『 腕の中 ― (2) ― 』

 

 

 

   すっとん ぱっこん すっとん ぱっこん ・・・・

 

少々妙〜〜な足音に 道行く人々はちらちら視線を向けてしまう。

都心に近いオシャレな街角なので 余計に皆が < 見る > 

のかもしれない。

 

    ?? なに〜〜〜?? この季節に・・・

 

    やっだ〜〜  ・・・目立ちたいだけじゃない?

 

    わかんないよ〜〜  新しいファッションかも

 

    お? ガイジンさんじゃね? 日本らしい〜って思ってる?

 

     ―  だってアレ。 オヤジ・サンダル じゃね??

 

 

     こそこそこそ   ひそひそひそ   ぼそぼそぼそ

 

あちこちからの囁きは ちゃ〜〜んとわかってる。

むろん、003の耳 など使わなくても だ。

もちろん 自分の足元が注目の的ってことも ちゃ〜んと知っている。

そりゃ こんな恰好はちょっとどうか・・・ってことも。

全部 ちゃんとわかってる!!!

 

          だ  け  ど。

 

      足、痛いんだもの〜〜 仕方ないじゃない!!

 

フランソワーズは完全に開き直って?いた。

ニット帽を目深くかぶり ぐるぐるマフラーを巻いているので

顔はよくわからない。  はみ出しているホンモノの!金髪で

あ ガイジンさん? とわかる程度・・・

 

    すっとん ぱこん すっとん ぱこん

 

大きなサンダルをつっかけ 少々歩き難そうに でも一直線に

舗道を進んでゆく。

 

「 ・・・ あっ いたっ!!  当たっちゃったア〜〜〜

 ひえ〜〜ん ・・・・ 裸足になりたい〜〜〜 

 ・・・これで クラス できるかしら 」

こんな朝は 大きなバッグがいつもよりず〜〜〜〜っと重く

肩にのしかかってくる。

「 ・・・ あ〜あ ・・・ 休むのはイヤだし。

 でも この足じゃ ・・・ でも とにかく 行くわ! 」

 

    ぱこん すっとん すっとん ・・・

 

庭用の大きなサンダルをひっかけ フランソワーズはレッスンの

時間を気にしつつ バレエ団に向かうのだった。

 

 

 ― 今朝。 ・・・ かなりの早朝 ・・・・

 

「  ふぁ 〜〜〜   !  足 いったぁい〜〜〜〜

 ああ やっぱ 痛いなあ・・  絆創膏 もう一枚、重ねようかな 

目覚めてベッドで フランソワーズは 呻吟していた・・・が。

 

  ジリリリリリ −−−−  !

 

目覚ましアラームが鳴った。

「 ・・・ と!  朝ごはん、支度しなくちゃ・・・

 う〜〜〜ん 裸足で いっか! 」

ぱっと飛び起き ささささ〜〜〜〜と着替え 

フランソワーズは素足のまま 寝室から出て行った。

 

  「 ・・・ う〜〜〜ん ・・・・ 」

 

隣に眠るジョーは ―  全く知らずに爆睡中〜〜 ・・・

・・・ 彼の中 どこかに存在する・はずの 009へのスイッチは 

 完全に off ・・・・らしい。

 

 

まだ 息が白く見える時間。

フランソワーズは すぴかと門の外に立っていた。

「 いってきまあ〜〜す 」

「 はい 行ってらっしゃい。  あ  まって〜〜〜 すぴかさん 」

「 ? なに〜〜〜 おか〜さん 」

「 すばるが ・・・ すばるく〜〜〜ん はやくしなさい〜〜〜 」

彼女は 振りかえって声をかける。

「 ・・・ う〜〜ん まって ・・・ 」

玄関の中から ぼそぼそ・・・返事が聞こえた。

「 ほら すぴかはもう ご門の外よ? 」

「 ・・・ うん ・・・ 」

カッチャ カッチャ カッチャ ・・・

ランドセルを鳴らし すばるがのんびり〜〜 出てきた。

「 行ってきまあす  おか〜さん 」

「 はい 行ってらっしゃい ほら はやく〜〜〜

 すぴかさあん いま すばる、行くから〜〜 待ってぇ 」

「 すぴかあ〜〜〜 わあ〜い 

すばる本人は のんびり手を振っている。

「 すばるく〜〜ん はしる! 

「 はあい   ・・・ あれ? おか〜さん はだしだよ 」

「 ・・・ え?  あ ええ そのう 」

母は あわてて小さなムスコの視線から 素足を隠した。

「 さむくないの? あんよ、けがするよぉ 」

「 だ 大丈夫。 あの〜 お母さんね さっき・・・

 ソックス 汚しちゃって ・・・ 洗濯機の中 」

「 ? 朝ごはんのときも おか〜さん はだし だったよぉ 

「 え  あ  そ そうなのよ〜〜 朝ご飯 つくってて・・・

 えっとぉ お醤油を垂らしちゃったのね〜〜 」

「 ふうん? 」

のんびり屋なのに すばるはちょっとしたことに気付くコなのだ。

「 ほらほら〜〜〜 すぴか 待ってるから!

 いそいで〜〜〜  走る〜〜〜 

「 あ  うん  すぴかあ〜〜〜 まってて〜〜〜 」

 

   かっちゃ かっちゃ・・・ すばるはのんびり走っていった。

 

「 いってらっしゃ〜〜〜い ・・・ ああ やれやれ ・・・・ 」

門の外で大きく手を振れば  ズキン  足指が痛んだ。

「 どうしよう・・・  まさか裸足じゃ 行けないし・・・

 レッスン・・・ バレエ・シューズで受けようかなあ 

庭用の大きなサンダルをつっかけ ぴこぴこ足を引きずって玄関に戻る。

「 ・・・っと。 急がなくちゃ・・・

 ジョーのお弁当はできてるけど、  とにかく 起こさないと! 」

フランソワーズは 腕捲りをし、二階に上がっていった。

 

 ― 十分後

 

「 ・・・ もう知りません。 ジョー!

 朝ご飯は冷蔵庫の中!!! ゴハンは炊飯器の中!!!

 では 遅刻などなさいませんように! 」

バタン!  音をたてて寝室のドアを閉めた。

「 ったく〜〜〜 なんでこう毎朝 毎朝〜〜〜 (怒) 

 さ。 レッスン、行きますから。 

寝起きが超〜〜悪いカレシに手を焼き ― もう今朝は放置に決めた。

 

   ずんずん ずん !  素足で階下に降りた。

 

必要な荷物とコートは階下に置いてある。

「 忘れ物・・・ ないわね?   さあ  て  」

玄関まで来て 彼女は文字通り < 立往生 > してしまった。

 

     スニーカーも ブーツも。 

     夏のサンダルも 履けなかった ・・・

 

     ―  ずる剥けた足指が 痛くて。

 

家の中では素足で通し なんとなく痛みを忘れていたのだが。

まさか裸足で外出はできない。

「 ・・・ う〜〜〜 どうしよう〜〜〜〜

 指に当たらない靴って ・・・ ああ 一足もないわ 」

 

  ふと。  玄関の隅に視線が行った。 そこに鎮座するのは― 

 

             庭サンダル ( さっき 履いてた )  

 

家族共有で ( チビ達も ) ちょっと庭に出る 新聞・郵便を取りにゆく

 そんな時に つっかける・ぶかぶかのサンダルだ。

 

「 ・・・ あ。  さっきコレでチビ達を送り出したんだっけ ・・

 うん これなら〜〜〜  大丈夫 ・・・ かも 」

そう〜〜っと足を入れみる。

爪先、というか前半分は剥き出し、甲の部分だけが覆われている。

「 ・・・ いい かも。  う〜〜んと足を前に突っ込んでおけば

 指に当たらないわ。  これなら ― 出掛けられるぅ〜〜 ♪ 」

 

    ぱっこん  すっとん  すっとん

 

玄関で改めて歩きまわってみたが なんとか ― 足指には当たらない。

「 おっけ(^^♪  これでいいわ。 あ〜〜 時間〜〜

 博士〜〜〜〜  いってきまあす〜〜 」

フランソワーズは 大きなバッグを肩にかけると奥に声をかけた。

「 ― おう 気をつけてな〜〜  ジョーはちゃんと布団から

 ひっぺがして 送り出すで、心配しなくていいぞ 〜〜 」

「 お願いしまあ〜す 

 

    ぱっこんぱっこん  ぱっこん 〜〜〜

 

庭サンダルで フランソワ―ズは朝のレッスンに出かけて行った。

( バスに乗ってJRとメトロを乗り継いで ― 庭サンダルで・・・ )

 

― しばらくして。

 

「 ふう〜  やっとベッドから追い立ててやったわい・・・

 ったくもう・・・ アイツはどういう人間なのだ?? 」

ギルモア博士が ぶつくさ言いつつ、玄関に出てきた。

「 やれやれ・・・ 表庭の花壇の水やりをせねばな。

 そろそろ梅が咲き始めるか ・・・ 」

< ジョーを起こす > という最難関をなんとかクリアし

博士はほっと一息、吐いていたのだが。

 

「 ? はて・・・・ 庭用のでかいヤツがないぞ?  

 ああ チビさん達が履いて裏庭の方に置いてきてかのう・・・ 」

 

  カッコロ。  カタカタカタ −−−

 

博士はあまり深く考えず、下駄箱から自身の下駄をだすと

そのまま庭に出ていった。

 

     バタバタバタ −−−

 

ほぼその10分後。 大きな足音が慌てて玄関に出てきた。

「 博士〜〜〜〜 いってきますぅ〜〜〜〜

 留守をお願いします 〜〜〜〜 」

ジョーが ジャケットをひっつかみ、大き目のショルダー・バッグを

抱えている。

「 うわ〜〜 バス 来るよぉ〜〜〜

 ・・・ クルマ 置いてきちゃったからなあ ・・・

 いってきま〜〜す〜〜〜 」

ドタバタ・・・玄関でスニーカーを探し ― 見つからず。

仕方なく通勤靴に足を入れ ・・・

「 う〜〜〜 スニーカー どこだあ〜〜〜    あ れ? 」

ふと 彼の動きが止まった。

 

「 ? ・・・ フランのパンプスとスニーカー があるよ?

 ・・・ ふむ? 」

 

     足の指、剥けちゃって  ・・・

     明日までに 治らないわよねえ

 

昨夜 彼の細君はにこやかだったけど

ず〜〜っと素足で 少しばかり足を引きずっていた。

 

「 ・・・ ってことは。 

 そうなんだよ ぼくらはさ 自然治癒 はしないんだ 」

 

ぼそ・・・っと独り言を吐くと。

「 ― それじゃ。  下のバス停まで かそくそ〜〜〜〜ち !! 」

高らかに唱え ―  

 

     ダダダダダダダダ −−−−−−

 

島村ジョー氏は自前の二本の脚だけを駆使して 本来の動力だけで

邸の前の急坂を駆け下りていった。

 

 

― さて こちらはバレエ団のスタジオ・・・

 

「 ・・・ったあ〜〜い・・・ 」

ポアントに足を入れて ― フランソワーズは思わず小さい悲鳴をあげた。

「 ?? どしたの〜 」

隣でみちよが目を丸くしている。

「 ・・・ 剥けちゃって 昨日・・・ 痛いの 

「 あは ・・・ しょ〜がないよねえ 

 あ ひえぴた 貼ってる? アレ いいよう〜〜 」

「 え あの熱の時、オデコとかに貼るヤツ・・・? 

「 そ。 アレをさあ ちっこく切って貼るとクッションになるんだ。

 あのぶよん・・とした部分が 」

「 あ〜〜 そうなの???  使ってみる! 」

「 けどさあ アレって予防だからね〜〜 ズル剥け? 」

「 ・・・ ウン。 なんか靴が柔らかくなりすぎてたみたい・・ 」

「 あ〜あ  それじゃ仕方ないね  大丈夫? 」

「 ・・・じゃないけど。 ガマン出来るトコまでやってみる 」

盛大に顔を顰めつつ フランソワ―ズは強引に足をポアントに突っ込んだ。

「 ・・・ っつぅ〜〜〜〜 」

「 無理すんなって。 ダメなら抜けたほうがいいよ? 」

「 ・・・ そう  かも ・・・ 」

「 ガマンしてやってても 傷がよくなるわけじゃないからさ 」

「 ・・・ そ  うね ・・・ 」

 

「 皆さん おはよう〜  始めます 」

 

ぴん、と張りのある声がスタジオに響き ― 朝のレッスンが始まった。

 

    いった〜〜いぃ・・・・ 

    けど やるわ。

 

    フランソワーズ。

    あんた もっともっと辛いこと、乗り越えてきたよね?

 

    こんな小さな痛みなんて

    ・・・ 忘れるのよっ!

 

自分自身を叱咤激励し、ぐ・・・っとバーを握りしめた。

じんわり ・・・ いや〜〜な汗が背筋を転がり落ちていった。

 ― なんとか バーは頑張ったけれど 

センター・ワークに移るころ 顔が引き攣ってくるのを感じた。

 

    う・・・ もう限界かも ・・・

 

たかが足指のずる剥け と 侮るなかれ。

身体の末端の、ほんの小さな傷 なのだが ― ほ・・・・っんとうに 

気が遠くなるほど痛いのだ。

( マジ これは経験したヒトにしかわからんのです★ )

どんなにカバーしたとしても 傷口をさらに刺激しているのだから。

使うから靴と摩擦が起き、当たるから損傷する。

当然といえば 当然なのだけれど・・・

 ― そして

痛みってあまり我慢し過ぎていると くたくたに疲れてくる。

 

「 ・・・・・ 」

もうダメだ。 フランソワーズは震える足でそっとスタジオを抜けた。

入口で ぺこり、とアタマをさげ更衣室に逃げ込んだ。

 

     いった〜〜〜〜 ・・・

 

「 う わあ ・・・ ますます剥けちゃってるぅ 」

タイツを剥ぎ取った足先は 悲惨な様相を呈していた。

痛いけど かえって開き直った気分で、つくづく傷を観察してみた。

「 ・・・ へえ〜〜 BGの仕事って案外緻密なのねえ

 傷口は ちゃんと・人間仕様 だわね・・・

 だけど〜〜〜〜 どうせサイボーグにするなら 皮膚の強化、

 ちゃんとやっておいてくれたらよかったのにぃ〜〜〜 」

誰もいないのを幸い、ぶつくさ言いたいだけ言った。

 

     う。  うっくぅ〜〜〜〜〜 !

 

覚悟を決めて? シャワーを浴びたが ― 案の定、足の傷は

盛大に沁みまくり思わず悲鳴があがってしまう。

 

「 ううう ・・・ こんな足で 帰れるかなあ・・・

 タクシー ・・・ 破産するわ、あそこまでだと。

 ああああ なんでわたしには飛行ユニットが搭載されてないのぉ〜〜

 もう〜〜〜 BGのくそばかぁ〜〜〜 

 

八つ当たりしまくられ どこかですか〜る閣下はクシャミの連発・・・

 だったかもしれない。

「 自主リハ、休みだわ。 あ? そういえばタクヤ、朝のクラスに

 いなかったわね?  ・・・ どうせ寝坊よね〜〜 いっか・・・

 メモ 受付に頼んでこ。 」

 

博士特製の絆創膏を重ね貼りし ―  帰りも庭サンダルだ。

 

   ぺったん すっとん ぺったん すっとん ・・・

 

「 すみませ〜〜ん  お先にシツレイしまあす ・・・ 」

まだ ピアノの音が流れてくる中、 フランソワーズは足を引きずり

引きずり バレエ団の玄関を出ていった。

 

石段を数段上り 門を開け ― 往来に出た。

「 ・・・いった ・・・ ああ まだ駅までも行ってないのに・・・

 う〜〜〜  と とにかく 歩かないと 」

 

    ぺったん  ズ ・・・  ぺったん ズ ・・・

 

人通りの少ない裏道を必死で歩いてゆく。

「 ・・・ あ  クルマ・・・ 端によらなくちゃ ・・・

 う〜〜〜 なんだってこんな裏道、通るのよぉ〜〜〜

 表の大通り、行きなさいよっ   っとに〜〜〜  ヘタっぴ! 」

見知らぬ車にも悪態を吐いてしまう。

 

   ス −−− ・・・・。

 

その乗用車は 彼女の横をゆっくり過ぎ、 なぜか止まった。

 

      ・・・・ !

 

           どきん。 

 

一瞬にして最悪の記憶がフラッシュ・バックし

身体が硬直した。 次に小刻みに震え始めた。

 

      ・・・ な なにやってるの、フランソワーズ?

      大丈夫よ ・・・

      ここは トウキョウのど真ん中。

 

      ― あんなコトは  起きっこないわ

 

必死で自分自身を宥め しかし最大の警戒をし前方を見つめる。

  ― ス ・・・  眼 と 耳 のスイッチを入れた  途端。

 

    「 フランソワーズ !! 」

 

この世で一番安心できる声が  彼女の名を呼んだ。

 

      ・・・ あ  ・・・

 

前方の対象を認識した途端 膝ががくがくと崩れ落ち ―

彼女は慌てて 足を踏ん張った。

 

「 やあ。  ちょうどいいタイミングだったね! 」

 

その < 対象 > は 茶色の前髪の間からにこやかに声を掛けてきた。

 

「 ??  ジョー?? ど どうして?? 」

「 迎えに来たよ〜〜  ぼくのオクサン。 」

「 え えええ〜〜〜 嬉しいけどぉ  でも なんで?? 」

「 足。 痛いんだろ? 」

「 え ・・・ なんで知ってるの 

「 昨夜 言ってたじゃん?

 それにさ 玄関にきみのパンプスもブーツも あったし? 

 博士は 庭サンダルが消えた? って言ってたから 」

「 類推の天才ね  ムッシュ・シャーロック・ホームズ ? 」

「 へへへ〜〜  まあ ね〜 こんなモンさ

 さあ 乗って!  その足 相当痛いんだろ 」

「 ありがとう〜〜〜  ホントいうとね、駅までどうやって行こうか

真剣に悩んでいたのよ  裸足で行こうかって 」

「 そんなに痛む?  昨日は博士に絆創膏 もらったって言ってたから

 安心してたんだけど 

「 そりゃ ね。 特殊絆創膏で傷口は保護できるわ。

 でもね〜 今日 またポアント履いて同じトコ、当たるわけだから 」

「 ひえ・・・ なんか想像するだけど背筋がぞくぞくしてきた〜〜 」

「 あらあ 009がなにをおっしゃるの 

「 大きな損傷はさ 痛覚を遮断してしまうし。

 ぼく ・・・ 逆剥けとか指先の切り傷とか・・・ちまちました怪我

 ダメなんだ〜〜〜  」

「 へ ええ〜〜〜  案外弱虫なのねえ〜

 逆剥けなんか すぴかは なめとけば治る〜〜 っていうわ 」

「 ・・・ アイツ 野生児だなあ 

「 自然の子 と言って。 」

「 ははは  さあ 帰るよ〜〜 あ 途中でスーパー 寄る? 」

「 う ・・・ でも歩きたくない ・・・ 

「 ああ じゃあ メモ、書いて。 ぼく 買ってくからさ 

「 めるし〜〜〜  もん・まり(^^♪ ( ありがと あなたァ♪ )」

「 あべっく ぷれじ〜る まだむ。 ( どういたしまして オクサン )

「 うふふ〜〜 ジョーと結婚してよかったわぁ〜〜 」

「 恐れ入りマス  ・・・ 今更ですが 」

「 うふふふ・・・ あ すぴかにお煎餅、買って帰りましょ

 あの角のお煎餅屋さん 美味しいのよ〜〜 」

「 へえ・・・ あ すばるにはチョコかな 

「 あのコはね びっくりまんチョコ がいいのよ。

 スーパーで忘れずに買っておかなくちゃね 

「 了解〜〜 オクサン。 さあ 帰ろう

 あ 博士に連絡しておいたから。 

 帰ったらすぐに < 張り替え > るってさ 」

「 ・・・ ジョー  アイシテル〜〜  ( ちゅ♪ ) 」

「 わっはは〜〜〜ん♪ フラン〜〜 きみと結婚してよ〜かったぁ 」

「 うふ♪ 」

フランソワーズは すぐ隣に並ぶジョーの腕にそっと触れた。

 

    ふふふ ・・・ あったかい〜〜〜

    

その腕は 確かに人工物で機械じかけ だ。

でも 彼女にとっては世界一 温かく 世界一 頼もしく

そして 世界一 愛しい腕 なのだ。

 

    この腕が わたしを包みこんでくれるから。

    この腕の中で わたし 眠れるから

 

    ― もうなんだってできるの!

 

    ジョー。  

    世界で一人よ わたしの愛する人(^^

 

新婚サンか恋人同士の顔で 二人は寄り添うのだった。

 

    ス −−−−     ジョーは滑らかに車を出した。

 

 

 

 ― さて。  

 

フランソワーズのパートナー君も その日は朝のレッスンをパスして

いたのだが。

 

「 おはよ〜〜っす!  宜しくお願いしますぅ 」

タクヤは ぺこん、とアタマを下げた。

「 お〜〜 タクヤ〜〜 よく来たな〜〜  

 ありがとう。  ・・・ でも 本当にいいのか? 」

「 カトウ先生。 マダムにちゃんと話してきました。 」

「 お〜 そっか。 で? 」

「 ・・・ ま〜 がんばるのね って・・・ 」

「 ははは ・・・ あのヒトならそう言うだろうなあ〜〜

 あ じゃあ ウオーミング・アップして ・・・

 音 流しとくから バー やっといてくれるか 

「 了解っす。  あの・・・ 俺こそスイマセン 

「 いいって いいって。 パ・ド・ドウ・クラス、いつかは

 やりたいと思ってるから。  お試しコース ってとこだね 

「 ・・・ がんばりマッス 」

 

山内タクヤ君は バレエ団の大先輩、カトウ先生のスタジオに来ていた。

個人のスタジオだから そんなに広くはないが

床の素材にも拘った ダンサー本位に考えた空間だ。

 

     へえ ・・・ 

     いいなあ 〜〜 こういうの・・・

 

     俺もいつかは自分のスタジオ、持ちて〜な

     ・・・ 彼女とさ 二人の稽古場(^^

 

     うははは〜〜〜〜

     フランと俺なら さっいこ〜〜でね??

 

「 ねえ この窓にカーテンがあるといいわね 」

「 あ?  あ〜 そうかもな〜〜 」

「 ほら 小さな生徒さんには 眩しいわよ。 

 ね 好きな布地で用意して いい? 」

「 お〜 頼むな〜〜 ヨロシク

 フランはセンスいいからな〜〜  」

「 ふふふ タクヤのスタジオだもの、任せてね 」

 

    ・・・・ なああ〜〜んちゃって♪

 

     う〜〜ん 山内・アルヌールバレエスタジオ?

     いやいや それよりも 

     えとわ〜る・バレエスタジオ とかのが いいか?

 

「 ・・・ そうだなあ〜〜〜 」

「 ? なんだ タクヤ? 」

「 ・・・ へ!!?!? 」

気がつけば カトウ先生が怪訝な顔でこちらを見ている。

 

「 あ ・・・ あ〜〜 そのう  ・・・ あ  バーレッスンの

 順番!  そう 順番 考えてて・・・ 」

「 はあん?  いつもの マダムのクラスの、やれば?

 同じ音 あるから。 

「 あ  ど ども ・・・ 」

「 ? おい どうかしたのか 」

「 え? い いえ ・・・ 」

「 ふうん?  あ〜〜 ウチのオクサン、付き合ってくれるってさ 」

「 ええ〜〜〜  ユリ先生が ですかあ〜〜〜 」

「 そ。 午後にチビっこクラスがあるから それまで

 パ・ド・ドウをしっかり学ぼう〜〜ってさ 」

「 うっひゃあ〜〜〜  なんか 俺 きんちょ〜〜〜 」

「 ははは まあ お前のパートナーのフランソワーズには

 とても及ばないけど キャリアは長いからさ 

 

ユリ先生 とは カトウ氏の細君で

若い頃はバレエ団のソリストとして活躍していた。

テクニックは素晴らしく 早い時期からグラン・フェッテを

全てダブルで回る・・・と注目されていた。

現役は引退したけれど 指導者として多くの生徒に慕われている。

タクヤも ジュニア時代にしっかりと絞られた経験がある。

 

「 うひゃあ  俺 幼児体験が疼きまっス 」

「 ああは お前〜〜 腕白でさんざん怒られてたもんなあ 」

「 ・・ せんせい 覚えてる? 」

「 当たり前じゃん。 お前なあ イチバンやんちゃで・・・

 でもイチバン 跳べてたよ 」

「 へ へへ ・・・ 」

「 だ〜から。 パ・ド・ドウのテク しっか〜〜り教えるから。

 覚えとけ。 そして ― 後のヤツらに伝えろ 」

「 へい。 」

タクヤは 真剣な顔でしっかりと頷いた。

 

 

 

   〜〜〜〜♪ ♪♪  ♪〜〜〜

 

聞き慣れた、隅々まで知っている曲が流れている  が。

 

タクヤは怪訝な顔をしている。

 

     ??  これって 『 ブルーバード 』 じゃん?

 

「 カトウせんせ〜〜  俺ら ドンキ なんですけど 」

「 ああ 勿論知ってるさ。

 なあ タクヤ。 お前 この振り、知ってるよな 」

「 え  ぶるーばーど? そりゃ 振り覚えてるけど。

 前にやったし・・・  でも せんせ〜 俺 ドンキ で 」

「 それは フランソワーズと二人で研究しろ。

 今日は 俺の生徒として パ・ド・ドウを練習するんだろ?

 だったら 入門編 からだ。 

「 ・・・ へ〜い ・・・ 」

「 じゃ ユリ先生とアダージオから 」

「 よろしくね タクヤ君 

「 あ〜〜 ユリ先生〜〜 俺の方こそ・・・ 」

二人は優雅に会釈をし合い、センターに出た。

「 ほい。 音 だすぞ〜〜 」

 

   ♪〜〜〜♪♪♪  お馴染み『 ブルーバード 』 伸びやかな音だ。

 

タクヤは緊張しつつも ユリ先生と踊り始めた・・・

 

 「 !  ち〜〜がうってば   そんなにしっかりつかまない! 」

「 あ  あ〜〜 す スイマセン ・・・ 」

「 もっとふわ・・・っと押さえて。 そう そう・・・

 あ〜〜〜 ほらほら 振り回さないで〜〜〜   」

「 え ぇ ええ〜〜〜〜 」

二人で組み始めれば ― もうお小言が雨あられ〜〜 と降ってきた。

     

 

     うそだろ〜〜〜〜〜〜

     俺 これ 何回も踊ってきたぜ??

 

     なんで〜〜 できね〜んだ〜〜

 

『 ブルー・バード 』 GPの アダージオ部分で 大汗流している。

ブルー・バードは パ・ド・ドウの <入門編> 

最初に学び挑む踊りなのが。

彼は 何回か経験もあり得意にも思ってきたのだ。

  

それが。    やり直し やり直し  で全然進まない。

 

「 タクヤ。  君の腕の中じゃ 安心して踊れないわ?

 そんなブルーバードじゃ フロリナ王女に逃げられるわよ 」

ユリ先生は 脚を下げ、彼に向き合う。

「 ねえ。 二人で踊るの。 君が引っ張っちゃ だめよ 」

 

   そんなタクヤじゃ フランソワーズに逃げられるわ

 

彼には そう聞こえる。

 

     フラン〜〜〜〜

 

     お 俺の腕の中じゃ ・・・ だめ なのか?

 

 

Last updated : 02.08.2022.             back     /    index    /    next

 

*******   途中ですが

ジョー君 やっと登場〜〜〜

マニアックな内容なので ワケわかんないトコ

あるかも・・・ <m(__)m>

レッスン中に たっくさんネタを拾ったです♪