『 HOME ― あるいは未来都市 ― (3) 』
「 ― はい? 」
係官の笑顔が ― 営業用にっこりマスクが固まった。
「 あの ・・・ 恐れ入りますが。 ご訪問の目的はリゾート、ですよね? 」
「 はい! ぼくたち ・・・ 新婚旅行中 ですから! 」
「 ・・・は はあ ・・・ あのそれではお部屋は 」
「 あらぁ〜 ロイヤル・スウィート でしょ、 ジョー? 」
「 あ う うん! そのロイヤル・ミルク・ティで 頼む。 」
「 ( ぷ ・・・・ ) う〜〜んと甘くしてね♪ 」
するり・・・ 彼女の手がジョーの首に絡みつく。
「 あは ・・・・ ≪ おい〜〜〜 いい加減にカンベンしてくれ・・・ ≫
耳の付け根までまっかっか・・・な <新婚の夫> から抗議の脳波通信が飛んできた。
≪ あら うふふふ・・・ いいじゃないの? 新婚サンなんだもの、皆さん、
大目に見てくれるわあ〜 ≫
「 こら ・・・ 人前で 止めなさい。 」
「 うふん アナタってば〜〜 」
「 じゃ 荷物も部屋の方に運んでください。 そして ・・・ 連れの一行が
先に到着しているはずなので連絡をとりたいのですが ? 」
ジョーは まだ頬を染めつつもてきぱきと指示を飛ばす。
・・・ あら。 なんか〜〜 カッコいい わよねえ??
このまま・・・ ハネムーン本番♪ でもいいのだけど なあ〜
<新妻> は夫にべったりとくっつき ほれぼれ見つめている。
≪ ・・・おい〜〜 ≫
≪ うふ ・・・ ジョーってば♪ か〜わい〜〜〜♪ ≫
はいはい・・・ お熱いこって ― そんな雰囲気が招待客用のゲートに充満した。
「 はい 伺っております。 皆様は宿泊ゾーンのコテージに・・・ はい こちらです。 」
係官は小型端末を操作しつつ ジョーたちを案内してゆく。
フランソワーズは白いツーピースの裾を ひらひらさせつつ彼の後についていった。
― バチ ・・・・・!
リゾート都市の奥深い場所、 ほの暗い<奥> で なにかが 弾けた ・・・
プロムナード・ロード ( 散歩道 ) ― そこはその名に相応しい小路だった。
さわさわと揺れる広葉樹の間を 踏み固めただけの土の道が続いていた。
「 ・・・ ほう ・・・ なかなか凝った演出だな。 しかし案内板もなにもないが ・・・ 」
アルベルトは 前方に目を凝らしたり左右もみまわしたがそれらしい建造物は見つからない。
「 ・・・ コイツを使うのはあまり気が進まんが ・・・ 」
彼はかすか眉間に皺をよせつつ ・・・ 例の腕時計にちらり、と視線を飛ばした。
この <リゾート都市> に着て入国証も兼ねた案内役だ、と渡されたモノだが
彼はどうも気に喰わなかった。 招待客、という立場上、一応は身につけたが・・ソレに頼る気はなかった。
ふん。 道案内は機械になんぞ頼りたくない。
地図を頼りに ぷらぷら歩くのもリゾートならでの楽しみなはずだ
頑固な独逸人は その信念通りにナヴィ・ウォッチを使わずに散策に出たのだ。
「 ふん ・・・ 俺としたことが間違えたか ・・・・? 」
曲がり角を前に戻りかけたとき、 前方から足音がきこえてきた。
少し歩を緩めていると 中年の紳士がやはりゆっくりとした足取りで角から現れた。
「 ・・・ こんにちは。 」
彼は軽く挨拶をよこした。
「 ・・・ こんにちは。 すみません、少々道を尋ねたいのですが ― 」
アルベルトが全部言い終わる前に 紳士はにこやかに答えた。
「 ああ 音楽堂はこの先ですよ。 」
「 ?! ありがとうございます。 しかし どうして・・・? 」
「 いや これは失礼。 この道は 音楽会への小路 という別称があるそうです。
この先にある音楽堂への、いや コンサートへの序章、といった趣らしいですよ。 」
「 なるほど ・・・ 助かりました、 ありがとう。 」
「 いやいや ・・・ 楽しい一時を。 」
「 ありがとうございます。 」
丁寧に例を述べるアルベルトに 件の紳士は軽く手を揚げて行過ぎていった。
発音からも教養深いヨーロッパ人か と思われた。
「 ふん ・・・ ああ アレだな ・・・ 」
角と曲がると 木立の前方にそれらしい建物がやっと見えてきた。
「 随分と長い 前奏 だが。 ― 期待を高めるには十分ってとこか ・・・ 」
彼は機嫌を直し小路を辿ってゆく。
「 ・・・ うん ? 」
音楽堂に行き着く手前に 別の平屋の建物があった。 ・・・子供の声が響いている。
「 < ナーサリー・ハウス > ? ああ なるほど。 ここでガキはお留守番ってわけか。
ほう ・・・ なかなか良く考えてあるな。 」
リゾート都市でのコンサート、それもマチネー ( 昼公演 ) であれば ― ちょろちょろする
子供の存在はある程度我慢しなければならないか と思っていた。
大人の世界には子供は入れない ― 厳然と区別されていた時代に生きていた彼には
当初は驚きだったが いつしか慣れてしまった。
「 いいことだ。 きちんと鑑賞できる年齢 ( とし ) まではシッターと留守番してろ。 」
賑やかな声を聞きつつ その建物の前を行過ぎて ―
「 あ〜〜! ファーター 〜〜〜 !!! 」
― とん。 甲高い声と一緒に軽い衝撃が彼の脚にあった。
「 ??? なんだ? 」
「 わ〜〜い ファーター ( おとうさん ) 〜〜〜 おそかったね〜〜 」
「 ??? 」
驚いて我が脚を見下ろせば ― 4〜5歳の少年がアルベルトの脚にしがみ付いていた。
「 おい 坊主。 良く見ろよ。 お前、間違えてるぞ。 」
「 え? なに〜〜ファーター? 」
「 だから よく見ろって。 俺はお前の 」
「 ファーター。 どうしたの。 僕 ちゃんとおるすばんしてたよ〜〜 」
彼を見上げていた少年の瞳に みるみるうちに涙が盛り上がる。
よくみれば綺麗な糖蜜色の瞳 ・・・ ふざけているとは思えなかった。
「 だから なあ ― 」
「 ・・・ う うううう え〜〜〜ん 」
「 こら 泣くな! 男はそんな簡単に泣くもんじゃないぞ! 」
「 だって ・・・ うっく ・・・ファーターがあ〜〜 」
「 う〜〜〜ん だからな その・・・ 」
「 フランツ? ・・・ どこなの〜〜 フランツったら? 」
建物の中から 白いエプロンをした女性が飛び出してきた。 どうやらそこの係員らしい。
「 ああ ・・・ 担当の方ですか。 」
アルベルトはほっとした思いで彼女に声をかけた。
― 数分後。 アルベルトは少年の手を引いて小路を音楽堂とは逆の方向に曲がった。
「 わ〜〜〜い♪ ファーターとゆうえんち〜〜 ファーターと〜〜おでかけ〜〜 」
「 ・・・だからな 俺は ・・・ 」
「 ねえねえ ファーター。 かんらんしゃ にのってもいい? じぇっとこーすたーも〜〜 」
「 泣くなよ? 」
「 うん! ファーターといっしょならなかない〜〜 」
「 ・・・・・・・ 」
子供相手に理屈を言っても始まらない。 アルベルトはふか〜〜〜い溜息を漏らし 腹を括った。
・・・ 仕方ない か。 ガキの相手、してやるか・・・
フランツと呼ばれていた少年は遅れて到着する父親をナーサリー・ハウスで待っているのだ、
と係りの女性は説明してくれた。
「 先に一人で来たわけですか? 」
「 いえ ・・・ 施設の係りの方が連れてきてくださったらしいです。
ここでお父さんと待ち合わせなんだ・・・って。 」
「 ほう ・・・・ で 母親は? 」
「 さあ ・・・ 私共はそれ以上、プライベートな事は伺っておりませんので ・・・ 」
「 ああ そうですな。 」
「 あのう〜〜 誠に申し訳ないのですが。 もしお時間がお有りでしたら ・・・
彼の相手をしてやっていただけませんか ・・・ 」
「 ― 俺が ですか。 」
「 はい。 なぜかフランツがとても懐いておりますし・・・・
きっとフランツのお父様と容貌も似ていらっしゃるのでしょう。
ほら ・・・ お髪が同じお色でしょう? お綺麗ですわねえ ・・・ 」
「 ・・・・・ 」
彼は憮然として 足元に座っている少年を見下ろした。
「 それにお客様は当市の 来賓 でいらっしゃいますから ご信頼できますし、
子供の相手も安心してお願いできますわ。 」
係りの女性はアルベルトの ナヴィ・ウォッチ を見て言った。
アルベルトが持つそれには細く金のラインが入っていた。
「 ね〜〜 ファーター 〜〜 ゆうえんち、いこうよ〜〜 ゆうえんち〜〜 」
少年はさかんにアルベルトのブルゾンの裾を引っ張っている。
「 お願い ― できますわね? 」
「 ・・・・・・・ 」
なぜあの時。
・・・不承不承にもほんの微かに頷いてしまったのか ― 彼自身にもとんとわからない。
しかし 気がついてみれば ― 左手に少年をぶら下げて遊園地のゲートをくぐっていた。
「 うわ ・・・・ ホンモノのゆうえんち だあ〜〜 」
少年は息を詰めたまま 呟いている。
「 ホンモノの? 可笑しなことを言うやつだなあ。 さあ ほら。 好きなモノに乗ってこい。 」
アルベルトはパスポートみたいなものを少年に渡した。
例のナヴィ・ウォッチと共に、どこの施設でも使用できる、と渡されたものだ。
「 ・・・ ファーターといっしょ! 」
「 なんだって? 」
「 ファーターといっしょがいい〜〜 」
「 いっしょ ? 」
「 ウン! いっしょにね〜 じぇっと・こ〜すた〜 のるんだ〜 」
小さな手がきゅっと握り締めてきた。
「 ・・・ わかった。 それじゃ 二つだけ、つきあってやる。
あとはお前一人で乗るんだ。 いいな? 」
「 ・・・ファーターは? 」
「 俺はあそこの ― ほら 噴水の側のベンチで見ていてやる。 」
「 ほんとう? 」
「 ああ ちゃんと見ていてやる。 だから好きに遊んでこい。 」
「 うん。 じゃ ふたつ、いっしょだよね? え〜と ・・・ じぇっと・こ〜すた〜 とォ
かんらんしゃ! ・・・ いい? 」
「 ああ いいぞ。 ほら 行こう 」
「 ウン! うわあ〜〜〜い うわ〜〜〜 ! 」
「 ・・・ おいおい そんなに跳びはねるな。 」
「 え〜〜 だってさ〜〜 ファーターといっしょなんだも〜〜ん♪ 」
「 ・・・ ほら こっちだぞ・・・ 」
少年のはしゃぎ振りに 当惑気味だったけれど、気がつけば周囲は皆似たりよったり・・・
きゃわきゃわ騒ぐ甲高い声で溢れていた。
まあ いいか。 遊園地なんて子供の叫び声で一杯なものだし な
アルベルトは呆れ半分・諦め半分な心境で 少年を連れてゆく。
「 ― うわ ・・・ たか〜い・・・ みんなちっちゃい〜〜 ・・・ 」
「 ほう ・・・ 遊園地が全部俯瞰できるな。 」
「 ふかん? 」
「 ああ 上からみられる、ということだ。 」
「 ふうん ・・・ 」
ジェット・コースターで 前後の客と同様に騒ぎまくった後、 二人は観覧車に乗った。
少年は 今度は言葉少なにじ〜〜っと外を見ている。
「 坊主、 そんなに外が珍しいのか。 」
「 ― フランツ。 」
「 なに? なんだって? 」
「 だから フランツ。 僕、 < 坊主 > じゃないよ。 」
少年、いや フランツは真剣な眼差しをアルベルトに向けた。
「 ・・・ これは失敬。 フランツ。 こんな景色が珍しいのか。
飛行機でここまでやってきたのだろう? 」
「 僕。 ず〜〜〜っと ず〜〜〜っと ・・・ ゆうえんち にいってみたかったんだ・・・
ず〜っと ・・・ みてて ず〜っと ・・・いきたい〜って おもってて ・・・ 」
「 ・・・・? 」
「 そしたら ファーターといっしょならいいわよ、って ムッター( おかあさん )がいってくれたの。
だから だから 僕。 ここにきたんだ。 」
「 そうか。 それであそこで待っていんだな? 」
「 ウン。 」
ぽん、とフランツがアルベルトの膝に座った。
「 ・・・おい こら ・・・ 観覧車の中で騒ぐなよ。 」
「 さわいでないも〜ん ファーターといっしょ〜〜♪ わ〜〜い♪ 」
膝の上に暖かい存在が いる ・・・
なんとその暖かさが そして その重みが心地好いことだろう ・・・!
勿論、 サイボーグ004にとって少年の重さなど実際には空気にも等しい。
しかし ― 今 彼は全身でその少年の存在を感じていた。
「 ・・・ いつもはどこにいる? 」
「 え 僕? ムッターといっしょ。 」
「 ああ それはわかったよ。 どこに住んでいるのかい、ベルリンか。 」
「 う〜〜ん ・・・? 僕のうち だよ。 きれいなおうちさ・・・
あ〜〜 さがってきちゃったぁ〜〜 」
「 一周したからな。 さあ そろそろ降りる支度、しろよ。 」
「 ウン ・・・ 」
少年は素直に頷くと アルベルトの膝から降り ・・・ そして
「 僕 ・・・ ここがだ〜〜〜いすき♪ 」
フランツはぱっと向きを変えると たった今降りた膝に頬をよせ縋りついた。
「 ― おい ぼうず・・・いや フランツ・・・ 」
「 ふっふっふ〜〜〜 きもちいい〜〜 僕だけのいすだよ〜〜
ファーターのおひざ♪ ファーターのひろいおひざ 〜〜〜 」
― 鋼鉄の膝に ミサイル発射口に続く膝に 少年はやわらかいほほを押し付ける ・・・
「 ・・・ お おい ・・・? 」
「 ず〜〜っと おもってたんだ〜 ファーターのおひざはきっとせかいいち〜〜って。
せかいでいちばんあったかくて せかいでいちばんきもちいい〜〜って♪ 」
「 この ・・・ 膝が か ・・・? 」
「 うん! ムッターの言ったとおりだよ〜〜 」
「 ・・・ お前の ・・・ ムッターが そう言った の か ・・・? 」
「 うん! あなたのファーターはせかいでいちばんすてきなひとよって。
そんでもってね、 ファーターのおひざはさいこうよ〜って ! 」
「 ・・・ そ うか ・・・ 」
― ガタン。 観覧車が止まった。
「 さ さあ ・・・降りようか。 」
「 ウン・・・ 」
フランツは素直に立ち上がり アルベルトはごく自然に少年の手を取った。
「 足元、注意しろ。 」
「 うん、ファーター ・・・ 」
二人は観覧車を降りて ぷらぷら歩き出した。
「 ・・・ あ〜 ・・・ もっとなにか 乗るか? 」
「 ううん いい。 」
「 おい 遠慮するな。 つきあってやるぞ。 」
「 えんりょ? 」
「 ・・・ がまんしなくていいぞってことだ。 それともなにか食うか? 」
「 う〜ん とぉ 〜〜〜 あ! あれがいい!! 」
少年はきょろきょろ辺りを見回していたが すぐにぱっと顔を輝かせた。
「 なんだ。 」
「 あれ! あれ たべる、ファーター! 」
「 うん? ・・・ ああ アイスクリームか。 いいぞ、行こう。 」
「 うわ〜〜〜い♪ 」
ぴんぴん跳ねる少年の手を握って アルベルトはアイスクリーム売りのテントまで行った。
「 ・・・ おい こぼすなよ〜 」
「 うん! ・・・ えへ・・・お〜いし〜〜〜 」
「 落ち着いて喰え。 ほら ・・・ べとべとだぞ。 」
フランツは夢中になって 苺とバニラのソフトを舐めている。
アルベルトはハンカチを出すと少年の手を拭う。
「 ファーター? ファーターはたべないの? 」
「 俺はいい。 」
「 え〜〜 あ じゃあ僕のひとくち あげる! はい! ファーター 」
溶けかかったアイスが ずい、とアルベルトに差し出された。
「 俺はいいって。 フランツ、お前が全部食べろ。 」
「 だ〜から〜 ファーターのぶん。 ひとくち〜 」
「 ・・・ わかった。 それじゃ ・・・ 一口 もらうぞ。 」
「 うん♪ 」
べとべとの甘ったるい一口を アルベルトはゆっくりと味わう。
・・・ こんな味 ・・・ だったか ・・・
それは遠い記憶を呼び覚ます。 この少年くらいの年頃 そして 傍らに彼女がいた年頃
アイスクリームの味は 彼に忘れていた日々をゆっくりと想い起こさせた。
「 ファーター ? 」
「 ・・・ あ ああ ・・・ なんだ。 もっとなにか食うか? 」
「 ん〜 もういいや。 あ。 ・・・そろそろムッターがおむかえにくるな〜 」
少年は空を見上げて ぽつり、と言った。
「 ふうん? 約束の時間がもうすぐなのか。
あれ? 親父さんと待ち合わせてるんじゃないのか? さっきそう聞いたぞ? 」
「 え? だ〜から〜〜 ぼく、ファーターとあえたんじゃないかあ〜〜
うふふふ ・・・ ず〜っとね、ファーターとゆうえんちいってアイスとかたべたかったんだ〜 」
「 じゃあ ・・・ 母親が迎えにくるのかい? 」
「 うん。 ムッターがそう言ってた。 ファーターと遊んでいらっしゃい、って。 」
「 ・・・・・・・ 」
子供の言うことだ、脈絡はなく事実と願望が入り乱れているのだろう。
アルベルトはそう自分自身に言い聞かせた。
そうじゃなくちゃ ・・・ やっちゃらんね〜ぞ?
「 そうか〜 それじゃ ナーサリー・ハウスまで送ってゆくぞ。 」
「 わ〜〜い♪ ありがとう ファーター 〜〜 」
― きゅ。 小さな柔らかい手が 皮手袋に覆われた鋼鉄の右手を握った。
「 ・・・! あ ・・・ あ〜 フランツ? 」
「 なに、ファーター。 」
「 その ・・・ この右手、 な・・・ 普通の手とは 」
「 うふふ ・・・ おっきくてあったかいね〜〜 ファーターのお手々〜〜〜
これもね ムッターがおしえてくれたとおりだよ〜 」
「 ・・・ そ うか 」
「 うん! ファーターのお手々は やっぱりせかい一! だって。
ほんとだよね〜 ぼくのファーターはせかい一 さ。 あ ・・・ ムッターもせかい一!
う〜〜ん ・・・? ふたりいっしょにせかい一 〜〜〜 」
に・・・っと 少年はアルベルトに笑いかける。
「 そうか。 お前の両親は世界一 か 」
「 うん♪ あ! いっけな〜〜い ・・・ 僕、わすれもの、しちゃった ! 」
少年は はっとした顔で歩みを止めた。
アルベルトも立ち止まり彼の顔を覗き込む。
「 忘れ物? 帽子・・・は被ってなかったぞ。 ハンカチでも置いてきたか? 」
「 ううん。 ムッターからのでんごん。 」
「 伝言 ? 」
「 うん。 ムッターがね、ファーターに会ったら言っておいてね、 って 僕に。 それとね ・・・ 」
「 ・・・ おまえのムッター ・・・ から ・・・? 」
「 そ。 ねえねえ ファーター? 僕のまえにすわってくれる。 」
「 ? ・・・ これでいいか。 」
こっくり頷くと フランツは腰を降ろしたアルベルトに近づき ― その頬にキスをした。
「 ・・・ ! 」
「 これ ・・・ ムッターのキスなの。 ファーターにわたして・・・って。
それでもって ・・・ ありがとう って。 」
「 ・・・・・・・・・ 」
「 はい、わたしたよ〜〜 あ! ムッター 〜〜〜 ! 」
少年はぱっとアルベルトから離れると 目の前のナーサリー・ハウスに駆け込んで行った。
ムッターからのキスなの ありがとう ・・・って ・・・・
アルベルトは呆然を その小さな後姿を見送った。 いや ・・・ その姿が宙に消えるのを みた。
頬にはまだ 生暖かい感触がのこり、耳の奥には甲高い少年の声がこだましている。
「 ・・・ フランツ ・・・ か ・・・ 」
自分と同じ髪の色をした彼女と同じ糖蜜色の瞳をした少年 ―
あの時 母の中で母と運命を共にした ― 彼の息子
・・・ そんなことも あってもいいかもしれない ・・・
アルベルトはゆっくりと立ち上がり そのまま晴れ上がった空を見上げた。
一筋 白い雲が流れている。
「 無事に 着いただろうか ・・・ ありがとう ― ヒルダ 」
「 あの なにか? 」
ナーサリー・ハウスのドアから 職員が顔をだした。
「 ああ いや ・・・ 音楽堂へはこの道でいいのかな、と思って 」
「 ・・・ ああ。 ひとつ前の十字路を反対に曲がってください。
間違えられる方が多いのです。 」
「 そうですか ・・・ それはどうも ありがとう。 」
「 いえ ・・・ よい一時を ・・・ 」
「 ありがとう 」
気がつけばまだコンサートの時間まで間があった。 陽も高い。
あの一時は いったい ・・・? ― いや 理屈などどうでもいい。
彼は踵をかえすと、ぷらぷら・・・また元来た道を引き返し始めた。
「 え ・・・ これ 着るの? 」
ジョーは差し出されたトレーナーに もじもじと手を伸ばす。
「 そうよ〜 うふふふ〜〜〜 可愛いでしょう? ペアなのよ〜〜 」
「 ・・・ かわいい ・・・ ぺあ ・・・ 」
こそ・・・っと広げたそれは 一応はブルーの地色にハートだの星だのが飛び交い
真ん中には大きなハート、その中に 熱愛中 の文字がでかでかと記されている。
「 ・・・ フラン ・・・ きみ さ。 趣味、かわった? 」
「 も〜〜 ジョーってば。 わたし達〜〜 新婚旅行中なのよ? ねえねえいいでしょう? 」
「 ・・・ うわ? 」
ぺたん・・・!と彼女が抱きついてきて、ジョーはよろけつつ受け止めた。
「 シ ・・・ 脳波通信もヤバそうだから。 古典的にナイショ話 よ。 」
「 え!? あ ああ ・・・ もう〜〜 きみってば〜〜〜 」
二人は縺れ合いながらベッドに倒れこむ。 フランソワーズは手を伸ばしてポータブル・MDの
スイッチを入れた。
〜〜〜♪♪ ♪♪ 軽快なポップスが流れ始めた。
「 ・・・さあ これで少々の音なら盗聴できないわ。 」
「 あ ああ・・・ よかった。 あの〜〜〜 すいませんが。 もうちょっと離れてくれませんか〜」
「 あら! だめよォ〜〜 新婚さんなんだもの。 むぎゅう〜♪ 」
「 わ ひ・・・! 」
「 し! ほらナイショ話はくっついてなくちゃ・・・ で ね 」
「 あ う うん ・・・ どうだい、ココは 」
「 一見、普通のロイヤル・ミルクティ ・・・じゃなくて! もう〜〜 ジョーのが移ってしまったわ 」
「 ご ごめん ・・・ 」
「 だ〜から。 ロイヤル・スウィートっぽいけど。 監視ばっちり ね。 盗聴は当然・・・
あ・・・っと〜〜 えい! 」
フランソワーズは彼女が着ていた例の <熱愛中> トレーナーを脱ぐと ベッドサイド備え付けの
時計にばさ・・・っと被せた。
「 !? ふ フラン〜〜〜 な なんて 恰好に 〜〜 」
「 ( し・・・ ) あ〜〜らあ〜〜 んんん 〜〜〜 だって邪魔なんですものォ〜 ♪ 」
「 ( おいおい ・・・ わかったよ、隠しカメラだね ) ええ そうよ。 愛してるゥ〜〜 」
「 ぼく も ・・・ それで? 」
「 ええ。 さっきの腕時計は身に着けないほうが賢いかも よ? 」
「 ああ これかい? 」
ジョーは入国後、渡されたナヴィ・ウォッチをポケットから取り出した。
「 あら ジョー、さっき腕につけていたのに? 」
「 うん ・・・ ちょっと気になってさ。 さっき手を洗う時に外したんだ。 」
「 それ いいわね。 ごく自然の行動ですものね。 わたしもまねしようっと。 」
「 これ ・・・ なに? 」
ジョーは目の前でぷらぷらと揺らしている。
「 う〜ん ・・・ ただのナヴィゲーターだけじゃないみたいなのね。 よくは判らないけど・・・
<余計な>部分が見えるのよ。 」
「 ふ〜〜〜〜ん ・・・ なるほどね、そういうワケか。 」
「 ね? やっぱりそう簡単には ― わたし達とのわだかまりは解けてないってこと。 」
「 十分覚悟せよってことか。 よし ・・・! 」
「 ― あら。 装着するの? 」
「 正体がわかっていればそれなりの対処もできるだろ。
< 他の観光客と同じ > をアピールしなくちゃね。 」
「 そうね。 じゃ ・・・ わたしも。 」
「 ― それじゃ 索敵行動を開始、しますか。 オクサン。 」
「 はぁ〜い♪ まい ・ だ〜りん♪ ちゅ・・・! 」
「 ふふふ ・・・ なんか役得だなあ〜 あ ・・・ ねえ やっぱこれ着るの? 」
ジョーは 先ほどのトレーナーを広げてみせた。
「 当然でしょ〜〜〜 わたし達 ハネムーンに来たのよ?
< 熱愛中 > をこの都市のみんなにみせつけなきゃ。 特に ・・・ 」
フランソワーズがじっと宙を見つめている。
「 !? ・・・ アレが ― スフィンクスが また復活してるのかい? 」
「 ― わからない。 でも ・・・ なにか が いる わ。 」
「 わかった。 ― 行こう。 」
「 ええ。 」
二人はベッドを降りると 改めてぴたりと寄り添い互いの腰に腕を廻して部屋を出ていった。
< 休養コテージ > は 静かだった。
フランソワーズはドアを開け中をそっと眺めている。
「 まあ ・・・ 博士もイワンも 眠っているの? 」
「 うむ。 よい眠りの中だ。 」
ジェロニモ Jr. がぼそり、と答えた。
「 よい眠り ? あ ああ ・・・ 」
ふわり ・・・ と一筋 香りの帯が室内から流れてきた。
「 これで 二人の眠りを守っているのかい。 」
「 ・・・ いい香り ・・・ わたしもなんだか ・・・ まったりした気分になってきたわ。 」
「 おいおい ・・・ 眠っちゃダメだよ? 」
「 大丈夫 ・・・ 心がふわ〜んと暖かくなってきたのよ。 」
「 そうだね ・・・ これは安眠の香りだねえ 」
「 眠りは一番の守人だ。 眠った心につけ入ることはできない。 」
「 うん。 二人を頼む、ジェロニモ。 」
「 うむ。 お前たちも用心しろ。 ― これを持ってゆけ。 」
寡黙な巨人は 白く削った木切れを二人に渡した。
「 まあ なあに? マスコット? ・・・ あら これもいい香りね。 」
「 これは伽羅だ。 ウチの庭から持ってきたものだ。 」
「 ふうん ・・・ 少し甘い匂い、かな。 」
「 これは魔除けにもなる。 身につけておけ。 」
ジョーもフランンソワーズも 真剣な顔で頷き、その小さな木切れをポケットに仕舞った。
「 ここはやっぱり ・・・ なにか感じるの、ジェロニモ? 」
「 ― ここは静かだ。 静かすぎる。 精霊たちはなにも語らない。 」
「 ― え? 」
「 彼らは いる。 しかし なにも語らないのだ。 だから気をつけろ。 」
「 わかった。 ありがとう! 」
「 ありがとう。 博士とイワン、お願いします。 」
「 むう。 任せろ。 」
「 うん。 じゃあ イッテキマス。 」
「 それじゃ ・・・ またあまぁ〜〜〜い・新婚さん、はじめましょ。 」
フランソワーズがぴったり♪ ジョーにくっついてきた。
「 う ・・・ うん ・・・ ( えへ・・・ 実は嬉しいんだけど ) 」
ジョーは微妙〜な顔をしつつも、<新妻>の腰に腕を廻してぎくしゃくとコテージを出ていった。
木立の中にぽっかりと広場があった。
簡単な屋根があるだけの建物がその広場を取り巻いている。
その屋根の下には 小さな露天の店が所狭しと並んで店開きをしていた。
「 ほっほ ・・・ ここでんな、野菜市いうのんは〜〜 」
金襴な中華服に身を包んだ大人は 満面の笑顔で広場に脚を進めた。
この都市は 全体に人々が散らばっており、人垣や行列が出来ている場所はあまりなかった。
しかし ここにはかなりの人々が集まっており、そちこちに固まったり
ざわざわと動着まわったりしている。
大人も早速 ごそごそ集団の仲間入りをした。
「 は〜〜ん・・・ ほんに野菜だけ、やなあ。 けどまあ・・・ようけあるなあ〜〜 ふんふん・・・
あ〜 すんまへん、このお菜、見せてくれへんか? 」
彼は手近な店で売り子に声をかけた。
「 へえ、それやがな。 え? 試食してもええのんか? まあ おおきに ・・・ 」
差し出された青菜を躊躇わずに口にする。
「 ・・・ これはまあ ・・・ 」
ほんの一瞬、 ほんの少しだけ彼の口辺が歪んだ。
「 ・・・ いやあ〜〜〜 こりゃオイシイがな〜 あ そっちのお菜もええか? うむうむ・・・ 」
2〜3の青物を試食して褒め捲くり、一種類づつ買い求めた。
「 ほう〜〜 こっちはお蕪さんやら大根さんでんな。 どれ ・・・ ソレ、見せてんか? 」
あちこちの店でちょっとづつ試食をし、彼は楽しげに店を巡る。
他の客達も皆、似たり寄ったりの行動なので目立つこともない。
気のいい東洋の客、といったイメージで 大人は周囲の客にも愛嬌を振りまいてゆく。
「 あんさん、これ〜〜 美味しおまっせ〜〜 そうや、このトマトさんや。
ええお味や。 ・・・ ほな これ頂きまっせ〜 」
彼の陽気な雰囲気につられ、トマト売り場にはたちまち行列ができた。
「 なんやて? ワテがサクラやないか、て? あいや〜 あんさん〜〜〜 そりゃないで。
ワテはみなはんとおんなしお客やで。 それもなあ 今朝ココに着いたばっかりや。 」
「 あやまらんでもよろし。 そやったら ・・・ ここのお野菜、買うて ( こうて ) や? 」
売り手側の人間か? と野次られたが 彼はたいして怒りもみせずに飄々と切り返す。
その場の客は どっと賑わい、またまた市場は盛り上がってきた。
「 あの ・・・ ありがとうございます。 」
つり銭を受け取ったときに 店の売り子がこそ・・・っと礼を述べた。
「 うんにゃ、 ワテはな〜んもしてへんで。 あんさん、この野菜、作ってはるのんか? 」
大人は今 買ったばかりのインゲンを指した。
「 あ・・・・ いえ。 僕は売り子だけで・・・ 野菜の生産は <野菜工場>が担当です。 」
「 さよか。 まあ せいぜいきばってや〜〜 ほな ・・・な 」
相変わらずの笑みをふくよかな顔に浮かべ 張大人はゆるゆると市場を巡ってゆく。
「 ― 素晴しいアルね〜 」
「 最高の味ネ 」
彼はどの店でも賛辞を惜しまず、必ずなにか一つは購入した。
「 ほっほ・・・ いやァ〜〜 こないに美味しお野菜、滅多にあらへんで〜
いやァ〜〜 これは仰山買うてしまったなあ〜 」
彼の大きな < 独り言 > に 店の売り子たちも他の客からもどっと笑い声があがる。
「 ま、 これもええこっちゃ・・・ 美味しいモン、食べるのんもりぞ〜とやからなあ 」
彼自身も笑い声をあげつつ ゆっくりと広場を抜けていった。
雑踏を抜け、林の中の小路に差し掛かると ― 大人の顔から笑みが消えた。
「 ふん ・・・! 」
立ち止まり、彼は両手の荷物に一瞥を加えた。
「 あかん。 どれもこれも ・・・ ニンジンも大根も牛蒡もお菜達も や。
皆 同じ味 ・・・ 水の味しかせえへんわ。 匂いがあらへん。 味もや、皆 水とおんなしや。 」
見た目、野菜たちは生き生きとし美味しそうなのだが。
「 野菜工場 言うてたな。 合成肥料入りで水耕栽培 やな ・・・
ふん ・・・ 野菜が泣いてるで。 食べ物たら、お日さんの光と風と土がいるんや。 」
「 ジェロニモはんの温室とこやら ワテの畑やらでの虫喰い野菜の方がなんぼも美味しいワ。
ここは ・・・ あかん。 どこもかしこも ・・・ 同じ味しかせえへん 」
ふう ・・・ 彼は大きな溜息を吐く。 荷物は下に置いてしまった。
「 ここのお人らは、こんなん・・・ 食べてはるのんやろか。 お客にも出してはるのんやろか。
ず〜っとこんなん食べとったら ・・・ こりゃえらいこっちゃで・・・ 」
食のプロは栄養学にも当然詳しい。 しかし学問以前に、料理人としてのカンがアラートを
発しているのだろう。
ふん! ・・・ 彼は鼻を鳴らし足を踏み鳴らす。
「 こんなん、許せまへんな! ワテの仲間の口には入れさせしまへんでェ。
よっしゃ! ほんなら。 ワテがこの腕で安生とびっきり美味し御飯 作ったるワ! 」
どん! 彼は広い胸を叩くと えいや!っと大荷物を持ち上げた。
「 確か ・・・ あのコテージには厨房もあったはずや。
よろし! 今晩やワテの すぺしゃる・でぃな〜 やでェ〜〜〜 !!
ええか あんたら? ワテがあんたらを美味しゅう料理してあげまっせ ・・・
こないな風に育ちはったんは、あんたらのせいやないもんなあ・・・
ワテが あんたらを最高のお味に仕上げたげます! 」
大人は袋の中に詰め込んだ野菜たちに声をかけると ちょちょ・・・っとさすっている。
「 ふん ・・・? そろそろお昼でんな。 ワテの腹時計が言うてます。
よっしゃァ〜〜 ほんなら行きまっせェ〜〜〜 !! 」
ずんずんずん ・・・!
稀代なる料理人・張々湖は両手いっぱいの荷物を抱え、意気揚々とコテージに戻っていった。
サワサワサワ −− ・・・・・ サワサワ ・・・・
風が木立を揺する音も爽やかに リゾート都市は微笑を浮かべ二人を迎えて入れていた。
コテージ周辺には ちらほら・・・他の客の姿もみえる。
皆 のんびりと林に通じる路を散策し 談笑している。
「 ・・・ ふうん ・・・ 随分印象が変わったねえ。 」
「 そうね。 以前は自然なんて一欠けらも存在しなかったわよね。
全てメカ メカ メカ ・・・ のカタマリだったわ。 」
「 うん。 あの未来都市そのものが機械だったからなあ。 」
「 ねえ? ヒトの発想って そんなにすぐに根本から変えることってできると思う? 」
「 どういう意味かい。 」
「 だって ― たとえば ・・・ ジョーの仕事だとしたら。
違う企画を立てても どこかにジョーらしさ・・・って残るでしょう? 」
「 ああ ・・・ そうだね うん。 」
「 わたしも同じよ。 違う役を踊ってもね、 そりゃ振り通りに踊るけれど・・・
やっぱりわたしのオデット姫と わたしのジゼルには ・・・ なんとなくわたしっぽさがあるわけ。 」
「 そりゃきみの個性ってものだろ? それが芸術には必要だと思うよ。 」
「 そうよねえ・・・ こんな大規模な事をするのに、全く違うテイストにするって ・・・ 」
「 ああ きみの言いたいこと、わかるよ。 ( それ以上は口にだすなよ? ) 」
「 ありがとう。 ( ええ わかったわ・・・ ) 」
二人は手を繋いでぷらぷら ・・・ 歩いてゆく。
「 ねえ? 他の皆はどこに出かけたの ? 」
「 え〜とね ・・・ ちょっと待ってくれよ。 皆の伝言を検索してみるから・・・ 」
ジョーは幾分わざとらしくナヴィ・ウォッチを操作した。
「 ・・・ ああ わかった〜 ほら ? 」
「 え・・・どれどれ・・・? 」
フランソワーズはいそいそと彼の腕を覗き込む。
「 ええと・・・ ピュンマは水辺へ アルベルトは散歩??? どこかしらねえ・・・
グレートはシアターハウス ・・・ 大人は野菜市 ね。
ふふふ ・・・ 皆 <らしい>わねえ。 」
「 そうだね。 あれ? ジェットは ・・・? え〜〜と ・・・? 」
「 あら? unknown ですってよ? 」
「 ・・・ どうせズボラして入力してないんだろ。 」
「 あは ・・・ そうね そうかも。 あ きっとゲーム・センターとかバッティング・センターとか? 」
「 そんなもん、ここにあると思う? 」
「 ・・・ない わねえ・・・ ( 行方不明なの? ) 」
「 まあ 子供じゃないし ・・・ 心配はいらないだろ。 ( いや 本当に入力してないんだ ) 」
「 そうね ・・・ ( 仕方ないわね! ) 」
「 ぼくらは散歩でもしようよ。 ( まあな。 連絡待ちしかないな。 ) 」
「 ええ♪ あ 〜〜 ねえねえ わたし、オシャレなカフェとか・・・ オープンテラスな店、
探して〜〜 ジョー♪ ( そうね ・・・ もう〜〜 ! ) 」
うふん・・・と < 新婚の妻 > は夫にべったり・・・ くっつきナイショ話を続ける。
「 よ よし ・・・っと ・・・ ああ あったあった。 こっちの道の先にあるみたいだよ。 」
「 本当? 嬉しいわあ〜〜〜 うふ♪ ( わたし、目と耳、オープンしておく? ) 」
「 きっと気に入るよ・・・ほらこっちさ ( いや。 閉じておいてくれ。 変にアクセス
されたくないだろう? ) 」
「 あ! あのお店ね〜 わあ〜〜 可愛い♪ ( そうね。 そのほうが無難ね。 ) 」
二人は相変わらずいちゃいちゃしつつ ・・・ 木立の間のオープン・カフェに歩いて行った。
「 ステキ♪ ねえねえ メニュウがフランス語だわ。 本場の オ・レ が飲めるかしら。 」
「 ウ〜〜〜・・・ ぼくには全然読めない〜〜 きみ 頼むよ〜 」
スワトウのランチョン・マットを敷いたテーブルに着き 新婚さんは仲良くメニュウを覗く。
「 うふふ・・・はいはい・・・ ジョーはなにがいいの? 」
「 ぼくは ・・・う〜〜ん きみと一緒がいいな。 」
「 はあ〜い♪ それじゃあねえ〜〜 クリーム・パフェとプリン・ア・ラ・モードと〜〜 」
「 おいおい〜〜 」
カツカツカツ ・・・・ 高いヒールの音が響いてきた。 ここではあまり聞かない音だ。
オープン・カフェだから 二人とも人通りを気にしてはいなかったが ― ふと その足音が止まる。
「 あらぁ ・・・ ジョー? ジョーでしょう? 」
強い香水のかおりがどっと・・・押し寄せてきた。
二人のテーブルの前で 流行の凝った服装をした女性が艶然とジョーを見つめていた。
Last
updated : 11,12,2012.
back / index / next
********** またまた途中ですが
ひえ〜〜〜 す すみません〜〜 終わりませんでした・・・
う〜〜〜みゅ・・・ やっぱり <全員野球> は大変・・・というか
よほどの尺がないと無理ですねえ・・・
( 映画がああなったのも判る気がしてきた ・・・ )
次回できっと! 終らせますゆえ・・・お付き合いくだされば嬉しいです〜