『 腕の中 ― (2) ― 』
すっとん ぱっこん すっとん ぱっこん ・・・・
少々妙〜〜な足音に 道行く人々はちらちら視線を向けてしまう。
都心に近いオシャレな街角なので 余計に皆が < 見る >
のかもしれない。
?? なに〜〜〜?? この季節に・・・
やっだ〜〜 ・・・目立ちたいだけじゃない?
わかんないよ〜〜 新しいファッションかも
お? ガイジンさんじゃね? 日本らしい〜って思ってる?
― だってアレ。 オヤジ・サンダル じゃね??
こそこそこそ ひそひそひそ ぼそぼそぼそ
あちこちからの囁きは ちゃ〜〜んとわかってる。
むろん、003の耳 など使わなくても だ。
もちろん 自分の足元が注目の的ってことも ちゃ〜んと知っている。
そりゃ こんな恰好はちょっとどうか・・・ってことも。
全部 ちゃんとわかってる!!!
だ け ど。
足、痛いんだもの〜〜 仕方ないじゃない!!
フランソワーズは完全に開き直って?いた。
ニット帽を目深くかぶり ぐるぐるマフラーを巻いているので
顔はよくわからない。 はみ出しているホンモノの!金髪で
あ ガイジンさん? とわかる程度・・・
すっとん ぱこん すっとん ぱこん
大きなサンダルをつっかけ 少々歩き難そうに でも一直線に
舗道を進んでゆく。
「 ・・・ あっ いたっ!! 当たっちゃったア〜〜〜
ひえ〜〜ん ・・・・ 裸足になりたい〜〜〜
・・・これで クラス できるかしら 」
こんな朝は 大きなバッグがいつもよりず〜〜〜〜っと重く
肩にのしかかってくる。
「 ・・・ あ〜あ ・・・ 休むのはイヤだし。
でも この足じゃ ・・・ でも とにかく 行くわ! 」
ぱこん すっとん すっとん ・・・
庭用の大きなサンダルをひっかけ フランソワーズはレッスンの
時間を気にしつつ バレエ団に向かうのだった。
― 今朝。 ・・・ かなりの早朝 ・・・・
「 ふぁ 〜〜〜 ! 足 いったぁい〜〜〜〜
ああ やっぱ 痛いなあ・・ 絆創膏 もう一枚、重ねようかな 」
目覚めてベッドで フランソワーズは 呻吟していた・・・が。
ジリリリリリ −−−− !
目覚ましアラームが鳴った。
「 ・・・ と! 朝ごはん、支度しなくちゃ・・・
う〜〜〜ん 裸足で いっか! 」
ぱっと飛び起き ささささ〜〜〜〜と着替え
フランソワーズは素足のまま 寝室から出て行った。
「 ・・・ う〜〜〜ん ・・・・ 」
隣に眠るジョーは ― 全く知らずに爆睡中〜〜 ・・・
・・・ 彼の中 どこかに存在する・はずの 009へのスイッチは
完全に off ・・・・らしい。
まだ 息が白く見える時間。
フランソワーズは すぴかと門の外に立っていた。
「 いってきまあ〜〜す 」
「 はい 行ってらっしゃい。 あ まって〜〜〜 すぴかさん 」
「 ? なに〜〜〜 おか〜さん 」
「 すばるが ・・・ すばるく〜〜〜ん はやくしなさい〜〜〜 」
彼女は 振りかえって声をかける。
「 ・・・ う〜〜ん まって ・・・ 」
玄関の中から ぼそぼそ・・・返事が聞こえた。
「 ほら すぴかはもう ご門の外よ? 」
「 ・・・ うん ・・・ 」
カッチャ カッチャ カッチャ ・・・
ランドセルを鳴らし すばるがのんびり〜〜 出てきた。
「 行ってきまあす おか〜さん 」
「 はい 行ってらっしゃい ほら はやく〜〜〜
すぴかさあん いま すばる、行くから〜〜 待ってぇ 」
「 すぴかあ〜〜〜 わあ〜い 」
すばる本人は のんびり手を振っている。
「 すばるく〜〜ん はしる! 」
「 はあい ・・・ あれ? おか〜さん はだしだよ 」
「 ・・・ え? あ ええ そのう 」
母は あわてて小さなムスコの視線から 素足を隠した。
「 さむくないの? あんよ、けがするよぉ 」
「 だ 大丈夫。 あの〜 お母さんね さっき・・・
ソックス 汚しちゃって ・・・ 洗濯機の中 」
「 ? 朝ごはんのときも おか〜さん はだし だったよぉ 」
「 え あ そ そうなのよ〜〜 朝ご飯 つくってて・・・
えっとぉ お醤油を垂らしちゃったのね〜〜 」
「 ふうん? 」
のんびり屋なのに すばるはちょっとしたことに気付くコなのだ。
「 ほらほら〜〜〜 すぴか 待ってるから!
いそいで〜〜〜 走る〜〜〜 」
「 あ うん すぴかあ〜〜〜 まってて〜〜〜 」
かっちゃ かっちゃ・・・ すばるはのんびり走っていった。
「 いってらっしゃ〜〜〜い ・・・ ああ やれやれ ・・・・ 」
門の外で大きく手を振れば ズキン 足指が痛んだ。
「 どうしよう・・・ まさか裸足じゃ 行けないし・・・
レッスン・・・ バレエ・シューズで受けようかなあ 」
庭用の大きなサンダルをつっかけ ぴこぴこ足を引きずって玄関に戻る。
「 ・・・っと。 急がなくちゃ・・・
ジョーのお弁当はできてるけど、 とにかく 起こさないと! 」
フランソワーズは 腕捲りをし、二階に上がっていった。
― 十分後
「 ・・・ もう知りません。 ジョー!
朝ご飯は冷蔵庫の中!!! ゴハンは炊飯器の中!!!
では 遅刻などなさいませんように! 」
バタン! 音をたてて寝室のドアを閉めた。
「 ったく〜〜〜 なんでこう毎朝 毎朝〜〜〜 (怒)
さ。 レッスン、行きますから。 」
寝起きが超〜〜悪いカレシに手を焼き ― もう今朝は放置に決めた。
ずんずん ずん ! 素足で階下に降りた。
必要な荷物とコートは階下に置いてある。
「 忘れ物・・・ ないわね? さあ て 」
玄関まで来て 彼女は文字通り < 立往生 > してしまった。
スニーカーも ブーツも。
夏のサンダルも 履けなかった ・・・
― ずる剥けた足指が 痛くて。
家の中では素足で通し なんとなく痛みを忘れていたのだが。
まさか裸足で外出はできない。
「 ・・・ う〜〜〜 どうしよう〜〜〜〜
指に当たらない靴って ・・・ ああ 一足もないわ 」
ふと。 玄関の隅に視線が行った。 そこに鎮座するのは―
庭サンダル ( さっき 履いてた )
家族共有で ( チビ達も ) ちょっと庭に出る 新聞・郵便を取りにゆく
そんな時に つっかける・ぶかぶかのサンダルだ。
「 ・・・ あ。 さっきコレでチビ達を送り出したんだっけ ・・
うん これなら〜〜〜 大丈夫 ・・・ かも 」
そう〜〜っと足を入れみる。
爪先、というか前半分は剥き出し、甲の部分だけが覆われている。
「 ・・・ いい かも。 う〜〜んと足を前に突っ込んでおけば
指に当たらないわ。 これなら ― 出掛けられるぅ〜〜 ♪ 」
ぱっこん すっとん すっとん
玄関で改めて歩きまわってみたが なんとか ― 足指には当たらない。
「 おっけ(^^♪ これでいいわ。 あ〜〜 時間〜〜
博士〜〜〜〜 いってきまあす〜〜 」
フランソワーズは 大きなバッグを肩にかけると奥に声をかけた。
「 ― おう 気をつけてな〜〜 ジョーはちゃんと布団から
ひっぺがして 送り出すで、心配しなくていいぞ 〜〜 」
「 お願いしまあ〜す 」
ぱっこんぱっこん ぱっこん 〜〜〜
庭サンダルで フランソワ―ズは朝のレッスンに出かけて行った。
( バスに乗ってJRとメトロを乗り継いで ― 庭サンダルで・・・ )
― しばらくして。
「 ふう〜 やっとベッドから追い立ててやったわい・・・
ったくもう・・・ アイツはどういう人間なのだ?? 」
ギルモア博士が ぶつくさ言いつつ、玄関に出てきた。
「 やれやれ・・・ 表庭の花壇の水やりをせねばな。
そろそろ梅が咲き始めるか ・・・ 」
< ジョーを起こす > という最難関をなんとかクリアし
博士はほっと一息、吐いていたのだが。
「 ? はて・・・・ 庭用のでかいヤツがないぞ?
ああ チビさん達が履いて裏庭の方に置いてきてかのう・・・ 」
カッコロ。 カタカタカタ −−−
博士はあまり深く考えず、下駄箱から自身の下駄をだすと
そのまま庭に出ていった。
バタバタバタ −−−
ほぼその10分後。 大きな足音が慌てて玄関に出てきた。
「 博士〜〜〜〜 いってきますぅ〜〜〜〜
留守をお願いします 〜〜〜〜 」
ジョーが ジャケットをひっつかみ、大き目のショルダー・バッグを
抱えている。
「 うわ〜〜 バス 来るよぉ〜〜〜
・・・ クルマ 置いてきちゃったからなあ ・・・
いってきま〜〜す〜〜〜 」
ドタバタ・・・玄関でスニーカーを探し ― 見つからず。
仕方なく通勤靴に足を入れ ・・・
「 う〜〜〜 スニーカー どこだあ〜〜〜 あ れ? 」
ふと 彼の動きが止まった。
「 ? ・・・ フランのパンプスとスニーカー があるよ?
・・・ ふむ? 」
足の指、剥けちゃって ・・・
明日までに 治らないわよねえ
昨夜 彼の細君はにこやかだったけど
ず〜〜っと素足で 少しばかり足を引きずっていた。
「 ・・・ ってことは。
そうなんだよ ぼくらはさ 自然治癒 はしないんだ 」
ぼそ・・・っと独り言を吐くと。
「 ― それじゃ。 下のバス停まで かそくそ〜〜〜〜ち !! 」
高らかに唱え ―
ダダダダダダダダ −−−−−−
島村ジョー氏は自前の二本の脚だけを駆使して 本来の動力だけで
邸の前の急坂を駆け下りていった。
― さて こちらはバレエ団のスタジオ・・・
「 ・・・ったあ〜〜い・・・ 」
ポアントに足を入れて ― フランソワーズは思わず小さい悲鳴をあげた。
「 ?? どしたの〜 」
隣でみちよが目を丸くしている。
「 ・・・ 剥けちゃって 昨日・・・ 痛いの 」
「 あは ・・・ しょ〜がないよねえ
あ ひえぴた 貼ってる? アレ いいよう〜〜 」
「 え あの熱の時、オデコとかに貼るヤツ・・・? 」
「 そ。 アレをさあ ちっこく切って貼るとクッションになるんだ。
あのぶよん・・とした部分が 」
「 あ〜〜 そうなの??? 使ってみる! 」
「 けどさあ アレって予防だからね〜〜 ズル剥け? 」
「 ・・・ ウン。 なんか靴が柔らかくなりすぎてたみたい・・ 」
「 あ〜あ それじゃ仕方ないね 大丈夫? 」
「 ・・・じゃないけど。 ガマン出来るトコまでやってみる 」
盛大に顔を顰めつつ フランソワ―ズは強引に足をポアントに突っ込んだ。
「 ・・・ っつぅ〜〜〜〜 」
「 無理すんなって。 ダメなら抜けたほうがいいよ? 」
「 ・・・ そう かも ・・・ 」
「 ガマンしてやってても 傷がよくなるわけじゃないからさ 」
「 ・・・ そ うね ・・・ 」
「 皆さん おはよう〜 始めます 」
ぴん、と張りのある声がスタジオに響き ― 朝のレッスンが始まった。
いった〜〜いぃ・・・・
けど やるわ。
フランソワーズ。
あんた もっともっと辛いこと、乗り越えてきたよね?
こんな小さな痛みなんて
・・・ 忘れるのよっ!
自分自身を叱咤激励し、ぐ・・・っとバーを握りしめた。
じんわり ・・・ いや〜〜な汗が背筋を転がり落ちていった。
― なんとか バーは頑張ったけれど
センター・ワークに移るころ 顔が引き攣ってくるのを感じた。
う・・・ もう限界かも ・・・
たかが足指のずる剥け と 侮るなかれ。
身体の末端の、ほんの小さな傷 なのだが ― ほ・・・・っんとうに
気が遠くなるほど痛いのだ。
( マジ これは経験したヒトにしかわからんのです★ )
どんなにカバーしたとしても 傷口をさらに刺激しているのだから。
使うから靴と摩擦が起き、当たるから損傷する。
当然といえば 当然なのだけれど・・・
― そして
痛みってあまり我慢し過ぎていると くたくたに疲れてくる。
「 ・・・・・ 」
もうダメだ。 フランソワーズは震える足でそっとスタジオを抜けた。
入口で ぺこり、とアタマをさげ更衣室に逃げ込んだ。
いった〜〜〜〜 ・・・
「 う わあ ・・・ ますます剥けちゃってるぅ 」
タイツを剥ぎ取った足先は 悲惨な様相を呈していた。
痛いけど かえって開き直った気分で、つくづく傷を観察してみた。
「 ・・・ へえ〜〜 BGの仕事って案外緻密なのねえ
傷口は ちゃんと・人間仕様 だわね・・・
だけど〜〜〜〜 どうせサイボーグにするなら 皮膚の強化、
ちゃんとやっておいてくれたらよかったのにぃ〜〜〜 」
誰もいないのを幸い、ぶつくさ言いたいだけ言った。
う。 うっくぅ〜〜〜〜〜 !
覚悟を決めて? シャワーを浴びたが ― 案の定、足の傷は
盛大に沁みまくり思わず悲鳴があがってしまう。
「 ううう ・・・ こんな足で 帰れるかなあ・・・
タクシー ・・・ 破産するわ、あそこまでだと。
ああああ なんでわたしには飛行ユニットが搭載されてないのぉ〜〜
もう〜〜〜 BGのくそばかぁ〜〜〜 」
八つ当たりしまくられ どこかですか〜る閣下はクシャミの連発・・・
だったかもしれない。
「 自主リハ、休みだわ。 あ? そういえばタクヤ、朝のクラスに
いなかったわね? ・・・ どうせ寝坊よね〜〜 いっか・・・
メモ 受付に頼んでこ。 」
博士特製の絆創膏を重ね貼りし ― 帰りも庭サンダルだ。
ぺったん すっとん ぺったん すっとん ・・・
「 すみませ〜〜ん お先にシツレイしまあす ・・・ 」
まだ ピアノの音が流れてくる中、 フランソワーズは足を引きずり
引きずり バレエ団の玄関を出ていった。
石段を数段上り 門を開け ― 往来に出た。
「 ・・・いった ・・・ ああ まだ駅までも行ってないのに・・・
う〜〜〜 と とにかく 歩かないと 」
ぺったん ズ ・・・ ぺったん ズ ・・・
人通りの少ない裏道を必死で歩いてゆく。
「 ・・・ あ クルマ・・・ 端によらなくちゃ ・・・
う〜〜〜 なんだってこんな裏道、通るのよぉ〜〜〜
表の大通り、行きなさいよっ っとに〜〜〜 ヘタっぴ! 」
見知らぬ車にも悪態を吐いてしまう。
ス −−− ・・・・。
その乗用車は 彼女の横をゆっくり過ぎ、 なぜか止まった。
・・・・ !
どきん。
一瞬にして最悪の記憶がフラッシュ・バックし
身体が硬直した。 次に小刻みに震え始めた。
・・・ な なにやってるの、フランソワーズ?
大丈夫よ ・・・
ここは トウキョウのど真ん中。
― あんなコトは 起きっこないわ
必死で自分自身を宥め しかし最大の警戒をし前方を見つめる。
― ス ・・・ 眼 と 耳 のスイッチを入れた 途端。
「 フランソワーズ !! 」
この世で一番安心できる声が 彼女の名を呼んだ。
・・・ あ ・・・
前方の対象を認識した途端 膝ががくがくと崩れ落ち ―
彼女は慌てて 足を踏ん張った。
「 やあ。 ちょうどいいタイミングだったね! 」
その < 対象 > は 茶色の前髪の間からにこやかに声を掛けてきた。
「 ?? ジョー?? ど どうして?? 」
「 迎えに来たよ〜〜 ぼくのオクサン。 」
「 え えええ〜〜〜 嬉しいけどぉ でも なんで?? 」
「 足。 痛いんだろ? 」
「 え ・・・ なんで知ってるの 」
「 昨夜 言ってたじゃん?
それにさ 玄関にきみのパンプスもブーツも あったし?
博士は 庭サンダルが消えた? って言ってたから 」
「 類推の天才ね ムッシュ・シャーロック・ホームズ ? 」
「 へへへ〜〜 まあ ね〜 こんなモンさ
さあ 乗って! その足 相当痛いんだろ 」
「 ありがとう〜〜〜 ホントいうとね、駅までどうやって行こうか
真剣に悩んでいたのよ 裸足で行こうかって 」
「 そんなに痛む? 昨日は博士に絆創膏 もらったって言ってたから
安心してたんだけど 」
「 そりゃ ね。 特殊絆創膏で傷口は保護できるわ。
でもね〜 今日 またポアント履いて同じトコ、当たるわけだから 」
「 ひえ・・・ なんか想像するだけど背筋がぞくぞくしてきた〜〜 」
「 あらあ 009がなにをおっしゃるの 」
「 大きな損傷はさ 痛覚を遮断してしまうし。
ぼく ・・・ 逆剥けとか指先の切り傷とか・・・ちまちました怪我
ダメなんだ〜〜〜 」
「 へ ええ〜〜〜 案外弱虫なのねえ〜
逆剥けなんか すぴかは なめとけば治る〜〜 っていうわ 」
「 ・・・ アイツ 野生児だなあ 」
「 自然の子 と言って。 」
「 ははは さあ 帰るよ〜〜 あ 途中でスーパー 寄る? 」
「 う ・・・ でも歩きたくない ・・・ 」
「 ああ じゃあ メモ、書いて。 ぼく 買ってくからさ 」
「 めるし〜〜〜 もん・まり(^^♪ ( ありがと あなたァ♪ )」
「 あべっく ぷれじ〜る まだむ。 ( どういたしまして オクサン ) 」
「 うふふ〜〜 ジョーと結婚してよかったわぁ〜〜 」
「 恐れ入りマス ・・・ 今更ですが 」
「 うふふふ・・・ あ すぴかにお煎餅、買って帰りましょ
あの角のお煎餅屋さん 美味しいのよ〜〜 」
「 へえ・・・ あ すばるにはチョコかな 」
「 あのコはね びっくりまんチョコ がいいのよ。
スーパーで忘れずに買っておかなくちゃね 」
「 了解〜〜 オクサン。 さあ 帰ろう
あ 博士に連絡しておいたから。
帰ったらすぐに < 張り替え > るってさ 」
「 ・・・ ジョー アイシテル〜〜 ( ちゅ♪ ) 」
「 わっはは〜〜〜ん♪ フラン〜〜 きみと結婚してよ〜かったぁ 」
「 うふ♪ 」
フランソワーズは すぐ隣に並ぶジョーの腕にそっと触れた。
ふふふ ・・・ あったかい〜〜〜
その腕は 確かに人工物で機械じかけ だ。
でも 彼女にとっては世界一 温かく 世界一 頼もしく
そして 世界一 愛しい腕 なのだ。
この腕が わたしを包みこんでくれるから。
この腕の中で わたし 眠れるから
― もうなんだってできるの!
ジョー。
世界で一人よ わたしの愛する人(^^♪
新婚サンか恋人同士の顔で 二人は寄り添うのだった。
ス −−−− ジョーは滑らかに車を出した。
― さて。
フランソワーズのパートナー君も その日は朝のレッスンをパスして
いたのだが。
「 おはよ〜〜っす! 宜しくお願いしますぅ 」
タクヤは ぺこん、とアタマを下げた。
「 お〜〜 タクヤ〜〜 よく来たな〜〜
ありがとう。 ・・・ でも 本当にいいのか? 」
「 カトウ先生。 マダムにちゃんと話してきました。 」
「 お〜 そっか。 で? 」
「 ・・・ ま〜 がんばるのね って・・・ 」
「 ははは ・・・ あのヒトならそう言うだろうなあ〜〜
あ じゃあ ウオーミング・アップして ・・・
音 流しとくから バー やっといてくれるか 」
「 了解っす。 あの・・・ 俺こそスイマセン 」
「 いいって いいって。 パ・ド・ドウ・クラス、いつかは
やりたいと思ってるから。 お試しコース ってとこだね 」
「 ・・・ がんばりマッス 」
山内タクヤ君は バレエ団の大先輩、カトウ先生のスタジオに来ていた。
個人のスタジオだから そんなに広くはないが
床の素材にも拘った ダンサー本位に考えた空間だ。
へえ ・・・
いいなあ 〜〜 こういうの・・・
俺もいつかは自分のスタジオ、持ちて〜な
・・・ 彼女とさ 二人の稽古場(^^♪
うははは〜〜〜〜
フランと俺なら さっいこ〜〜でね??
「 ねえ この窓にカーテンがあるといいわね 」
「 あ? あ〜 そうかもな〜〜 」
「 ほら 小さな生徒さんには 眩しいわよ。
ね 好きな布地で用意して いい? 」
「 お〜 頼むな〜〜 ヨロシク
フランはセンスいいからな〜〜 」
「 ふふふ タクヤのスタジオだもの、任せてね 」
・・・・ なああ〜〜んちゃって♪
う〜〜ん 山内・アルヌールバレエスタジオ?
いやいや それよりも
えとわ〜る・バレエスタジオ とかのが いいか?
「 ・・・ そうだなあ〜〜〜 」
「 ? なんだ タクヤ? 」
「 ・・・ へ!!?!? 」
気がつけば カトウ先生が怪訝な顔でこちらを見ている。
「 あ ・・・ あ〜〜 そのう ・・・ あ バーレッスンの
順番! そう 順番 考えてて・・・ 」
「 はあん? いつもの マダムのクラスの、やれば?
同じ音 あるから。 」
「 あ ど ども ・・・ 」
「 ? おい どうかしたのか 」
「 え? い いえ ・・・ 」
「 ふうん? あ〜〜 ウチのオクサン、付き合ってくれるってさ 」
「 ええ〜〜〜 ユリ先生が ですかあ〜〜〜 」
「 そ。 午後にチビっこクラスがあるから それまで
パ・ド・ドウをしっかり学ぼう〜〜ってさ 」
「 うっひゃあ〜〜〜 なんか 俺 きんちょ〜〜〜 」
「 ははは まあ お前のパートナーのフランソワーズには
とても及ばないけど キャリアは長いからさ 」
ユリ先生 とは カトウ氏の細君で
若い頃はバレエ団のソリストとして活躍していた。
テクニックは素晴らしく 早い時期からグラン・フェッテを
全てダブルで回る・・・と注目されていた。
現役は引退したけれど 指導者として多くの生徒に慕われている。
タクヤも ジュニア時代にしっかりと絞られた経験がある。
「 うひゃあ 俺 幼児体験が疼きまっス 」
「 ああは お前〜〜 腕白でさんざん怒られてたもんなあ 」
「 ・・ せんせい 覚えてる? 」
「 当たり前じゃん。 お前なあ イチバンやんちゃで・・・
でもイチバン 跳べてたよ 」
「 へ へへ ・・・ 」
「 だ〜から。 パ・ド・ドウのテク しっか〜〜り教えるから。
覚えとけ。 そして ― 後のヤツらに伝えろ 」
「 へい。 」
タクヤは 真剣な顔でしっかりと頷いた。
〜〜〜〜♪ ♪♪ ♪〜〜〜
聞き慣れた、隅々まで知っている曲が流れている が。
タクヤは怪訝な顔をしている。
?? これって 『 ブルーバード 』 じゃん?
「 カトウせんせ〜〜 俺ら ドンキ なんですけど 」
「 ああ 勿論知ってるさ。
なあ タクヤ。 お前 この振り、知ってるよな 」
「 え ぶるーばーど? そりゃ 振り覚えてるけど。
前にやったし・・・ でも せんせ〜 俺 ドンキ で 」
「 それは フランソワーズと二人で研究しろ。
今日は 俺の生徒として パ・ド・ドウを練習するんだろ?
だったら 入門編 からだ。 」
「 ・・・ へ〜い ・・・ 」
「 じゃ ユリ先生とアダージオから 」
「 よろしくね タクヤ君 」
「 あ〜〜 ユリ先生〜〜 俺の方こそ・・・ 」
二人は優雅に会釈をし合い、センターに出た。
「 ほい。 音 だすぞ〜〜 」
♪〜〜〜♪♪♪ お馴染み『 ブルーバード 』 伸びやかな音だ。
タクヤは緊張しつつも ユリ先生と踊り始めた・・・
「 ! ち〜〜がうってば そんなにしっかりつかまない! 」
「 あ あ〜〜 す スイマセン ・・・ 」
「 もっとふわ・・・っと押さえて。 そう そう・・・
あ〜〜〜 ほらほら 振り回さないで〜〜〜 」
「 え ぇ ええ〜〜〜〜 」
二人で組み始めれば ― もうお小言が雨あられ〜〜 と降ってきた。
うそだろ〜〜〜〜〜〜
俺 これ 何回も踊ってきたぜ??
なんで〜〜 できね〜んだ〜〜
『 ブルー・バード 』 GPの アダージオ部分で 大汗流している。
ブルー・バードは パ・ド・ドウの <入門編>
最初に学び挑む踊りなのが。
彼は 何回か経験もあり得意にも思ってきたのだ。
それが。 やり直し やり直し で全然進まない。
「 タクヤ。 君の腕の中じゃ 安心して踊れないわ?
そんなブルーバードじゃ フロリナ王女に逃げられるわよ 」
ユリ先生は 脚を下げ、彼に向き合う。
「 ねえ。 二人で踊るの。 君が引っ張っちゃ だめよ 」
そんなタクヤじゃ フランソワーズに逃げられるわ
彼には そう聞こえる。
フラン〜〜〜〜
お 俺の腕の中じゃ ・・・ だめ なのか?
Last updated : 02.08.2022.
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******* 途中ですが
ジョー君 やっと登場〜〜〜
マニアックな内容なので ワケわかんないトコ
あるかも・・・ <m(__)m>
レッスン中に たっくさんネタを拾ったです♪