『 銀河より愛♪をこめて  − ( 2 ) −  』

 

 

 

**** ご注意 ****

え〜〜 重ねて申し上げますが ・・・

コレは ぱろでぃ です、お笑い小噺です。

苦手な方、お気に召さない方、どうぞ 引き返してください。

あはは〜〜 こんなんもアリかもね〜と笑い飛ばしてくださる

寛大なお気持ちをお持ちの方にお読み頂ければ幸いです。

 

 

 

 

ファンタリオンという名のその星は 意外なほど地球と似通った環境を持っていた。

文明を育むことができる生物が生息する条件というのは 何処でもかなりの共通点があるのだろう。

 

しっとりとした大気を深く吸い込んで ピュンマは満天の夜空を見上げた。

色の違う月がふたつ、追いかけっこをしている。

星座は勿論見知らぬものばかりだが、その輝きにはどことなく懐かしいものがあった。

 

とても地球より遥か彼方の異世界とは思えないな・・・ ピュンマは遠くに見える水面に目を凝らせた。

明日、ちょっと潜ってみようか。

案外 地球と似た生物とかいるかもしれない。 大人も食糧補給にこころを砕いているし。

・・・ それにしても。

この星の滞在もいつまでになるのか見当がつかなくなってきたものな。

こんなトコであんなコトが巻き起こるとはなァ。

 

 − やれやれ・・・。 どうなるコトやら。

 

思わず唇に苦笑いを浮かべていると、ポンと肩を叩かれた。

「 ・・・ オ〜ス ・・・ 異状ナシ、と。 」

「 了解。 O.K. 引き継ぐよ。 」

「 頼ま。 ・・・なあ、フランのヤツは? また・・・ あの王子さんとこか? 」

ジェットはハデに溜息をつきピュンマをちらり、と見た。

「 うん。 なんだか ・・・ 王宮主催舞踏会、なんだって。

 盛大なお迎えがきてさ。 例の王子サマからの。 」

「 舞踏会〜〜〜??? しぇ〜〜〜 ・・・・ で、ジョ−が一緒ってか? 」

「 いや。 グレ−トが。 すっかり従者になりきって行ったよ。 ジェロニモは用心棒だと。

 ジョ−は ・・・ 今、外回りの見回りのはずだ。 」

「 ・・・・ ったく ・・・ 要領の悪いヤツ ・・・ 」

「 まあ、そう言うなよ。 彼だって悩んでるし。 とりあえず、すべてはフランソワ−ズ任せってとこかな。 」

「 でもよ、あのひらひら王子はかなり強力だぜ? フランに惚れてるな〜絶対に。 」

「 うん、僕もそう思う。 『 フランソワ−ズを信じているから。 』なんてジョ−はぶつぶつ言ってたけど。」

「 ・・・ふん。 愛がすべて、か。 」

「 ・・・ってなればいいけどね。 こればっかりは、どうも・・・ 」

「 違いねぇ。 」

二人は肩をすくめ、イシュメ−ルの外デッキから、彼方にそびえる王城を見やっていた。

心地よい夜風にのって 微かに音楽が聞こえてくる・・・ ような気がした。

 

 

 

「 こんなところにいらしたのですか、姫君。 

 いかがです、舞踏会は楽しんで頂けましたか。 」

「 ・・・ 王子様。 なんだかあがってしまって・・・。 夜風に涼んでいましたの。 」

テラスでほっと息をついていたフランソワ−ズは 微笑んで振り返った。

ふわり・・・とペイル・ブル−のドレスの裳裾が翻る。

結い上げた髪が一筋、白い露わな肩に零れ落ちた。

細い首を飾る宝玉よりも青い瞳が優しく煌いている。

その光の艶やかさには満天の星々も叶わなかった。

タマル王子は 思わず感嘆の吐息をもらし つかつか歩みよってきた。

「 ああ・・・ 亡き母のドレスが本当によくお似合いになる・・・!

 時間があれば姫君のために最高級のものを布地から織らせましたものを・・・ 」

「 まあ、とんでもない。 お母様のドレスを拝借してしまって申し訳ないですわ。

 大切になさっていらしたのでしょうに・・・ 」

「 いえいえ。 母も こんな美しいお嬢さんに着て頂けて喜んでいますよ。

 この星の次の女主人になってくださる方ですから、なおさらでしょう・・・

 父母もこれで安心してくれると思います。 ああ・・・! フランソワ−ズ姫・・・

 貴女の美しさに ・・・ 私も酔ってしまいました。 ほら・・・ こんなに手が熱いのですよ ・・・ 」

「 ・・・ 王子様 ・・・ 」

タマル王子は両手でフランソワ−ズの手を掬い上げた。

「 舞踏会に集まった貴族達も家臣らも 貴女に夢中ですよ。 

 ・・・ああ、私はなんという果報ものだろう・・・! 」

「 あの。 王子様? 」

「 山積みになっている国事にかまけて大切なことを後回しにしてしまった私を

 どうぞ、許してください。 今日はお願いがあってわざわざ舞踏会に来て頂いたのです。 」

「 王子様、お仕事を優先なさるのは君主して当然のことですわ。

 お忙しい中 わたし達の船の修復にまでご協力くださいまして本当にありがとうございます。 」

フランソワ−ズは腰を屈め優雅にお辞儀をした。

「 ああ・・・ やはり貴女は私が思ったとおりの方だ・・・ 」

感に堪えたようにタマル王子は呟くと、すた・・・っとフラソソワ−ズの足元に跪いた。

 

・・・ そして 彼女の手を捧げ持った。

 

「 どうぞ。 私の妃になってください。 遠い世界からやってきた勇敢な姫君。

 あなたと一緒に この星を復活させましょう。 

 私達の 素晴しい子孫が この美しい星に満ちてゆきますよ・・・・ 」

「 ・・・・ は ?? 」

「 あなたは私の理想の女性そのものです。 ・・・ああ、生きていてよかった・・・! 」

王子はフランソワ−ズの両手に頬を当て ・・・ ひどく感激している態である。

流れる涙は熱く、彼は本当にこころから感動しているらしかった。

「 結婚式は全国民がこぞって祝ってくれるでしょう。

 ああ ・・・ もう私には貴女の花嫁姿が待ちきれませんっ! 」

ぐっと彼女の手を引き寄せたと思うと 王子はイブニング姿のフランソワ−ズをがば!と抱きしめた。

 

 − ・・・ あ ・・・ ? ちょ、ちょっと・・・?

 

突然のプロポ−ズに度肝を抜かれていたフランソワ−ズだが

さすがにコレは拙い・・・と気を取り直した。

やんわりと彼の手から身体をはずすと正面からにっこりと微笑みかけた。

 

「 王子様。 どうぞ ・・・ お顔をお上げになって。 そして聞いてください。 」

「 姫君 ・・・ なんでしょう。 」

「 一国を統べる方が そんな軽率な判断をなさってはいけませんわ。

 こんな異世界から来た風来坊などより、貴方に相応しい方はお国にいらっしゃるでしょう? 」

「 フランソワ−ズ姫。 風来坊などと・・・ 

 これは私達の運命 ( さだめ )、 そう宿命の出逢いなのですよ。 」

「 そんなに思い詰めてはいけません。 これは ・・・ 偶然だと思います。 」

「 姫君・・・  ああ、ではお話しますが。 どうぞ こちらに。 」

タマル王子は立ち上がり、フランソワ−ズを室内に導いた。

ダマスク織りに似た帳に仕切られた落ち着いたスペ−スで 舞踏会で流れる音楽が遠くに聞こえる。

 

「 なにか飲み物を・・・。 」

手を打って召使を呼ぶと、王子は差し向かいに座ったフランソワ−ズに静かに語り始めた。

 

 

「 ファンタリオン星には誰でも知っているひとつの伝説があるのです。

 これは 代々王家に伝わってきたもので ・・・ その起源すらわからない古い言い伝えなのですが。

 私達王家の者も国民も みな信じています。 」

「 伝説、ですか ・・・ 」

ええ、と王子は頷いて 懐かしげな笑みを浮かべた。

「 私達は 母の膝でこの伝説を聞き、覚えて育ちます。 それは王族も平民も誰もが同じこと・・・

 古い言葉なのでお分かりにはならないと思います。

 こんな意味の詩 ( うた ) ですが・・・ 」

 

王子は 目を閉じると静かな調子で語りだした。

 

 

 

  その者 赤き衣を纏いて異国の地より来たれり

  黄金 ( きん ) の髪と 蒼穹 ( そうきゅう ) の瞳

  イブの娘にて かの者が 長き冬を悪しき夜を明かし

  大地に春を もたらせり 

  やがて その子等は 天地に満つ 

 

 

 

「 白い魔法使いによってもたらされた永遠の冬は 

 ある日必ず外世界 ( とつくに ) からやって来る 金の髪、赤い服の乙女によって破られる。

 乙女はこの星にとどまり多くの王子・王女の母となり ファンタリオンは再び栄える・・・

 そんな意味なのです。 」

「 ・・・・・・ 」

「 もう お分かりですね。 その乙女とは、フランソワ−ズ姫、貴女の事なのです。 

 これは 運命です、運命に導かれ私達は出会い ・・・ そして

 私は一目で貴女に恋をしました。 

 ・・・ 姫君、どうぞ私の願いを聞き入れてください。 」

「 王子様 ・・・ 」

 

 

 

 

かつ・・・・・ん。

思わず蹴飛ばした瓦礫は随分と遠くまで転がっていった。

 

 − ・・・ ふう ・・・  石ころまで ぼくから逃げたいのかな・・・

 

ジョ−は一人きりなのを幸いに 思いっきり大きく溜息をついた。

 

ああ・・・ せいせいした。

あの船で なんだかみんなに腫れ物に触るみたいに扱われるのは もう沢山だよ。

元気に、いつも通りにしていれば余計に妙な顔されるし。

・・・ ったく ぼくにどうしろって ・・・

 

かっつ・・・・ん

 

石ころがまたひとつ、ジョ−の足元から飛んでいった。

 

 

この星、ファンタリオンは急速に復興を始めていた。

国民達は一丸となって荒れ果てた祖国を懸命に立て直そうとしている。

あのタマル王子は先頭に立ち指揮をとっており、その様はなかなか立派だった。

イシュメ−ルの補修にも快く人手を差し向けてくれた。

 

・・・ ふうん ・・・

ただのお気楽な坊ちゃん王子サマ、じゃないんだな。

 

無茶苦茶な出会いだったので 初めは敵意しか感じていなかったタマル王子を

ジョ−は最近 ちょっとづつ見直し始めていた。

 

ふん ・・・ 案外ヤルじゃないか・・・

それにしても。  大変だろうな。

あの若さで ・・・ これからこの星を背負って立たなくちゃならないんだもの。

ゾアの脅威だって 完全に払拭されたわけじゃないんだ。

うん、いつまた襲ってこないとも限らないし。

片腕になってくれるパ−トナ−が見つかれば随分こころ強いだろうな・・・

・・・ ぼくだったら ・・・ 気が滅入りそうだよ。

 

見回りついでに復旧中の現場などを眺めつつ、ジョ−はいつの間にか王宮の近くまで来ていた。

お城の広い庭園はそのまま森に繋がっていて 出入りはかなり自由である。

ジョ−は星明りを頼りに 森に足を踏み入れた。

 

・・・ でも!

だからって。 フランソワ−ズのことは ・・・ 全然別だぞ!

うん、絶対に。 

そりゃ・・・ 一国の君主の招きだからフランだって無碍には断れなかったのさ。

そうさ、今夜のことは ・・・ ミッションの一部なんだからな。

仕事だよ、 し ・ ご ・ と。

 

ぶつぶつとひとり言を言っているうちに随分と王宮の間近まで来てしまった。

夜風にのって切れ切れにだが 音楽が飛んでくる。

 

 ・・・ あ。 マズイな。 ここはもう王宮の庭園じゃないか・・・?

 

いくら<客分>として遇されているとはいえ不法侵入はするべきではない。

ジョ−が踵を返しかけた時 ・・・

 

散り敷いた落ち葉を踏み拉く音が 聞こえてきた。

馬が二頭、ぱきぱきと小枝をかきわけゆっくりと現れた。

 

「 姫君・・・ 大丈夫ですか。 よろしかったらどうぞ、私のペガサスに ・・・ 」

「 ありがとうございます。 大人しい馬ですから大丈夫ですわ。 」

 

 − グレ−ト? 大丈夫? 

 

 − O.K.  O.K. 〜 羽根のように軽い姫君よ、安心めされ・・・

 

馬クンと姫君とのそんな<ナイショの会話>を知る由もなく

タマル王子は ゆっくりとフランソワ−ズの馬を従え森を分け入って来る。

 

 

 − ・・・ わ ・・・ ぁ ・・・・

 

とっさに身を寄せた木陰で ジョ−は思わず感嘆の吐息をもらした。

艶やかな黒毛の馬にペイル・ブル−のイブニング姿がゆったりと横乗りしている。

馬の歩みにつれ、ゆらゆらと裳裾が揺れ羽織っている紗のスト−ルが翻る。

月明かりに時折きらりと宝玉が透明な煌きを放つ。

馬上ながら巧みにエスコ−トするタマル王子は 濃紫のチュニックが良く映る。

金のフリンジがついた薄いパ−プルのマントがフランソワ−ズのドレスと

好一対をなしていた。

 

ジョ−は ・・・ まさに魂を奪われ呆然と二人を眺めていた。

 

 

「 姫君。 先ほどの話 ・・・ 真剣に考えていただけませんか。 」

「 ・・・ 王子様 」

ペガサスの歩みを止め、先へゆくタマル王子はフランソワ−ズの馬と馬首を並べた。

「 わたしは真剣にお答えしましたわ。 」

「 私も真剣にお願いしました。 ・・・一度では信じていただけないのでしたら

 何度でも何百回でもお願いしますよ。 お望みでしたら ・・・ この地に額づきましょう。 」

 

( あっちゃ〜〜〜 このぼんぼん王子は 本気だわな。 

 ・・・まさか このまま城に拉致・・・ なんてことはせんだろうな? )

 

姫君の馬クンはさかんに耳をぴくぴくと動かしている。

 

( おい・・・ マドモアゼル? 大丈夫かい。 あまりしつこいようなら

 このまま 我輩もペガサスになって飛んで帰るが・・・? )

( 大丈夫よ、グレ−ト。 そんな無体なことをするヒトじゃあないわ。 )

( ・・・なら、いいがね。 ・・・ あ、おい。 あそこ ・・・ ) 

( ええ。 さっきからよ。 誰かしら。 ・・・ ちょっと切り替えてみようかな  )

 

森の梢に視線をとばしたまま、口をつぐんでいるフランソワ−ズにタマル王子は

遠慮がちに声をかけた。

「 姫君? 」

「 ・・・ ああ、失礼しました。 王子様、どうぞお聞きください。

 わたしはあなたのプロポ−ズをお受けすることは出来ませんわ。 」

「 どうして? この星が、ファンタリオンの星が貴女のものにもなるのですよ。

 貴女は王妃として全国民の尊敬と愛を受けるでしょう。

 そして ・・・ 私達の素晴しい子孫たちも母である貴女の愛と勇気を誇りに思うことでしょう。 」

「 王子様。 お忘れですか。 わたし達には 使命があります。

 お分かりでしょう? ゾアを斃し仲間を取り戻すために・・・わたし達はやってきたのです。

 途中で投げ出すことはできません。 」

「 ・・・ では、私の許婚者として無事に使命を果たされるのをお待ちします。

 いや、私もご一緒にゾアとの闘いに赴きます。 」

「 どうぞ冷静になってください。 貴方にはこの星の君主としての務めがおありでしょう。

 それに・・・ 」

フランソワ−ズは ほ・・・っと吐息をつき、言葉を途切らせた。

視界の端に 見覚えのある赤と茶の髪がちらり、と映った。 

 

 − ・・・・ ジョ− ・・・? 

 

 

この星に着いてから、いや、タマル王子と出会ってから、

ジョ−とはろくに話をしていない。

思いもかけなかった状況が展開し、目まぐるしい日々の中、

なんとかヒマをみつけて ジョ−に話しかけようとするのだが・・・

 

「 ・・・ああ、ごめん。 監視の交代の時間なんだ。 」

「 ほら。 お城からのお使いが待っているよ? 」

彼はするすると背を向けてしまう。

 

 − ジョ−! お願い、聞いて!

 

夜も今まで通りに 彼の密やかなノックを心待ちにしていたが、

彼のキャビンはこのごろ早々に明かりを落とす。

王宮でのことや王子とのことをちゃんと話したいのに・・・

出来るだけ王子に協力したいって相談したいのに・・・

 

 − こっちを向いて、ジョ− ・・・ 

 

忙しい中、フランソワ−ズは一番大切な人との隔絶に心を痛めていた。

 

ジョ− ・・・ なにを遠慮しているの。

・・・ ジョ−。 こっちを、わたしを見て?

わたしは あなたを信じてるわ。 あなたも きっと・・・

でも

言葉で言わなくちゃわからないコトもあるでしょう?

 

今晩の舞踏会も出来ればジョ−に付いて来てほしかった。

なのに・・・

 

「 従者? なら、グレ−トと・・・ ボディガ−ドならジェロニモが適任だよ。 」

「 ・・・ええ。 あの ・・・もし、何も予定がないなら・・・ ジョ− ・・・ 」

「 ただのダンス・パ−ティだろ。 ぞろぞろ付いてゆくのも変じゃないか。

 それに ・・・ イシュメ−ルの最終点検も残ってるし。 

 楽しんで来たまえ。 ・・・ きみに相応しい任務じゃないか。 」

「 ・・・ ええ ・・・ わたしには こんなコトしかできないものね。 」

わざとちょっと拗ねてみたのだが ジョ−は笑って席を立ってしまった。

 

「 さあさあ。 早く支度すれば。 国賓が遅刻しちゃ拙いだろ? 」

「 ・・・ ええ。 」

「 さて、と。 ぼくは点検と見回りに行ってくる。 」

「 ・・・ 気をつけてね、ジョ− ・・・ 」

くるり、と向けた彼の背で黄色いマフラ−が怒っているみたいに揺れた。

 

 

 

「 ・・・ フランソワ−ズ姫? 」

「 あ・・・ ごめんなさい。 なんだか ぼうっとしてしまって・・・ 」

ふと口を噤んだきり押し黙ってしまったフランソワ−ズに 王子が遠慮がちに声をかけた。

「 いえ・・・。 急なお願いにお心を乱してしまいましたね。

 どうぞ、すぐに、とは申しません。  よいお返事がいただける日を心待ちにしています。 」

「 王子様。 今晩はもう失礼しなければ ・・・ ほら、迎えが参りましたわ。 」

 

( ジョ−? ごめんなさい! <お迎え>の役をやってくださる? )

 

( ・・・ フラン ・・・ 了解。 )

 

「 え・・・? 」

ずっとフランソワ−ズの顔ばかり眺めていた王子は 驚いて顔を上げた。

数歩先の木陰から 赤い服の青年が現れた。

彼は音をたてずに近づいてくると、フランソワ−ズの馬の轡に手をかけた。

「 姫。 お迎えに参上いたしました。 そろそろ刻限ですので・・・ 」

「 ・・・ああ、 従者くんですか ・・・ 」

 

 

( ・・・ グレ−トかい? ご苦労さま。 )

 

( なんのなんの。 楽しいお守り役だったぞ? )

 

「 ・・・ 姫、 いざご帰還を・・・ 」

「 わかりました。  王子様、それでは今宵は ・・・ 」

「 姫君 ・・・ ! 」

「 明日 ・・・ 拝借した物をお返しに上がりますわ。 」

「 お待ち申し上げています。 ・・・ お返事も。 」

「 ・・・ 今宵はご招待くださいましてありがとうございました。

 とても楽しかったですわ。 ・・・ お休みなさいませ。 」

「 フランソワ−ズ ・・・ いえ、失礼、姫君 ・・・

 ああ ・・・ 貴女をお帰ししたくない・・・! このまま ・・・ 城へ浚って行きたい! 」

「 ・・・ 王子様 ・・・ 」

フランソワ−ズを乗せる馬は思わずピクリ、と耳を震わせ

轡をとるジョ−の手にも 力が入った。

 

( マドモアゼル? ペガサスになってもよいかな? )

 

( フラン?! なんだ、このふざけた野郎はっ! パラライザ−を ・・・ )

 

( ジョ−っ! グレ−ト! いいのよ、大丈夫。 彼は本気でそんなコトする人じゃないわ。 )

 

( ・・・・・・・・ )

 

「 お休みなさいませ、タマル王子様。 」

フランソワ−ズは臆することなく王子を真正面から見つめると 馬上から微笑んで会釈をした。

「 ・・・ ああ。 本当に貴女という方は ・・・ 女王の気品を備えた方だ・・・!

 失礼をいたしました。 お休みなさい、フランソワ−ズ姫。 」

「 では ・・・ これにて失礼をいたします。 

 帰ります、馬を牽いてください。 」

「 畏まりました、姫君。 」

ジョ−も静かに王子に目礼し、ゆっくりと馬首を廻らせ歩み始めた。

 

ファンタリオンの森の上にも 星々が華麗な河の流れを描いていた。

 

 

 

 

「 ・・・ どうぞ。 開いているわ。 」

「 ・・・ まだ 起きてたんだ? 」

控えめなノックとともに まだ防護服のままのジョ−が顔をのぞかせた。

「 あら。 ジョ−こそ ・・・ 見回り・・・じゃあないわよね? 」

「 ・・・ ああ、コレかい。 うん 目が冴えちゃってさ・・・ ついでだから

 上部甲板で星空見てた・・・ 」

「 ・・・ そう。 

 ここの星空、綺麗よね。 

 知らない星座ばかりだけど どんな世界でも星の光ってなんとなく懐かしいわ。 」

「 うん。 」

 

ぽつっと話が途切れ、深夜の静寂 ( しじま ) が二人を取り巻く。

ジョ−は戸口に凭れたまま。

フランソワ−ズはベッドに腰をかけたまま。

ひそり、とも動かない空気の中で ふたつの視線だけが 

激しくぶつかり絡み合い ・・・ 悲鳴をあげている。

 

「 ・・・あの王子さまの ・・・ その、お願いを聞き入れてあげたら。」

 

先に目を逸らせたのは ジョ−だった。

かたん、と戸口から身体を引き剥がし、静かに室内にはいって来た。

 

「 ・・・ ジョ−?? ・・・ 本気なの・・・ 」

 

干上がった声が フランソワ−ズの唇から漏れた。

ジョ−を追う瞳だけが 大きく見開かれたまま透明な玻璃の膜にみるみるうちに覆われてゆく。

 

 ・・・ カサリ 

 

震える身体を支えようと思わず揺れた彼女の手が 拡げられていたドレスに触れた。

殺風景な狭いキャビンには不似合いな華やかな色彩がぱっと目に映る。

ジョ−は じっとその豪奢なドレスに見入っていた。

 

「 ああ、本気さ。 こんな巧い話ってそうそうころがっているモノじゃないよ?

 きみには そんな優雅なドレスや豪奢な宝石に身を埋めているほうが似合うよ。 」

「 ・・・ ジョ− ・・・? 」

「 それにさ。 あの王子サマ。 なかなか真面目そうなヤツじゃないか?

 きっと 大事にしてくれるよ。 ・・・ 愛してるって真剣に言ってたし。 

 こんな ・・・ いい加減ではっきりしないヤツよりもずっとマシなんじゃないか・・・ 

 立派な血筋だそうだし。 どこの馬の骨とも知れないオトコよりきみには相応しいよ。 」

「 ジョ− ・・・ なんて・・・こと ・・・ 」

「 ミッションのことなら、心配しなくていいよ。 きみが幸せになるなら・・・ みんなも納得するさ。 」

「 わたしが 喜んで舞踏会に行ったと思っているの?

 皆がそれぞれの任務を果たしているのに・・・ ひとりで楽しくすごしてきた、と思うの・・・ 」

「 ・・・ 楽しそうに見えたけど。 」

「 ・・・ ジョ− ・・・ 」

 

言葉とは裏腹に彼の声のト−ンはどんどん下がってゆく。

所在なさげに突っ立っていたがやがてジョ−は彼女にはくるりと背を向けてしまった。

「 ああ この星の夜空も綺麗だね。 きみには本当にぴったりの世界じゃないか? 」

「 ・・・ どうして ・・・? 」

「 ・・・ え ? 」

「 どうして。 どうして ・・・ 今晩の、ううん、あの王子様に会ってからのジョ−は

 そんなに意地悪なの。 わたしに意地悪して ・・・ 楽しい? 」

「 きみは ・・・ 」

フランソワ−ズの涙声に ジョ−はやっと振り向いた。

目尻に涙を押し込んで顔を上げたフランソワ−ズは 小さく息を呑んだ。

 

 − ・・・ あ ・・・? 涙 ・・・ そんな、まさか・・・

 

ジョ−の瞳が一瞬潤んだ、と思ったのだ。

 

「 どうせ・・・ きみはいつか行ってしまうのだろう。

 ぼくを置いて ・・・ 帰ってこないんだ。

 ぼくが愛するものは みんな ぼくから ぼくの手から 零れおちてゆくんだ・・・ 」

 

ジョ−のしっかり握った拳は小刻みに震えている。

ぽとり、と彼の足元に頬をつたって ・・・ 涙が落ちた。

 

「 そういう運命なんだ。 そんな星の下に生まれたのさ・・・ 」

「 ジョ− ・・・ ! 」

フランソワ−ズはぱっと立ち上がると ジョ−の手を取った。

いつもは温かい彼の手が すこし冷たくこわばったカンジがした。

 

「 ジョ− ・・・ あなたが全てのモノを失っても ・・・ わたし がいるわ。

 わたしは あなたの側から離れない。 わたしは ここにいる。 」

「 フランソワ−ズ ・・・ 」

「 信じて、ジョ−。 あなた、ずっと側にいてくれるって言ったでしょう。

 わたしもよ、わたしも ・・・ 何があっても離れないわ。 」

「 ・・・・・・・ 」

「 ・・・たとえあなたがイヤだって言っても わたし、側にいる! 」

ジョ−のセピアの瞳がじっとフランソワ−ズに注がれた。

彼は 一言も発しなかったが 彼の瞳が全てを物語っている。

 

・・・ 信じて  いいんだね。

 

ええ、ええ。 そうよ、ジョ−・・・

 

亜麻色の頭が縦に動く度に 透明な水滴が飛び散った。

 

「 だって ・・・・ 愛しているのよ。 」

 

ジョ−は黙ったまま フランソワ−ズを抱き締めた。

・・・今、彼はどんなに彼女を愛しているかを こころから噛み締めていた。

 

フランソワ−ズはジョ−の足元に落ちた一粒の涙に

どんな宝玉よりも豪華なドレスよりも心を奪われた。

 

「 どんなことがあっても ・・・ 離れない ・・・ いや、離さない。 」

「 愛してるわ、ジョ−。 わたしはいつも一緒よ・・・ 」

「 ・・・ フランソワ−ズ ・・・ 愛してる ・・・ 」

 

キャビンの狭い窓からのぞく夜空をゆっくりと水っぽい色の月が横切っていった。

 

 

 

Last updated: 06,13,2006.              back     /     index     /     next

 

 

 

 

*****  またまた途中で ひと言 〜

わあ・・・ ついつい悪ノリしまして 終わりません〜〜

すみませぬ、あと一回 続きます。 どうぞお付き合いくださいませ <(_ _)>