『 銀河より愛♪をこめて − (1) − 』
そうよ ・・・ この宙 ( そら ) の向うに。
あの星の彼方に ・・・・
フランソワ−ズは満天の星をいだいた夜空に ほう・・・っと吐息を投げた。
すこしだけ湿り気をふくんだ風が ぱさり、と彼女の髪を背に流してゆく・・・
穏やかな夜の帳が ここギルモア邸をやさしく包んでいる
こんな夜が あの人のもとにも訪れているといいのに。
どの空にも星が瞬くように どうぞ優しい夢があの人の上に舞い降りていますように。
さあ ・・・ もう寝なくちゃ。
・・・ねえ。 また、いつか。
また どこかで ・・・ 逢えたら いいわね
振り返った邸の窓に どこにも灯は見えない。
そっと抜け出してきた自室からも ジョ−の穏やかな寝息が聞こえるだけだ。
・・・ おやすみなさい よい夢を
夜風が弄っていったネグリジェの襟元をかきあわせると、
フランソワ−ズは足音を忍ばせジョ−の隣へと戻って行った。
梅雨入りを目前に控え、岬の洋館・ギルモア邸の頭上には
銀河が 次第にその勢いを増して瞬きはじめていた。
「 これが今までの受信記録さ。 」
ピュンマはばさり、と紙の束をテ−ブルの上に置いた。
ソフトな内装デザインのミ−ティングル−ムで サイボ−グ達の視線が
一斉に堆い書類に集まった。
「 ふん・・・? ペ−パ−か? 」
「 おうおう ・・・ これはまたオ−ソドックスであるな。 」
「 んだよ〜 そこはサルの惑星かよ? 」
「 ・・・ジェット! 」
てんでな感想は概ね好意的ではなく、はっきりと侮蔑の色を示したジェットに
フランソワ−ズは叱責の声を上げた。
「 ・・・ わりィ。 」
「 そこまでは行かなくても・・・・。文明の程度は、どうかな。」
ジョ−が遠慮がちに付け加えた。
「 う〜ん・・・。 ただ、音声による会話がすべてじゃないってこともあるし。
なにかの事情で通信の手段が限られているのかもしれない。 」
ピュンマはぱらぱらと記録紙を捲った。
「 とにかく何かがいることだけは確かだよ。 」
「 フランソワ−ズ。 なにか ・・・ 聞こえるかい。 」
ジョ−がそっと隣のフランソワ−ズを振り返る。
「 ううん ・・・ 全然ダメ。 ノイズも聞こえないの。
もう少し近くなったらあの石の中が見えるかもしれないけど・・・ 」
「 そうか。 ではともかくこのまま接近するしかないな。 」
アルベルトはゆっくりと立ち上がった。
「 あの石から パルスが出ていることは確認できたしな。
それを頼りに行けば 問題の星やゾアについても手がかりが見つかるかもしれん。 」
「 そうだね。 ずっと流れている救助要請信号の信憑性は高いし。 」
「 弱きを援けるのは騎士の務め。 乞われた援けを無視するのは我らのコンセプトに
反するぞ。 われら誇り高き地球のサイボ−グ戦士 ・・・ 」
グレ−トがまたまた芝居がかったセリフを吐く。
その言い回しは大袈裟だが 彼の真意はサイボ−グ達共通のものであったから
みな、笑みを浮かべ頷いた。
張詰めていた雰囲気が すこし緩まった。
「 ホッホ。 グレ−トはん、実は 捕らわれの美姫 を期待してはるやろ。 」
「 なんの。 我らが姫君は ・・・ こちらに。 」
慇懃な素振りでグレ−トはフランソワ−ズに会釈をしてみせる。
「 光栄ですわ、騎士どの。 」
にこやかにフランソワ−ズも応酬した。
「 ・・・ では航路をその星 ・・・ ファンタリオンへ進めよう。 」
「 オッケ−。 じゃあ・・・ このままイシュメ−ルを進めてゆくよ。 」
勢いよくジョ−も立ち上がった。
「 お願いね、ジョ−。 わたしもピュンマと一緒に通信を拾うから。 」
「 ・・・ 出発だ。 」
「 了解 ! 」
アルベルトの静かな声に全員が意気込んで応えた。
やがて イシュメ−ルは翼を広げ未知なる宇宙空間をさらに進んでいった。
・・・ ほんとうに来たのね。 不思議な空の色・・・
フランソワ−ズはイシュメ−ルの艦橋の広い窓から 目路はるか拡がる光景に見とれていた。
この身体になって とんでもない事件やら事故、ミッションなどで
いろいろな場所に出かけたけれど、まったくの<異世界>は初めてである。
慣れ親しんだドルフィン号ではなく、これも異世界の 船 を操り遥か星の門をくぐりぬけ
・・・ ここまでやって来た。
連れ去られたイワンを取り戻すため、やはり被害者である異星の少年に協力するため。
そして 旅半ばで受信した救助要請信号に応え、ゾアの侵略に苛まれている星を救うため・・・
この異世界に辿りついた。
片道切符かもしれない。
そう、帰り道のことなど ・・・ 誰も考えてはいない。
捨ててきた懐かしい世界への想いにちりり、と胸が痛む。
ううん・・・ 後悔なんかしてない。 そう、これからもしないわ。
わたしは どんな状況であっても ジョ−と一緒にいることを選んだのだもの。
この星々の彼方が わたしの ・・・ わたし達の墓所となっても後悔はしないわ。
・・・ そう。 後悔は ・・・ しない ・・・・
だって
・・・ ジョ−がいるから。
そうよ、懼れるものは 何もありはしないわ。
だって
・・・ ジョ−と一緒だから。
フランソワ−ズは手を伸ばしつう・・・っと強化ガラスに指を滑らせた。
ちょっと、ね。 そう、ちょっとだけ。 旅先でセンチメンタルになっていただけ。
そう・・・ それだけのことよ・・・
「 ・・・ なにを 見ているのかい。 」
「 ・・・ ジョ− ・・・ 」
聞き馴れた足音と一緒に 穏やかな声が、長い腕が、ふわりと彼女を包んだ。
・・・ ああ ・・・ ジョ−の におい ・・・
馴染んだ香りがフランソワ−ズの身体に、こころに、ゆっくりと染み透ってゆく。
「 ホ−ムシック? それとも 何か・・・ 」
「 ううん ・・・ なんでもない。 ただ、空が綺麗だなぁって・・・ 」
「 ふふふ・・・ きみらしいね。 えらく熱心に見てるから なにかサ−チしているのかと思った。 」
「 残念ながら何にも・・・。
景色はきれいなんだけど。 何か特別なシ−ルドがかかっているようね。
肝心な所は全てシャット・アウトよ。 」
「 ふうん・・・ わざわざ隠すってことは。 」
「 そうよね。 あの<石>の内部には確かに何かが居るわ。
不思議な紫色の靄で覆われていて・・・ でも空洞じゃない。 」
「 もっと近くに行けば少しは判るかもしれないね。 ス−パ−ガンで壊せるかもしれないし。」
「 そうね。 ともかくあの石がある所にもっと近づいてみないと、ね・・・ 」
「 じゃ ・・・ それまでは しばしの休息時間ってことで・・・ 」
きゅっとジョ−の腕に力がこもり、柔らかな身体が彼に引き寄せられる。
やがて ・・・ ジョ−の唇が首筋に熱い刻印を押してゆく。
「 ・・・ あ・・・あぁ・・・ だめよ、ジョ−・・・ こんなトコで ・・・ 」
「 誰も来ないよ。 今は ぼくが監視担当だもの。 みんなキャビンで寝てるさ。 」
「 ・・・ だからって ・・・ あ ・・・ 」
ジョ−は彼女を後ろから抱え込んだ姿勢のまま、するりと長い指を襟元から差し込んできた。
首を捻じ曲げたフランソワ−ズの唇は たちまち彼に塞がれる。
微かな音とともに防護服のジッパ−が下がった・・・
「 ・・・だめ ・・・だってば ・・・ ぁ ・・・ 」
広げられた赤い服のうえに白く輝く肢体が顕になってゆく。
白磁の肌に 空の紫色が落ち淫猥な影を描いている。
そのコントラストがジョ−の衝動をますます刺激した。
「 ああ・・・ この星の空の色がきみの肌に照りかえって ・・・ きれいだ・・・! 」
「 ・・・ やだ ・・・ あんまり見ないで。 こんな明るいところで・・・ 」
「 ・・・ フラン ・・・ フランソワ−ズ ・・・ 」
「 ぁ ・・・ ああ ・・・ ジョ ・・ ゥ ・・・・ 」
重なる影は お互いにほんの僅かな穏やかな時間を貪りあった。
明日は 明日の夜は。
こうして二人で迎えられる保証などどこにもないのだ。
ファンタリオン星の夜は 静かに更けていった。
あちこちに積み重なった瓦礫から煙が上がっている。
サイボ−グ達のス−パ−ガンに倒れたロボットは しばらくはバチバチと火花を飛ばせていたが
やがて その全ての動きを静止した。
油断なく銃を構えたまま、遠巻きにしていた彼らに ほっと安堵の空気が流れた。
問題の輝石の前に立ちふさがっていたのは ロボットだった。
ゾアの分身、と睨み挑んだモノは単なる傀儡にすぎなかった。
サイボ−グたちの本当の敵は まだまだその姿を微塵もみせてはいない。
拍子抜けの気分も漂ったが、目の前の敵を斃したことは確かだ。
そして。
目の前には 問題の大きな石、輝石がある。
・・・ この石に なにが ・・・
全員同じ思いなのだろう、誰が言うとも無く包囲の輪がじわりと狭まった。
この石から正体不明の敵、その情報の一片でも拾えるかもしれない。
「 ・・・どう。 なにか 見えるかい? 」
「 ・・・ ダメ。 何か内部にシ−ルドが張られているわ。
相変わらずもやもやした煙みたいなモノが渦巻いていることしか感知できない。 」
ジョ−の問いに フランソワ−ズはじっと眼を凝らして答えた。
「 こうして間近で見ると 半透明の水晶みたいだね。 」
「 ちょっくら触ってみるか? 」
「 あ、よせよ! 表面に何が付着しているかわからないよ? 」
「 へん、細菌なんかオレ様に手出しはできねえよ。 ・・・ オラ? 」
ピュンマが止める間もなく、ジェットが輝石の表面へ無造作に手を伸ばす。
「 なんでもねえぜ? つるつるして ・・・ お? ちょっと動くか? 」
「 気をつけろ。 」
アルベルトが右手を油断なく構える。
「 おうよ。 ・・・ あ? なんか・・・ 亀裂か? 」
「 何か ・・・あっ! よけてっ! 」
フランソワ−ズの叫びがあがり、ジェットがぱっと身を伏せたのと同時に
パン ・・・ ッ !
小さな破壊音をともなって一条の光線が輝石の亀裂部分から飛んだ。
「 ・・・ あっ・・・・ !!! 」
「 フラン? フランソワ−ズっ!! 」
光線はサイボ−グ達の間を真っ直ぐに突き通りフランソワ−ズを直撃した。
たちまち小柄な身体が宙に弾き飛ばされ ・・・ 同時に赤い風がメンバ−達の間を
吹き抜けた。
「 ・・・ 大丈夫か?? 怪我は ・・・? 」
「 あ・・・ あ、ああ ジョ−・・・! ありがとう ・・・ 」
とっさに加速しジョ−は彼女が大地に叩きつけられる寸前に抱きとめた。
「 ね、怪我は? 」
「 え・・・ええ、平気・・・みたい。 あれはショック・ウェ−ブだけだったようね。 」
「 そうかい? 本当になんともない? 」
「 ええ。 ほら・・・ 防護服の表面がちょっとヨレただけよ。 」
「 ・・・ 中味は ・・・ 今夜 ぼくが調べるから。 」
「 ・・・ ジョ−! みんながいるのよ ・・・ 」
こそり、と耳元でささやかれた言葉にフランソワ−ズは真っ赤になった。
「 さあ・・・ ちょっとここで休んだ方がいいよ。 ほら・・・ この岩が椅子みたいだし。 」
ジョ−は自分のマフラ−を外し折り畳むと手近な岩の上に敷いた。
「 ええ・・・ ありがとう、ジョ−。 」
「 ・・・ 割れるぞ! 全員構えろ。 」
アルベルトの声に全員が輝石に注目する。
「 ヒョウ〜〜 いよいよタマゴが孵りますってかよ? 」
「 ・・・ シッ!! 」
サイボ−グ達は包囲の輪を広げつつ油断無くスパ−ガンを構える。
ジョ−は咄嗟にフランソワ−ズを後ろ手に庇いどんどん亀裂が増えてゆく輝石を睨み据えた。
表面に大きくいくつもの亀裂が走り、そこから靄とも煙ともつかないものが噴き出し始めた。
密度が濃いのだろう、周囲に薄紫の靄が重く沈み立ち込め・・・ やがて輝石はぱっくりと割れた。
・・・ なにかが、その中心にすっくと立ち上がった。
割れた輝石を踏み拉き、呆気にとられているサイボ−グ達の前に一歩進み出たのは ・・・
― 薄紫のマントにプラチナ・ブロンドの髪を揺らせた 王子様 だった!
「 ・・・ ありがとう。 あなた達が私を救ってくれたのですか。 」
「 ・・・ どひゃ〜〜〜 オトコかよ? 」
「 う〜む ・・・ 捕らわれの姫君、がお約束だと思っていたが。 」
「 残念やったアルな〜 ・・・ 」
「 ・・・ 待て。 敵の罠かもしれん。 ・・・ 003、見てくれ。 」
全員がさっとフランソワ−ズに道を開けた。
「 了解。 ・・・え? えええ??? 」
サ−チしているフランソワ−ズ本人、そして並み居る歴戦のサイボ−グ戦士たちを尻目に
輝石から現れた人物はマントを翻しゆったりとフランソワ−ズの前に進み出た。
慌てて彼女の前に立ちふさがるジョ−を 軽く押し退けると ・・・
彼はぱっとその地に跪き ・・・ フランソワ−ズの手を取った!
そして ・・・
「 あなたがこの勇者たちを統べる方ですか。 美しい姫君・・・
わたくしを救い出してくださった勇敢な姫君に こころから感謝いたします。 」
明瞭な声で礼を述べると彼は 恭しくその白い手に口付けをしたのだった。
「 ・・・・・・・!!!! 」
声にならないどよめきがサイボ−グ達の間にはしった。
「 あ・・・ いえ、あの・・・ 」
「 私はこの星の王子、タマル・ファンタリオンです。
憎き侵略者ゾアにあの輝石に封じ込められていました。 」
「 ・・・まあ、ゾアに? 」
「 はい。 奴等は私の父母を亡き者にし、国民達に魔法をかけ奴隷として
使役していたのです。 私はあの輝石の中でどうにもすることができず・・・ 」
「 あ・・・あの、王子さま? 」
手を取られ身体を固くしていたフランソワ−ズはよよよ・・・と泣き崩れるタマル王子の肩に
そっともう一方の手を当てた。
「 あの ・・・ どうぞ、お顔をお上げになって・・・ 」
「 ありがとうございます。 姫君、お名前を伺うご無礼をお許しください。
私は姫君をなんとお呼びすればよいのでしょう? 」
王子サマは白い歯をみせ、にっこりと笑い ・・・ 身をおこすと
さっとフランソワ−ズの肩を抱いた。
「 ・・・あ ・・・ コイツぅ〜 」
「 ん? おお・・・従者くん、心配はいらないよ。 きみのご主人様は
私に任せてくれたまえ。 」
「 ・・・な、な、なにを ・・・! 」
「 さあ・・・ 姫君? 」
驚きと怒りで防護服よりもまっかっかになっているジョ−の存在など歯牙にもかけず
タマル王子は優しくフランソワ−ズの手をとり巧みにエスコ−トする。
「 あ・・・ あの。 わたしは フランソワ−ズ・アルヌ−ルと申します。 」
「 フランソワ−ズ姫・・・ ではファンタリオン星の君主として
感謝と歓迎のご挨拶を・・・ 失礼。 」
「 ・・・ ぁ ・・・・ ! 」
さっと薄紫のマントを翻すと タマル王子はフランソワ−ズを抱き寄せ・・・
− その唇をうばった。
「 ・・・こっ・・・・ ! 」
「 わ ・・・ ★★★ 」
「 ・・・ やった ・・・・ 」
「 くっそっォ〜〜〜 か〜そ〜く・・・ 」
やっと解凍したジョ−が 怒りにまかせて奥歯を噛み締めようとした、その時・・・
わぁ〜〜〜 タマル王子様 ばんざ〜〜〜い !!
彼らの背後から群集のどよめきが響いてきた。
「 な? 今度はなんだ?? 」
「 なんや、えろう大勢さんみたいアルね〜 」
「 まさか ・・・ ゾアの ? 」
「 急襲か? 油断するな。 」
加速し損ね踏鞴をふみ、あげくひっくり返ったジョ−になど誰も目もくれない。
「 ん? ああ・・・。 あれは私の国民達です。 私の解放を知って
歓喜の声を上げているのですよ。 ・・・私はゾアの魔法の呪文を解くキ−でしたから
私の解放と共に 今 彼らも完全に自由の身となったのです。 」
「 まあ、よかったですわね。 」
「 はい。 ファンタリオンの永遠の冬は終わりました。
悪い魔法使いは去り、春がやって来ました。
姫君、 貴女はまさに春の使い。 私達の素晴しい春が 始まるのです。 」
「 魔法使い、ですか・・・ え ・・・? <私達> ? 」
「 そうです。 さあさあ、参りましょう、フランソワ−ズ姫。
私の城に皆さんをご招待いたします。 姫君とその従者諸君。 」
タマル王子はフランソワ−ズを抱きかかえるようにして歩き始めた。
「 もうすぐ私の馬車が迎えに来ます。 ほんの少し徒歩( かち )にてお願いできますか? 」
「 ・・・ はぁ ・・・ 」
立て板に水・・・としゃべりまくる王子に圧倒され、フランソワ−ズは彼の言うなりである。
「 では。 姫君、お手をどうぞ。 」
王子はすい、とフランソワ−ズの手を取り軽やかな足取りで歩き始めた。
そのあまりの優雅さに ・・・ サイボ−グ達は呆気にとられたままぞろぞろと付いていった。
やがて澄んだ鈴の音とともに 王子の言葉通りに白馬が馬車を曳いてやってきた。
いや、飛んできた。
< 白馬 > はすべてペガサス、そうみんな優雅な翼をもっていた。
「 ひょえ〜〜〜 マジ、馬車かよ〜 」
「 へえ・・・・ ペガサスって本当にいるんだ〜 」
「 しっ。 我らは気品高きフランソワ−ズ姫の7人の従者。
品格をもって堂々とかの城へお供いたそう。 」
グレ−トは荘重な調子で述べさっと身を屈め 馬車への道に二人を通した。
「 オオ。 さすがアルね〜 グレ−トはん。 」
「 ・・・ 7人の従者、か。 巧いコト言うねえ・・・ 」
「 7人の小人と白雪姫か? ハイホ〜♪ハイホ〜♪・・・ってか。 」
「 ばか、墓穴を掘るな。 」
「 そうアル。 わてらは ほれ、あの ・・・そうアル! 七人の侍 アルね。 なあ、ジョ−はん? 」
「 ・・・え? あ、ああ・・・ ああ・・・ そう? そう、だね・・・ 」
どん、と大人に背中をどつかれ、ジョ−はようやっと我に返った。
「 しっかりしなはれや。 そんなこっちゃ、ほんまにあの王子さんに取られてしまうデ。 」
「 と、取られる?? 」
「 まあまあ・・・ ココは大人しく<7人の従者>になってお城とかへ
乗り込んでみようではないか。 ・・・ゾアの罠、とは思えんし。 」
「 ああ。 ただし。 油断はするな。 ・・・いいな、ジョ−。 しっかりしろよ? 」
「 ・・・あ。 うん ・・・ ごめん。 」
アルベルトにまではっぱをかけられジョ−はなんだかますます意気消沈してしまった。
フラン・・・
なんで。 どうして。
・・・あんな ・・・ 初めて会ったひらひら野郎に素直に付いて行ってしまうんだ?
フラン、 フランソワ−ズ・・・!
ぼくと一緒なら・・・ってあの言葉は ウソだったのかい。
どこへでもついて行くわ・・・って きみの言葉を信じていたのに・・・!
愛してるって あの言葉は
あなただけって あの眼差しは
一緒に昂まり昇りつめたあの瞬間は
・・・ みんな みんな ウソだったのかい ・・・
・・・ああ だめだ、だめだ・・・こんな女々しくては
ますますフランに嫌われてしまう。
でも。 でも・・・ どうして。
いや・・・ そんなコトはありえない。 フランに限って
ぼくは きみを信じているよ ・・・
− ・・・・ フランソワ−ズ ・・・ !
ジョ−の声にならない叫びは 薄紫のファンタリオンの空に
虚しく吸い込まれていった。
王子様の<お城>までの道程はあっと言う間だった。
・・・いや、ペガサスの足 ( 翼か? ) が速かったのかもしれない。
たちまちサイボ−グ達の目の前に 壮麗なお城が姿を現した。
「 ひょぅ〜! こりゃ・・・本当に<お城>だぜ! 」
「 うん? ああ・・・ 本当だな。 」
「 へえ・・・ ゴシック様式、っぽいね。 なんだか地球の城みたいだ。 」
「 さよう。 ・・・う〜ん・・・ 我輩はどこかで見覚えがあるぞ? う〜ん・・・ 」
「 ・・・ ディズ〇−・ランド だ。 シンデレラ城。 」
「「「 あ、な〜る!! 」」」
ぼそり、と呟いたジェロニモ・Jr.に全員がしっかと頷いた。
白馬に曳かれ馬車は軽やかに王城の正面に横付けされた。
「 タマル王子殿下 お帰りなさいませ。 」
ずらりと居並ぶ家臣らが一斉に口上を唱えざ・・・っと頭を下げた。
「 うん、ただ今帰った。 皆の者、心配をかけたな。 」
先頭の馬車から降り立ったタマル王子は ゆうぜんと挨拶を返している。
「 紹介しよう。 私をそして皆をすべての国民をゾアの魔法から解き放ってくださった
勇敢なフランソワ−ズ姫と その従者諸君だ。 ・・・ さ、 姫君 ・・・ 」
「 ・・・・・ 」
差し伸べられた王子の手にその白い手を預け フランソワ−ズは当惑しつつも
優雅な足取りで 並み居る家臣らの前に降り立った。
<7人の従者>らも しっかりと後ろに居流れたのは言うまでも無い。
「 はるか星々の彼方からやって来て下さった方々のお力のお蔭です。
フランソワ−ズ姫、 改めて御礼申し上げます。 」
「 あ ・・・ あの ・・・・ 」
タマル王子は 優雅に身をかがめるとフランソワ−ズの白い手に
恭しく口付けをした。
「 ・・・ おお ・・・ なんとお美しい ・・・ 」
「 タマル王子 よくぞご無事で ・・・まあ、可愛らしい花嫁様をお連れになって ・・・ 」
「 よかった ・・・ ! これで ・・・ ファンタリオン星は安泰じゃ・・・ 」
ど・・・っと安堵と歓呼と ・・・ かなりの早とちり?のどよめきが家臣たちの間から
湧き上がった。
白髪頭をふりふり感涙にむせんでいる老重臣も多かった。
「 ちょっ! な、なんだよ、なんなんだ?? え?」
従者の列で赤毛のノッポが地団駄を踏んでいる。
「 しっ。 ここは ・・・ 押さえろ。 コトを起こすには 多勢に無勢だ。 」
「 ・・・ それにフランソワ−ズは あの王子の許だ。 」
左右からがっしりと腕を押さえられノッポは最後尾にいた青年を振り返った。
「 おい! ジョ−! どうにか ・・・ しろよっ! 」
「 ・・・・・・・ 」
「 おい! 009っ! 」
009と呼ばれてもジョ−は唇を噛み締め ただじっと立ち尽くしていた。
Last
updated: 06,06,2006.
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**** 途中ですが一言 ・・・ もう一回続きます〜〜〜〜
重ねて申し上げますが。 ぱろでぃです、お笑いです 〜〜〜
お気に召さない向きはどうぞ引き返して下さいませ。
形は超銀ですが・・・キャラは完全に平ゼロですね〜 ジョ−君も4氏も8クンも♪
・・・・王子サマ登場のシ−ン、B.G.M. は ウェ−バ− の 『 薔薇の精 』 ♪♪
あの窓からグラン・ジュッテで登場する場面のノリであります(^_^;)