Cher Joe,
お元気ですか。
こちらに帰って来てようやく少し落ち着きました。 ふふふ・・・可笑しいでしょ、自分の生まれた
トコロに戻って来たはずなのに、おたおたしてしまうなんて・・・。 それだけ、わたしが あの邸
での暮らしに馴染んでいた、という事なのかもしれません。 今でも、朝目がさめると一瞬
何処にいるのかわからなくて。 イワンの声を探して聞き耳をたててしまったりしています。
イワンといえば・・・ ジョー、ちゃんと世話をしてあげていますか? ベビ−毛布はクローゼットの
奥の棚です。 もう少ししたら、朝晩冷えるようになるでしょう、そうしたらタオルケットだけじゃ
寒いから・・・イワンが嫌がってもかけてあげてね。 お願いします。
ジョ−のお仕事はいかがですか? わたしはミュゼでアルバイトをしながら、またレッスンにも
通いはじめました。 ちいさなお稽古場ですが踊れるだけで幸せです。
博士によろしくお伝えください。 ・・・ねえ、ジョー。 短くてもいいから・・・お返事ください。
また お便りしますね。
Fracoise Septembre 10.
Cher Joe,
お元気ですか。
お返事、ありがとうございました。 みんな元気そうで、なによりです。
・・・ねえ、ジョ−。 お願いがあるの。 あの、ね。 短くてもいいの、お手紙をください
e-mail はすぐ読めてうれしいけど・・・ あなたの字が見たいの。
お仕事やら イワンの世話やらで忙しいでしょうけど ・・ほんの数行でもいいの。
お願い。 ジョ−が触れたものだと思うと・・・いつも一緒にいる気持ちがします。
わくわくしながら待つ、というのも女の子には 素敵な時間なのよ。
また お便りしますね。
Francoise Septembre 15
P.S. 19日はアルベルトのお誕生日です。 ジョ−も・・・カードを送ってあげてね。
Cher Joe,
お元気ですか。
エア・メイルをありがとう! この前お願いしてから毎日どきどきしながらポストを
覗いていたのよ。 今日、バイトから帰ってきて( ちょっとくたびれていたの。 やっぱり
すこし緊張しているみたい・・・ ) 習慣的にポストを見たら・・・! 懐かしいジョ−の字が
わたしを待っていてくれました。
そちらはまだ夏服の日もあるのね。 パリは日ごとに街のマロニエの樹が色づいてきています。
ジョ−、夏服はきちんとクリ−ニングに出してからクロゼットに仕舞ってね。 博士の背広も
お願いします。 ジョ−のお仕事も順調でよかったわ。大学の研究室ってどんな感じ?
ジョ−が考古学に関心があるって わたし、ちっとも知らなかったわ。
うふふ・・・ねえ、ジョ−。 日本語で書いてくださっても大丈夫よ? (あ、難しい言葉には
説明をつけてね?) わたしも、ほら、日本語で書いているでしょう? (これは忘れない為の大事なレッスンです )
ミュゼのバイトはなかなか忙しいです。 でも、もう少し慣れたら学芸員の資格にチャレンジして
みようと思っています。
まだ、ちょっと青いけど・・・マロニエの葉を同封します。押し葉にすれば栞になるわ。
また お便りしますね。
Francoise Septembre 26.
P.S. ・・・アルベルトにどんなBDカードを送ったの? なんだか妙な手紙が来たわ。
しっかり捕まえてろってどういうことなのかしら・・・
Cher Joe,
お元気ですか。
はいけい。
ちょっと忙しくてしばらくお手紙が書けませんでした。
面白いお友達ができたのよ、バイト先で東洋美術、それも日本の<蒔絵>を専門にしてるヒトです。
去年まで日本に、きょうと に長い間留学していたのですって!
上の挨拶も彼、アンリといいます、に教わったのよ。 こんにちは、の意味なんでしょう?
わたしが仕事場の休憩時間にお手紙を書いていたら、偶然通りかかったアンリがわたしの
日本語を見たっていうわけ。 わたし、きょうと には行ったことがないから、いろいろお話を聞きました。
アンリはおしゃべりも読むのも書くのも日本語がとても上手なの。 この前、モンマルトルを
日本語でおしゃべりしながら散歩していたらすれ違う人々に妙な顔をされてしまいました。
パリは秋も終わりかけています。 そちらも紅葉が綺麗でしょうね。
コ−トとオ−ヴァを出しておくのを忘れないでください。 博士やイワンが風邪を引かないように。
そうそう。 ( これは さようなら、の意味でしょ♪ )
Francoise Octobre 15.
Cher Joe,
お元気ですか。
お仕事、忙しいのでしょうか・・・
ジョ−の字が見られなくてちょっとがっかりよ。
日本の秋は毎日きれいな青空で昼間はとても暖かい日があったわね。
そうそう、お月様に おだんご やススキをお供えした夜もあったっけ・・・。
・・・うふふ・・・。 なんだかちょっとホーム・シック、かな・・・。
パリの空は灰色の日が多くなってきてそろそろ、焼き栗の季節になります。
そうだわ、日本では やきいも だったわね! 味は・・・ちょっと似ているかも・・・。
アルバイトもレッスンもなんだか忙しくて・・・お家に帰るとベッドへ直行してしまいます。
ジョ−・・・ 冬用のカーテンは階段の下の納戸に入ってますから・・・
・・・ねえ? アンリのこと。 気にしてる? ただのお友達よ、
それにね、アンリには素敵な彼女がいるわ。
Francoise Novembre 3.
Cher Joe、
お元気ですか。
ジョ−!ありがとう!わたし、嬉しくってね、包みを抱えたまま飛び跳ねてしまったわ。
今日もお手紙、来ないのかなあ・・ってちょっぴり諦めモ−ドでポストを覗いたの・・・
そしたら。 いつものエア・メイルじゃなくて小さな包みがあるじゃない、びっくりよ。
素敵ねえ・・・こんな綺麗なバレッタ、初めて見るわ。このお花は・・・<きく>でしょ。
これってもしかして手描きなの? 色合いがとっても日本っぽいわね、そうそう、<和風>
って言うんだっけ? すごくすごく気に入ったわ! わたしの宝物・・・
明日のレッスンのときに 早速使うわね。 みんなにみせびらかしちゃおうっと。
いつもジョ−と一緒にいられるみたいで・・・・とっても嬉しいわ。
大丈夫よ、もうさびしくなんか・・・ないから。 今晩は このバレッタと一緒に寝ます。
ありがとう・・・ジョ−。 わたし・・・元気よ!
Francoise Novembre 9.
P.S. 聞いてもいい? コレ・・・ジョ−が選んでくれたのよね・・・?
作製・撮影 めぼうき