『 ゆめの浮橋 − (2) − 』
「 ・・・ くそ! イシュメ−ル・・・発進するぜ! 」
ジェットがやけっぱちに近い声で艦長命令を復唱した。
< ・・・ 破壊完了! ・・・ 内部ハッチを・・・開けて・・・ く ・・ れ >
「 ・・・あ! メイン・ハッチを開けて! 009が! 」
全員に 切れ切れの脳波通信が届いたのと同時にフランソワ−ズが叫び声をあげた。
「 !! 了解! 」
「 うぉ?? 発進、中止!! 」
「 気がつかなかったよ。 ジョ−は何時の間に戻ってきていたのかな。 」
ピュンマが慌てて操作しつつ、首を捻っている。
「 この時間だとヤツは酸素ボンベの使用限界までいったな。 加速してぎりぎりに帰還したのだろう。 」
「 う〜む・・・無茶やりおって。 我輩はボンベ充填の準備をしておこう。
ついでにご本尊も回収してくるから。 しばしお待ちを・・・ 」
「 007、お願いね。 008、スタ−・ゲ−トまでの距離は? 002、船体制御に集中して。 」
「 了解! ・・・うわ・・・かなり引っ張られてるぜ。 」
「 うん・・・ すごい吸引力というのかな・・・ これは宇宙のダスト・シュ−トみたいだよ? 」
「 ははは ・・・ 掃除機かよ? 」
<< ジョ−を船内に引っ張り込んだ! ヤツは無事だぞ〜〜! >>
スピ−カ−から流れるグレ−トの声も弾んでいる。
「 よォし! これであのCGの巣に突入できるぜ! 」
ジェットは、早くもパイロット・シ−トでごきごきと指を鳴らしている。
「 おい、逸るな。 009と協力してゆけ。 ・・・ アレはともかく未知の世界なんだからな。 」
「 そうね、004の言う通りだわ。 中がどうなっているのか 全然<見る>ことができないのよ。 」
フランソワ−ズもコンソ−ル盤の前で不安な面持ちだ。
「 ・・・ うん ・・・ フランソワ−ズが無理ならこっちも当然ダメなんだけど。
レ−ダ−やソナ−は もう滅茶苦茶な数値を吐き出すんだ。 あそこにはなにか強力な磁場か
バリアがあるね。 」
さんざん苦心して操作していたパネルを ピュンマはぱん!と叩き 両手を揚げた。
「 これ以上は お手上げだよ。 ・・・ もう 運を天に任せるしかないね。 」
「 ほう? お前さんでもそんなコトを言うのか。 数字で割り切れないものには
関心はないのかと思っていたぞ。 」
「 やだな、アルベルト。 僕だって ・・・ 」
「 ・・・ お〜や♪ ピュンマ君、 それでは最近書き上げた我輩の新作を進ぜようぞ? 」
「 グレ−ト・・・! 」
相変わらずのオヤジ声とともに コクピットのエア・ドアが開いた。
「 艦長! 諸君! 拾い物をしてきたぞ ! 」
わ・・・っと歓声がコクピットにみちた。
グレ−トに肩を借りて、 ジョ−は懸命に脚を踏みしめ歩む。
これといった外傷は見当たらないが、消耗しきっている様子だった。
「 ・・・ 艦長。 帰還しました。 」
「 ご苦労様。 着席して002の補佐をしてください。 」
「 了解しました。 」
二人が見つめあっていたのは ほんの数十秒だった。
けれど
今の二人には それで充分なのだ。
< ・・・ ありがとう! 大丈夫? >
< 大丈夫! さ・・・ 行くよ! >
009は真っ直ぐにサブ・パイロット・シ−トへ歩み寄ると ストン、と腰を下ろした。
「 ・・・ やるな。 さすがだぜ! 009。 」
― グラリ ・・・!
イシュメ−ルの船体が 一瞬大きく揺らいだ。
「 ・・・っとォ! いけね、ますますあのCGの巣に引っ張られてる。
009、ちょいとヘルプ頼ま。 オレはともかくコイツ全力直進させるから。 」
「 O.K. バランス調整は任せとけ。 」
「 お前よ? その・・・ 大丈夫か? 消耗してるんでねェの? 」
「 ふん、甘くみてもらっちゃこまるな。 ぼくのネエルギ−効率をしらないな? 」
「 わ〜かったって! そんじゃ、しっかり頼むぜ。 」
「 オ〜ライ。 」
イシュメ−ルのコクピットには俄かに心地よい緊張感が漲ってきた。
やはり 彼らは全員揃ってこそのゼロゼロナンバ−・サイボ−グ なのだろう。
頼もしい仲間たち・・・! さあ、早く皆でイワンを取り戻すのよ!
フランソワ−ズは唇には笑みを結び、仲間達を見回していたがすっと片手を上げた。
「 スタ−・ゲ−トに突入します。 どんな状態になるか皆目不明。
全員防御シ−トを下ろししっかりセイフティ・ベルトを締めて万全の体勢をとるように。 」
「 了解! 」
頼もしい声が方々から返って来る。
「 では。 行きましょう! 」
イシュメ−ルはその優美な姿をするすると 極彩色の光の門に吸い込まれていった。
・・・・ グラリ ・・・!
イシュメ−ルの船体が大きくゆれ、みしりと不気味な軋りすら感じられた。
スタ−・ゲ−トという全員が初めての、そして強烈な体験をやっと終えたところだった。
サイボ−グ達は防御シ−トの中でまだ 朦朧としたアタマを抱えていたが、強烈な衝撃に
全員が跳ね起きた。
「 ! 今度は なんだ?? ・・・ あ! あれはダガス軍団!! 」
「 ・・・ !!! 008! 現在位置の詳細を! 全員戦闘配置につけ! 円形銃座、開放! 」
ジョ−がメイン・スクリ−ンを凝視し声を上げたのとほぼ同時に
フランソワ−ズの指令が矢継ぎ早に飛んできた。
「 了解!! 」
004、 005、 007は 円形銃座へと飛び出していった。
「 ・・・ なんだなんだなんだ〜〜 ウンカみて〜にうじゃうじゃ湧いてきやがって〜〜
一発お見舞いしたろか! 」
「 002! 迎撃は004達に任せて! あなたは操縦に専念して。 」
「 オ〜ライ!!! ・・・・ うお!! くっそう〜〜〜四方から狙い撃ちしやがって〜〜 」
ぐらり、と再び大揺れが艦を襲う。
「 ジェット! 頼む! 」
「 へ?? お、おい ジョ−!! お前・・・どこへ行くんだ?! 」
「 <総員戦闘配置につけ> って命令に従うまでさ。
艦長! アイツらの注意を引きつけておきますから。 ノヴァ・ミサイルを! 」
「 ・・・ わかったわ。 009! 船首直下の円形銃座が空いています。 」
「 了解! 」
ジョ−はさっと手を上げると コクピットから駆け出していった。
「 フラン・・・いや、艦長! アイツらの数だと船首下は恰好の標的になっちまう! 」
「 ええ。 でもこちらからも狙い易いでしょう? 」
「 そりゃ・・・でもかなりのテクと度胸がねえとよ。 」
「 大丈夫。 009達が道をあけてくれるわ。 そこにノヴァ・ミサイルを撃ち込むから。
002、イシュメ−ルは任せたわよ!」
「 り、了解! 」
すげ・・・ コイツの判断力と指揮力! 並みのオトコにゃ足元にも及ばねえな。
ジェットは内心 舌を巻いていた。
ババババ −−−−−!
メイン・パネルに爆発する機体が次々に映しだされた。
「 わお! あの距離で すげ〜〜 」
「 この位置からだと・・・ ジョ−ね。 ふふふ・・・ さあて、わたしも負けないわよ? 」
バリバリバリ −−−−− !!
「 また ジョ−かよ。 ・・・ おっかね・・・ 」
「 あら。 アレが彼の本来の姿なのよ。 知らなかった? 」
・・・ くそゥ〜〜 ここで引っ込んでいられるかって!
ジェットは操縦レバ−を握りなおした。
「 へ! オレも負けちゃらんね! さあ、どこからでも攻めて来やがれ! 」
「 ・・・ なんとかなった、な。 」
「 ん! けど ・・・ああ しんど ! 」
「 ・・・ うへえ〜 我輩はもう腰がたたんよ! 」
「 な〜に言うてはるねん。 よっしゃ! ほなワテが腕にヨリを掛けて美味しいもん、つくったるワ。 」
「 ああ・・・元気だねえ。 僕ももう・・・ダメだあ〜・・・ ! 」
「 皆さん、ご苦労様。 なんとか・・・ 切り抜けられたわ。 あら・・・ 005と ・・・ 009は? 」
「 009はサバと船体の損傷チェックに回った。 おっつけデ−タを送ってくる。 」
「 よし・・・! しっかり検証するよ。 」
「 008、お願いね。 それで 005は ? 」
「 あ! そういえば、我輩が銃座から引き上げる時に なにか、見つけたと言っておったな。 」
「 なにか? ・・・ ダガス軍団の残骸かしら。 」
「 わからんが・・・? だが船内操作で取り込む、と言っておったぞ。 」
「 確認してくる。 フラン、ちょっと休め。 ひどい顔色だ。 」
「 え・・・あ、あら・・イヤねえ、緊張し過ぎね、きっと。 だらしなくて恥ずかしいわ。 」
「 さ、キャビンまで送ってゆこう。 それとも医療ブ−スで休むか? 」
アルベルトはがしっと彼女の肩に手をかけた。
「 あ・・・あら。 大丈夫よ。 そうね、ちょっとここで座っていれば・・・ 」
「 だめだ。 これからまだ先は長い。 休める時にしっかり休んでおけ。 」
「 004! 005から連絡が入ったよ。 」
「 了解。 すぐ行く。 おい、だれか・・・フランソワ−ズをキャビンまで連れていってくれ。 」
「 ・・・ もう! 大丈夫だ、って言ってるのに。 」
フランソワ−ズは閉まりかけのエア・ドアに文句を言ったが、その顔色は冴えない。
「 マドモアゼル? 奴さんの言う通りだ、今のうちにゆっくりしておけ。
大丈夫、ジョ−はもうすぐ戻るから。 」
「 あ、あら! そんな ・・・ わたし達・・・あ、ううん! わたしは別にそんな・・・ 」
「 い〜からよ! ちょいと昼寝して来いって! な? 」
ついにパイロット・シ−トからも ダメ出しが飛んだ。
「 ・・・ わかったわ。 ごめんなさい、ありがとう・・・皆 ・・・
ええ、大丈夫、一人で行けるから・・・ 本当にごめんなさい・・・ 」
フランソワ−ズは軽く会釈をすると静かにコクピットを出て行った。
・・・ ふうう ・・・ だらしないわね、わたしったら・・・ あ・・・・
長い廊下に出て手前の角を折れた途端に ふらり、と足元が揺らめいた。
また 敵襲?? と一瞬緊張したが どうやら自分自身の問題らしかった。
すとん、と腰が落ちそうになり壁に手を伸ばしたのだが ― しかしその手は虚しく空に泳いでしまった
・・・ あ ・・・ 倒れ・・・る ・・・!
「 ・・・ 危ない! 」
したたか床に打ち付けられる・・・!と思った瞬間に ガシっ!と大きな手が身体を支えた。
「 ・・・ あ ・・・? 」
「 おい、どうした、大丈夫かい?! 」
「 ・・・ ジョ− ・・・ 」
セピアの瞳がじっと覗き込んでいた。
「 ・・・ あ ・・・ありがとう・・・ ふふふ ・・・ちょっと、ね。 躓いちゃったわ。 」
「 フラン・・・ 無理するな。 さあ、キャビンに行こう。 」
懸命に微笑み、何気ない風を装ったけれど、ジョ−の表情は険しいままだった。
「 歩けるかい? ・・・ いや、そのままでいいよ。 」
ジョ−はひょい、と彼女を抱き上げると口調とは裏腹にしっかりした足取りで廊下を戻り始めた。
「 ・・・え・・・ あ、やだわ、ジョ−! きゃ・・・ 」
「 ほら、じっとして? あんまり暴れると落としちゃうよ。 」
「 ・・・ あ・・・ ありがとう・・・ でも、どうして? 」
「 サバと破損箇所の点検が終って、コクピットに戻るところだったんだ。
そうしたら・・・ きみがなんだかふらふら廊下を歩いてた。 ・・・ 酔っているみたいな足取りでさ。 」
「 まあ! わたし! そんな昼間っからお酒なんて! 」
「 おい、落ち着けよ。 そのくらいに頼りない足取りだったってこと。
・・・ なあ、また軽くなったんじゃないかな、きみ。 」
「 え・・・ あ、あら、そんなことないわ。 ちょっと・・・緊張しすぎてくたびれちゃった。
ほんのちょっとだけ、よ。 」
「 ・・・ああ、 もう〜〜 きみってひとは本当に・・・!
さあ、キャビンで休むんだ。 しばらくは戦闘もないだろうし。 」
「 ・・・ ジョ− ・・・ ありがとう・・・ 」
「 なんだよ、こんなコトくらいで。 ・・・ あれ、どうした? 」
ぽとり・・・とジョ−の手に水滴が一粒、転げ落ちた。
「 ふふふ ・・・ なんだか ジョ−の腕の中だとほっとして・・・あら、涙が勝手に零れてしまったわ。 」
「 きみは ・・・ 本当にきみってヒトは ・・・凄いよ。 」
「 それはジョ−、あなたでしょう? ・・・ さっきの攻撃・・・コクピットから見てても鳥肌がたったわ。
腕、上げたわね。 ・・・ ああ、ジョ−が敵じゃなくてよかった。 」
「 きみを護るためならなんだってやるよ。 」
「 ・・・ ジョ− ・・・ 」
ジョ−はフランソワ−ズを抱いたまま、静かに彼女のキャビンのドアを開けた。
「 さあ・・・ ゆっくりお休み。 」
そうっと彼女をベッドに降ろそうと、ジョ−は身を屈めた。
「 ・・・ いや。 」
「 ・・・え? 」
「 いや。 ジョ− ・・・ 行っちゃイヤ。 お願い・・・ 」
「 フランソワ−ズ ・・・ 」
ジョ−は仕方なく、 そのまま彼女の隣に身体を横たえた。
「 さあ・・・ これでしばらく休んだらいい。 大丈夫、ちゃんと起こしにくるからさ。
ああ、なにか・・・ 飲み物でも持ってこようか。 」
するり・・・と外れたはずの腕が 再びジョ−の首に絡みついた。
「 お願い ・・・ もうこれ以上怖がらせないで ! 」
ぎゅっとしがみついてきた彼女の掌は 汗にしとど濡れていた。
ジョ−はだまってそのほっそりとしたしなやかな身体を抱き締めた。
・・・ あ。 震えてる ・・・
フランソワ−ズの身体はジョ−の腕の中にすっぽりと填まり込んでもまだ小刻みに揺れていた。
「 ごめん ・・・ 」
「 もう ・・・ ! ジョ−の意地悪・・・ ! 」
「 意地悪? 」
「 そうよ。 さっきだって黙って出て行って それで ・・・ それで一人であんなに頑張って それで・・・ 」
「 あは・・・ だから ごめんってば。 あの超小型の機雷を撃ち潰すのに夢中になって・・・
つい時間の観念がなくなってしまったんだ。 自分のいる場所もね。 」
「 本当に 本当に・・・ あなたっていうヒトは・・・! 」
彼女の拳が とんとんとジョ−の胸と叩く。
「 ふふふ・・・ なんだかいつもと反対だね。 なあ・・・ ぼくがいつだってこんな気持ちで
いるんだ・・・ってわかってもらえた? 」
「 ・・・ え ・・・? 」
フランソワ−ズは顔をあげて ジョ−を見つめた。
白い頬には涙の筋が何本も流れ、 亜麻色の髪はくしゃくしゃになっている。
「 ・・・ ほら ・・・ 涙だらけだよ? 」
「 ジョ− ったら・・・ 」
ジョ−は両手を彼女の背にまわし ゆったりと摩り始めた。
「 きみがきみ自身のことなんかにおかまいなしに、飛び出してゆく時・・・・
誰かを庇って身を投げ出すとき・・・ ぼくがどんな気持ちなのか・・・・ わかってくれたかい。 」
「 ・・・ ジョ− ・・・ 」
「 お願いだから。 これ以上無茶はやめてくれ。
ぼくがいる。 ぼくはきみを護るために ・・・ この世の存在するんだ。 そう信じているから。 」
「 ・・・ ごめんなさい ・・・ 」
「 ふふふ ・・・ なんだかほっんとうにいつもと逆だねえ・・・ 」
ジョーの長い指がその白い頬に残る瑠璃の粒を掬い取った。
「 ねえ。 ご褒美をくれる? 」
「 え・・・ ごほうび? 」
「 うん。 ・・・ 艦長の指令を待たずに勝手に船外に出たことは ・・・ すみませんでした。
その分、頑張ってあの超小型機雷を爆破してきました!ダガス艦隊をぶちかましてきました!
艦長、ぼくの仕事ぶりを評価してください。 」
「 まあ。 ・・・ そうね。 勝手な行動については・・・以後厳重に注意するように。
それで ・・・ その後の船外活動および銃撃戦については・・・。 」
「 はい、なんですか? 」
「 ・・・ わたしの評価は、ね・・・ 」
「 え・・・ あ・・・ ! 」
フランソワ−ズはきゅ・・っとジョ−の首に腕を絡めると、彼の唇にわが唇を重ねた。
お互いの想いがどっと流れ込み渦巻き燃え上がってゆく。
< ・・・ 本当にお願いだから。 あんなギリギリのことはやめて・・・! >
< ふふふ・・・わかったよ。 もう二度ときみの顔を涙でぐしゃぐしゃにはさせない・・・ >
< ジョ−・・・ ああ・・・ ジョ−・・・・! >
< ・・・ フランソワ−ズ ・・・ きみがいれば。 きみの笑顔を護るためなら。
ぼくは ・・・ なんだってするよ ・・・ ぼくはきみの虜だもの >
< ジョ− ・・・ 愛して。 あなたの熱さで、強さでわたしの中をいっぱいにして。 >
< ・・・ そのつもりさ、 ぼくのフランソワ−ズ ・・・ >
やっと抜けた光の空間を後に、イシュメ−ルにはしばし安穏な時が流れていた。
・・・ いや。 一時の休息時間を貪っていた・・・だけかもしれない。
「 ・・・ これが ・・・ 回収物、か? 」
「 そうだ。 漂流していた。 あやうくスタ−・ゲ−トに吸い込まれるところだった。 」
「 まさにダスト・シュ−トだな。 」
「 アルベルト。 これはゴミではない。 」
珍しいアルベルトの軽口に ジェロニモはにこりともせず生真面目に返事をする。
イシュメ−ルの格納庫に 回収物 は収容されていた。
手の空いたメンバ−が早速検分にやってきた。
「 ・・・ は! ごもっとも。 う〜ん・・・これは一種の隔離用のブ−スじゃないか? 」
「 むう。 」
「 開けてみよう。 」
「 しかし! 開けてびっくりジャック・ポット ・・・か トロイの木馬 かもしれんぞ? 」
グレ-トがやけに真剣な表情で目の前の回収物を眺めている。
「 だとしても。 中に誰かいたら放置しておくわけにはゆかんだろうが。 」
「 それは・・・ そうだが。 よし。 我輩がしっかり援護射撃をするから。
アルベルト、そのドアらしきものを撃ち破れ。 それとも艦体修理用のメカを使うか? 」
「 いや。 オレ、やる。 簡単だ。 」
「 あ、おい! 」
ジェロニモは ぐい、とドアと思しきモノの突起物を捻りあげた。
メリ・・・バリバリ・・・!
金属製に見えるソレはいともかんたんにこじ開けられた。
「 ・・・ む ・・ん ! 開いたぞ。 」
「 これは・・・ 中は居室風だな。 いったいなんのための・・・ あ・・・! 」
グレ−トはおそるおそる覗きこんでいたが、とつじょ声を途切らせ、固まってしまった。
「 うん? なにがあった。 ・・・ あ! おい・・・!? 」
「 ・・・ むう ・・・! 」
後から首を突っ込んだ二人も 息を呑みフリ−ズしていた。
<回収物> の中には。
「 それで・・・ この? 」
「 そうなのだ。 始めはヤツラの一族かと思ったんだが、どうも違うらしい。 」
「 違うってどうしてわかるの。 」
「 ヤツらの旗艦を爆破した時、残骸が飛び散ったろ。その中に超小型のブ−スらしいものがあった。 」
「 ええ、そう聞いているわ。 その中に ・・・ 」
フランソワ−ズは微笑んで目の前のベッドを眺めた。
そこには。 予備のベッドのなか、ふわふわのエア・ブランケットに包まって。
回収物の<中味> を前に、メンバ−達はすこしばかり途方に暮れていた。
「 ああ。 その・・・ コレが いた。 」
珍しくアルベルトが文法を無視して呟いた。
「 まあ、 コレ、だなんて。 でも ・・・ ? 」
「 実はな。 外からロックしてあった。 もし寝室として使わせているのだったら
そんなことはしないはずだ。 」
「 ロックが? ・・・まあ、酷いわね! モノじゃないのよ! 」
フランソワ−ズは眉を顰め 険しい表情になった。
「 許せないわ ! そんなこと・・・ ! 」
「 ああ、おそらく人質とかそんなトコなんだろう。 もっとも中はなかなか居心地がよさそうだったが。 」
「 ・・・そう。 きっと拉致してきたのね。 ・・・ 絶対に許せないわ。
そうだわ、故郷まで送っていってあげましょうよ? 」
「 しかしいったい何処から連れてこられたのか・・・見当もつかん。
それに我々は先を急ぐ旅なのだぞ。 」
「 ええ、 ええ。 でも人命、いえ ヒトの気持ちの方がずう〜〜っと大切でしょ。 」
「 ああ、そうだ。 本当にお前には勝てないな。 」
「 ふふふ ・・・ あら? 起きたのかしら・・・ 」
二人の目の前で、 予備のベッドの中で。
小さな腕を うう〜〜んと伸ばし ・・・ 小さな女の子が目をこすっている。
ふわ〜〜〜と アクビをすると きょろきょろと周りを見回し始めた。
「 ・・・ まあ・・・ 可愛いわねえ・・・ ふわふわしてて、なんだか天使みたい。 」
「 あ ・・・ああ。 そんな雰囲気だなあ・・・ 」
抜けるような色白の顔に淡い紫色の髪が豊かに纏わりついている。
ぱっちりと開いた瞳は アメジストみたいに澄み切っていた。
うっすらピンクにそまった頬はまんまるで おそらく笑えば深いえくぼを結ぶのだろう。
「 ねえ、恐かったわねえ・・・ 薄紫の天使さん? 」
フランソワ−ズは そうっとその幼女の頭に手を触れた。
幼女はぴくん・・!っと一瞬、身体を震わせたが 泣き喚いたりはしない。
大きなスミレ色の瞳が じっとフランソワ−ズを見上げている。
「 言葉、通じるかしら。 ねえ、あなた、お名前は? 」
「 ・・・ たまら ・・・ 」
不意に ・・・ 医療スペ−スに居合わせた全員のアタマに幼い声が響いた。
「 たまらちゃん? まあ、可愛らしいお名前ねえ・・・ 」
「 おい! このチビ、 テレパスだ! 」
「 そうみたいね。 ああ、でもよかったわ。 これでちゃんとお話しができるわ。 」
「 それは ・・・ そうだが。 しかしこのコはいったい? 」
「 少なくとも ダガス軍団のコドモではないみたいねえ。 」
「 失礼! サバのアドバイスに従ってそのなんたら言う星に寄ろうか、と言っているのですが。
艦長・・・・? 」
不意に医療スペ−スのドアが開き ジョ−が顔を覗かせた。
「 そうね・・・ それでは 009? 」
「 ・・・ おとうちゃま!! 」
「 了解しました。 それでは・・・ おわ!! な、なんだ〜〜?? 」
「 え? あ・・・あらら・・・ 」
フランソワ−ズが抱き寄せていた幼女は 急に彼女の腕をすりぬけジョ−にしがみ付いたのだ。
「 おとうちゃま〜〜 ・・・え ・・・ええええ・・・・ え〜ん・・・ 」
「 わ! ・・・ ななな なんだ? えええ?? おとう・・? 」
「 ・・・ おとうちゃまって呼んでるわよ? ・・・パパってことでしょう? 」
フランソワ−ズは無意識に少しずつ後退りしていた。
「 ・・・ ジョ−。 お前。 こんなトコに隠し子がいたのか。 」
「 アルベルト! 冗談じゃないよ〜〜 なんだ、このコ? ねえ、きみ? 間違えてるよ。 」
ジョ−はしっかり抱きついている小さな身体を 懸命に引き離している。
「 おとうちゃま・・・ たまら よ? おとうちゃまぁ〜〜 ああ〜〜んあ〜〜ん 」
「 ・・・ あ〜あ。 泣かせちゃった・・・ 」
「 あ・・・ごめん、ごめんよ! ねえ、泣かないでくれよ〜〜 え・・・・と? 」
「 たまらちゃん よ。 」
「 あ、そ、そか。 そのう・・・たまらちゃん? ようく見てくれよ。ほら、ぼくは君のパパじゃないだろ? 」
「 ・・・ うっく ・・・ おとうちゃま〜〜 たまら、泣かないから・・・ うっく ・・・
おとうちゃま〜〜 だっこして。 たまらをおいてかないで・・・ 」
「 うわ・・・ もう〜〜 」
再び小さな身体は しっかりとジョ−の胸にしがみ付き、懸命に泣き声をこらえている。
防護服に顔をこすりつけ 溢れてくる涙を一生懸命拭いているのだ。
「 ・・・ たまら・・・泣いてないでしょう? だから・・・おとうちゃま〜〜
いっしょにおうちへかえりましょう・・・・ ぴ〜ちゃんにあいたいの〜〜 」
「 可哀想に・・・ きっと恐くて心細くて・・・。 こんなに小さな子を捕虜にするなんて許せないわ! 」
「 ああ。 ・・・ しかし、このコドモはただの捕虜なのだろうか。 」
「 どういうこと? 」
「 服をみろ。 初めて見る生地だが決して質素なものじゃないぞ。 軽くて暖かくて多分高価なものだ。
それに ・・・ このコの顔立ちはコドモながらにも気品がある。 」
「 そうだね。 ほら、耳を見て? このピアスは多分宝石だよ? 」
ピュンマがそうっと幼女の髪を撫でる。
たまら はびく・・・っと身体を震わせたが すぐにピュンマを見つめ涙の残る顔で微笑んだ。
「 こんにちは、たまらちゃん。 僕はピュンマ。 どうぞよろしく。 」
「 こんにちは・・・ ぴゅんま ・・・ お兄ちゃん。 」
「 それにしても、さ。 」
ピュンマはハンカチで彼女の顔をぬぐってやっていたが、大きな吐息を洩らした。
「 ・・・ ジョ−。 このコ ・・・ どことなくキミに似ているよなあ・・・ 」
「 ・・・ え!! 」
・・・・ バタン ・・・!
医療スペ−スのドアが大きな音を立てて閉まった。
そして・・・・ ぱたぱたぱた・・・! 軽い足音が遠のいていった。
「「 あ〜あ・・・ 泣かせちゃった・・・! 」」
「 あ! ふ、フランソワ−ズ・・・・! な、なんだよ〜〜 二人とも〜〜 」
「 おとうちゃま! ここにいて・・・ たまらをおいてかないで・・・・ 」
またまた 幼女の瞳からぽろぽろと涙が飛び出してきた。
「「 ・・・ あ〜あ。 また泣かせちゃった・・・! 」」
「 う〜〜〜〜 もう〜〜〜 泣きたいのはぼくの方だよ〜〜〜 」
ジョ−は腕の中の小さな身体を抱きかかえつつ・・・ 本気で半ベソをかいていた。
幼女は たまら・ふぁんたりおん という名前らしかった。
<おうち> には おとうちゃま と おばちゃま と ぴ〜ちゃん がいる、と言った。
「 ふうん ・・・ おかあちゃま はいないのか。 」
「 どうだかな。 そもそも家族体系が地球と同じとはいえないだろうが。 」
「 それはそうだけど・・・ でも一応家族の単位はあるらしいね。 」
アルベルトとピュンマは 面白半分なのか真剣なのか ・・・ イマイチ不明な会話を交わしている。
「 ファンタリオンですって? 」
「 サバ、知っているの。 」
「 ええ・・・ いや、僕は直接には。 でも父から聞いたことがあります。
鉱物資源がかなり豊かな星で ・・・ かなり高度な文明を持っている、と。 」
「 まあ・・・ そうなの。 位置をご存知? 」
「 はい、あまり正確ではありませんが。 え・・・っと・・・ 」
サバはモニタ−にいくつかのファイルを起こし始めた。
「 ・・・で、ご本人は。 」
「 ジョ−のキャビンにいる。 」
「 ジョ−の?? フランソワ−ズの、ではなくて、かい。 」
「 ひょ〜〜う♪ やっぱ <おとうちゃま> がいいのかよ〜 」
ジェットがパイロット・シ−トを倒して口笛を吹いた。
「 ??? 」
「 そうなんだ。 いくら説明してもフランが宥めても大人がスウィ−ツを差し出しても
彼女は ジョ−にしがみ付いたままさ。 」
「 じゃ、昨夜はひょっとして・・・ 」
ピュンマの恐る恐るの問いに アルベルトは重々しく頷いた。
「 さすがに風呂はフランソワ−ズが受け持っていたがな。 」
「 そっか。 ・・・ そりゃ・・・可哀想になあ・・・ 」
「 ジョ−が、か? 」
「 いいや、フランソワ−ズが、さ。 せっかく・・・ 。 二人とも仲直りしたのかなあ。 」
「 それどころじゃないらしい。 どうも3人で一緒に寝ているらしい。
あのチビさんのご要望だそうだ。 」
「 ・・・ へえ ・・・! そりゃ・・・ ジョ−のヤツ、気の毒に。 」
「 ま、もうこうなったらそのなんたらいう星まで 送り届けるしかないだろう。 」
「 そうだね。 ちょっと寄道だけど・・・ 」
「 艦長のご要望だ。 < 可哀想じゃない?> ・・・だと。 」
ピュンマは肩をすくめ アルベルトは溜息を吐き。 ジェットは好奇心オンリ−で機嫌がよく。
・・・ ようするにイシュメ−ルの乗り組み員たちは かなりリラックスしていた。
いや。 今後の展開を面白がっていたのかもしれない。
― ジョ−とフランソワ−ズを除いて。
偶然、助け上げた幼い女の子。
とんだ <拾いモノ> を乗せ ― 拾いモノはジョ−の腕の中で安らかな寝息を立ててたが ―
イシュメ−ルは星の海を航行していった。
「 ほえ〜〜〜 あれがファンタリオン星たらいうとこアルか・・・ 」
「 うん、サバの話だとかなり友好的な星らしいけどね。 え〜と・・・ このまま降下していいのかな。 」
ピュンマが懸命にモニタ−を操作している。
メンバ−達の目前に グリ−ンがかった惑星が迫ってきた。
サバのナヴィゲ−タで イシュメ−ルはファンタリオン星の上空まで到達していた。
「 なあ、サバ。 そのなんたらいう星ではいきなりドンパチやってはこねえだろな? 」
「 大丈夫ですよ。 コンタクトを取ってみました。 あまり充分とはいえないけど・・・
一応話は通じたと思います。 そちらの星の住民をひとり 保護している、と言ってありますからね。 」
「 そんならいいけどよ。 しかしあのチビっこ、どうして捕まったりしたのかなあ。 」
「 さあ・・・ 宇宙基地かどこかで家族と離れ離れになったのかもしれません。
ああ、そろそろですね。 う〜んと・・・ ああ、大丈夫、大気の成分や気圧はほぼ地球と同じです。 」
「 ふうん ・・・ 今は一応 <昼>だね。 気候は・・・そうだな、日本の秋口ってくらいかな。
へえ・・・ 結構緑の星だよ? ああ・・・海、もあるな〜 」
ピュンマはもう熱心にモニタ−に張り付いている。
「 そっか。 ・・・ ん? ジョ−とフランは? 」
「 ああ、あのチビの <おめかし> をしているのさ。 」
「 おめかし?? 」
「 そうアル。 フランソワ−ズはんが身の回りの世話、したげようとしやはるんやけど・・・ 」
「 <おとうちゃま>がいいんだってさ。 それでもう食事も寝るのも <おとうちゃま>と
ず〜〜っと一緒なんだ。 着替えも風呂も・・・ってぐずったのだが、さすがにな。 」
「 あは。 そりゃ・・・ <おとうちゃま>の方が泣き出すよ。 」
「 ひぇ〜〜〜〜 そりゃまた・・・ うぷぷぷぷ・・・ 」
コクピット中を笑いでいっぱいにして イシュメ−ルは優雅にその星に舞い降りていった。
「 ・・・! な、なんだ??? なんなんだ?? 」
「 し! ・・・どうもわたし達を歓迎している・・・みたいよ? 」
「 えええ??? 」
思わず足が止まったジョ−の隣で フランソワ−ズが小声で呟いた。
彼女も動転しているのだろう、浮かべた笑みは強張ったままその頬に張り付いている。
わああああ〜〜〜 わあ〜〜〜
イシュメ−ルがハッチを開き、エア・トンネルから外に出た途端・・・
ジョ−とフランソワ-ズを大勢のファンタリオンの人々が集まり歓声げ迎えたのだ。
「 どうする・・・? このまま・・・ このコを誰かに渡せばいいのかな。 」
「 ・・・あ! 誰か・・・近づいてきたわ。 男性ね、かなり立派な身なりをしているわ。
周囲に供が沢山・・・ 多分身分の高いヒトなんじゃないかしら。 」
「 え! ・・・ああ、くそ! ス−パ−ガンが抜けない! 」
ジョ−は両手で 例の幼女を抱いているのだ。 いや、彼女がジョ−にしがみ付いているのだ。
「 大丈夫よ、敵意はないみたい。 ・・・ あら?? 」
「 どうした、フランソワ−ズ!? 」
「 あのヒト ・・・ なんだか ちょっとジョ−と似ているわ・・・よ? 」
「 えええ?? なんだって?? 」
わあ〜〜〜 ご無事でよかった 〜〜 わあ〜〜
再び、目の前の群集から歓喜のどよめきが立ち昇った。
「 ?? な、なんなんだ?? 今度はどうしたんだ? あ・・・ 」
気が付けば、 一人の男性がすぐ目の前にまで進みでてきていた。
彼は ― 涙をぼろぼろこぼしていた。
「 ・・・ 姫! よく ・・・ よく 無事で・・・! 」
「 !! おとうちゃま! 」
突然、幼女はジョ−の腕を振りほどくと、目の前の男性に飛びついていった。
「 ああ ・・・ たまら・・・! わが娘よ・・・! 」
「 おとうちゃま・・・ おとうちゃまぁ〜〜〜 」
「 ・・・ な・・・! 娘、って。 」
「 ええ・・・ どうやらあのコは この星のお姫様だったようね。 」
「 ・・・ じゃ、あのヒトは君主ってことか。 」
「 多分。 ・・・ ねえ、やっぱりちょっと似ているわ? ジョ−、あなたがあと10年くらいしたら
あんなカンジになったのかも・・・ 」
「 そうかなあ。 自分じゃよくわからないよ。 」
「 あ! 判った! 」
「 え、なにが。 」
「 あのコ、いえ あの小さなお姫様がジョ−のこと、 おとうちゃま って懐いていたワケが。 」
「 ・・・ ぼくには全然??? 」
「 イヤだわ、ジョ−。 なにを言ってるのよ? ・・・あ! その<おとうちゃま> が御用事みたいよ? 」
「 わ・・・ えっとォ・・・? 」
ぼそぼそ呟きあっている二人に 柔らかく光る服を纏った立派な身なりの男性が
にこやかに近づいてきた。
「 ようこそ、ファンタリオンへ。 とおい星からいらした御方。
私はこの星を統べる王、ルドルフ・ファンタリオン24世です。 」
「 初めまして、陛下。 わたくしはこのイシュメ−ルの艦長です。
地球という惑星から来ました。 フランソワ−ズと申します。 彼はジョ−。
わたし達の腕効きパイロットです。 」
「 ・・・ ジョ−・シマムラ といいます。 」
フランソワ−ズは優雅に会釈をし、ジョ−を紹介した。
防護服に身を固めていても 彼女の立ち居振る舞いは優美で、ドレスを纏っているのか、と
錯覚するほどだった。
「 おお・・・ なんとお美しい! ああ、あなたに巡り会えてよかった・・・!
これも姫の導き・・・ 我々は運命の出会いをしたのです・・・・! 」
「 ・・・はああ??? 」
「 おお、おお・・・ 亡き妻によく似た面差しをしていらっしゃる・・・!
豊かな御髪には 太陽の輝きが ・・・ 深い御眼には 大海原の深遠さが・・・ 」
「 ・・・ はあ・・ 」
「 どうぞ! どうぞ宮殿にいらしてください。 ああ・・・従者の方もどうぞ。 」
「 従者〜〜?? 」
ジョ−もフランソワ−ズも呆然としているうちに、 24世陛下はいつのまにやらしっかりと
フランソワ−ズの手を握っている。
ホンモノの<おとうちゃま>の裳裾を例の小さな姫君がしっかり握っている。
「 ・・・ おとうちゃま! ・・・ このお兄ちゃま・・・ たまら、好き♪ 」
「 おお・・・姫〜〜そうか、そうか。 それじゃお兄さんに抱っこしてもらいなさい。
ああ キミ? すまないが宮殿まで姫を頼む。 なに、艦長殿は私がエスコ−トするから
心配は無用だ。 さあ・・・ どうぞ! 星の彼方からいらした美しい方! 」
「 ・・・ お兄ちゃま! たまら、大好き〜〜
おとうちゃま と おばちゃま と ぴ〜らら のつぎに 好き〜〜〜 」
「 あ・・・! ああ・・・ たまらちゃん ・・・ ありがと ・・・ 」
「 たまら、 おっきくなったら およめちゃまになってあげる!
お兄ちゃまと〜 ぴ〜ららと〜 おしろにすむの。 ね!? お兄ちゃま! 」
「 え・・・ ああ、 うん。 ・・・あ、お待ちください、陛下! フラ・・・いや艦長! 」
「 ねえねえ お兄ちゃま。 やくそく しましょ。
お兄ちゃまは〜 たまらのおむこちゃまになりますって。 ね? 」
小さな小指が ジョ−の前に差し出された。
「 なんですか たまら姫。 」
「 やくそく。 こゆびさんとこゆびさんで ね、ね、ね! ってするの。 ・・・お兄ちゃまも〜 」
「 ? へえ 指きりみたいだな。 いいよ。 可愛いお指だなあ・・・ はい。 」
ジョ−の小指に小枝よりも細い指がからまった。
「 やくそく・・・ ね、ね、ね♪ たまらはお兄ちゃまのおよめちゃまになります〜 」
このオマセな姫君は ジョ−の腕の中でいたく満足そうな顔をしていた。
「 え ・・・ ああ、行ってしまわれた・・・ 」
「 おうちにかえるの。 だいじょうぶ、たまらと一緒に、ね? お兄ちゃま。
あ、 <あなた> っていうのでしょ。 ねえあなた。 」
「 え〜と・・・こっちでいいのかな? 」
「 そうよ、<おうち> までえあ・しゅ−た− にのりましょ 」
「 ・・・ はいはい。 ちっちゃなお姫様。 お〜い・・・ 待ってくださいよ〜 」
ジョ−はまた、幼女を両腕に抱え 上機嫌な国王陛下と<艦長殿> の後を追っていった。
・・・ なんなんだ?? いったい・・・ この星はどうなってるんだよ〜〜!!
ジョ−の飛ばした脳波通信への応答は まったくなかった。
イシュメ−ルのコクピットでは 残りのメンバ−達が誰一人なす術なく呆然と目の前の展開を
ただ ただ見送っていた。
いったい ・・・ なんなんだ?? こっちが聞きたいぜ!
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updated : 10,28,2008.
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************ またまた ・ 途中ですが ・・・・
す、すみません〜〜〜 またまた 終わりませんでした (;_;)
あれやら・これやら妄想していましたらどんどんハナシがながくなり・・・ とても二時間映画?が
モトとは思えなくなってきてしまっています。 ちょっと短いですが区切りがいいので
今回はこの辺で < 続く > にさせてくださいませ <(_
_)>
・・・・ ますます ぱろ・こめ になってきました♪
ご要望の? 紫オンナ、登場〜〜〜です ★★★ さああ〜〜どうする??? ジョ−君???
本当にごめんなさい、 あと一回! もう一回だけ・・・宜しければお付き合いください〜〜〜 <(_
_)>
たびたび書きますが ⇒ 滅茶苦茶な戦闘シ−ンには! どうかお目を瞑ってくださいますよう、
ココロから御願い申し上げいたしまする〜〜〜 ( ぺこり )