『 ゆめの浮橋
− (1) − 』
ふうう・・・・
フラットに戻り ドアの内鍵を掛けた途端に 大きな吐息がこぼれてしまった。
荷物を寝室まで持ってゆくのもかったるくて、 そのまま・・・ 床に置き
ボスン・・・っとソファに座りこむ。 う〜ん・・・と背もたれに身体を預け伸びをする。
ああ・・・・ あああ ・・・・ 疲れた ・・・
はああ ・・・
また ひとつ。 動かない空気の中に 溜息 を放してやる。
大きく口を開くのも この部屋の中でだけだ。
伸びをした手を そのまま頬にあてごしごしと擦った。
一日中 決められた顔を ― どこから見ても 誰が見ても 笑顔にみえる表情だ ・・ ―
していたので頬が強張っている ・・・ 今、やっと自分自身の顔に戻った気がする。
・・・ あああ ・・・ 思いっきり怒ったり泣いたりしてみたい・・・
しかし そんなコトはこの稼業に就いている限り許されない。
いや、唯一許されるのは この小さな部屋の中だけなのだ。
ぴたぴたと頬を叩き、そのままテ−ブルの隅においたパソコンの前ににじり寄った。
メ−ルチェック、しておかないと・・・
・・・ ふうん、便りのないのはよい便り、ってことらしい・・・
さあ・・・ 一風呂浴びて ・・・ んん?
メ−ル画面を閉じようと思った瞬間に 一通舞い込んできた。
しばらく点滅していたが 見慣れぬアドレスのそれはたちまち迷惑メ−ル・フォルダに振り分け
られようとしていた。
・・・ あ! あのアドレスは・・・!
カチ カチ・・・!
見落とすはずはなく 小さな音とともにソレは難無く捕まえられた。
やはり あの人物からのものだ。
ふいに 懐かしい風貌が浮かんだ。
大きな鼻と柔和な、時に鋭くもなる目。 ぼさぼさの白髪はきっと相変わらずだろう。
最後に尋ねた消息はマ−シャル諸島の <国際宇宙研究所>の中に身を寄せている、
ということだったが・・・
ああ、お元気なんだ・・・ よかった。
・・・ でも メ−ル・・・??
ほっとする一方、なにが起こったのか・・・また 闘いが始まるのか・・・とイヤな予感がした。
しかし その嫌悪感のなかには 快い緊張とそして微かな甘い想いが含まれていることに
本人はまだ 気がついていない。
・・・ カチ ・・・
ひどく慎重にマウスを操作し メ−ルを開いた。
・・・ あれ・・? なあんだ・・・
緊張して見つめるモニタ−には ほんの2〜3行の文字が現れた。
元気で過しているか、諸君らの活躍と幸せを祈る ・・・
と ごくありきたりの文章が読み取れただけだった。
ただの seasons greeting ? それにしては・・・・
あ・・・ もしかしたら・・・
念のため、博士の署名にカ−ソルを移す。
やはり。 画面は一転しパスワ−ドを要求してきた。 自分自身の本名とコ−ド・ネ−ム。
それが 彼らの間での極秘でかつ共通のセキュリティ−だったのだ。
カチャカチャカチャ ・・・ いくつかの文字と3つの数字が打ち込まれ・・・
次の瞬間、画面は文字でびっしりと埋め尽くされていた。
やっぱり・・・ なに・・・? なにか 緊急な事件・・・?
たった今までの重く澱んだ気持ちはたちまち消えうせ、目の前のモニタを
食い入るように読み始めた。
数分後、モニタ−から外した視線をはるか遠くの空にとばす。
引き忘れたカ−テンの隙間からのぞく空は藍色から濃紺へそして墨色へと変わってゆく。
しかし そんな空の饗宴は 瞳に写ってはいたが こころに中にはまったく入ってはいない。
・・・ そう、それしかない それが我々の < 使命 > ・・・
うん、と夜空に向かいかっきりと頷く。
再び視線をモニタ−にもどした時、 両の瞳には強い光が満ちていた。
ぱ・・・っと髪をかき上げ、姿勢を正すと ― 素早く指がキ−ボ−ドの上を走り始めた。
やがて窓の外はとっぷりと暮れ、星々が繊細は煌きをきそって披露していたが
その部屋からは かなりの時間カチカチとキ−ボ−ドを操作する音が響いていた。
「 ・・・ さ、 これでラストかな。 随分と御無沙汰・・・
え〜と・・・? アドレスは・・・ああ、これこれ。 ・・・ O.K.、 これで全員へ完了!
・・・ あれれ・・・? 」
シャット・ダウンしようと・・・その時。
ピ ・・・・ !
微かな電子音と共に 受信トレイが着信あり、を示している。
「 もう返信? まさか・・・ね ? ・・・ あ ・・・・ 」
開いた画面は 不達通知を示していた。
「 存在しないって・・・そんなこと、聞いていない! それにこれはメンバ−達だけのアドレス・・・
勝手な変更や閉鎖は許されないはずなのに・・・ 」
昂まっていた気持ちが たちまち萎んできてしまった。
・・・ なにかあったのだろうか・・・ でも、それなら知らせがあるはず。
脳波通信で ・・・ ああ、だめだめ。 この距離ではとても無理・・・
ともかく計画はスタ−トしてしまったのだ。 キック・オフのボ−ルを蹴ったのは自分。
今 ・・・ 行動を開始しなければ。
ほんの数分前とは比べ物にならない重い気持ちで PCを閉じた。
たとえ一人でも。 行くから。
でも ・・・ ジョ− ・・・! あなたは 今 どこで。 何をしているの・・・
からり、とあけた窓からは 冷たい夜気が忍び込んできた。
欧州の旧い街は すでに秋の終わりを迎えている。
もうじき ・・・ ブ−ロ−ニュの森をわたる風が冬の欠片を運んでくるにちがいない。
ふうう ・・・・
亜麻色の髪が 星明りを拾いちかり、と煌きをかえす。
こころの奥の奥に そっと仕舞いこんでいた小さな熾火も ちかり、と煌いている。
でも。
この火を掻き起たせることはできるのだろうか。
フランソワ−ズの溜息が またひとつ、夜空に吸い込まれていった。
一番最後に送ったメ−ルは とうとう目的の人物に届くことはなかった。
「 やあやあ 我らが姫君。 英国よりただいま参上仕りましたぞ。 遅参ではあるまいな? 」
「 まあ、 グレ−ト! お待ちしていたわ。 」
「 おう、これは勿体無いお言葉・・・ 」
りゅうとしたツウィ−ドのス−ツに身を固めた紳士は するりと山高帽を取った。
「 ご機嫌麗しゅうて なにより・・・ 」
彼はフランソワ−ズの手をとり慇懃に腰を屈めた。
「 あなたが二番のりよ。 でももうすぐ新大陸組が着く筈ね、多分次の便でしょう。
ピュンマは乗り継ぎが悪くて明日になりそうですって。 」
「 ほう? それで・・・一番は独逸からかな。 」
グレ−トはきょろきょろと周囲を見回した。
そこはかなり広いスペ−スで、書棚が壁をぐるりと取り巻いてい、中央には何組かソファがあった。
天井近くには大型パネルが引き上げてあり、おそらく壁には操作盤が格納されているのだろう。
ゆったりとはしているが、 ココが作戦室になるに違いない。
今は しかし、人影はまったく見あたらなかった。
「 当たり。 今、博士と打ち合わせをしているわ。 ちょっと呼んできましょうか。 」
「 あ・・・いや。 いずれ皆そろえば顔をあわせるからな。
皆といえば。 ・・・ ヤツは? ここへ来る最中には見かけなかったぞ? 」
「 ・・・ ええ ・・・ メ−ルも届いていないの。 」
「 留守なのか。 」
「 ・・・・・・・・ 」
フランソワ−ズは黙って首を振った。
「 なんと、それではヤツの所在はわからんのかな。 」
「 それはなんとも。 ただメ−ルは繋がらないの。 前にもらったナンバ−に電話をしてみたけれど
これも使用されていないものだったわ。 」
「 それは・・・ 消息不明、というわけか? 最後に連絡が取れたのはいつかね。 」
「 ええ、それを考えてみたのだけれど。 去年のクリスマス・カ−ドと今年のニュ−・イヤ−カ−ドは
届いている・・・ というか <返ってこなかった>から、多分あのマンションにいると思うけれど。 」
「 ふむ? ヤツからの手紙は? あ、その、なんだ〜 グリ−ティング・カ−ドとかだが。 」
「 あら、いいのよ。 どうぞ気を使わないで頂戴。
わたし達 ・・・ 今は本当に < そんなんじゃない > 仲になってしまっているから・・・
ああ、ごめんなさい。今 お茶を淹れるわね。 」
フランソワ−ズは 微笑んでソファから立ち上がった。
「 ふん! なんたることだ、不届き千万! ヤツには自覚、というものがないのかね。 」
「 グレ−ト。 もういいの。 もし ・・・ 今の生活が幸せなら無理に誘わなくていい、って博士が。 」
「 それは・・・ そうだが。 しかし、だな、 マドモアゼル!
我々は9人揃ってこそのゼロゼロ・ナンバ−サイボ−グであるのだからして・・・ 」
「 ええ。 だからこそ、どんなことをしてもイワンを助けに行かなくては、と思うわ。 」
「 左様、その通りだぞ? マドモアゼル、機動性の面でもヤツのチカラは不可欠だ。
メンバ−の危機は一人ひとりの危機でもある。 」
「 そうよね。 ・・・ 私 ニッポンに行ってくるわ。 」
「 ヤツを迎えに、かい。 」
「 ええ。 上手くゆくかどうかわからないけど。 ともかく会ってハナシをしなくては。 」
フランソワ−ズは きゅ・・・ っと唇を噛み締めた。
・・・ ああ、 あの時。 この手を 離してしまわなかったら・・・!
「 それでだな・・・。 おお! グレ−ト! よく来てくれたのう。 」
「 なるほど。 なにか連絡は? お。 一足先にきたぞ。 」
ドアが開き、相変わらずぼさぼさの白髪頭をふるいたてつつギルモア博士が現れた。
すぐ後ろから背の高いがっちりした姿もやってきた。
「 博士。 お久し振りでございます。 お元気そうでなにより・・・ 」
「 うんうん・・・ お互いになあ。 」
博士は満面の笑みである。
「 よう、アルベルト。 一番乗りだってな、 早いな。 」
「 ・・・ん・・・・! 」
ガシっ!と欧州人同士は固い握手を交わした。
「 博士。 やっぱりわたし。 迎えに行ってきますわ。 」
「 はて? 午後の便を、かい。 」
「 いいえ。 あの・・・ ニッポンへ。 」
一瞬、俯いて言い澱んだが、 すぐに彼女はぱっと顔をあげた。
そして真っ直ぐにオトコたちを見つめると、仄かに微笑浮かべたまま踵を返した。
「 ・・・ 相変わらずお見事。 う〜〜む、アヤツにゃあ 惜しいですな。 」
「 ふん。 あの意気込みだ、首に縄くくりつけても引っ立ててくるな。 」
「 いやいや・・・ 」
溜息半分、見送る男達に 博士はにんまりと笑いかけた。
「 諸君? まだまだ見識が浅いのう。
あの ・・・ 女神の微笑みに逆らえるオトコがいると思うのかね。彼女が微笑めば・・・ 」
「 あ・・・ な〜る・・・! ご慧眼、恐れいったですな 」
「 ・・・ は! こりゃまた・・・ ダテに・・・ いや、失礼・・・ 」
「 ははは・・・ よいよい。 ワシとて伊達に歳をくっとるワケではないぞ。
彼女が、いや 彼らが戻るまでに出来る限りの準備をしておこう。
そうじゃ、グレ−ト。 今回の特別ゲストを紹介せねばな。 」
「 ゲスト? 我々以外に参加者がおるのですか。 」
「 そうじゃ。 ま、全員が揃うのを待つとしよう。 」
「 確かにな、 ソレが一番合理的だ。 ・・・どうあっても アイツには頑張ってもらわんと。 」
アルベルトの微妙な口調に 博士ははっと彼を見つめた。
「 アルベルト。 お前 ・・・ ? 」
「 ああ、そうだ。 艦長はアイツさ。 俺は参謀のほうが性にあっている。 」
「 適材適所、というわけか。 うん なかなか合理的で賛成だな。 」
「 では大まかな航路の確認をしておこう。 詳細はパイロットが揃ってからだ。 」
「 へ〜い ! パイロット参上〜〜〜 遅れてすまねぇ。 これでも出来るかぎりぶっ飛ばしてきたんだぜ。
はん、自分の脚で飛んできたほうがずっと速いんだがよ! 」
「 おい。 無駄な労力は使うな。 ・・・ 今回は長期戦だ、おそらくな。 」
「 了解。 ・・・ ふふふ ・・・ 始まったな。 」
「 ああ。 ・・・ 始まった。 」
穏やかな陽射しが 海にそして島々を照らしている。
絶えず響いてくる静かな波の音は 明日も明日も明日も ・・・ 島の裾に寄せては返しているだろう。
そう ・・・ このミッションが成功裡におわれば・・・!
オトコたちは がっちりと手を握り合い熱意の程を確かめるのだった。
「 ・・・ え〜と ・・・? あら、もう終ってしまったのね。 なんでまだこんなにヒトがいるのかしらね。 」
どんよりした雲の間から ついにぽつり ぽつりと雨粒が落ち始めた。
テスト走行が終わり、サ−キットはすっかり静かになっていた。
それでも お目当ての選手をまって かなりの人々がうろうろと所在なげにしている。
「 なんなの? もう今日は終わりのはずなのに。 なにをしているのかしら。 」
フランソワ−ズは傘を広げ その下から辺りを <見通し>た。
圧倒的に若い女性が多かった。 なかにはサイン色紙をしっかりとかかえた少年もいたが・・・・
周囲は天候のせいもあり む・・・っと入り混じった香水の香りが漂っていた。
「 ・・・ このヒトたちが・・・モ−タ−・スポ−ツのファン?? 」
みな、てんでに派手なメイクに露出度の高い服装をしており かなり特殊な雰囲気なのだ。
「 ふうう・・・ なんなの? この国は本当に不思議だわ。 ああ、でも景色はきれい。
雨でも ああほら、こんな綺麗な緑を眺めるだけでもいい気持ちよね。 」
サ-キットの出口、 それもメインを避けて裏口に近い場所で フランソワ−ズはずっと佇んでいた。
やがて。
わぁ・・・・ きゃ! ・・・ ふふふふ ・・・ うわぁ!
ずうっと澱んでいた空気がぱっと動き始めた。
来たわ! ・・・よ! あら、誰かと一緒? あれ、誰よ?? レ−ス・クイ−ン?
・・・ ヤダ、タレントの〇〇じゃない?
空気のゆれと一緒に会話の切れ端が 洪水となってフランソワ−ズの耳に押し寄せた。
・・・ な、なんなの?? ・・・ あ。
カツカツカツ ・・・
一際大きな靴音が響き、一人の青年が出てきた。
ありきたりのジ−ンズに 汗滲みも見えるTシャツ、にサングラス。
どこにでもみかける姿なのだが ・・・ 人目でなにか<ちがう>と感じてしまう。
纏っている雰囲気のせいなのか、サングラスにかかる栗色の髪のせいなのか・・・・
気がつけば ひとりでに目は彼を追っていた。
・・・ 相変わらずねえ。 異性の視線をすべて集めてしまうのねえ・・・
わ・・・っと女性達は青年に殺到した。
サイン帳をさしだしたり、デジカメを構えたり大騒ぎである。
「 ・・・ あ。 どうも。 ・・・ すいません、通してください。 」
ぶっきら棒な声が人だかりの中から聞こえてくる。
「 ・・・ それじゃ、ここで。 ああ、応援、ありがとう。 」
「 ・・・ ジョ− ・・・! 」
青年はそばにへばりついいた派手な化粧の女性に手を振った。
「 ジョ−ってば! 一緒に・・・! 」
「 明日、早いんだ。 悪いけど・・・ じゃ! 」
「 あん ・・・! ジョ−ったら!! 」
彼女の目の前で 青年は車のドアを閉めてしまった。 そして大きくクラクションを鳴らすと
しずかにパ-キングからすべり出していった。
ああ〜〜〜ん ・・・! ジョ− ・・・!!
またまた溜息みたいな嘆声が もやもやと湧き上がる。
フランソワ−ズは傘を傾け彼女達を避けると すたすたとパ-キングを横切っていった。
サ−キット会場からはしばらく一本道が続く。
いわゆる生活道路ではないので 整備もあまり芳しくなく、がたがたと車体がゆれた。
・・・・ チ ・・・!
次の信号を過ぎれば広い国道に出る。 あと少しの辛抱だ・・・と思った瞬間に信号が変わった。
ジョ−は低く舌打ちすると 銜えていた煙草をアシュ・トレイに捻った。
数台が 一列にならんでぼんやりと信号待ちをしていた。
・・・ コンコン。 コン・・・!
「 ・・・? なんだ・・? 」
サイドの窓を叩く音がした。 ジョ−はサングラスを掛けたまま不機嫌に首を捻った。
まだ煩いファンが追いかけてきたのか・・・と思ったのだ。
「 ・・・ すいませんが。 やめてくれませんか。 」
「 あら。 随分ねえ。 ・・・ 009。 」
「 ! な、なんだと?? ・・・ あ。 」
サングラスをもぎ取り 睨みつけた窓の外には。
― 雨粒を絡ませた亜麻色の髪をゆらし、 青い瞳が笑っていた。
・・・ フランソワ−ズ ・・・!
「 ごめんなさいね、ジョ−。 明日も早い のですって? 」
「 あ・・・ イヤだなあ。 聞いていたのかい。 」
「 ふふふ ・・・ あんな大きな声で言えば筒抜けよ? 大層な人気モノのようね。
ハリケ−ン・ジョ−さん? 」
「 フランソワ−ズまで・・・ やめてくれよ。 ハリケ−ン・ジョ−だなんて・・・
あんなのマスコミが勝手に騒いでいるだけさ。 」
「 まあ、そうなの? あんなに女性ファンが多くて・・・ 満更でもないのじゃない? 」
「 もう・・・意地悪だなあ。 せっかく久し振りに会ったんじゃないか。
二人っきりの時間に野暮な話は禁物だよ。 」
「 ふふふ・・・ ごめんなさいね、あんまり賑やかだったから・・・つい、ね。 」
「 うん・・・ ぼくもごめん。 なあ、きみは公演? それとも観光かい。 」
「 いいえ。 ・・・ ジョ−。 いえ、 009。 」
「 ・・・ な ・・・ ! 」
たった今までにこやかにジョ−と腕を絡めて歩いていたのだが。
フランソワ−ズは す・・・っと彼から身を離し、向き直った。
「 009。 メ−ル、届いていないようね。 どうしてアドレスを抹消したの。 」
「 ・・・ もう 二度と。 きみの涙をみたくなからさ。 」
「 なんですって・・・? 」
都会の真ん中にも思いもかけず、自然が残っているものだ。
ジョ−とフランソワ−ズはサ−キットを後にして そのまま都心まで車で戻ってきていた。
耳をすませれば潮騒のごとく都会の喧騒と車の音が聞こえるが とりあえず周囲は
木々で囲まれ、生き残りの虫の声もときおり響いてきたりもしている。
たまにすれ違い、 また追い越してゆく人々もいたが皆 ゆったりと歩んでおり、
他人にはあまり関心はない風情だった。
そんな中を茶髪の青年と亜麻色の髪の乙女は ひくい声で語らいつつ歩いていた。
「 ・・・ そう。 わかったわ。 」
「 え・・・ わかって ・・・ くれたのかい? 」
フランソワ−ズはぽつり、とつぶやき、ゆっくりと脚を止めた。
そんな彼女を ジョ−はすこし意外な面持ちで振り返った。
激しい反論か ・・・ 酷ければ非難の言葉を浴びるか、と予想をしていたのだが、
目の前の彼女は ― 彼の仲間、サイボ−グ 003 の彼女は ただじっと彼を見つめている。
「 ジョ−。 」
「 なんだい、フランソワ−ズ。 」
「 ・・・ 意気地なしッ!!! 」
低いけれど鋭い一声とともに 細い腕はしなやかに空を切りしたたかジョ−の横面を張り飛ばした。
「 ・・・ く ! 」
「 あなたの重荷になるのだったら、わたしのことなんか忘れてちょうだい。
わたしはあなたの前から姿を消すわ。 」
「 フランソワ−ズ! なにもぼくは・・・ 」
「 明日、ナリタを発つわ。 ・・・ さようなら。 サ−キットでの活躍を祈っているわね。 」
「 ・・・・・・・・・ 」
「 ごめんなさい、叩いたりして・・・ あなたの気持ちはよくわかっているつもりよ。
本当をいうとね、 戦場で銃を構えているあなたよりも
スピ−ドに命を掛けているジョ−の方がずうっとステキよ。
いつか ・・・ 機会があったら。 あなたがトップでゴ−ルする瞬間を見に行くわね。 」
「 ・・・ フランソワ−ズ ・・・ ! 」
「 それじゃ。 サヨナラ。 」
「 フラン・・・・ Au revoir ( また会う日まで ) とは言ってくれないのかい。 」
「 ・・・・・・・ 」
フランソワ−ズは 淡く微笑むとそのままくるりと背を向けた。
・・・・ コツコツコツ コツコツ コツ ・・・・
密やかな足音が次第に都会の喧騒の中に消えていった。
ジョ−は 一歩も踏みだすこともできず、ただただ 立ち尽くしていた。
慌しい中にも 空気はぴん・・・!と張り詰めて全員の心が共鳴していた。
国際宇宙研究所の 専用発射台で異星の宇宙船 ( ふね ) が その優美な姿を見せ
宇宙 ( そら ) へと羽ばたく時を静かにまっていた。
ゼロゼロナンバ−・サイボ−グ達は久々に防護服に身を固めコクピットに集合した。
いや
連れ去られたイワンと そしてもう一人・・・・ 最後に仲間入りした一人、を除いて。
全員がそのことで心を痛め、しかし誰もあえて口に登らせはしない。
「 ・・・ 皆 ・・・ どうぞ宜しくお願いします。 」
中央のコンソ−ル盤の前に立ち、 フランソワ−ズがメンバ−達に声をかけた。
「 補佐してください。 頼りない艦長でごめんなさい。 」
「 へ! なに言ってるだ? オレ達のリ−ダ−はフラン、お前って決まってるんだぜ? 」
「 左様。 我らがマドモアゼルを置いて適任者はおらんよ。 」
「 ・・・・ お前には精霊の加護がある。 安心しろ。 」
「 システム部門は任せてくれよ。 サバもいてくれるし、バッチリさ。 」
「 フランソワ−ズさん、僕こそどうぞよろしくお願いします。
ああ、それにしてもこの星の女性は素晴しく勇敢で優秀ですね! すごいや・・・ 」
「 ほっほ♪ みんなの胃袋はワテが預かったで。 安生構えていてや〜 」
「 安心しろ。 出来る限りサポ−トする。 お前の指揮力を信じているぞ。 」
「 ・・・ ありがとう・・・ ありがとう、皆・・・! 」
フランソワ−ズは目頭を押さえ ・・・ ふと視線は空席となったサブ・パイロット席へと落ちた。
・・・ もう、忘れたはず、でしょ。 彼は別の世界で幸せに生きてくれればいいわ・・・
さようなら・・・ ジョ− ・・・・
ひっそりと 彼女はつぶやき一瞬、きゅ・・・っと目を瞑った。
そして。
ふたたび その青い瞳が開かれた時、 りんとした声がコクピットに響き渡った。
「 総員 配置につけ。 」
「 了解! 」
頼もしい声が 方々から飛んできた。 きゅ・・・っとシ−ト・ベルトを締める音が鳴る。
すうっと一息、深呼吸をすると・・・
「 待ってくれ ・・・!!! 」
「 ??? なんだ??? 」
全員の脳波通信に 大きな声が飛び込んできた。
「 待ってくれ! ・・・ 頼む、一緒に ・・・ 行かせてくれ。 」
「 ・・・ 009 ・・・ !! 」
イシュメ−ルは出航も秒読みに入る寸前で スケジュ−ルが若干変更された。
しかし 待つほどものなくコクピットからは準備完了の知らせが届き、
コントロ−ル・センタ−に詰めるギルモア博士をほっとさせた。
ほんの数分の遅れのあと、異星の船は優美な姿をふわり、と宙に浮かせ
そのまま 空の中へ飛び去っていった。
一人の追加参加者をのせ、8人のサイボ−グ戦士達と一人の異星の少年は
はるか星の彼方を目指し、母なる地球を後にした。
「 ・・・ オ−ライ。 自動操縦に入ったぜ。 」
「 ・・・ ・・・・O.K. 。 現在異常ナシ。 イシュメ−ルは巡航速度に入ります。 」
ピュンマが計器を読み上げ、軽く手を揚げて全員に合図をした。
「 了解。 ・・・ オフ・タイムに入ります。 どうぞご自由に ・・・ 」
フランソワ−ズのいつもの、皆が聞きなれた声が穏やかに響いた。
ほう・・・っと 安堵の吐息がコクピット中に満ちてゆく。
「 どうもな〜 慣れないヤツってのは気を使うぜ。 ドルフィンだったらよ、目ェ瞑っていても
ちょちょいのチョイ、なんだけどよ〜〜 」
ジェットがどさ・・・っとシ−トを倒し派手に伸びをした。
「 う〜ん・・・ でも慣れればこの船はすごく使い易いと思うな。
このファンクションはドルフィンにも応用できると思う・・・ 帰ったら早速・・・ 」
好奇心満々で ピュンマはあれこれチェックを続けている。
「 これから例の<抜け道>まで どのくらいかかるのか。 」
「 ・・・ え〜と。 航路図を出します・・・ 現在位置がここですから・・・ 」
アルベルトの問にサバがスクリ−ンを開き、説明を始めた。
・・・ あら。 ジョ−は。
フランソワ−ズはコンソ−ル盤前のシ−トに腰を下ろし、サバの解説を聞いていたが、
ふと ・・・ 空席が目に入った。
もちろん、オフ・タイムなので席を外すのは自由だ。
張大人などは 嬉々として厨房に跳んでいってしまっている。 お茶の準備を始めているらしい。
つい、今までちゃんといたのに。
サブ・パイロット席で黙々と作業をしていた茶髪の青年の姿は 消えてしまっていた。
ドルフィン号がその翼を広げ 空に海に勇姿を現すとき、メイン・パイロット・シ−トには
何時だって彼の姿があった。
ほんの少し首を左に傾げ、彼は実に滑らかにこの<イルカ>を飛ばす。
彼の手にかかると 鋼鉄のイルカは実にしなやかにそして時には優美にさえ空を飛び
そして海に潜った。
「 あれだけはよ、かなわねぇ。 ドルフィンもヤツの操縦を喜んでいるみたいだぜ。 」
「 ドルフィンはオレ達の仲間。 ・・・ 気持ち、一緒だ。 」
操縦歴は、遥かに勝るジェットが率直に認め、ジェロニモが重々しく肯定する。
彼らの言葉を待つまでもなく、メンバ−全員が ドルフィンはジョ−の手に預けるものだ、と確信していた。
それが・・・
星々の彼方まで出掛ける長旅には 違った<船>が彼らを待っていた。
そして パイロットは。
「 ぎりぎりまで待ったの。 でも・・・ 来なかった。 彼は ・・・ 来なかったの・・・・ 」
フランソワ−ズは集合していた仲間に ぽつり、と伝えた。 語尾が震え途切れてしまった。
「 わかった。 ヤツはヤツの志を追えばいい。
俺たちはやはり俺たちの目指す先へゆくだけだ。 」
「 ・・・ アルベルト。 」
「 行くぜ! フラン、任せときって! 」
「 お疲れさんだったね。 大丈夫、この船はパイロットの役目も充分にこなすよ。 」
「 ・・・・ みんな ・・・ ありがとう・・・! 」
一人欠ける喪失感を、サイボ−グたちは全員で分かち合うことで埋めてゆくのだった。
結局 出航ギリギリに脳波通信をとばし、彼は、 島村ジョ−は駆け込んできた。
そして メイン・ドアからコクピット中を見回すと深々とアタマを下げた。
「 ・・・ 迷惑かけて申し訳ありません! 一緒に行かせてください! 」
誰一人返答をするものはいなかった。
カウント・ダウン を刻む時計の音だけが響く。
しかし緊迫しているはずの空気は なぜかほ・・・っと安堵の気持ちに満ちていた。
誰もが 心の隅で目の前の事態を望んでいたのかもしれない。
「 ・・・ カウント・ダウン、一旦中止します。 」
ピュンマの声にも抑揚がない。
「 了解。 ・・・ 着席しなさい。 008、カウント・ダウンのリトライを。 005、気流の再チェックを。
004、総人数一名追加の報告を送ってください。 」
「「「 了解 」」」
再び 時計音が始まった。
「 では。 総員 配置につけ。 009、サブ・パイロットとして002を補佐せよ。 」
「 了解。 」
す・・・っと中央に華奢な防護服姿が立ち上がる。
まっすぐにメイン・スクリ−ンを見つめる瞳は どこまでも青く澄んでいる。
「 イシュメール、 発進 ! 」
全員が船の航行に心をひとつに集中した。
そして たった今。 やっと船はレ−ルに乗ったのだ。
サバの解説はまだ続いていたが フランソワ−ズは静かに席を離れた。
靴音をしのばせ、コクピットから船尾の艦橋へむかった。
イシュメ−ルはコンパクトな船なのだが、内部は意外とひろく廊下もせせこましい感じはしない。
足早に通りぬけ、後ろ正面のドアに行き着いた。
シュ・・・ !
かすかな圧縮音とともに 彼女の目の前には全天の星の海が広がった。
「 ・・・ わあ ・・・ すごいわ・・・ 」
出発前に一応見学はしていたが 実際の<現場>は想像をはるかに超えた星々の饗宴だった。
「 ・・・ うん。 ぼくもなにも言えないよ・・・ 」
思ったとおり、低い声が最後尾の位置から聞こえてきた。
「 ふふふ ・・・ なにか言っているじゃない? 」
「 え・・・ あ、ああ・・・ そうだけど。 」
フランソワ−ズは足早に彼の隣へと艦橋を横切っていった。
「 ・・・ すごいわね。 星の海に溺れそう・・・ 」
「 本当に泳げそうだな。 きっと ・・・ さらさら気持ちがいいかもしれない・・・ 」
「 え? なにが。 」
「 いや、海って言うからさ。 外に出て宇宙空間を泳いでみたくなったのかな、と思って。 」
「 まあ・・・・ ふふふ ・・・ 相変わらずねえ、ジョ−・・・ 」
フランソワ−ズは声を上げて笑った。
「 え・・・ そ、そうかな。 なんか ・・・ ヘンかな、ぼく。 」
「 ううん、ううん。 そんなことないわ。 ・・・ ジョ−は ジョ−よ。 いつだって、何処でだって。 」
「 ・・・ フランソワ−ズ。 」
ジョ−は窓から視線を戻し フランソワ−ズと向き合った。
「 ね。 聞いてもいい。 」
「 ・・・ どうぞ。 」
「 どうして、なんてバカなコトは聞かないわ。 でもひとつだけ。
本当に一緒に来て 後悔していない? せっかく築いたキャリアも安定した生活も捨てて・・・
こころから あなたはわたし達と行動をともすることを望んでいた? 」
青い瞳が 強い光を放ち、まっすぐにジョ−を見つめている。
・・・ 綺麗だ・・! ああ、なんて美しいのだろう・・・!
窓の外のどの星よりも、 フラン、 きみの瞳は輝いているよ!
「 ・・・ ぼくは。 」
ジョ−の声がすこし、嗄れて聞こえる。
「 やっと気がついたんだ。 きみを失うのは 今この瞬間だって恐い。
だから ・・・ 来たんだ。 」
「 どういうこと。 」
「 ぼくが ぼく自身が護る。 ぼくの全てをかけて ぼくはきみを護る。
自分自身の命なんかすこしも惜しくはないけど、 きみは・・・きみを失う恐怖に・・・・ぼくは・・・ 」
「 ・・・ ジョ− ・・・ 」
フランソワ−ズは ことん、とジョ−の胸にオデコを付けた。
「 ・・・ フラン・・・ ? 」
「 ほんとに ・・・ 本当に ・・・ おばかさんねえ・・・ ジョ−ってば。
ほら・・・ お星様にわらわれてよ? 」
「 え・・・ だからぼくは。 きみを・・・ あ・・・ 」
「 ええ、ええ。 護って頂戴。 そして わたしを援けて。 ・・・ お願い。 」
ふわり、と亜麻色の髪が彼の広い胸に広がった。
「 きみを 護るよ。 きみが この広い星の海で、きみ自身の踊りを思う存分舞えるために!
ぼくは全力で ・・・ 全ての敵に立ち向かうよ。 」
「 ジョ− ・・・ ! うれしいわ・・・ ここに、わたしの側にいてくれて・・・ 本当はね ・・・・ 」
「 うん? なんだい。 」
フランソワ−ズは ジョ−を見上げると ぱあ・・・っと微笑んだ。
「 本当は・・・ ジョ−がいなくて 恐くて恐くて仕方なかったの・・・!
もう ・・・ 大丈夫。 わたし、頑張れるわ。 ジョ−がいてくれれば・・・・ ! 」
「 ・・・ フランソワ−ズ。 きみってひとは本当に・・・ 本当に ・・・ 」
「 本当に・・・なに? 」
ジョ−の大きな手が ふわり、と亜麻色のアタマを抱え込む。
「 ああ、もう・・・! この魅力にぼくは勝てないよ! ・・・ きみはぼくの全てさ。 」
「 ・・・ ジョ− ・・・ 愛してる・・・愛しているわ。 」
「 ぼくもさ。 きみさえいれば なんだってできる・・・! ふふふ・・・ それに、さ ・・・ 」
「 ? なあに、どうしたの。 」
「 うん・・・ あの平手打ちさ。 けっこうインパクトあったぜ? 」
ジョ−はくすくす笑い 左の頬を摩っている。
「 ヤダ・・・ ねえ、お願い。 皆には 内緒にしてね? 」
「 ふうん・・・? それじゃ ・・・ コレも < 皆には 内緒 > さ。 」
「 ・・・ あ ・・・ ぁあ んんん ・・・・ 」
ジョ−は両手を彼女の頬に当てると 静かに唇を重ねてきた。
行こう! きみの望むところまで、 きみと一緒に。
ええ。 一緒に・・・ もう この手を離さないわ・・・!
やがて絡まりあう二人を 星々は穏やかな光で包み銀河の祝福を与えるのだった。
「 あれが ・・・ スタ−・ゲ−ト か。 」
「 そうです。 僕は地球に来る時、ここを抜けて来ました。 」
「 ひょ〜〜〜 すげ・・・ CGの化けモノみたいじゃん。 」
「 ・・・ 綺麗ねえ・・・ 宇宙のオ−ロラみたいだわ。 」
「 ほう・・・ マドモアゼル、イイコトを言うではないか。 オ−ロラは曙光の女神・・・・
我々の前途を明るく照らしてくれる・・・かもしれぬよ。 」
全員が目の前に広がる異世界への入り口に目を奪われていた。
サバの解説によると、このゲ−トを抜けることによって一種の近道ができるらしいのだ。
実態はどうあれ、黒暗々の宇宙空間に浮かぶ、それは妖しい花にさえ見えた。
「 ・・・ 狭き門より入れ、滅びにいたる門は大きく、か。 」
「 ほう? アンタでもそんなコトを思い出すかね。 」
「 ふふん ・・ 天に近いところにいるせいだろ。 」
アルベルトは珍しく軽口を叩き、グレ−トはにやりと笑った。
「 そうね。 行きましょう、 < 狭き門 >から。 」
「 だけど、狭いってことはさ。 恰好の <マウス・トラップ> でもあるんだよね。
う〜ん ・・・ レ−ダ−の範囲には問題になりそうなモノは反応していないんだけど。 」
ピュンマは自身のシ−トに駆け戻りパネルを操作している。
「 ・・・ そう ・・・ わたしの <眼> にも捉まえられないわ。 」
フランソワ−ズが 視線を船内にもどし、静かに報告した。
「 さすが、我らが艦長。 それでは門をくぐりますかな。 」
「 まて。 ジェット、 それに ジョ−。 出来る限りあのゲ−トに近づけろ。 手動でな。 」
「 了解〜〜 ♪ ジョ−、右舷を頼ま。 」
「 了解。 」
イシュメ−ルは速度を落として 綾なす光の門に近づいていった。
「 ・・・! 止めて !!! 」
「 障害物発見! 停止! 艦を止めるんだ! 」
フランソワ−ズとピュンマが ほほ同時に叫び声を上げた。
「 な、なんだ?? なにも見えねえぞ?? 」
「 なにか ・・・ すごく小さなものが一面に浮遊しているの。 あれは ・・・岩石?
・・・ ううん ・・・違う、ホンモノもあるけど・・・ あ! あれは!! 」
「 爆発物反応あり! 触れると爆発する・・・一種の機雷だよ! 」
「 なんだって?! ・・・ ふん、通り道にはちゃんとトラップあり、ということか。 」
「 は! そんじゃゴミ掃除といくか。! 」
ジェットがぶんぶんと腕を振り回している。
「 そうね。 全員で取り掛かりましょう、 <掃除> にね。 」
「 うほほ・・・ほんなら どなたさんもお掃除、いたしまほ。 」
大人の軽口に サイボ−グ達は意気揚々と射撃体勢にはいった。
しかし。
「 くそ〜〜〜!! やけにちまちま動きやがる! 」
「 う・・・!! ダメだ、この船の銃では追いきれない! 」
「 ここを突破しないとあちらさんの入り口までたどりつけんな。 ・・・一発で・・・・ 」
「 ノヴァ・ミサイルを使いましょう。 」
「 ! でも まだテストしかしていないよ。 どんな影響があるか・・・ 」
「 いつかは使わなければならないもの。 ちょうどいいわ。 」
きっぱりと言い切った青い瞳には 迷いの影は微塵も見当たらない。
「 ちょっとだけ待ってくれるかな。 」
「 え? 」
「 ぼくに時間をくれ。 ・・・そうだな、15分、いや10分でいい。
ちょっと席を外すけど・・・ すまない、ジェット、頼むよ。 」
「 席を外すって ジョ−! てめぇ?? 」
メイン・パイロット席からの怒声に手を上げ、コクピット全体にちら・・・っと視線を飛ばすと
ジョ−はごく普通の足取りですたすたと出て行った。
「 ・・・ なんだあ アイツ・・・? 」
「 ・・・あ! 見て!」
全員の視線がスクリーンに釘付けになった。
そこにはセイフティ ベルトをつけた赤い防護服姿が現れやおらスーパーガンを構えた。
そして 浮遊する超小型機雷をひとつひとつ正確に撃ち抜き始めた。
「 やられたぜ〜! ジョー! オレも混ぜろ〜 」
「 バカ。パイロットが出払ってどうする気だ!」
「 あ〜〜 アイツ〜〜 腕を上げたな! 」
ジョ−はス−パ−ガンで 小気味良く次々と超小型の機雷を爆破してゆく。
「 ?? 消えた・・・ ? あ! 加速したのか? 」
「 え。 ・・・ 大丈夫かな、宇宙空間で加速装置を作動させるのは初めてじゃないかな。 」
「 時間がないわ。 」
「 え? ヤツの体内の酸素ボンベはまだ充分・・・ 」
「 いいえ、そうじゃなくて。 レ−ダ−を見て。 船の位置がすこしづつ移動しているの。 」
「 ・・・ あ! これは・・・ あのスタ−・ゲ−トに引き寄せられているんだ!
・・・ 009! 早くもどれ! 」
「 だめだ。 加速中に脳波通信は届かない。 」
「 でもよ! このままだとヤツをココにほっぽり出したまま オレ達はあのCGの巣に
吸い込まれっちまうぜ! 」
「 なんとか009に知らせる方法はないのかね。 」
「 ・・・ ないな。 」
「 んなこと言っても! ・・・よし! オレが外にでて加速装置でヤツに追いつく! 」
「 だめだ! パイロットが勝手な行動をするな! 」
「 でもよ! 」
「 ・・・ 総員配置につけ。 008、サバと協力してスタ−・ゲ−トまでの正確な距離を
逐次報告してください。 002。 できるだけ速度を落として。 」
「 了解。 ・・・ でも ・・・ 」
「 004。 ノヴァ・ミサイル、スタンバイしてください。 」
「 了解。 」
「 ・・・ イシュメ−ルは 只今からスタ−ゲ−ト突入体勢にはいります。 」
抑揚のない声が し・・・んとしたコクピットに響いた。
サイボ−グ戦士達はきつく口を噤み、艦長の指示どおりに動き始めた。
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updated : 10,21,2008.
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************** 途中ですが ・・・
す、すみません〜〜〜 終わりませんでした 〜〜〜 (;_;)
はい、もうな〜〜にも言うことはござりませぬ。 例のアレの! ぱろでぃ でございます♪
ここは93スキ−の領土ですら♪ アレも 93色眼鏡 でみますと、こ〜ゆ〜コトに・・・
かっこいい・フランちゃんを ご一緒に応援しましょう!
ジョ−君! きみもリベンジしたまえよ???
あ、 アレを未見のかた、ごめんなさい〜〜〜<(_ _)>
あと一回、お付き合いくださいませ。 ・・・ふふふ・・・ 地雷キャラ、でますよん♪
あ、タイトルは例の千年の恋物語の最終章から拝借しました。
そして 滅茶苦茶戦闘シ−ン、どうか目を瞑ってくださいませ〜〜