『 風たちぬ   − 5 − 』  

 

 

 

吹き抜けて行く風は首を竦めたくなるほど冷え冷えとしているけれど、行き交う人々の足取りは軽い。

華やかな社交の季節をむかえ、街に満ちるざわめきも明るく楽しげである。

 

日中はわずかな薄い陽射しを求めて憩う姿も見受けれられたオ−プン・カフェも、さすがにこの時間になると

人影は皆、屋内へと移動して閑散としている。

風が散り遅れた木の葉をさらってゆくなか、片隅にひっそりと向き合うカップルがあった。

若い二人はどちらも人目を惹く容姿をもっていたが 周囲の華やかなざわめきを他所に二人に漂う、

まるで空間を異にしているような雰囲気が 路行く人々の視線から彼らを隠していた。

 

 

いつ・・・こちらに来たの。 ・・・・・マリカ、は元気・・・?

彼女とは あれっきりだよ。 ・・・あの、許してほしいんだ、本当に僕が・・・

ジョ−。 わたしには あなたを許すとか、そんな資格なんて・・・・無いのよ・・・・ もう、止めましょう・・・

・・・・でも。 きみを傷つけた・・・

お願い。 その話は・・・・もう。

ごめん・・・・・・あの、どうしているの? 博士のところにあった連絡先に行ってもきみはいないし。心配したよ?

ごめんなさい・・・。 別のところに・・・居るの、お友達と。・・・・ちゃんと住所、教えるわね。

 

とぎれとぎれの言葉が ぽつぽつとふたりの間を行き交う。

向き合いながらも、ずっと僅かに視線をそらせているフランソワ−ズをジョ−は改めてじっと見詰めた。

以前からお気に入りのベ−ジュのベレエ帽の端に 宝玉のような深紅の実が揺れている。

もともとほっそりとしていた白いうなじはますます華奢に儚げになり、豊かな亜麻色の髪が重そうに纏わりついている。

 

・・・折れてしまいそうだ・・・ 

痛々しいと思うと同時に、でも、そこに滲み出ているえもいえぬ<艶>にジョ−は眼を奪われる。

−ほんの一月くらいの間に。 ちがう女性(ひと)みたい、いや、彼女自身には違いないのだが・・・

見違えるほど しっとりと落ち着いた雰囲気になったフランソワ−ズに ジョ−は驚愕しつつも激しく魅かれた。

 

−くしゅん・・・・

「 ああ、ごめん、随分冷えて来たね、屋内(なか)へゆこうか・・・・ 」

「 ・・・・わたし・・・帰らなくちゃ・・・」

「 フランソワ−ズ。 僕は。 とにかくちゃんと話し合おうって決心してここまで来たんだ。 」

「 話し合うって、・・・何を。 」

それまでじっと視線をテ−ブルの上に置かれた自分の手に落としていたフランソワ−ズは つっと顔を上げた。

「 わたし。 あの鍵を失くしたわ。  鍵はもう、ないのよ。 この掌にも・・・どこにも。 」

「 鍵なんかいらないよ! 僕たちの間に鍵なんか必要ないだろう・・? ずっと・・・ずっと言おうと思ってたんだ、

 夏に引っ越す前から。 ・・・・一緒に、暮らそうって。 一緒に・・・なって欲しいって・・・! 」

「 ジョ−。 ・・・あなた、相変わらず優しいのね・・・・・その優しさを、次は誰にあげるの・・・ 」

「 ・・・・きみ・・・・ 」

「 わたし・・・疲れたわ。 もう、周りに振り回されるのは、いや。 」

じゃあ、これで・・・・ また、ふわりと視線が反れてゆく・・・・

− かたん・・・席を立とうとしたフランソワ−ズの腕をジョ−は我知らず捕らえていた。

「 ・・・・きみは  それでいいのかい・・? 」

 

宙を彷徨っていたフランソワ−ズの瞳が すうっとジョ−の顔に注がれ、止まった。

− 初めて・・・やっと、ちゃんと見てくれたね・・・・

ジョ−は 痛いほどの彼女の視線を不思議な心地好さで受け止めていた。

 

・・・・す・・・すすす・・・・

大きな蒼い瞳から 透明な雫の欠片が止め処も無く零れ落ち始めた。

 

・・・・わたし・・・・やっぱり。 ジョ−が・・・・・・・ ジョ−を想う気持ちは・・・隠せない・・・

 

「 こんなこと・・・勝手すぎるって言われるかもしれないけど。 やり直したいんだ、きみと。 

 もう一度、いや・・・そうじゃないね、出だしからちゃんと始めたいんだ。 ・・・・だめ、かな・・・・ 」

ジョ−は掴んでいた彼女の腕をそっと離した。

そうして、あらためて彼女の手を両手でやわらかくつつみこんだ。 

重ねあった二人の手に 冷たい雫が降りかかる。

彼女の手を握ったまま持ち上げ、ジョ−はこぼれおちた雫に唇を当て、吸い取った。

− ここに泊まっているんだ。 明日、このホテルで待ってるから。 

  ・・・・お願いだ、もう一度会いたい、会ってほしい・・・・

 

渡されたメモを手にフランソワ−ズはただじっと彼に視線を当てていたがやがて すっ・・・と身を屈めると

彼の頬に掠める様に唇を寄せた。 

「 ・・・・サヨウナラ・・・・ジョ−・・・・」

− 低く消えそうな呟きを残し、そして。 そのままつい、と踵を返した。

「 フランソワ−ズ・・・」

ジョ−は身じろぎも出来ずに セ−ヌの向こう岸へと橋をわたってゆくフランソワ−ズの後姿を食い入るように

見つめていた。

夕闇の中、帽子のソルヴィエの実の深紅(あか)が鮮やかに目に残る。

・・・・やがて、 チャコ−ルグレ−の愛しいコ−ト姿は雪模様の夕闇に完全に溶け込んでいった。

 

 

「 フランソワ−ズ? 」

「 ・・・・え、・・ああ、ごめんなさい。 ちょっと・・・考え事、してて・・・。なあに? 」

すっかり食事の手が止まっていたフランソワ−ズに ユウジはさり気無く声をかけた。

「 いや・・・・。 疲れた? 仕事、キツイんじゃないかな。 」

「 ううん・・・大丈夫よ、わたし、強いのよ? あの、レッスンのこととか考えてたから・・・。 お食事中にごめんなさい。

 あらこれ、胡椒が足りなかったわね? 」

「 そんなことないと思うけど、僕は。 ・・・やっぱり疲れてるんだよ、今夜の作製は休みにしよう?

 ゆっくりお休みよ、もう大分進んだからモデルさんがいなくても大丈夫さ。 」

「 ・・・・ありがとう、ユウジ・・・・。 」

ちいさく微笑んだ彼女の笑顔は、昨日と、いや今朝方と微塵もかわりはなかったけれど。

 − なにかが・・・・彼女のこころを占めている・・・・とても、おおきな なにか、が。

   なにが、あった・・・・? フランソワ−ズ、それは・・・僕には言えないこと、なのか?

口には出さずとも、ユウジは彼女の奥底に秘めた<揺れ>を肌で感じとっていた。

いっぽう、大きすぎる思いに押しつぶされそうになっている彼女には、そんなユウジの微妙な変化にこころを

傾ける余裕など、なかった。

 

夜半、身じろぎもせずに横たわっていたベッドから、フランソワ−ズはそっと滑りでた。

そして隣に眠るユウジを起こさないよう、静かにリビングへと出ていった。

真冬の夜中、とうにヒ−タ−を切った部屋は凍てついていたが、彼女にはかえってそれが心地好かった。

 

− わたしは。 自分がわからない・・・。 わかっているのは・・・自分にだけはウソをつきたくない、ということだけ。

  わたし・・・・誰を愛しているの・・・・・誰に愛されたいの、ほんとに欲しいのは・・・・なんなの・・・・

 

いつもモデルを務める時に使う椅子に、ショ−ルに包まり膝をかかえて縮こまる。

ふと 目をあげれば乾かすためだろうか、今夜はキャンバスの覆いがはずしてあった。 

描かれた自分自身。 まっすぐ前に視線を投げかけ 亜麻色の髪を微風になびかせている。

・・・・これは。 わたし、じゃない・・・少なくとも、今のわたしじゃないわ・・・・

・・・・この わたし は風を・・・見いてる、 風に気が付いている・・・・でも。

顔を押し付けたネグリジェの裾がナミダで冷たくなっても・・・・フランソワ−ズは椅子の上でまんじりともしなかった。

壁一枚へだてた寝室でも、ユウジが毛布にくるまりながらも冷え冷えとした一夜を過ごしていた。

 

凍て付くパリの夜空は星の煌きも鮮やかに 凪いでいる。

そよ、とも風の吹かない夜は しんしんと更けていった。

 

 

 

「 ・・・・フランソワ−ズ! ・・・ 」

翌日、半ば以上諦めていたジョ−はドアの前に立つ彼女の姿を見つけた時、それ以上なにも言えなかった。

「 ・・・・わたし・・・・。 あ、あなたが・・・・・ 」

真っ直ぐに自分を見詰めてきた彼女を ジョ−は黙ってその胸に引き寄せた。

 − ああ・・・・この匂い・・・・ 僕がいちばんほしいもの、は・・・・

後ろ手にドアを閉め、ジョ−はそのまま彼女を抱え上げた。

「 ・・・! やめて、ジョ−! わたし、そんなつもりで来たんじゃないわ。 」

両腕をつっぱりもがくフランソワ−ズを ジョ−はさらに力をこめて抱きすくめた。

「 ・・・・なら・・・なぜ・・・・・・? 」

「 あなたが。 あなたが、もう一度会いたいって・・・。それに、自分の気持ちを確かめたくて・・・あっ・・・ 」

ジョ−は自らの唇で彼女の話を途切らせた。 

− もう、耐えられない・・・

「 ・・・・・・!・・・・ 」

突然のジョ−の行為に なぜかフランソワ−ズは急にくたくたと脚の力が抜けてしまった。

彼の舌が歯列を割って強引に入り込み そのまましっかりと小さな舌を絡め取る。

上あごの奥に舌を這わされた時、彼女のなかでなにかが弾けた。 しばらく忘れていた・・・なにか。

− おのれの奥底でいつのまにやら 眠りこけていた<オンナ>が、わぁっ・・・と飢えた叫びをあげた。

 

縋り付いてきた、と思った途端に自分からも舌を絡めて来た彼女にジョ−は内心、目を見張った。

・・・・こんな積極的な彼女は・・・・初めてだ・・・・・!

 

縺れ合うように倒れ込んだベッドで、ジョ−はふたたび驚愕する。

ほとんど彼のなすがままに身を投げ出したフランソワ−ズの 白い肢体。

久々にこの腕に抱こうとしたその身体には・・・・無数の<跡>が、数々の濃く薄くのこる跡が、あった。

 

きみは・・・・ 一緒にいる友達って・・・・

・・・・そうよ・・・わかったでしょう・・・。 ・・・・・軽蔑する・・・・・?

 

ジョ−は黙ってそのまま、フランソワ−ズの胸に顔を埋め頂点の蕾を口に含むと念入りに舌で弄った。 

 − ピクン・・・・! 独りでに身体がちいさく撥ねる。

忘れていた快感が背筋を走りぬけ、むしろその速さにフランソワ−ズ自身は戸惑っていた

ジョ−に触れられるより前に泉は湧き出し 押さえ切れない呻きが唇から漏れてしまう・・・・

自分の意思を無視して奔りはじめた身体に、彼女はどうする事も出来ずうろたえ、翻弄されていた。

 

はじめこそ、彼女の反応を確かめていたジョ−だったがすぐに彼もそんな余裕など無くなっていった。

自分を包み込み、うねり、締め付ける彼女の奔流に呑み込まれ 溺れこんだ。

 

あなたは。 きみは。 ・・・・少しも変わっていない・・・!

わたしだけが、僕だけが、知っている 素晴らしく愛しいこの身体・・・

 

すべてを忘れて 何もかもわすれて。  時のながれも 人々の気持ちも 自分の気持ちすら なにもかも・・・

すべては ふたりの愛の時間に溶け込んで巻き込まれて・・・・ 消えてゆく。 

 

 

ひと時の夢から ともに目覚め ともにまどろむ、気だるい時間をふたりはなおも 貪る。 

 

「 ・・・今更 ムシが良すぎるけど。 やり直せないかな・・・。こんなコト、口に出す資格は無いけど、

 僕が こころから 愛するのは きみ、だけ・・・・ 」

 きみに どう思われても、軽蔑されても、いい。 僕にはきみを失う勇気は・・・・無い!!

 

「 わたし・・・ わたしって・・・。 ヒドイ女ね・・・。 あんなに 優しくて繊細で・・・温かいひとを・・・

  ああ・・・でも! わかっていたのよ、自分でも。 わたし。 彼を、愛してはいない・・・、

  ヒドイはなしでしょ・・・ わたしこそ、軽蔑されて当然よね・・・

 それでも・・・わたしは、ジョ−、あなたを想うことを捨てられないの・・・わたしってこんな最低のオンナなのよ・・・

 そんな・・・オンナをあなたは、受け止めてくれるというの・・・・ 愛してくれる、というの・・・  」

 

 − かさ・・・・・。 薄暗がりの中、フランソワ−ズは身体にかかるジョ−の腕を外してそっと身を起こた。

「 ・・・・・帰るわ。 今、あなたについて行くことは・・・・できない、できないのよ。 」

こんなにも彼女のこころを捕らえているのは どんな男(やつ)なのか・・・・ジョ−は内心歯噛みをしていた。

ジョ−は後ろから耀く彼女の裸身を抱きしめ、そのたおやかな首筋に再び唇をよせた。

「 もう・・・逃げないでくれ、いや、逃がしはしないよ。 ・・・ああ、そうだ、渡すものがあるんだ・・・ 」

 − きみが 帰国してから届いていた、とジョ−は手を伸ばしナイト・テ−ブルから封筒を取りあげた。

 

・・・・ぴりり・・・  差出人の名を一瞥し、フランソワ−ズはその瀟洒な封筒をふたつに引き裂いた。

 

 − もう・・・係わり合いになりたくないの。 彼女とは。 以前(まえ)のこととは。

 

 

 

「 ・・・・お帰り・・・。 」

火照った身体を密かに持て余しつつ戻ったフランソワ−ズを、ユウジはいつもと変わらぬ穏やかな笑顔でむかえた。

「 ・・・・ 遅くなっちゃった ・・・・・ 」

 − パンを買って来るの、忘れたわ、と玄関口で明るく言って、フランソワ−ズはすぐにまた外へ引き返した。

「 そう、 気をつけて・・・・ 」

さっと身を翻して階段を降りて行く軽い足音にユウジは 惜しむように耳を傾けた。

− ああ・・・・ 違う。 なにかがちがう。 ・・・そう、彼女の纏っている空気が、違うんだ・・・

 

冷たい風にわざとわが身を晒すように フランソワ−ズは小走りで裏通りをぬってゆく。

・・・ いま、すぐにユウジと顔をあわせるのは・・・辛すぎる・・・・・いくらなんでも・・・・

夕闇迫るなか、石畳を蹴る小さな音だけが彼女のこころを見透かしていたのかもしれない。

 

 

「 ただいま。 ・・・・あら、寒くないの?まだ、風はきついわよ。 」

パンの袋を抱えてもどったフランソワ−ズは開け放した窓辺からぼんやりと空を眺めているユウジに声をかけた。

「 ユウジ・・・? 」

「 ・・・・あ、 ごめん。 お帰り、フランソワ−ズ。 」

「 どうしたの・・・? なにか、見える? 」

「 あ、いや。 ・・・・ 風が・・・変わったなあって・・・ 」

「 え、そう? まだ西風 ( 注: 日本では東風−春風−にあたる ) には少し早くない? 」

「 そうだね。 そう・・・ ( でも風はふきはじめたんだ・・・ ) 」

「 ・・・・さあ・・・食事にしましょう・・・ 」

 

夜になってまた雪模様になったようだった。 

ぐ・・・んと温度が下がってきたなか、いつもの様に二人は寄り添って休む。 

 「・・・ ありがとう・・・・ほんとうに。」

ユウジの呟きに フランソワ−ズは思わず彼の首に腕を絡めようとしたが、彼はそっとその手を押さえた。

「 お願いだ、フランソワ−ズ・・・。 なにも・・・・言わないでくれ・・・ 」

 

救われていたのは・・わたしの方なのに・・・・・・ ああ・・・・わたしはもうここには・・・いられない・・・

居ては・・・・いけないんだわ・・・・

 

 最後の夜だ、と口にはしないがふたりともはっきりと感じ取っていた。

いつもの通り、繋ぎあった 手 が、今夜はどこまでもひどく冷たかった。

 

 

いつもと同じ穏やかな朝を迎え、ふたりはいつもと変わりない一日のスタ−トを切る仕草をしていた。

ちいさな手荷物だけを持って、フランソワ−ズはひっそりと居間の戸口に佇んだ。

こちらに背をむけて ユウジはキャンバスに向っている。 

じっと見つめていた彼女の視線を感じたかのように、ユウジはふいに絵筆を動かし始めた。

− ああ・・・・・調子、出てきたのね。 よかった・・・・ほんとうに。

滲んできた涙をおさえ、フランソワ−ズはもう一度彼に視線を当てると静かに玄関へむかった。

 

− ぱたん・・・・

ドアが・・・閉じられた。 かつて二人の巣を隠し護ってくれたこのドアが。 いまは二人を隔てる・・・

・・・くそっ・・・・!

ユウジは 絵筆を投げ、パレットナイフでキャンバスを切り裂こうとしたがその手は力なく下ろされた。

・・・・出来るわけない・・・・・・ 出来るわけ、ないんだっ・・・

− 晴れ上がった空を、そのまま写し取った瞳。 どんな光よりも艶やかに煌く髪。 

   それらの持ち主の微笑は・・・・ああ、とても本人には適わないな・・・・・

じっと自らの作品を見詰めていたユウジは ふとある一点に目を留めた。

 − ああ。 ・・・・そうだ、忘れていた・・・

 ・・・・アレは・・・彼女の。 多分部屋の・・・おそらく、彼女のこころを一番に占めている人物との部屋の 鍵。

 

彼は引き出しを開け、探し出したちいさな鍵を握り締めていたが、やがてくっと唇をかみしめ立ち上がった。

 

 

 − え・・・・・? ユウジ・・・?

 

ふいに耳元に自分を呼ぶ声が響いた気がして、フランソワ−ズは顔をあげた。

いやだわ・・・・・そんなワケ、ないのに・・・・。 あら、路を一筋間違えちゃったわ・・・・

ふっと苦い笑みを浮かべ彼女は雪で凍りついた道を引き返した。

 

「 ・・・・フランソワ−ズっ! ・・・・・ 」

「 ・・・・・ユウジ・・・・・

大通りの反対側から走ってくるユウジに気付き、フランソワ−ズは思わず歩みを止めた。

ひとしきり、朝の先を急ぐたくさんの車の流れが視界を遮った。 

 

 − ふいに、なにか くぐもった鈍い音が 雪曇りの大気をふるわせた。

 

突然、止まった車の流れ。 駆け寄る人々の喧噪。

フランソワ−ズは理由(わけ)もなく身振るいし、冷たい汗が一筋つう・・・っと背筋を滑り落ちるのを感じていた。

 

Last update: 7,3,2003.            index  /  back  /  next

 

*********  言い訳 by  管理人 ***********

      「薄幸な3も好き」とのコメントを頂戴しました。(^_^;) 苛めてますでしょうか? でしたら、ごめんね〜フランちゃん・・

      この作品は以前の合作企画の際、拙作『めぐりあひ』を叩き台にしていたので似た様なsituationが出て参ります、スミマセン。