかね 」
「 通行人を惑わすってとこではね。 」
「 う〜〜ん ・・・ これに懲りてワルサは止めてほしいですよね 」
「 どうだか? ゴブリンだからねえ ・・・
しかし黒い幽霊を討伐して この森も明るくなれば
ああいう小ざかしい奴らは消えて失せるだろうね。 」
「 そうなんですか〜〜 それじゃますます ! 」
「 ウン。 じょ〜 ボウガン 頑張れよ 」
「 は はい ・・・ 」
ひゅるん 〜〜〜〜 ・・・・
まだ森を抜ける前に 冷たい風が吹きこんできた。
「 む ・・・ もう北の風か? 」
「 ちょっくら 斥候、行ってくら〜〜 」
パカパカ パカ 〜〜〜〜
赤毛の騎士が パっと駆けだした。
「 あ こらっ ・・・ ったく〜〜〜 」
「 追いかける。 」
巨躯の騎士が ず・・・っと馬の足を速めた。
「 あれ 言っちゃった・・・ いいんですか? 」
「 ふふ ・・・ いつものことだ。 じぇっと は足もはやくて 気も短く
斥候に向いている 」
姫君が 静かに口をひらく。
「 へえ ・・・ あのぅ せっこう ってなんですか 」
「 先発の探査隊のことだ。 」
「 探査? ・・・ ふうん・・・ いつもならフランの独壇場だよなあ 」
「 なにか? 」
「 い いえ ・・・ それで何を調べに行ったんですか 」
「 この風 やで。 」
丸まっちい騎士が ひらひら・・・ 宙に手を浮かせる。
「 ― 風? あ〜〜 そういえば 風向きも 風の温度も変わってきた・・?
え もう 冬 ? 」
ジョーも くんくん・・・ 空気の匂いを嗅いだ。
「 せやろ? ちょいと早いすぎまっせ 」
「 はやい ・・・・? 」
「 せや。 まだ 北の風が吹きだす時期やあらへん。
ここは ゴブリンの森 やで、 冬でん、こないな風、吹かへんのや 」
「 ! じゃ じゃあ ・・・ なにか怪物が?? 」
「 そりゃ わからへん。 けんど ここでこんなん風 吹いたらあかん。 」
「 あかん? なにが? 」
「 ― 見てみぃや 」
彼は すぐ脇の草地を指した。
さむいよ 〜〜 凍えてしまうよ〜〜〜
さむくて外にでられない〜〜〜 さむいよ〜〜
耳を澄ませば 小さな声 いろいろな声が 聞こえてきた。
「 え え?? なになに〜〜〜 」
「 よく聞いてやっておくれ。 」
「 え? 」
ザッ ジョーの栗毛君の脇に白馬がやってきた。
「 ・・・ 姫さま ・・・ 」
「 可哀想に ・・・ 」
低くつぶやくと 姫君は地に降りた。
「 あ ? 」
ジョーも あわてて彼女の側に馬からおりた。
「 ・・・・ 」
「 この声 ・・・ どこから・・・」
「 ここにずっと生きてきたモノたちだ ・・・ ほら 」
彼女は 道端の叢を指した。
「 え ・・・ あ 虫 ・・・? 」
そう ― それは 花の子供たちの声 ・・・ 虫の幼生たちの声
「 そっか ・・・ そうなんだ ・・・ 」
「 じょ〜 は 優しいな 」
「 え ・・・ あ この辺りはいつもこんなに寒いんですか 」
「 いや ・・・ 冬は荒地の向うから来る。 」
「 でも 寒いって声が聞こえましたよね? 」
「 うむ この辺りはまだまだ温かいはずなのだ。 」
「 姫さまの言わはるとおりやで。
ここいらは こないに冷えぇへん。 へ〜〜〜っくしょいっ 」
丸まっちい騎士が でっかいくしゃみをする。
ひょお 〜〜〜〜〜〜 ・・・・
北からの風は 手綱を握る手を凍えさせた。
目に見えて 冷たい空気が押し寄せたきた。
「 ひょ〜〜〜 ぶるるるる ・・・ えらく冷えてきたなあ
お 姫さま これを ― 」
寒そうなフランソワーズ姫に スキン・ヘッド氏がすぐさま自分のマントを取るが
「 ぐれ〜と。 俺に任せてくれ 」
白銀の騎士が さっとマントを姫君の肩にかけた。
「 ありがとう 」
「 姫君 」
ジョーは 肩にいる鳩にそっと頼んだ。
「 ね 鳩くん? 姫様の襟元に止まってあげてくれる? 」
ポッポウ ! バサ −−−−
灰色の鳩は 姫君の所に飛んでゆくと静かにその首に近い肩にとまった。
「 ・・・ 鳩が ・・・? これは温かい ・・・ ありがとう! 」
鳩くん 頼んだよぉ〜〜 ポッポウ 〜〜〜
「 この地がこんなに寒くなってしまっては ―
森の下草やら花木たちが全滅してしまうよ。勝手に気候を変えてはいけない 」
褐色の騎士も 地に降りて薮やら叢を見回し 顔をしかめた。
「 うむ ここはゴブリンの森の最北端 ― ここから先は
我らが パッション王国の領土ではなくなる。 」
「 へえ ・・・ え じゃあ 黒い幽霊が棲んでいる洞窟ってのは 」
「 ああ 北の荒地にある。 荒地はどこの国のものでもない。 」
「 どこの国のものでも? そんなことってあるんだ〜〜〜 」
「 世界には そのような地はたくさんある。 」
「 へ え ・・・ 」
ふうん ・・・ この世界は 案外のんびりしてるんだな〜
ジョーは 手を擦り 栗毛君の首を撫でたりしつつ 先輩たちの話を聞いていた。
「 それじゃ どうしても! 黒い幽霊をやっつけないとダメですよね〜〜 」
「 そうなのだ。 ― それには しまむら・じょ〜 伝説の少年である
そなたのチカラが必要なのだ。 」
「 姫サマ ・・・ ぼく ・・・ そのぅ 〜〜 伝説の少年 なんかじゃ 」
いいえ いいえ。 アナタは大地色の瞳を持っている御方〜〜〜
「 ?? え な なに?? 」
「 なにも言ってないよ じょ〜 」
「 い いえ ・・・ なんか こっちの薮の中ほうから聞こえた・・・? 」
「 え 薮? ああ 見事な椿の木があるけど・・・・
これ 枯れそうだよ 椿は寒さに強いはずなのに 」
褐色の騎士は 厚めの葉を広げた木の前に立った。
「 ― これは 黒い幽霊の吐息が かかったのだ。
ヤツの吐息は 生きとし生きるモノの世界を 凍らせてしまう 」
「 あ お帰り、じぇろにも。 じぇっと は? 」
「 アイツは 洞窟の側で張り込んでいる。 」
戻ってきた巨躯の騎士は 厳しい表情をしている。
「 そっか〜〜 我々も急いで行こうよ 」
「 うむ。 このままでは ― ゴブリンの森が凍ってしまう。 」
「 え ・・・ ゴブリンごと凍っちゃえばかえって都合いいでしょ?
もう通行人にちょっかい出すこともなくなるし 〜 」
「 しまむら・じょ〜? このゴブリンの森 は
我がパッション王国の一番外側の護りの地なのだ。 この地があるから
黒い幽霊どもは 大がかりに攻めてはこられないのだ。 」
それに ― と姫君は 少し表情を和らげた。
「 この地には 椿の垣根があって ― 我が王国の最北の地を護ってくれている。
椿の白い花は たいそう美しい・・・ 」
「 姫さま ・・・ そうだったのですか ・・・
ああ この木、 枯れそうですね 」
「 ウン 植えかえてやれば助かるかも 」
褐色の騎士は 植物にも詳しいらしい。
「 あ じゃあ 引っこ抜いてゆきますか
」
「 乱暴だな お前。 帰りに検討しよう。 今は ― 」
「 あ そうですよね 幽霊討伐〜〜 あ ・・・ この花 枝が折れて 」
ジョーは 目の前に落ちた椿の枝を拾いあげた。
数枚の葉と まだ開いたばかりの白い花がついてる。
「 ・・・ キレイな花だなあ 」
どうぞ
アタシをつれていって きっとお役にたちます
「 え? ・・・ あれ 誰もいないのに ・・・ ま いっか 」
ジョーはその枝に少し水を垂らすと 背嚢のポケットに差した。
さあ 進むぞ 〜〜〜
ぱか ぱか ぱか カッ カッ カッ −−−
姫君と騎士たちは 駒を進め ― やがて小暗いゴブリンの森を抜けた。
ひゅるるる 〜〜〜〜〜〜
荒地に出ると 北風は一段と強くなった。
騎士たちは 姫君を真ん中に、護りつつ進んでゆく。
「 姫。 お寒くはないですか 」
「 ぐれ〜と。 ありがとう、大丈夫だ。 このコがいる 」
ポッポウ♪ 姫君の襟元で 灰色の鳩君が鳴く。
「 岩場を抜けると 洞窟が見える 」
巨躯の騎士は 先頭に立った。
「 自分 盾になる。 皆 気をつけろ 」
「 おう 頼む 」
びゅうう 〜〜〜〜〜
ますます強くなる凍える風の中 彼らは地を這うように馬を進めた。
「 お〜〜〜 やっと来たかあ〜〜 」
ひゅん !!
一陣の突風とともに 赤毛の騎士が飛び込んできた。
「 じぇっと。 無事か 」
「 あったりめ〜よ〜〜
お? しまむら・じょ〜 後ろにいるキレイなおねいさんらがいるじゃん?
はろ〜〜〜 おじょうさんたち 〜〜 」
赤毛は 珍しく丁寧に挨拶をした。
「 ??? おねえさんたち? そんな人達はしらな・・・ え?? 」
こんにちは。 アタシ達がご案内します。
ジョーの後ろには ― 輝く白の髪、白いドレスの少女たちが五人 立っていた。
彼女たちは 美しい顔立ちだが 五人ともそっくりだった。
「 え〜〜〜 き きみ達?? だ だれ?? 」
びっくり仰天〜〜のジョーに 一人の少女が寄ってきた。
「 アタシ達 カメリア姉妹は姫君さまと騎士の方々にお味方いたします。
どうぞ 黒い幽霊をやっつけてください ! 」
「 そなた達は ― ゴブリンの森でわが王国を護ってくれているんだな 」
フランソワーズ姫が 静かに進み出てきた。
「 はい 姫君さま 」
五人姉妹は 一斉に腰をかがめ正式な挨拶をした。
「 姫君。 彼女らと共に進みましょうぞ 」
スキン・ヘッドの騎士が 進言する。
「 そうしよう。 カメリア姉妹。 案内を頼む 」
「 はいっ 」
「 皆さま お味方はアタシたち姉妹だけではありませんよ 」
姉妹の一人が 宙に手を差し伸べた。
「 え? 」
「 なんと・・・? 」
ひゅるん〜〜 ひらひら カツン カツン
冷えた空から 白い切片 と 小さな氷の塊が落ちてきた。
「 ひゃ・・・ 雪 に これは霰かなあ 〜 」
「 そうです。 雪の精や霰の精、 そして 霜や氷の精も
加勢してくれますわ 」
「 え〜〜 なんで? 」
「 彼らは 活躍する季節が本来は決まっています。
そして 彼らの残したものは 次の季節の糧となるのです 」
「 へ? 」
「 つまりね しまむら・じょ〜 雪やら霰が春に溶けて豊かな水になるって
ことだよ 」
「 あ そっか〜〜 それで田畑を潤す ・・・? 」
「 あたり〜〜〜 」
「 その通りです。 そんな彼らを黒い幽霊は 妖術を使い無理矢理一年中
働かせているのです 」
「 ひっで〜〜〜 な〜〜 あ 失礼しました 」
「 ふふん しまむら・じょ〜 オレ様もずっとここで待っている間にな〜
雪やら霰たちが ちらちら・・・教えてくれたぜ 」
「 そうなんだ〜〜〜 わあ 味方がいっぱいですね〜〜 」
ジョーは賑やかなのが好きなので 嬉しそうだ。
「 ・・・ こちらですと 洞窟からは死角になりますし・・・
ヤツの禍々しい吐息も 避けられます。 」
五人姉妹は 騎士たちを窪地に案内した。
「 よし。 それでは作戦を説明する。
ああ その前に少しばかり休憩してから 皆集まってくれ 」
リーダー格の白銀の騎士が 馬から降りた。
「 おう 」
騎士たちは 愛馬を風の当たらない場所に繋ぎ 水を与えた。
「 ・・・ あ こっちに草が生えてる〜〜〜 ほら お食べ? 」
「 お いいねえ〜〜 お前たち よ〜く休んでおくれ 」
「 どうどう ・・・ 寒いかい、ブランケット、掛けるね 。 」
ひひ〜ん ・・・ ぶるるる ・・・
馬たちは すこしほっとした様子だ。
騎士たちも 顔を拭ったりリラックスしている。
「 ほっほ〜〜〜 火ぃを熾したで〜〜 おいでなはれ〜 」
丸まっちい騎士が 手早く焚火を組み立てた。
「 おお これはありがたい〜〜 よし 吾輩がお茶を淹れよう 」
「 じゃ 僕はビスケットを焼く。 じょ〜 手伝ってくれるかい 」
「 はいっ 」
「 俺 枯れ枝を集める 」
「 じぇっと 地図、書けるか 」
「 お〜〜 オレ様が探ったところではな 」
赤毛の騎士は ごわごわした紙に図を書き始めた。
「 〜〜〜 で ここで曲がってだな 」
ふむ ふむ ・・・ 騎士たちが覗きこむ。
「 ・・・ なんかワクワクしてきたな。 」
ジョーは一番後ろで 先輩たちの様子を見ていた。
なんか ・・・ ヘンなの。
スーパーガンもないし ぼく、生身っぽいし。
全然弱っちいのに ・・・
なんか〜〜 やる気もりもりなんだ。
ぼく フランを護る!!!
「 しまむら・じょ〜 楽しそうだな 」
「 姫さま〜〜 」
気がつけば 姫君が隣に来ていた。
「 さ 作戦会議は 」
「 彼らに任せる。 わたしは わたしの役割を果たすだけだ。
騎士としては わたしは彼らには敵わないから。」
「 ひゃ〜〜 なんか すっげ〜ヒトなんだあ? 」
「 ?? 」
「 あ なんでも・・・ あのう〜〜 姫様。
ひとつ 伺っていいですか 」
「 なんなりと 」
「 あのう〜〜 なんで黒い幽霊は姫様に執着してるんですか? 」
「 ヤツは ― 以前に捕えそこねたわたしを どうしても捕まえたいのだ 」
「 え ・・・ あ 小さな姫さまを浚った・・・ あのカラス? 」
「 カラスではない。 カラスは我々の味方だぞ?
あれは 黒い姿をした魔物だ。 」
「 う〜〜む ・・・ 許せん! パッション王国のためにもどうしても
やっつけないと ! 」
「 ― しまむら・じょ〜 は いいヒト だな 」
「 え ・・・ えへへへ〜〜 」
姫君の柔らかい視線を受け ジョーはもう最高に舞い上がった。
うっは〜〜 えへへへ〜〜
うん、フランは やっぱ フランなんだあ〜〜
ぼくの フランソワーズ を護るぞ!
敵地突入を前に ― 優しい時間 ( とき ) が二人を包む
そう 情熱と希望があれば なんだってできるのだ !
Last updated : 05,28,2019.
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********* 途中ですが
元ネタの 基礎英語2 は 一年続くのですが・・・
こちらは そろそろクライマックス ・・・?
あと 一回 続きます〜〜〜 <m(__)m>