『 蝶の夢 ― (2) ― 』
とんっ ころころころころ〜〜〜〜
「 う ・・・・?? うわあ〜〜〜〜〜〜 」
ジョーは足元にぽっかり口を開いた穴に すぽ〜〜〜んと落っこちてしまった。
「 な な なんなんだ??? あ ジェットが作った落とし穴か? 」
一瞬 あまりな予想外の展開、 というか 単純にびっくり仰天してしまい
さすがのジョーも 呆然としてしまったが。
そこは 009 ―
ふ ・・・ なんだ、落ち着け ジョー。 大した深さじゃないはず・・・
うん 一応加速しておく か
え???? な ない???
ジョーの舌先は 空しく奥歯周辺をうろつくのみ ― そこには いつもあるべき
あの特殊な突起 は 全くなかった。
それどころか 舌に当たる口中の感触は 生温かくぬめっとし ・・・
ついさっきまで齧っていたリンゴの断片さえ出てくるのだった。
な な なんなんだ??? 加速装置のスイッチが ない??
いや それだけじゃないよ〜〜 もしかして これって 生身 ???
「 ウソだろ〜〜〜〜〜〜〜 ・・・・ 」
暗闇の中 絶叫しつつ彼は転がり落ちてゆき―
くるん くるん くるん ・・・ すぽ〜〜〜ん ぽす。
彼は ふんわり冷たいモノの中に すっぽり落ち込んだ。
「 〜〜〜〜〜 つ つっめて〜〜〜〜〜〜〜 」
「 大丈夫だ。 慌てるな。 」
「 へ??? 」
「 じっとしていろ。 」
突如 頭上からどこかで聞き覚えのある声が聞こえ
ずぼ。
彼は冷たいモノの中から 吊りだされた。
なんだってこんな目に・・・もう ジョーはびっくりの連続だ。
「 ・・・ふ ふぁ〜〜〜 」
「 もう大丈夫だ。 」
「 ? ・・・ えっ ジェロニモ Jr??? どうしてここに?? 」
目の前に 毛皮とまとった巨人が 彼の襟首をしっかりとつり上げて立っていた。
「 むう? お前はどこからの来た? 」
「 え?? ぼくは 今 ・・・ ほら 別荘に来てるんだ 」
「 ベッソウ ・・・ という村 か
」
「 あ あの〜〜 下ろしてくれる? 」
ジョーは空中でもがいた。
「 助けてくれて ありがと。 後は自分で ・・・・は はっくしょ〜〜〜ん!! 」
盛大なくしゃみと一緒に 猛烈な寒さが襲ってきた。
サイボーグにされてから ついぞ感じたことのないその感覚に
ジョーはひたすら焦っていたが あまりの寒さで身体がうまく動ない。
口すら強張ってしまい 歯がやたらとガチガチぶつかりあう。
「 う ・・・・ さ 寒 〜〜〜〜 」
「 ・・・ お前の服・・・薄い。 この雪では凍えてしまう。 来い 」
すぼ。 巨人はがたがた震えているジョーを背中の籠の中につっこんだ。
「 ・・・ うわあ〜 」
籠の中は ふかふか・・・・なにか暖かく乾いたモノが彼をつつんだ。
「 ・・? う うわ・・・っぷ?? 」
「 じっとしていろ。 干し草が入っているだけだ。 」
「 う うん ・・・ 」
ギシ ギシ ギシ ・・・
褐色の巨人は 厚い雪を踏みしめつつ 暮れかかってる空の下、歩いていった。
ドン ドン ドン ・・・
巨人は しばらく歩き 大きな樹の下で止まった。
樹の根方近くに 木製のドアがあり、彼はそれを叩いたのだ。
「 ― 誰かネ 」
「 オレだ。 」
「 ・・・ あいや〜〜 森の賢者はん・・・ どうしたネ こんな時間に 」
どこかで聞いた声がして ドアはゆっくりと開いた。
福々しい短躯な男性が 彼らを迎えていれてくれた。
「 すまない、夕餉の準備 忙しいか 」
「 な〜んの いつでん大歓迎やで〜〜 賢者はん、ゆっくりしてってや〜〜 」
「 お〜う ジェロ仙人〜〜 よくおいでくださったなあ
今 熱い蓬茶、淹れますぞ ささ・・・ 中へ 〜〜 」
またまたよく知っているはずの声が加わった。 奥から艶々したスキン・ヘッドの
中年男が顔をだした。
「 すまん ・・・ 雪の中で拾いモノをしてしまった 」
「 拾いモノ? 何ね。 」
「 さ さ ・・・ まずはその背中のものを下ろし給えよ 」
「 むう・・・・ 」
う わ 〜〜〜〜 ぐらり、と世界が揺れてジョーは籠にしがみついた。
「 ぎょうさん干し草 集めはったネ ・・・? 中にナンかおるで? 」
「 どれ・・・ おや茶色の子熊でも迷っていたのかな? 」
「 わからん。 唐突に目の前に吹き溜まりに 落ちてきた 」
ずぼ ・・・ まるまっちい手が ジョーを籠からひっぱりだした。
「 あいや〜〜〜〜〜 コグマじゃないアルよ〜〜〜 オトコノコあるね〜 」
「 ほう ??? どこの村のモノかい 少年よ 」
バサ・・・ 乾いた布がジョーのアタマに被せられた。
「 ほい これでちゃんと拭くよろし。 濡れたままやったら風邪ひくで 」
「 あ ・・・ アリガトウございます・・・ 」
ジョーはもごもご言いつつ 布で頭から身体を拭いた。
へえ ・・・? タオル・・・じゃないけど ・・・
柔らかくて ふう〜〜ん・・・いい匂い・・香ばしいにおいの布だなあ
「 ほっほ ・・・ そないな薄着、あかんなあ。 グレートはん、なんぞ
着替え 出してやってぇな 」
「 合点。 あ〜〜〜 少年よ、名前はなんというのかね? 」
「 ぼ ぼくは ・・・ ジョー。 島村ジョー 」
「 ジョー? そうか。 ジョーはどこから来たのかい。 ほら・・・
古着だが洗濯はきいているぞ。 これに着替えな。
お前 この季節にその形 ( なり ) じゃあ 凍え死んじまう。 」
バサ バサ ・・・ 温かそうな衣類がジョーの前に積まれた。
「 それではやく火の前においで。 ゆっくり温まってから話をきこう。 」
「 は はい ・・・ 」
とにかく寒くて仕方がないで ジョーは雪で濡れたTシャツとジーンズを引きはがす
みたいにして脱ぎ 目の前に並んだ温かそうな服に腕を通した。
ふう ・・・ 温かいな ・・・
あは? なんか ・・・ 童話の中に出てきそうな服だあ〜
「 あ ・・・ の・・・ 」
たっぷりとしたシャツに粗い布のズボン、そして毛皮のベストに脛当てをつけ
彼は炉の切ってある方に戻った。
パチ パチ パチ ・・・ !
石造りの炉の中では太い薪がさかんに炎を上げている。
上には黒い鍋が掛かり さかんに美味しそうな湯気がたちのぼっている。
「 ほっほ・・・ よう似合うやんか 」
「 おう いい感じだな ジョー。 さあ こっちにおいで。
賢者殿、 温かい飲み物、 如何かな 」
「 むう ・・・ すまんな お前 ・・・ ジョー というのか 」
ジョーを雪の中から引っぱりだしてくれた巨人が 彼を差招く。
「 は い ・・・ あの 助けてくださってありがとうございました 」
「 礼はいらぬ。 お前はどこからきた? 」
「 あ あの ・・・ 街はずれの別荘の丘でそのう〜〜 樹の下で ・・・ 」
「 ??? ベッソウ という村 か 」
「 少年よ、 いろいろ混乱しておるのかね 今夜はゆっくり休むといい。
賢者どの、 彼は当分ウチで預かりますぞ なあ 大人? 」
「 そやな〜〜 これもナンかのご縁やで〜〜 ウチのいたらええ 」
「 は はい ・・・ 」
なんだかよくわかんないけど・・・ ぼくは夢、見てるのかなあ・・・
― 夢なら ・・・ 夢になりきるもんね!
どうやら サイボーグ部分はまったく機能していないらしいし・・・
ここで世話になるのが得策だよな
暖炉の前では 巨躯の賢者を中心に話が弾んでいた。
彼は口数はごく少ないのだが マトを得たことだけをぼそり、と言う。
この屋に住む二人は そのたびにふかくうなずいていた。
「 しかし ― 冬 はいつまで続くのですかなあ〜 賢者どの 」
「 むう ・・・ わからん。 」
「 このままでは 森の生き物たちだってたまりませんよ。 木々だって芽吹きの時が
こなければいずれ枯れてしまう・・・ 」
「 そやそや ワテもなあ〜 パンの残りやら小鳥はんらに投げてやってますのんや 」
「 不思議と木々や草たちは 枯れていない。 この < 冬 > は
今までの 冬 とちがう 」
「 です な。 しかしやはり ・・・ お城の姫君が お目覚めにならんと
本当の春は来ないのですかなあ 」
「 ほんに心配なこっちゃ・・ ほい、これお食べ 」
まるまっちい男性は 湯気のあがる器をジョーにさしだした。
「 あ アリガトウございます・・・ 」
「 いっぱい食べろ、少年。 わが友自慢の煮込みシチュウさ。
ささ ・・・ 賢者どのもお代わりをどうぞ 」
「 すまん。 ああ これを食べてくれ 」
森の賢者は背負い籠の中から なにやら紫に熟れた果実をとりだした。
「 ほっほ〜〜〜〜 アケビやんか〜〜〜 雪の中からみつけはったんですか? 」
「 いや ・・・ あの谷はなぜか雪が浅い。 薮の中に隠れていた 」
「 ほう? やはり普通の 冬 とは違いますなあ 」
「 むう ・・・ 春はそんなに遠くない。 山の精霊たちの声が聞こえた。 」
「 ほんまでっか! そりゃうれしですなあ〜〜 」
ガサ・・・ ! 炉の中で 太い薪が燃えきって崩れた。
「 おや ・・・ おお 薪がないな、とってこよう 」
「 あ ぼくがいってきます! え〜と? 」
腰をあげたスキン・ヘッドに ジョーは慌てて声をかけた。
温かい食べ物で もう身体は十分に元気を回復していた。
「 お 少年、 頼めるかい? 裏口の外に薪小屋がある。
この籠に入れてきてくれるかな 」
「 はい! 」
ジョーは 大きな籠をもつと台所をぬけて外にでた。
ひゅう〜〜〜〜〜 ・・・ 外は相変わらず吹雪いていた。
冷気がどっと襲ってくる。
「 うわ・・・っぷ ・・・ さむ〜〜〜〜 えっと薪小屋は ・・・
ああ こっちだな〜 」
彼は首を竦めつつ薪の山の前に立った。
「 太いヤツ、運ぼう ・・・ えいっ! うわ・・つめて〜〜〜 」
指先が悴む。 太い薪は乾かしてはあるがかなりの重さだ。
「 うわ・・・っと・・・ あっぶね〜〜
へ へへ ・・・ 冷たい とか 寒い とか。 重くてよろける とか・・・
なんか いいな。 雪の冷たさって・・・ そうだよなあ〜 こんな感じだったよ 」
彼は もう二度とは味わえないと思っていた < 当たり前の感覚 > を
しみじみ・・・感じていた。
しっかし ここは どこなんだ???
ほんのついさっきまで 夏の北海道にいたんだよね???
フランと博士と・・・・丘の上でランチして ・・・
フランが樹に登って ぽ〜〜ん・・・と跳んで ・・・
! そうだよ〜〜 ぼく 穴ぼこに落ちたんだっけ!
「 じゃ じゃあ・・・ここは地下の世界?? いや ・・・でも
あの三人は確かに ぼくのよ〜〜〜く知っている三人だよ??
」
カシ。 カシ。 薪を籠に入れ 雪で濡れないように布を掛ける。
「 彼らも ・・・ どうやら < 普通の人 > っぽいんだけど ・・・
ま いいや ともかくこの薪を運ばなくちゃ。ここに居る間はチカラ仕事、引き受けよう。
ぼくが一番若いんだしな〜 」
えいや・・・っと籠を持ち上げると ジョーは温かい光の漏れる台所に戻っていった。
ぴっとん。 ・・・ 軒先のつららから雫が落ちる。
雪雲の間から 一瞬朝陽が射した。
「 ほんまに行くアルか? アンタさえよければず〜っとウチにいてええんやで? 」
まん丸のオトコは 心配そうだ。
「 左様 左様。 空き部屋もあるしな。 」
スキン・ヘッドもしきりに止める。
「 ありがとうございます! でも ぼく ・・・ お城に行ってきたいんです 」
ジョーは毛皮を背中に当て、しっかりと冬の服装をして立っている。
「 服まで頂いて 本当にありがとうございます!
やっぱり < 冬 > を終わらせなくちゃ…って思うから
」
「 そやなあ〜 ・・・ いつまでもこの谷やらこの国やらが 冬やったら困るわな。 」
「 少年の決意は尊重するが・・・ なにかアテがあるのかい 」
「 いいえ ・・・でも そのう〜〜〜 姫君が 」
「 金髪の妖精、 やで 」
「 あ その妖精の姫君が ・・・ 目覚められれば 春 ですよね? 」
ジョーは この家に滞在している間にじっくりと話を聞いた。
この谷も含め彼らが暮らす国は その昔から緑豊かな平和な国だった。
ゆるゆると季節は巡り 春には花が咲き乱れ 夏には強い陽射しのもと、作物はすくすくと
育ち 秋になると豊かな土壌からは多くの収穫があがった。
雪の多い冬には人々は家に籠り 春に向けての支度に精を出す ・・・
そんな風に歳月は静かに巡っていた。
代々賢明にして勇猛果敢な国王の下、人々は穏やかに日々を送ってきた。
闇に巣食う妖しの存在もあったが 普段は押し込められ封印させていた。
ある年のこと。 ふいに天から美しい妖精が舞い降りてきた。
金色の髪を靡かせ、空よりも青い瞳のその妖精が微笑むと 花はますます咲き乱れ
夏の太陽は果実を甘くし ― 人々は 金髪の妖精 と呼び讃えた。
「 ああ なんという温かい微笑みでしょう・・・ 」
「 本当になあ ・・・ 金髪の妖精がいるかぎり、この国は富み栄えるよ 」
「 あの微笑みで 皆がシアワセになるよね 」
人々の称賛はますます盛り上がり ― やがて子供のなかった国王夫妻は金髪の妖精を養女として迎えた。
金色の髪の王女に 周囲の国々からも熱い視線が集まった。
「 姫よ そなたに諸国の王子方から申し込みがきているぞ 」
「 父上さま なんの申し込みですの? 」
「 まあ ・・・ 姫ったら。 年頃の、それもとびきり美しい姫への <申し込み> は
求婚にきまっているではありませんか 」
「 母上さま ・・・ わたしは そんな まだ ・・・ 」
「 われらも鼻が高いぞ。 どの王子もりりしく素晴らしい方だ、一度会ってごらん 」
「 そうですよ、どの方が姫にぴったりかしら? 」
「 ・・・ 父上さま 母上さま ・・・ 」
姫君は 養父母である国王夫妻の望みに異を唱えることはできなかった。
「 料理人たちにもこぞって腕を揮ってもらおう。 ああ 銘酒も開て、王子方を歓待しよう
なにせ 大切な姫の婿どのを選ぶのだからなあ
」
「 姫、とびきり素晴らしいドレスを誂えましょうね。 星のティアラを作らせましょう
ああ 楽しみだわあ〜〜〜 」
父王と共に母女王も満面の笑みだ。
「 ・・・・・ 」
姫君はちょっと困ったみたいな微笑みを浮かべただけだった。
そして 美しい初夏のある日 求婚者の王子たちとの宴が開かれた。
王城には貴族たちが招かれ 広い庭園は庶民にも開放された。
宴は佳境に入り ― 姫は花婿候補の王子たちと談笑していると ・・・
庭の隅から何やら灰色の影が伸びてきた。
「 姫さま ・・・ あなたの未来を占ってしんぜましょう 」
どこからか布で深く顔を隠した老婆が現れた。
「 まあ ・・・ 占い師さん? 」
「 姫さま 占い婆の タマアラ と申します。 この糸紡ぎが貴女さまの
未来を占いますです。 」
「 まあ ・・・ 糸紡ぎ? 見せて? 」
「 どうぞ いひひひ ・・・ 」
姫は黒檀に白い絹糸を巻きつけた糸紡ぎを手に取った。
「 きれい・・・! 先っぽに光っているのは なあに。 」
「 糸紡ぎの針ですよ 」
「 ふうん ・・・ まあ お日様の光が当たってほら・・・きれい♪ 」
糸紡ぎを手に 彼女は軽々と踊り始めた。
「 姫君 ・・・! 危ないです、お渡しください ! 」
「 私がお預かりしましょう! 」
「 姫君 〜〜〜 あ あぶない〜〜 」
求婚者の王子たちは てんでに姫を追いかけたが 彼女の身軽さに
誰も付いてゆけない。
うふふ うふふ ・・・ ほ〜ら キレイでしょう?
あ ・・・ !! イタ ・・・!
「 姫君〜〜〜〜〜〜 !!! 」
糸紡ぎの針を指に刺してしまい ― 姫君はふらふらしつつもなんとか
父・母の玉座の近くまで戻ってきて 養父母の腕の中に倒れこんでしまった。
「「 姫 〜〜〜〜〜〜〜 」」
その日以来 姫君は滾々と眠り続けているのだ。
それどころか 初夏の空は一転 雪雲で蓋われ ― この国は突然冬になってしまった。
― そして それは今日まで続いている・・・
ふう・・・ 語り終わり スキン・ヘッド氏はふか〜〜いため息を吐いた。
「 それじゃ! 姫君が目を覚ませば この冬は終わるのですね? 」
「 左様。 森の隠者どのもそう言っているのだが 」
「 なにか 問題でも? 」
「 うむ ― この話はなあ かれこれ40年も前のことなんだ。
花と笑いと慈しみに満ちていたお城はなあ 今や茨の森さ。 」
「 よ 40年 ・・・? 」
「 そやで。 そやからず〜〜〜っと冬なんや。 雪も降りやまへん。
ほいでも、不思議ィなんやが 木や草の実ぃやらこんまい虫らはちゃ〜んと
ふえておるんや。 川の魚もやで。 」
「 へ ・・え 〜〜〜 」
「 左様 左様。 だから森の生き物たちも我々も餓えることなく
生き永らえてきたのだよ。 」
「 でも どうして?? ずっと冬なのでしょう? 」
「 わからん。 ― ただ 森の賢者どのは 金の姫君が眠りつつも
国を護っているからだ・・・というよ。 」
「 へえ ・・・・ 」
「 求婚者の王子達を始め、たくさんのお人がなあ〜 茨の森に挑んだのやけど ・・・
だ〜れもお姫さんの目ぇを覚ましてあげはることはできんかったんや 」
「 そう なんですか ・・・ 」
ほう・・・ 丸まっちい料理人も また重い息を吐いた。
フランだ! 金の姫君 は 絶対にフランだよ〜〜〜
オトコたちの憂慮?を他所に ジョーはこころでふか〜〜〜く頷いた。
けど ・・・ 40年 だって??
フランってば タイム・スリップ したのかなあ
ともかく! ぼくが! 助けにゆくよ〜〜〜〜
「 そやから 茨の森は 」
「 左様 左様 そんなに簡単には攻略できんのだよ
なにせ 妖婆・タマアラが支配しているのでなあ 」
「 状況はよくわかりました。 でも ぼく、行きます! 」
「 少年よ ・・・ 」
「 だって やってみなくちゃ出来るかどうかわかりません。
ぼく ― 行きます! 行って 茨の森の金の姫君 をたすけてきます! 」
「 ・・・ あんさん ・・・ 」
「 突然転がり込んできたぼくを助けてくれてありがとうございました。
ぼく どうしても金の姫君を助けだしてきたいんです。
そして ― この谷に春を迎えましょう ! 」
「 そうか ・・・ それなら これを持っておゆき。 」
「 そやな、 ワテからも ・・・ はいナ。 」
「 ・・・ え ・・・えええ ?? 」
ジョーの前に 蝙蝠傘 と シナモン・スティック が差し出された。
「 少年よ、お前の前途に祝福あれ〜〜 」
「 こう〜〜 な、 紙に包んで懐に入れておくんやで。 ええな。 」
「 ありがとうございます。 それじゃ 行ってきます! 」
背中に 大きな蝙蝠傘をナナメに背負い、シャツのポケットに紙包みを押し込んだ。
「 元気に帰ってこい。 少年の家は ここだぞ。 」
「 あんさんの好きな 桃饅〜〜 用意しときますよってな〜〜 」
「 はいっ !! 」
ジョーは 家のドアの前で見送っている二人に手を振り 振り 元気に雪の野原を
歩きだした。
さて ― 時間は少し遡る。
「 ふう ・・・ 本当にこのドレスを着て宴に出るのかしら ・・・ 」
王城の一室で 金の髪の姫君は少し重いため息をついている。
居心地よく設えられた部屋には ふわふわしたピンク色のドレスが飾ってある。
「 ねえ これって。 やっぱりチュールよねえ?? 」
彼女は ひらひらのスカートを触ってみた。
「 なんだかどこかで見た展開なんだけど ・・・っていうか〜〜
わたし これから ローズ・アダージオ 踊るわけ??? 」
姫君 ― いや 我らが フランソワーズ ・ アルヌール嬢は 参った〜〜〜という顔で
天井を仰いだ。
( いらぬ注 : ローズ・アダージオ 『 眠りの森の美女 』 一幕で踊られる
オーロラ姫と4人の王子の踊り )
あの日 ・・・ 丘の上の楡の樹から ぽ〜〜んと飛び降りた ― と 思ったら。
着地したのは 多くの人たちが寛いでいる花畑の真ん中だった。
「 ?? な なに ・・・・?? 」
周りの人々も驚いていたが ― 彼らの服装は なぜかかなり童話風だった。
そして ・・・ その日から彼女は 金色の妖精 と呼ばれることとなった。
な な なんなの 〜〜〜〜〜〜〜 ???
Last updated : 06,14,2016.
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え〜〜〜 なんだか いろいろまぜこぜに〜〜〜
あと 一回 続きます〜〜〜 <m(__)m>