『  グリーン ・ グリーン  ― (2) ―  』

 

 

 

 

 

 

 

 

 コツコツコツ ・・・  カツカツカツン ・・・  ザザザザザ ・・・・

 

同じ素材のブーツでも 持ち主によって全く違った音を響かせるらしい。 

サイボーグ達は 広々とした舗道を歩いていた。

それぞれの音は違ってもテンポは同じ ― 急ぐでもなく、さりとて寛ぐでもなくひどく事務的だ。

「 ― こちらがメイン・ストリート ・・・といっても当市では車の数は限られています。 

 物資の輸送は地下トンネルを使い、人々の移動はモノレールの担当です。 」

「 車はあまり使われないのですね。 」

「 そうです。 将来もっと規模の大きな都市になれば別ですが。

 現在の規模では 車はあまり必要ではないのです。 

 パーキングのスペースが まだ充分ではないからでもありますが しかし!

 このメイン・ストリートだけでなく 全ての道路の両脇には広くグリーン・ゾーンが設置されています。

 道のあるところには必ず緑がある、どうです、この素晴しさ! 」

「 ・・・ はあ ・・・ 」

「 それにもうお判りかと思いますが 建物は全て上へ伸びていまして、人工太陽灯により

 どの地域も一定の時間、太陽光が届くようプログラムしてあります。

 当市に 日当たりの悪い場所 など 存在しません。 この明るさを見てください! ワンダフル! 」

「 ・・・ キレイですわね。 」

  

 コツコツコツ ・・・  カツカツカツン ・・・  ザザザザザ ・・・・

 

8通りの足音は 相変わらずずっと響いている。

一歩先を行く青年の足取りだけが やたらと軽快に聞こえるが後続部隊は常に一定速度だ。

 ― 遅れることはないが 早まることもない。 誰もが機械的に歩みを刻んでいる。

 

    ・・・ いい加減に切り上げたい ・・・

 

    いつまで自慢を続けるつもりなんだ ・・・

 

全員が無表情に 黙々と足を運んでいた。

誰も口をつぐんでいるが、足音が声高に、そして正直に全員の気持ちを伝えている。

「 それでは ここから緑化地区を横切ってメイン・コントロール・センターへと向かいましょう。

 センターには当市を統括する優れた機能の全てを集約してあり ― 」

青年は得々としてしゃべりまくり、上機嫌だ。 一人でテンションを上げている。

どうも彼には後からついてくる人々の様子も雰囲気も <見えて> いないらしい。

いや ・・・ 全く歯牙にもかけていないのだ。

   ― 青年は自分の後ろを歩く女性だけに話しかけているつもりなのかもしれない。

もっとも 彼女のすぐ前にはセピア色の髪をした青年がぴたりと並んで歩いている。

彼もさり気ない足取りだが しっかりと彼女を護っているのは明白だ。

角ごとに彼は必ず一歩彼女の前にでて油断なく左右を警戒している。

「 ご存知の通り 当市は全てをコンピューターにより完全にコントロールされています。

 100%の安心と安全  ― それがこの実験未来都市なのです。

 この都市の特徴は都市機能の充実だけではありません。 環境もまた然り。

 すべて コンピューターにより <最適> に設定され維持されているのです。 」

「 ・・・ そうですか。 」

彼の後ろを行く女性も 一応相槌は打っているが最低限の礼儀を守っているだけ、のようだ。

青年はそのことにも 気がついていないのかどんどん自分のペースで歩みも話しも進めてゆく。

当然 彼女との間に例のセピアの髪の青年がいるのだが彼の存在は全く無視している。

「 当未来都市のコンピューターは万全です。 

 自らのチェック・修正機能も完璧ですし予備回路も三重に設置してあります。

 つまり当市をコントロールするコンピューターが故障する確率は限りなくゼロに近い! 」

「 ・・・ 素晴しいですね。」

「 ふん。 壊れないものなどこの世に存在しない。 」

「 アルベルト・・・! 」

ぼそ・・・っとひと言、低い声が聞こえた。

「 現にご自慢の都市には ゴキブリどもが紛れ込んだじゃないか。 」

「 し・・・! 今は黙って・・・ 」

「 あ なにか? 」

先頭の青年は 初めて後ろを振り返った。

「 あ ・・・ いえ。 あの ・・・ エッカーマン博士を・・・博士もお誘いしなくてよかったのですか。 」

「 は? 」

「 いえ・・・ あのさっき・・・コントロール・タワーで街へご一緒してくださると仰っていましたわ。」

「 ・・・ ああ。 別に構いません。 老人の繰言に耳を貸す時間はありません。 」

「 まあ ・・・ 老人だなんて。 お父様でいらっしゃるのに。 」

「 彼はもう隠遁の身ですから。 現在の都市の運営には無関係なヒトです。 

 それよりも これからインフラ面を統括するセンターヘご案内しましょう! そちらも100%の安全安心 」

「 おい、003。  俺たちはドルフィン号に戻るぞ。 」

青年のやや高い声を 低いが強い声がきっぱり遮った。

「 アルベルト・・・ いえ、004。  ・・・ドルフィン号へ? 」

「 ああ。  ご大層な説明はもう結構。  ギルモア博士さえ承知ならすぐに出発しよう。 」

 

   ― もう 沢山だ・・・!

 

脳波通信など使ってはいなかったけれど、アルベルトの口調から誰もがその真意を読んだ。

いや・・・全員の気持ちだったのだ。

 

「 あの ・・・ エッカーマンさん? わたし達 ・・・ そろそろお暇いたしますわ。

 ギルモア博士も充分にお話をなさったと思いますし・・・ 」

「 ああ どうぞごゆっくりなさってください。 見学がお疲れでしたら宿舎の方へ御案内しますよ。

 皆さんにはVIP滞在用のコテージをご提供します。 

 しばしこの地上の楽園で息抜きをして、戦闘の疲れを癒してください。 」

「 でも ・・・ あの ・・・ 」

「 ご遠慮は無用ですよ。 さあ未来都市の極上の癒し空間をたっぷりと味わってください! 」

「 あの ・・・ でも。 わたし達は ・・・ 」

「 夕食は当未来都市で生産した極上の食材でご用意します。 お気に召すことを保証しますよ。

 ああ コテージは森の中にいるのと同じ雰囲気が味わえる構造です、素晴しいでしょう? 」

青年は相変わらず 上機嫌でどんどんコトを進めて行く。

どうも 彼には周囲とペースをあわせる とか 他の人々の反応を見る、ということには

とんと気が回らないらしかった。

そんなコトは考えたこともない ・・・ のかもしれない。

 

    このヒト ・・・ 頭は良くても・・・

    心の感度が 鈍いのね

 

     ・・・ 可哀想に・・・・ 

 

フランソワーズはそっと溜息を洩らす。

 

     ・・・ さっきだって。  なにがそんなに気に触ったのかしら・・・

     お父様にあんな風に 当たる なんて・・・

 

イヤなことを思い出してしまった ― 彼女はぷるん、とアタマを振り肩を竦めた。

こそ・・っと 彼女の手を大きな温かい手が包む。

「 ・・・ フラン ・・・ 大丈夫、 ぼくがいるから。 」

「 ・・・ ジョー ・・・ ありがとう・・・ 」

やはり少し疲れたのかもしれない・・・ 彼女はことん、とジョーの肩の頭を寄せた。

 

 

 

   ― つい小一時間ほどまえ。  

実験未来都市に侵入したゴキブリども を殲滅した後サイボーグ達はコントロール・タワーにやって来た。

この都市の中枢であり、都市を護るコンピューターを統括している場所だ、という。

未来都市構築を指揮した中心的人物・エッカーマン博士は ギルモア博士の旧友だった。

「 ・・・ 博士の護衛だ。 博士を送ってゆくだけだからな! 

「 博士もなあ 旧友と積もる話しもあるだろうしな。  ― しかし我輩らに用はない。 」

「 皆 ・・・ まあ、いいじゃないの。 ちょっとだけ ご挨拶 しましょうよ?

 それで あとは・・・ドルフィン号に戻ってもいいし 少しこの辺りをぶらぶらしてもいいし・・・ね? 」

「 ふん ・・・ 」

フランソワーズに宥められアルベルトは、 いや 他のメンバー達も不承不承・・・ 重い足取りで

ここまでやって来たのだ。

わざわざ出迎えてくれた人間の職員の案内で彼らはやたらと厳重な幾つものセキュリティを越え

やっと目的のスペースについた。

 

「 やあやあ・・・みなさん! よく来てくださった・・・! 」

オート・ドアが開くと 小柄な老人が満面の笑みを浮かべ立っていた。

「 ・・・ 初めまして エッカーマン博士 であられますか? 」

先頭にいたグレートは腰を屈めて慇懃に挨拶をした。

他のものたちも 控えめに目礼を送った。

「 そうです、私がエッカーマン・・・ おお!! ギルモア君!! いやあ〜〜何十年振りかな! 」

「 エッカーマン君 ・・・ 元気そうじゃな。 」

老博士は 懐かしげに握手をし、久々の再会を喜びあっていた。

「 ・・・ いやあ〜〜 本当に皆さんには御礼の申し上げようもありません!

 よくぞわが未来都市を救ってくださった・・・! 

 後程 私がゆっくり御案内しますよ。 なに、ありふれた都市ですが・・・ 

 皆さんが救ってくださった街を見ていただければうれしいです。」

「 ・・・ いえ 救った、だなんてそんな。 わたし達は <害虫退治>をしただけ 」

 

「 そうです、 <救った> のは未来都市自身の防衛機能です。 」

 

突然 高声が会話を遮った。

「 ・・・ え? 」

「 ― ようこそサイボーグ諸君 わが未来都市・スフィンクスへ! 

 わたしが カール・エッカーマン ・・・ この都市プロジェクトの統括責任者です。 」

一人の青年が つかつかと彼らの前に歩みでてきた。

「 あ・・・  ああ  あの・・・ 倅のカールですじゃ。ここの全システムの開発と運営を担当させています。 

 カール、こちらは旧友のDr.ギルモアとサイボーグ戦士諸君だ。 この度 」

「 お嬢さん またお会いしましたね。 

 貴女のように美しい方がサイボーグ戦士とはとても信じられませんな。 」

青年はつい・・・とフランソワーズの前に進み出た。

「 ・・・ は はあ・・・ 」

「 カール、 こちらの皆さんが侵入者を撃退してくださったのだ。 

 お前からも御礼を 」

「 皆さん! 当未来都市は全ての機能をコンピューターによってコントロールされています。

 100%の安心と安全! それがスフィンクスなのです。 」

「 カール。  そのスフィンクスに危機が及びかねない所じゃったのだぞ?

 それをこちらの皆さんが阻止して 」

「 ええ ですから。  今回の不法侵入者たちの件は、単なる人為的なミスです。

 未来都市のコンピューターは常に万全です。 」

「 人為的 ・・・ ミス?? 」

「 そう・・・今までゲート・キーパーには専属の人間を配属していました。

 今回のアクシデントは彼らの見落とし・監視ミスが原因、と判明しましてね。

 やはり人間の監視では不完全です。 今朝からゲート・キーパーは全てメカに変更しました。 」

「 全て、ですか。 」

「 そうです、 それらは全てコンピューターで管理されていますから万全です。

 いやあ〜〜メカが一番信頼できますな。 愚かなミスなど犯しませんから。

 サイボーグである皆さんが羨ましい。  皆さんはこの都市同様に、人類に夢ですからね。

 そう、完璧なる夢の人類、というわけです  はっはっは ・・・ 」

「 ・・・・・・・ 」

一層トーンを上げた笑い声に サイボーグ達は誰もが露骨に不機嫌な顔をした。

さすがに フランソワーズも顔を強張らせ、なにも返事をしなかった。

 

    ・・・ なんだ・・? コイツ・・・

 

部屋の空気がさ・・・っと不愉快なものに代わってゆく。

「 エッヘン! ・・・ あ〜 あの ・・・ その、ですなあ・・・ 」

エッカーマン博士が堪り兼ねて口を挟んだ。

「 諸君、実はなあ・・・ 倅は以前事故に遭いまして。

 酷い重傷で病院に運びこまれたときには もう手の施しようもないほどでした。

 しかし まあ ・・・幸い脳組織に損傷はなかったので  その ・・・ 」

「 その話は 必要ありません。 関係のないことです。 」

強い声が強引にエッカーマン博士の言葉を遮った。

「 え ・・・ あ その ・・・ カールや・・・ ワシはなあ・・・  」

「 失礼、不要な無駄口です。  さあ 皆さん 都市の見学にお連れします、どうぞ! 

 お嬢さん どうぞ、こちらですよ。 」

「 ・・・ え ・・・ あ あら・・・ 」

青年は父の言葉など意にも介せず 全く無視している。

彼はフランソワーズの手を取ると どんどん歩き始めた。

「 あの・・・! どちらへ? 」

「 は? ですから我が未来都市へ御案内します。

「 あ・・・・ 放して ・・・ 」

「 ・・・ おい。  なんだ アイツ?  ・・・ 勝手に!  ったく・・! 」

アルベルトが毒づくより前に ジョーは黙って彼女の後にぴたりと付いていった。

サイボーグ達も急いで後を追った。

 

「 では 皆さんを人類の夢、理想郷へとお連れします。 

 今しばらくのウォーキングをお願いしますよ。 ああ サイボーグの方々には問題ありませんな。

 いやあ〜〜 メカの力は素晴しい! 

 お嬢さん、あなたの美しさはメカの力に増強されてますます輝いていますね。

 その魅惑の微笑みが 永遠に変わらない、とは ― 素晴しい! 

「 んだとォ〜〜 このォ〜〜! 」

ジェットは殿を歩いていたがまさに<飛び出し>そうになり、 アルベルトがむんず、とベルトの後ろを捕まえた。

「 よせ。 相手にするだけバカらしいぞ。 」

「 ・・・! 」

「 すみませんが。 手を放してくださいませんか。 わたし、一人で歩けますわ。 」

「 ・・・ ああ  これは失礼。 

建物から出たところで フランソワーズはきっぱりと意思表示をし、青年から離れた。

 

    コツコツコツ ・・・  カツカツカツン ・・・  ザザザザザ ・・・・

 

<実験未来都市> の広い市街地に単調で規則的な足音が響き始めた。

 

 

 

 

 

「 ・・・ 今晩 ・・・ ここに滞在するの ・・・ ね ・・・ 」

「 うん? なんだい。 」

「 ジョー ・・・ あ ううん ・・・・ なんでも ないわ・・・ 」

「 そうかい? 少し疲れたのかな、顔色が冴えないよ。 」

「 ・・・ そう? でも大丈夫よ。  ご自慢の <癒し空間> とやらで一息つくわ。

 本当は ・・・ ドルフィンの方がいいのだけど・・・ 」

「 ぼくも同じさ。  ・・・ 側にいるから。 安心しておいで。 」

「 ・・・ん ・・・ ありがと、ジョー・・・ 」

二人はそっと指を絡めあい、ゆっくりと歩んでいった。

道の両側には濃い緑の葉をゆらし、木々がフェンスやゲートの役目もしている。

二人は桜の木の門を潜り、コテージへ向かった。

 

 

後味の悪い <都市見学> の後、サイボーグ達は豪華なレストランに案内された。

落ち着いた雰囲気の建物の中にあり、 室内装飾も上品でゆったりとした空間が広がっていた。

「 皆さん ! 本日は皆さんの為に 当レストランは貸切にしました。

 本日のメニューは 全てこの実験未来都市で採れたものばかりです。 

 ではごゆっくりご堪能ください。  私は席を外しますからどうぞご自由に。  」

彼は軽くアタマを下げるとデイナー・ルームから出ていった。

「 ・・・ あの坊 ( ぼん )。 ようしゃべらはりますな。 

「 ああ。 やたらと口数の多い野郎は好かんな。 沈黙こそ金。 」

「 ふん。 ご大層な演説はもう沢山だ。 」

「 へっ! 固っ苦しいのはゴメンだぜ・・! 」

サイボーグ達はぱりっとした麻のクロスを掛けたテーブルの前で憮然として座っていた。

 

   ― やがて 食事が運ばれてきたが。 当然というか全てのサービスは <自動的に> 行われた。

 

「 ・・・・! 」

誰もひと言も発せず、ただ黙々と料理に手をつけた。

張大人は 目の前の皿の中身をしげしげと眺め無作法にならない程度に熱心に匂いを嗅いだ。

「 ・・・ ふん・・・? 」

彼は慎重に一口 味わい ―  深い溜息と共にナイフとフォークを置いた。

どの皿も 彼は一口づつしか手をつけなかった。

そんな彼に 誰も ― 赤毛ののっぽでさえ ― なにも言わなかった。

メンバー達は黙々と料理を口に運び、<豪華な晩餐> は 静寂のうちに終った。

コーヒーが 出ると あの青年、カールが再び現れた。

「 我が未来都市の産物を堪能されましたか?  全て管理され厳選された食材ですからね、

 地球上でもっとも優れた食事、といえますかな。 」

「 ・・・ 御馳走様でした。 」

  ガタン ・・・ ガタン ガタン ・・・

<客>たちは次々に席を立つ。  誰も なにも言わない。

「 さあ それでは宿舎の方にご案内しましょう。 こちらも地上の楽園です。 

 どうぞ夢の一夜を! おっと、快適すぎて夢などご覧にならないかもしれませんが。 

 ・・・ ああ そうだ。 」

カールは次々に席をたち、出口に向かうサイボーグ達にさり気無く声をかけた。

彼が見つめているのはフランソワーズだけだ。

ジョーは今もぴたり、と側に並んでいるが 相変わらず全くカールの視界には入っていない様子なのだ。

「 お嬢さん。 あなたは ・・・ いえ、あなた方にはご一緒のコテージをご用意しました。

 エッカーマン博士からの要請がありましたので。 」

「 まあ ・・・ ありがとうございます。 」

「 ありがとうございます。 」

二人は 揃って軽く頭を下げた。

「 ― 失礼ですが。  あなた方はご夫妻なのですか。 」

初めて ― サイボーグ達がこの都市に足を踏み入れてから初めて、 カールはセピアの髪の青年に

 ― フランソワーズの側に立つ  サイボーグの一人 に視線を向けた。

「 え・・・?  ・・・ その・・・ ぼく達は 」

ジョーは一瞬言い澱んだ。  

しかし彼はすぐに顔を上げこの都市を統括する青年を真正面から見つめた。  

   ・・・ そして。

 

「 ぼく達は ― まだ夫婦ではありません。 彼女はぼくのフィアンセです。 」

 

彼はきっぱりと言い切った。

「 ・・・ ジョー ・・・! 」

細い指が 彼の手をつかむ。

ジョーの大きな手が白い手をしっかりと握りかえした。

「 エッカーマン博士に お気使いありがとうございます、とお伝えください。 

 さ ・・・ 行こう、フランソワーズ。 」

「 ええ・・・  失礼します。 」

二人は振リ向きもせずに ゆっくりとレストランを出ていった。

メンバー達は出口の手前で足をとめていたが、 すぐに微笑を浮かべ二人の後に続いた。

「 ・・・・・・・・・・・ 」

コーヒーの香が微かに残る部屋で 青年はひどく無表情なまま立ち尽くしていた。

 

 

 

「 ・・・ いい匂いがするわ! 木の香、かしら・・・・ 」

「 うん ・・・ 」

ジョーとフランソワーズは コテージの中に落ち着いた。

簡素な作りだけれど、清潔で気持ちが良い。  

カールが自慢していた通り、全て天然の建材で作られているらしい。

フランソワーズは ベッドに腰をかけ早速ブーツを脱いだ。

素足をそう・・っと床におろした。

床はむき出しの白木で 要所要所に淡い色に染めた織物が置いてある。

「 ・・・ この床・・・ とっても足にやさしいわ。 固くないの、気持ちがいい・・・! 

 ねえ ジョー、さわってみて? 」

「 え ・・・ ああ うん。 」

「 なあに・・・ 機嫌、悪いのね。 疲れた? 」

「 ・・・ いいや 全然。  ああ・・・ ごめんね、不機嫌な顔をしていて・・・

 どうも ・・・ アイツが気になって。  あの目は・・・なんなんだ? 

「 ジョー・・・・ 確かに随分失礼なヒトだとは思うけど・・・

 きっと<周りが見えない> ヒトなのよ。  悪気は・・・ない、と思うわ ・・・多分。

 優秀らしいけど ・・・ 心が貧しいのかしら、淋しいひとね、可哀想に・・・  」

「 アルベルトじゃないけど。 一分でも早くここを発ちたいな。

 居心地が悪い って。 こういうことを言うのだろうね。 部屋の調度とかには関係なくて さ。 

「 そうね。  とにかく明日  ・・・ 朝一番で失礼しましょうよ。 」

「 うん。  ・・・あ あの さ。 ごめん・・・! 

「 ・・・ ??  え なにが・・? あら ヤダ、そんな恰好して・・・」

ジョーはひらり、と彼女の正面に回り、そこに片膝をついた。

「 さっき さ。  ― 勝手に そのう・・・フィ、 フィアンセ・・・だなんて言って・・・ 

 ごめん・・・ きみの気持ち、全然考えてなくて・・・ 」

「 そうね。 いきなりでびっくりしたわ。 

 ああいう事はちゃんと事前に承諾を得て頂戴。  迷惑だわ。 」

「 ・・・ ゴメン・・・ 」

ジョーはますます俯き フランソワーズからはセピアの髪しか見えない。

不意に白い指がするり、とその髪に滑り込み 絡み付き梳きながす。

「 ・・・?? 」

「 ・・・な〜んて 言うと思う?  ふふふ・・・ う ・ そ♪  冗談です。

 ありがとう〜〜 ジョー!  ・・・とっても嬉しかったわ! 」

「 !  な、な〜んだ〜〜 もう〜〜〜 ! 」

フランソワーズは目の前にある真剣な顔に腕を絡めた。

「 ・・・ ありがとう、ジョー・・・・ わたしの素敵なフィアンセさん♪ 一生 ヨロシク♪ 」

彼女は身を折って腕の中のセピアの髪に顔を埋めた。

「 コイツ〜〜 あは・・・でもツンツンした君もステキだね。 

 ちょっと見直した・・・  ん・・っと。  それじゃ・・・ ♪ 」

「 あら・・・ きゃ・・・ 」

ジョーはそのまま彼の <フィアンセ> を抱き上げた。

 

   ― カサリ ・・・

 

彼女のポケットからなにかが床に落ち小さな音を響かせた。

「 ・・・? なあに・・・・ ?  」

「 ん?  ・・・ ああ、なにか小さな袋だよ。  きみのだろう? ほら・・・ 」

ジョーは手を伸ばし 床から拾い上げた。

「 あ ・・・これ。  ジョー ほら これ・・・・ 種よ、ウチの庭から取ってきた種の袋よ。 

「 たね の?  ・・・ ああ、あの時のか。 鳳仙花や白粉花・・・だったね。

 玄関脇に植え替えたっけ。 」

「 ええ。  元気に咲いているかしら・・・ 

 あのコたちの子供たちを実験未来都市にも飛ばしてあげよう、と思って持ってきたのだけど・・・

 ここじゃ・・・叱られるかしら。  ナントカ規格に合わないと失格! なんて・・・ 」

「 う〜ん ・・・ このコテージ周辺なら大丈夫じゃないかな。  人目にもつかないだろうし。 」

「 そうね。  ふふふ・・・ ちょっと反抗したくなっちゃった。 明日の朝、こっそり撒いちゃうわ。

 大きさが違うからって・・・ 引き抜くなんてあんまりよ。 」

「 ああ ・・・ あの花壇のヒマワリか・・・ 規格がどうのこうの・・・って言ってたな。

 植物だってちゃんと生きているのに。  ともかく この街はとても好きにはなれないよ。  

 早くウチに帰ろう・・・ぼくのフィアンセさん♪ 」

「 ええ。 わたし達のお家に、ね・・・ あ  な  た ♪ 」

「 ん ・・・・ 」

二人はそのまま縺れ合いベッドへ倒れこんだ。

木製のベッドは広々としていて、気持ちがいい。 リネン類も極上品らしかった。

 

    ・・・ 素朴に見えるコテージだけど ・・・

    本当はすごく贅沢なのね ・・・  

 

    ・・・  ん ・・・?  この 匂い ・・?

 

ジョーの愛撫を受けつつ 不意につ・・・んとした匂い ― それはとても微かだったけれど ― を

清潔なリネン類から感じた ・・・ 

 ― どこもかしこも。  消毒済み、という事・・・なのだろうか・・・?

 

    ・・・せっかくの田舎のコテージが台無しだわ。 

    せめて石鹸の匂いだったら・・・ 気持ちよく思えるのに・・・

 

    あ・・・ ああ・・・ ぁ   ジョー ・・・・ !

    イヤなこと・・・忘れ・・・さ ・・・せて・・・  ぁ ・・・

 

「 ・・・フラン? 

「 ん ・・・ なんでもないの ・・・ ジョー 思いっ切り・・・愛して・・・! 」

「 ・・・・・・ 」

ジョーは返事の代わりに 彼女を引き寄せその白い胸に顔を伏せた。

 

 

 

 

 

     

    ・・・  あ ・・・・ ?

 

 

  ―  ふっと目が覚めた。

部屋の中にはまだ濃い藍色の闇が漂っている。  

ひんやりした空気が 火照りの残る身体に心地好い。

床に 淡く広がる白い光が ・・・ 見えた。

「 ・・・ お月さま・・・? 」

フランソワ−ズは 身体に絡まるジョーの腕をそっとはずすと するりとベッドから抜け出した。 

 

「 ・・・ あら。 」

 身を被うものが差し込む月の光しかないことに気づき  一瞬ためらったけれど

そのまま窓辺に歩いて行った。 

素足に白木の床がひんやりと優しく素肌に纏わるしっとりした夜気の感触がどんな布よりも気持ちがよい。

 窓辺に寄ってカーテンを払った。

「 お月さま ・・・  ふふふ あなただけは正真正銘のホンモノね 」

 半分開けた窓の上には 少しだけゆがんだ月が かかっていた。

 少々ぼやけて見えるのはドームのガラス越しなので仕方がないのだろう。 

「 ・・・ 人工夜光灯 なんかじゃなくてよかった …!

 彼女は 大きく深呼吸した

「 ・・・あれ。   虫の声が  ないね…   」

  え…  あ ・・・ ジョー  」

不意に後ろから声がして がっしりした腕に引き寄せられた。

「 ごめんなさい、起こしてしまった? 」

「 ・・・ ううん。  ぼくもなんか目がさめた。  そしたら きみ・・・いないんだもの。 」

すす・・・っと唇が耳朶を首筋を辿る。 白い肌がたちまち薄紅色に染まる。

そんな変化を 彼は楽しみ点々と口付けを散らしてゆく。 

「 ・・・ あ ・・・ん ・・・  お月さまに ・・・ 呼ばれたのかも・・・ きゃ・・・ 」

「 うん?  ・・・ ああ キレイな月だよね、 アレはホンモノだ。 」

「 ええ ・・・ 」

どうやらジョーも同じことを考えていたらしい。

「 でも おかしいな。  ここは一応 緑化地帯の真ん中のはずなのに。 」

「 え? おかしいって なにが。 」

「 うん ・・・ さっきからずっと耳を澄ませているんだけど。  聞こえないんだ。 」

「 ?  聞こえない・・・って なにが。  」

「 虫の声。  虫の鳴き声さ。  ここは季節的には一応暦に合わせてあるんだろ?

 だったら・・・・ 今は秋の気候のはずだ。  それなのに ・・・ 虫が鳴いていない。 」

「 ・・・ 虫 ・・・って ・・・ あ   コオロギ とか マツムシとかの声ね? 

 リーンリーン・・・ って 鈴みたいな音でしょ。 

「 うん。  あ そうか〜 きみにはあまり馴染みがないよなあ・・・ 」

「 ええ わたし、あのお家で暮らすようになって初めてジョーに教わったもの。 

 秋の合唱隊のこと・・・  リンリンリン〜 とか チンチロチンチロ ・・・とか。 

「 そうだよねえ  気がつかないの、当たり前だよね、ごめん ごめん ・・・

 日本だと秋には虫の声がして当たり前・・・って感覚なのさ。 

 ここは ・・・ ほら ようく聞いてごらん?  ウチの庭での音、思い出してみて・・・ 」

ジョーに促され、フランソワーズは窓を全部開け放った。

「 ・・・ どうだい? 」

「 ・・・・ 聞こえないわ。  ええ なにも なにも聞こえないの。 

 鳴き声だけじゃないわ 虫の羽音とか樹に留る音とかも ・・・ 聞こえない。

 ジョー。  ・・・ ここには音が 自然の音が ない・・・!  」

「 なんだって? 」

「 <耳>に入ってくるのは ・・・ごく低い空調とか下水処理の音だけよ。

 つまりメカニカル・ノイズだけしか聞こえないの。 」

「 ・・・ふん  万全の管理体制、だったよな。 100%の安全・安心・・・か! 

 フラン。 明日の朝一番で 出発しよう。  こんな所に長居は無用だ。 

「 そうね。  アルベルトのカンが一番正しかったわね。 」

「 ああ そうだな。   さ、もう休もう。 」

「 ええ。  ・・・ごめんなさい、わたしが皆を  ・・・ 引き止めたわ。 」

「 そんなこと、もういいよ。   多分皆も同じことを考えているさ。 」

「 そうね。 」

二人は窓を閉め、カーテンを引くと ベッドに戻った。

「 まだ夜明けまでには少し時間がある。  眠っておこう。 」

「 ええ。  ・・・ねえ ・・・ 早く家に帰って・・・ 虫さんたちの大合唱を聞きたい・・・ 」

「 うん ・・・ 十五夜に間に合うといいな。 月見、しような。 ススキも穂を出すだろうし。 」

「 帰りたいわ・・・ 本当に今すぐ・・・帰りたい・・・

 ねえ? 帰ったら栗御飯 作るわ!  それに! アップル・パイも!

 去年煮ておいた林檎の砂糖漬けがきっとすごく美味しくなってるわね。 」

「 うん  楽しみだなあ・・・ でもぼくは きみと一緒に居られればそれで充分だよ。 」

「 ・・・わたしも。   夏も 秋も。 冬も春も・・・ず〜っと一緒にいてね。 」

フランソワーズは ジョーの胸にぴたり、と頬を寄せた。

「 ・・・ ん?  どうした。 

「 ・・・ わからない でも・・・ なんだか・・・こわい 」

「 ? 可笑しなフラン ・・・  大丈夫だよ、 ほら ぼくがいる・・・ 」

「 ・・・ ん ・・・ 」

くしゃり、と大きな手が亜麻色の髪を撫でる。

「 ・・・・・・・・・・ 」

すべすべした広い胸に頬をあて 彼の命を刻む音を感じつつ・・・ 彼女はいつしか寝入ってしまった。

 

 

 

 

 

「 お帰りになる前にこれだけは是非! 是非この素晴しさを見て頂きたいのです。

 ええ お帰りにちょっとだけ寄道して頂けば ・・・ こちらです! 」

「 ・・・・・・ 」

翌朝 サイボーグ達はこれからすぐに辞去する、と挨拶をした。

カールは鷹揚に頷きつつも、半ば強引に彼らを <案内> すると主張した。

「 ミスタ・エッカーマン?  申し訳ないが我らはすぐに帰還予定なのだが・・・

 ご案内はもう充分、 これにて失礼申し上げる。 」

たまりかねてついにグレートが口を挟んだが、ほとんど無視された。

「 わかっています。 ですから、こちらを通って・・・ 出口ゲートに向かわれればいいでしょう。

 是非 わが未来都市の 生鮮食料工場 を見て頂きたい!

 これは近い将来、地球のあらゆる都市に設置されるでしょう!

 食料危機を回避しなおかつ環境にも優しい最高の場所ですよ。  さあこちらへ 」

カールは一同を 地下へと案内した。 彼らは大きなエレベーターで下降していった。

 

「 ・・・ ずいぶん深い場所なのね。 」

「 地下 ・・・ 5階以上だな。 」

「 かなり深いね。  ああ このエレベーター、深海探査なんかに使われる仕様だよ。 」

「 生鮮食料工場、とか言ったな。 こんな深さが必要なのか? 」

「 下に広いんじゃねえ?  ここのアパートと同じ、 いや 逆でよ。 」

「 ふん 珍しく的を得たことを言うじゃないか。 」

「 んだとぉ〜〜  」

「 アイヤ〜〜 あんさんら、やめなはれや。  ほい、着いたで。 」

かくん・・・と軽い衝撃を残してエレベーターの下降は止まった。

「 さあ どうぞ皆さん!  わが未来都市自慢の工場へようこそ! 」

やたら張り切った声に押し出され サイボーグ達は地下の空間に降り立った。

 

   そこは  広大な、いや 巨大な 野菜畑だった。

 

ぽっかりと空いた空間には 縦横に無数のパイプが走り煌々と灯りに照らされていた。

その下には 延々と緑の絨毯が広がっている。

「 ・・・ な ・・・ なんだ?? 地下にこんな畑が? 」

「 すごいね・・・ これは全部水耕栽培なのかな。  ふ〜ん・・・? 」

「 へ! 水? 水っぽい野菜ができちまうんでねえの? 

地下空間で 緑溢れる野菜畑を前にサイボーグ達は困惑していた。

「 ・・・ ジョー。  ここで聞こえるのも機械音 ・・・ メカニカル・ノイズだけよ ・・・ 」

「 なんだって・・・ それじゃ ここも・・・ 」

「 自然の音はないわ。  見て・・・ 野菜の苗は全部同じなの。 ええ、高さも太さも・・・ 」

「 そんなことが可能なのか? 仮にも植物、生命体なんだぞ。 」

「 確かに生命体よね。  でもここの生命体は・・・ なぜか全て <同じ>なのよ。 」

「 ・・・ それでも生命体といえるのか? 」

彼らの困惑を他所に、カールは得意満面で解説を始めた。

「 皆さん! このフロアでは主に緑黄色野菜を栽培しています。

 完全な栄養素を含んだ高濃度培養液 と 人工太陽灯を24時間照射することで

 驚くほど早く完璧な野菜を生産しています。 」

「 ・・・ 高濃度培養液 だって? 」

「 やはりな。  ここはまさに <野菜工場>なんだ 」

「 栽培されている野菜は全て遺伝子操作により 同一の形態に生育します。

 ですから 選別の手間もなく輸送の際も梱包が簡単ですみます。

 パッケージに合う大きさ、重さに生育するよう、設定してあります。 」

「 同一の形態?  ・・・ 野菜は工業製品じゃねえ・・! 」

「 設定、だって?? 生き物なのに・・・! 」

「 形態も含有栄養素も、重さも味もすべて統一規格にマッチしたものばかりですよ。

 それが日々 同じスピードで増産されているわけです。 

 別のフロアでは葉物が また根菜類も同様に生産されているのです。

 どうです? これで一年中同じ野菜の安定供給が可能になったのです! 

 価格の変動もありません。 人々はいつでも同じ味の野菜を食べることができるでしょう。 」

どうです、素晴しいでしょう・・・・と 青年は広大な <野菜工場> を見渡し満足気である。

 

    ―  素晴しい ・・・ だって?

 

誰もひと言も発しない。  冷たい沈黙が辺りを支配していた。

   ― やがて 

「 ここには 生命がない。 」

ジェロニモJr.の声がずしり、と響いた。  

「 あかん。  こないなこと、やったらあかんのんや。 」

 ドン・・・・!

張大人が 真顔で地面を踏みしめた。

「 生きてるもんをヒトが勝手に弄うたらあかん。 絶対にあかん! 」

「 大人 ・・・ 」

「 ・・・ 可哀想や・・・  この野菜らが 可哀想や・・・ 」

「 帰るぞ!  ・・・ 俺たちはここに用はない。 」

「 ああ! オレはな、いびつなリンゴや 熟しすぎたトマトが好きだぜ! 」

「 ミスタ・エッカーマン?  これで我々は失礼する。 」

グレートの声が びん・・・と響き、サイボーグたちはそのまま踵を返した。

「 おや。 もうお帰りですか。  

 お嬢さん 少しお待ち願えれば人工培養した素晴しい大輪の青い薔薇の花束を贈呈しますよ。

 ああ あなたの瞳に優るとも劣らない花を記念に差し上げます。 」

「 わたしは。  野の花になりたい、と思って生きています。 

  ―  これで失礼いたしますわ。 」

フランソワーズはきっぱりと言い切ると 優雅に会釈をした。

「 ・・・・ そうですか。 では上昇専用のエレベーターはあちらになります。 」

相変わらずの高声で カールは彼らに出口を案内した。

「 こちらは少人数用です、別れて乗ってください。 」

 

     ああ これでやっと!  この不愉快な空間から逃れられる・・!

     帰ろうぜ!  早く。 オレたちの 家 へ!

 

誰もがほっとした面持ちで地上へと運ばれて行った。

 

 

「 ふは〜〜〜〜 !!!  やっぱ外の空気はウマイぜ〜〜 

「 ふん、この空気も <自動空気清浄装置> でろ過されたヤツだ。 」

「 ・・・げほ・・・!  」

「 ま、あとちょっとの辛抱やでェ 」

「 そういうことだね。  ああ ゴミゴミしてても乾燥しててもいいや、<普通>の空気が恋しいよ。 」

「 そうだな。  全て自然の示すまま・・・ってことだ。 」

エレベーターから降りると 都市の出口はすぐ目の前だった。

サイボーグ達の足取りは自然に早まった。

「 ・・・?! 」

ジョーが 突然足を止めた。 

 

「 フランソワーズは? 」

 

「 え?  後のエレベーターじゃなかったのか。 」

「 いんや、オレは最後に乗ったが 彼女はいなかったぜ。 」

 

     「  ―  フランソワーズは   ど  こ  だ  !!!  」

 

ジョーの低く抑えた怒声が ドーム中の空気を振るわせた。

 

 

 

 

Last updated : 09,21,2010.        back       /      index      /     next

 

 

 

*******   またまた途中ですが

すみません、終りませんでした。

構成上、ここで切ったので 少々短くなってしまいました <(_ _)>

お宜しければ あと一回、お付き合いくださいませ。