『  蝶の夢  ― (3) ―  』

 

 

 

 

  ぽ 〜〜〜 ん ・・・・

 

北国の夏の爽やかな空気の中に 飛び出した ― つもりだった。

下は草地だったから 十分楽に着地できる、と自信もあった。

 

   ふふふ・・・ ぐら〜〜〜ん ジュッテ〜〜〜♪

   なあんちゃって〜〜〜

 

自然に落下してきたので 着地の準備をした  ― その時

 

 チカリ。  太陽の光が目に入った。

 

「 きゃ ・・ まぶしい〜〜〜   ああ やさしい光ね 気持ちいいわあ〜 」

彼女は目を閉じ風を感じつつ 大地に降りるのをまった。

 

  

      ぱふん。  ぽん。  

 

 

思わず軽く尻もちをついたのは  なにか柔らかい網の上だった。

 

「 ・・・ え ・・?  」

 

  ふわ〜〜〜ん ふわん ふわん ふわん〜〜〜

 

花と蔓でできた網に乗り フランソワーズの身体は左右に大きくゆれた。

「 な なに?  なんなの?? 」

慌ててしっかりつかんだ網は 柔らかくいい香がした。

揺れが小さくなってからそうっと身を起こせば ―  周囲はたったさっきまで

見まわしていた 北国の夏の野原 ではなかった。

いや 野原 は 野原 なのだが 

 

「 うっそ〜〜〜〜  ここ ・・・ 花畑??? 」

 

フランソワーズが引っ掛かっている網の下には まさに色とりどりな花の絨毯がひろがり

水色の空のもと 柔らかい風が通り 甘い香に満ちている。

でも 飛び立ったはずの大きな楡の樹も その下にいた < 家族 > の姿も

きれいさっぱり 消えていた。

「 ・・・ わたし ・・・? どうしたの?? ここは どこ 」

アタマを低くした姿勢のままで < 眼 > と < 耳 > のスイッチを入れ ―

 

   え???   なんで??  なにも − 変わらないわ??

 

どんなに目を大きく見開いても 耳を澄ませても 003の眼と耳 は 全く起動しない。

いや そもそも人工の機関はわが身の内に存在しない ・・・ らしい。

 

「 わ わたし ・・・?? 」

 

 ちゅぴ ちゅぴ ちゅぴ〜〜〜  ( ほら 笑って? )

 

 ちゅん ちゅん ちゅ ちゅ   ( 妖精さん、花の蜜は いかが? )

 

彼女の周りには小鳥たちが ひらひら・・・集まってきた。

中には 花を落としてゆく鳥もいる。

「 ・・・ 小鳥さんたち ・・・ あら 言葉が分かるわ??  

 

 くるるるる・・・・  ( どうぞ 木の実を )

 

 ちゅ〜〜い ちゅい ちゅい ( 草の実も どうぞ )

 

栗鼠やらイタチが ぽ〜〜ん …と 栗やらスグリの実を投げてくれた。

 

「 まあ ありがとう … 降りてみようかしら 」

 

そう・・・っと花綱のハンモックをおりれば 大地は暖かい。

ふと目を落とせば 足には軽い布の靴を履いている。

 

「 ああ ・・・ いい気持ち ・・・ 脚が軽いわあ 〜〜 」

彼女は すい・・・と脚を上げると花畑の上を踊り始めた。

花たちは彼女にむけて茎をのばし蕾はゆるゆると開き 虫たちはその周りを飛び回る。

周囲に見える大きな樹からは 小鳥たちが飛び交いリスたちが木の実を集め お裾分けを

投げてくれた。

「 まあ ありがとう。  あ ほら ここにも熟れた実があるわ どうぞ? 」

ちゅぴ ちゅぴ ちゅぴ〜〜〜 小鳥は彼女の手から実を啄んだ。

「 うふふ・・・ 美味しいわよねえ ・・・ 

 ねえ 一緒に飛んでみたいわあ〜〜  ほら 飛べる かも・・・? 」

 

  ふわ〜ん ひら ひら ひら ・・・

 

風にのり金の髪を靡かせ踊るうちに 彼女はだんだんと記憶が薄れてきた。

 

    わたし ・・・?  誰 ・・・ だっけ ・・・?

    ・・・ いいわ もう・・・ こうやってずっと踊っていたいだけ ・・・

 

ひら ひら ひら ・・・ すとん。

少し疲れて 草地に脚を止めた。  花畑を眺め 腰をおろす。

 

  ぴぃ ぴぃ ぴぃ ・・・

 

足元の草の中から か細い声がする。

「 ?  あらら・・・ 巣から落ちてしまったのかしら 」

彼女が掬い上げたのは  ほわほわ産毛の小さな雛。

「 え〜と?  あなたのお家はどこかしら 」

ぐるりを見回せば ―

 

   ちゅん ちゅん ちゅん 〜〜〜

 

一羽の小鳥がすっとんで来て 彼女の周囲を飛び回る。

「 あ お母さんがきたみたいよ?  ねえ 小鳥のお母さん お家はどこですか? 」

  ちゅん〜〜〜

「 こっち?  あ  この枝の上ね  よい … しょ 」

するり、と木に登ると 彼女は雛を巣にもどした。

「 さあ もう落っこちないようにね〜〜 よかったわ 」

 

   ちゅん ちゅん  ちゅん〜〜〜〜  ぴぃ ぴぃ ぴぃ ・・・

 

「 うふふ・・・ いい声ねえ もっと歌って? 」

彼女は草地に座りこみ 小鳥たちの声に耳を傾け優しい風を頬に受けるのだつた。

 

「 ・・・ 妖精さん ? 」

「 ・・・ ? 」

背後からおずおずよびかける声があった。

振り返れば 年配の女性がコップをもって立っていた。 農婦なのかもしれない。

「 あ  の ・・・ よかったら ・・・ これ どうぞ?

 ウチで絞ったオレンジの飲み物ですよ 」

「 まあ ・・・ ありがとう! ちょうど咽喉が乾いたなあ〜って思っていたの。

 とってもうれしいわ。

「 アナタが舞うと虫や蝶たちが花に来てくれます。 いい実が生りますよ。

 ミツバチたちが せっせと花から蜜を集め始めました。  ありがとうございます 」

「 わたしの踊りで? 」

「 ええ ええ ・・・ あなたは 妖精さん でしょう? 」

「 ・・・ そう ・・・ かもしれない わ 」

「 どうぞ その踊りでこの地をもっともっと豊かにしてください 」

「 わたしにできるかしら 」

「 できますとも。  この地には時々 天 ( そら ) から妖精さんが

 飛んできて 祝福してくれますです。 ですから妖精さんのための棲み家もあります。

 どうぞ あなたもその家にご滞在くださいな。 」

「 まあ  そうなの? ・・・ ありがとう! 」

瑞々しい果汁を飲み干し フランソワーズは ― いや 金の髪の妖精はにっこり笑った。

 

 その日から この地域では作物は豊かに実を結び花々が今までにもまして

色艶やかに咲き乱れ始めた。 

金の髪の妖精は木と草でできた家に住み 晴れの日はもちろん雨がしとしと落ちる時でも

ほうぼうの畑で 虫やら鳥やらミツバチと一緒に踊った。

人々は ひらひら踊る彼女を 金の妖精さん と 親しみをこめて呼ぶのだった。

 

やがて ―  ウワサは国を統べる国王夫妻の耳にも達するようになった。

「 ほう・・・ いちど その妖精とやらの舞を見たいものだな 」

「 ほんとうに ・・ どんなにか美しい妖精なのでしょうねえ 」

「 では つぎの収穫祈願の祭に呼んでみるか 」

「 そうですわね  あ でも 畑での収穫には障りありませんかしら 」

「 ふむ ・・・ 妖精の棲む地域の長にまずは尋ねてみようか 」

「 そうしてやってくださいませな 陛下 」

「 うむ うむ   楽しみだな 妃よ 」

「 はい  」

領民想いの思慮深い国王夫妻は 仲良く笑いあうのだった。

 

ひらひら舞い踊る金髪の妖精は王城に伺候し 国王夫妻もたちまち虜になり ・・・ 

好きな時に行きたい場所で舞ってよい、ということで 妖精は国王夫妻の養女となった。

王国はますます豊かに、人々は穏やかに微笑みつつ暮らすのだった。

 

 ― 幾度か季節が巡り ある収穫の季節の前に金の髪の姫君の婿選びの宴が

開かれることになった。

 

そして 今  金の髪の姫君、いや フランソワーズはひらひらした衣装を前に

佇んでいるのだった。

 

「 ・・・ なんだか・・・ よく覚えていないんだけど ・・・

 以前はもっと違う風に生きてた ・・・ と思うんだけど よくわからないわ 」

アタマを振れば 金の髪がゆらゆら揺れる。

「 でもず〜〜〜っと踊っていたのよ きっと。 だってお日様が輝けば

 風が流れれば ほうら・・・ 脚が動くのよ 」

彼女は  くるくる・・・回ってみせた。

「 明日は 王子様方がいらっしゃるのですって。  

 ああ ・・・ そんな風な場面って 前にもあった ・・・ かも ・・・

 そう ・・・ こうやって四人の王子様を踊ったわ  」

 

     あ。  ローズ・アダージオ !

 

ぱ っとその言葉が浮かび 彼女の腕脚は自然に滑らかに動きだすのだった。

「 そうよ。 わたしは ―  オーロラ姫 ! 」

 

 

  パパパラ パパラ パパパパ 〜〜〜〜〜〜 !!!

 

ファンファーレが 王宮の広間に響き渡る。

ざわざわざわ ・・・ 着飾った大勢の王侯貴族たちは一斉に広間の入口に

向きなおった。

「 国王陛下 女王陛下  そして 王女殿下おでまし〜〜 」

 

  ざ ・・・・  貴族たちは胸に手をあて頭を垂れ 貴婦人たちは腰を屈め会釈をする。

 

「 よくおいでくださった・・・ さあ 本日は無礼講だぞ。 」

「 おいでくださってありがとう  どうぞ存分に楽しんでいってくださいね 」

気さくに声をかける国王夫妻の後をついて 金の髪の姫君は 爽やかな笑顔を

周囲に振り撒いている。

 

    なんか ・・・ この雰囲気、 知ってる??

    え〜〜と? このあと 四人の王子さまと踊る のよねえ?

 

宴は賑やかに進んでゆき 誰も彼もが美酒やら美味しいものを楽しみ談笑していた。

 

 ぱっぱらぱ〜〜〜〜〜〜   「 王子さま方のお着きぃ〜〜〜 

宴もたけなわの頃、 一際大きくラッパが鳴った。

 

「 おお ・・・ さあ 姫や こちらにおいで 」

国王は 金の髪の姫君を手招きした。

「 東から 西から 南と北からも そなたに想いを寄せる貴公子たちがいらしたぞ  」

「 さあさ・・・姫 ご挨拶なさいな 」

父母に促され 姫君は四人の王子の前にすすみでた。

 

「 ・・・ はじめまして ・・・ 」

「 おう! ヨロシクな〜〜 キレイ姫ちゃん〜〜 」

赤毛ののっぽは元気いっぱいだ。

「 こんにちは 

「 ずっと焦がれておりました、金の髪の姫君よ 

銀髪の紳士は 慇懃に挨拶をし熱い視線をよこした。

「 いらっしゃいませ 」

「 やあ! ここはいい土地ですね〜 僕は南の地から来ました。 」

褐色の肌の青年は 白い歯を見せ爽やかに笑った。

「 ようこそ ・・・ 

「 貴女は 僕の亡くなった妹にそっくりです ・・・ 美しい方 

やはり金の髪の青年は 前髪の間からじっと彼女を見つめるのだった。

 

 「 さあ〜〜 音楽を!  王子様方、どうぞ姫君とお踊りください 

  舞の終わりに 姫君は意中の方の手をお取りになりますゆえ ・・・

  楽師の方々 最高の演奏をお願いします。 

 

式典長を思しき男性の声で 愛器を抱えた楽師たちは演奏を始めた。

 

〜〜〜〜♪♪  ♪♪♪ 〜〜〜

 

 姫君は ピンクの裳裾を翻し 軽々と踊りはじめた。

一人一人の王子と 楽し気に踊り魅惑の笑みを振り撒いた。

 

〜〜〜〜♪ !!

 

 やがて 王子たちと姫の舞は終わった ― が 

 

「 姫や どのお方が気に入ったかな? 」

「 姫 ・・・ お気に召した方はどなたかしら ? 」

国王と王妃は左右から姫きみに尋ねたが 

 

   「 ・・・ あの ・・・ どの方も素敵なのですけれど ・・・ 」

 

もうすこし踊りたい ・・・ 姫君はそのままくるくる舞い始めた。

 

「 おやおや ・・・ 少し考える時間が欲しいのかな?  姫は 」

「 そうですわね  どの方も素敵ですものねえ〜〜 」

 

    こまったわあ ・・・ 皆 とても親しみを感じるんだけど

    どの方も この方も 仲間・・っていう気分なのね

 

        そう〜〜  ときめかない っていうの??

 

ひら ひら ひら〜〜〜〜  姫君は高く低く踊る。 広い会場はテラスから庭園にも

つながっているので 彼女はそのまま庭園に踊りでてゆく。

広い庭園は 庶民たちにも開放されていたので 多くの人々が集まっていた。

 

  あら 姫君が ・・・  おお お美しい〜〜〜

  まあ 妖精の姫だわ〜〜   あの笑みは最高だね ・・・

 

人々の称賛の中 彼女は前栽の側まで踊っていった。  すると ―

 

「 いひひひ ・・・ 姫さま 〜〜 お祝いにこれをどうぞ 

茂みの陰から 灰色の老婆がなにか光るものを姫にさしだした。

「 ? これは なあに 」

「 これは 糸紡ぎ ですだ。 ほうら・・・針がありますでしょう? 」

「 あら 本当〜〜 こうしてお日様にかざすと キレイ・・・! 」

彼女は 糸紡ぎを手に再び ひらひら・・・ 舞いはじめた。

 

「 ほうら〜〜  キレイでしょう?? 見て 見て〜〜〜 」

 

  あれれ ・・・ 何をもっていらっしゃるのかな?

  あ 危ないわ あの針は案外鋭いのよ?

 

周囲から 次第に心配の声が上がり始めた。

「 姫 ・・・ どうぞお止まりください。 」

さきほどの銀髪の王子が 彼女の後を追ってきた。

「 あら〜〜 だってこんなにキレイなのに〜〜 ほら ほら〜〜 」

「 あっぶね〜よ〜〜 お転婆もほどほどにしな〜〜 」

 ぽ〜〜ん ・・・ 赤毛の王子がジャンプして 姫の手から糸紡ぎを取ろうとした。

「 あ〜ら うふふ〜〜 わたしの方が高く飛べるわ ? 」

ひらり ひらひら・・・ 彼女は巧みに逃げてしまった。

 

    ひら ひら ひらひら〜〜〜  

 

「  ・・・  うふふ ・・・・   あ ・・・!  痛っ ! 」

 

  つぴん。  とうとう糸紡ぎの先端で 指を突いてしまった。

 

「 い った ・・・ 」

ほんの小さな傷のはずなのに 全身がしびれてきた。

「 ・・・ ああ ・・・ 周りが暗くなってきたわ もう立っていられない ・・・ 

傷む指を抑え ふらふらと彼女はよろめきはじめた。

 

「 いひひひひ ・・・ 指先から毒が入るよ 全身に回ってゆくよ

 柔らかな身体は固く 冷え切って やがて命の炎も消えるよ  いひひひひ 」

 

灰色の老婆は 勝ち誇ったかのごとく嗤いをあげる。

「 ! てめ〜〜 なにものだっ ! 」

「 姫になにをしたっ 

「 間接的な殺人未遂だぜ! 

「 〜〜〜〜 姫〜〜〜〜 ! 」

四人の王子たちは てんでに剣を抜いて老婆に跳びかかったが ―

 

  ばさっ !!  ばさ ばさ ばさ  

 

老婆は灰色の烏に身を変えると 高声をあげ飛び去っていった。

 

   「 いひひひひ〜〜〜 いひひひ〜〜〜 冷え固まってしまうがいい〜〜

     このタマアラより 美しい妖精など消えてしまえぇ〜〜〜 

 

「 くそ〜〜〜 おのれぇ〜〜 」

 

その時 ―

 

   ちゅぴ ちゅぴ ちゅぴ〜〜   ちゅん ちゅん ちゅん     チチチチ〜〜〜

 

突如 姫君の指先にたくさんの小鳥やら蝶たちが群がってきた。

かれらは その羽根先で長い尻尾で そして開いた羽根で 姫君の傷口を撫で始めた。

小鳥たちはその身をもって 姫君の傷を癒してくれたのだった。

「 ・・・  え?  ああ 鳥さんたち・・・ 蝶さも ・・・?  

 あら  痛みが消えてきたわ ・・・ でも  ね  眠い 〜〜〜 」

 

 ふわ〜〜〜ん  ふわん ・・・ ふわん ふわ〜〜ん ・・・

 

姫君の足取りは ますます揺らめいてきて ―    ぱふん ・・・

 

「 !!  姫 〜〜〜〜 」

「 姫 姫〜〜〜 」

養父母の腕の中に 倒れこんだのだった。

「 姫〜〜  ん?  これは  眠っているのか ? 」

「 ええ??  ・・・ まあ 本当に ・・・ ごらんなさいましな この顔・・・

 微笑んでさえいますわ 」

「 うむ・・・ 乳母の君よ、特別な羽根布団を用意するように 」

「 それにね レースの帳ももってきてちょうだい。 」

国王と王妃の言い付けに 召使いたちがざわざわと動きはじめた。

招かれていた人々も なんとなくうろうろしだした時 ―

 

   あ ・・・?   雪 が ・・?

 

 ひら  ひら  ひら  〜〜〜〜

 

天から白いものが落ちてきた。

「 えええ?? ゆ  雪 ・・・?  この季節に!? 

「 ぶるるるる・・・ 急に冷え込んできたぞ  」

「 あ ああ ・・・ なんだか眠くなってきた ・・・ 」

「 ・・・ ほんに ・・・ ふぁ〜〜〜 」

 

 ひら ひら ひら ・・・・

 

ちらちら降り始めた雪はやがてしんしんと降り続き ― 辺りをすっかりと覆ってしまった。  

王城だけではない。 

花だらけだった野原も 緑したたる山々も すっぽりと白いものに埋もれてしまった。

 

 そう −  豊かな四季がめぐっていた国土は一変して真冬の原野となってしまったのだ。

そしてお城に居合わせた人々は 国王夫妻から料理番や お城の門番に至るまで

皆が 平和にすぴ〜〜〜・・っと眠りに落ちてしまった。

雪が降りしきるなか ・・・

 

        わさ わさわさ  わさ ―  ざざざざ 〜〜〜 

 

お城の生垣の隅っこに生えていた茨が 突然ぐんぐん伸びてきて 

人々が眠る城をすっかりと覆ってしまった。

 

「 ・・・ いつまで冬が続くんだろう ・・ 

「 お城の方々は 国王さま方は いつお目覚めになるのかしら 」

「 妖精の姫君は ・・・ 」

 

人々は冬の雪に耐えつつ 呆然と茨の森をながめ悲嘆にくれるのだった。

しかし不思議なことに雪の下には なぜか草やら木の実が生り 川には魚が元気に泳ぎ 

森では小動物や小鳥たちが元気に生きていた。

 

「 ・・・ おかしなこともあるもんだ 」

「 本当に ・・・ この冬は どこか温かいわね 」

「 うん  あ きっとあの妖精さんが 護っていてくれるのかも ・・・ 」

「 ほんになあ  眠っていてもあの輝きがこの大地を護っていてくれるのじゃ 」

 

  それにしても  ―  この白い闇はいつ終わるのか 

 

 人々は 灰色の空を見上げてはため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

「 えっほ ・・・ う〜〜〜ん えっほ ・・・! 」

雪深い森の中を 茶髪の青年が苦心惨憺しつつ進んでゆく。

「 えっほ えっほ〜〜 ・・・ ひえ〜〜〜〜  なんだってこんなに〜〜〜

 ただ 歩くだけ なのにぃ〜〜〜〜 

ずぼ・・・・っ ずぼ!

彼は大きく足を振り上げ 一歩一歩 雪の中を歩いていゆく。

「 う〜〜〜 ・・・ 加速そ〜〜ち! って 一遍にお城まで行けるはず なんだけどなあ ・・・ ま いっか。  

でも   さ  さむい〜〜〜 」

 

 へ〜〜〜っくしょん!!!

 

「 う〜〜〜 ・・・ あ そうだ〜〜 熱いお湯、もってきたんだったっけ 

ごそごそ背中の包みを開けてみれば 厳重に包んだ水筒はまだまだ熱々だった。

「 ・・・ ふぅ〜〜〜 ・・・ 生き返るな〜〜  

 あ こんな時に シナモン・スティック を齧るといいって言ってたっけ ・・・

まるまっちい料理人の笑顔が ほわん と浮かぶ。

「 〜〜〜〜 んん ああ しゃきっとしたよ?

 ・・・ あのヒト、どうみても張大人だと思ったんだけど なあ ・・・ 」

ふう〜〜〜 ・・・ 彼はため息をつき周囲を見回した。

「 うん? こっちは崖みたいになっているよ?    わあ〜〜〜 お城が見える! 」

さくさく雪を掻き分けてゆくと 崖の先端にでた。

眼下 ― といってもそれほどの高さはないのだが お城の塔がすぐ間近に見下ろせた。

「 よ ・・・・ よし。 あそこまで  ―  イッキに飛んでゆくぞ〜〜〜 」

 

  ぱちん。  彼は背負ってきた大きな蝙蝠傘を広げた。

 

「 ・・・ さ さあ 行くぞ〜〜  あとは  勇気だけだあ〜〜〜〜〜 

 

 えいっ!!  崖を蹴ると 彼は傘につかまってゆ〜〜らゆら・・・・

お城めざして 飛んでいった。

 

   

   ざざざざ 〜〜〜〜〜   ぼすん ・・・ ごろん っ 

 

いささか荒っぽいやり方だが ジョーはともかく王城の前の雪原に着地した。

「 〜〜〜 うわ〜〜〜〜っぷ ・・・ !

 ひえ〜〜〜〜  サイボーグじゃないって 不便だなあ ・・ ひえ〜〜 」

いててて・・・とオシリをさすりつつ 彼は雪の中から立ち上がった。

「 ここまで来たけど。  ここって ・・・ 森みたいだなあ 

目の前には巨大な茨の森が立ちはだかっているのだ。

「 さっき上から塔が見えたからなあ〜 ってことは この中にお城があるのか〜

 で そこに  フランがいる ・・・ のかな?? 

 う〜〜〜ん ・・・ ジョーは伸びたり縮んだりして茨の茂みを覗きこむ。

 

   チョット 待ッテ ― 今 君ノ 望ミヲ叶エテアゲルヨ じょ〜

 

「 ?? だ 誰だ ?? 」

「 僕ダヨ〜〜〜 」

 

   ぽわん。  ジョーの目の前に バラ色ほっぺの赤ん坊が現れた。

 

「 ! い イワン 〜〜〜 ?? 」

「 ?? ナニ ソレ。  僕ハ 守護ノ天使 サ 」

赤ん坊はえっへん・・・とちょっとばかり威張った顔で応えた。

「 て てんし だって?? 

「 ソウサ。  サア〜〜 城ノ中ヲ見セテアゲルヨ〜〜〜 」

「 ・・・ え ほ 本当かい? 」

「 ホウラ 〜〜〜 シッカリ見ルンダ〜〜〜 」

 

  ぷに ぷに〜〜  赤ん坊はぷっくりした小さな手を振り回しはじめた。

 

 

Last updated : 06,21,2016.                 back     /    index   /   next

 

 

*********   途中ですが

ああ〜〜〜 なにがなんだか ・・・・・ 滅茶苦茶かも・・・

すいません〜〜 あと一回 続きますです〜 <m(__)m>