< Part 7  我侭 >

 

 

 

「 ・・・なんだと? もう一回言ってみろ。 」

「 だから・・・・! 君の所に彼女から何か連絡はないかなって。 何か・・・聞いてるかって・・・ 」

「 ・・・ ったく ・・・! 」

「 え?なに? よく聞こえないよ? 」

「 なにも言ってない。 メモがあったんだろ? ちゃんと。 」

「 あったけど、ちゃんともなにも・・・ <パリに帰ります>だけだよ! 」

「 じゃあ、その通りなんだろうが! ガキじゃあるまいし、自分でなんとかしろ、いいな。 」

「 ・・あ、 アルベルト !・・・・ あ〜あ・・・ 」

 

ジョ−は突っ立ったまましばらく受話器に耳を押し付けていたが、

やがてぼす・・っとソファに腰を落とした。

ちゃんと時差を考えて、彼が自宅に着くと思われる時間までじりじりして待っていたのに・・・

メ−ルよりも短い応えが返ってきただけで 電話はそっけなく切られてしまった。

 

 − ・・・ちぇ・・・!

 

さっきテ−ブルに放り出したメモに手を伸ばし、また読み返し・・・

またまた盛大に溜息を吐いて、ジョ−はぐしゃぐしゃと自分の髪をかき回した。

 

 − ・・なんだよ? なんだってんだ? ・・・・どうして さようなら なんだよ!

 

 

 

成田までアルベルトを送り 帰りは久振りの中距離のドライブを楽しんだ。

初秋の風が思いのほか心地好く、ジョ−はご機嫌だった。

いい季節になったし<仕事>もとにかく落ち着いたし。  

二人でちょっと遠出したいな・・・ 

紅葉にはまだだけど・・・ 高原の早い秋を楽しむのもいいよな。

 

博士がイワンをつれて午後から出かけるのは聞いていた。

・・・ふうん・・・ じゃあ、しばらく二人っきりか。

なんとなくくすぐったい気分だけど。 

うん、たまにはウチでのんびりするのも・・・いいなあ。 

口笛のひとつも吹きたい気分で ジョ−は最後の坂道をゆっくりと車を走らせた。

 

そんな彼の上機嫌は 森閑とした<我が家>に踏み入れて見事に消し飛んでしまった。

「 ただいま〜  ・・・・ フランソワ−ズ・・? 」

玄関口であれ、と思った。

・・・・・ ?

なんの音もない空間が 無表情に彼の前に広がっている。

真夜中でもない限り、誰か、<家族>の誰かがこの家に戻ったとき、

かならずフランソワ−ズの明るい声が迎えるのがいつの間にか 習慣になっていた。

 

 − おかえりなさい! 

 

おう。  やあ。   今、戻った。  帰ったぞ。

<ただいま>と言う習慣のあるのはジョ−だけだったが、

いつの間にやら みんな自然に応えるようになり、彼女の声にこころ和ませるのだった。

 

今日は レッスンは休みだと言ってたよな・・・ 買い物かなあ。

極上の気分に水を差され、ジョ−は少々拍子抜けの思いでリビングへ向かった。

どこか余所余所しいほど きちんと片付いたリビングのテ−ブルにメモが一枚、彼を待っていた。

 

 − パリに帰ります。   さようなら

 

何度、いや何十回読み直しても ジョ−にはさっぱり意味がわからない。

今朝、そう・・・・ 今朝は・・・彼女と顔をあわせていない。

いや、昨夜遅く帰ってそのまま自室へ直行して。

今朝早くキッチンに下りてきた時には いつものように朝食用のオレンジがちゃんと

切り分けて冷蔵庫で美味しく冷えていた。

 

サンドイッチもあったよなあ。 

 

早い便で帰国するアルベルトと共に ぱくついた。

そう・・・・ チ−ズとハムの間に糠漬けの胡瓜が挟んであってとても美味しかった・・・

 

 − だから。 なんで突然帰るんだ?? ・・・ナニを怒っているんだよ・・・!

 

答えの出ない堂々巡りにしだいに腹立たしさが加わってきた。

ぼくはちゃんと夕食に遅くなることも断っていった。 行く先も教えたぞ?

・・・・ いったい、何が気に入らないんだよ? 

誰よりも、一番好きだって・・・言ったじゃないか!

 

 − 我儘も いい加減にしてほしい・・な。

 

自分自身への苛立ちも加わり ジョ−はじっとしていられなくなった。

帰るって・・・どこへ・・・ああ、あのお兄さんのアパ−トか?

住所もхb焉@聞いていたはずだ! あれは・・・え〜と・・・

ジョ−はがしがしと大股で 階段をのぼって行った。

自分のスリッパが絨毯を蹴飛ばす音が やけに耳につく。

ちょっと躊躇ったが 思い切ってフランソワ−ズの部屋のドアを大きく開けたみた。

 

 − ・・・・ ふん ・・・?

 

普段からちらかっていることなど ほとんどない彼女の部屋なのだが

いま、主の去ったそこはいつにも増して広々と 素っ気なかった。

 

ちっ!・・・と出てゆこうとして・・・ なにかがふとジョ−の目の端にひっかかった。

 

 − ・・・? なんだ? ・・・赤いもの・・・?

 

そのなぜか見慣れた<赤>を捜してジョ−は改めて部屋中をみまわした。

 

 − ・・・あっ ・・・・

 

ジョ−は ゆっくりと部屋を横切ると見つけたソレに手を伸ばした。

ドレッサ−の上には。

 

・・・・ 赤いカチュ−シャ。

 

どんな時も持ち主の亜麻色の髪と共にあった・・・はず、のもの。

置き去られたそれは ジョ−の手の中でひっそりと息を潜めているようだった。

 

 

 

 

「 ・・・・ だから。 どうしたんだ? なにがあった。 」

「 え・・・。 別になにも。 ただ帰りたくなっただけよ。 お兄さんの顔が見たくなったの。 」

「 そりゃ、ありがたいけどな。 」

かちり、と手にしていたカップをソ−サ−に戻すと、ジャンは妹と真正面から向き合った。

テ−ブルの向こう、いつもの席で彼の妹はじっと手の中のカフェ・オ・レを覗き込んでいる。

「 それなら、こっちを向けよ。 お前のアニキはカップの中には居ないぞ? 」

「 ・・・ お兄さん ・・・ 」

「 オレだってお前の顔が見られて嬉しいさ。 だけどな。

 腫れぼったい目をして ハリネズミみたいな頭でいきなり帰って来た妹をみて

 やあ、お帰りってだけで済ますわけには行かないんだ、アニキとしては。 」

そうだろ?と ジャンはやっと顔をあげた妹をしげしげと見詰めた。

「 ・・・やだ。 そんな酷い顔? 飛行機であんまりよく眠れなかっただけよ・・・ 」

「 フランソワ−ズ。 何があった? ・・・ あいつが何かしたのか。 」

「 ・・・・ お・・・兄ちゃん ・・・・ 」

 

一層おおきく見開かれた瞳に 透明の膜がかかったと思うと

すぐにそれは盛り上がり溢れ、瑠璃のしずくとなってフランソワ−ズの頬を伝い落ち始めた。

 

「 お兄ちゃん・・・・ ここに、居させて。 ・・・わたし、もう帰るトコが・・・ない・・・ 」

「 フランソワ−ズ ・・・ 」

「 ・・・ おねがい ・・・ 」

 

ただ、ただ、涙を流すだけの妹を見詰め、しかしジャンには彼女の泣き声がはっきりと聞こえた。

そうだ、そうだった・・・ 

この娘は 子供のころから本当に悲しい時にはいつも黙って涙をこぼしていた・・・

可愛がっていた仔猫が死んだ時も  父が 母が 逝ってしまったときも。

ジャンは つ・・・っと長い腕を伸ばし、フランソワ−ズの髪に触れた。

 

「 わかったよ。 ここはお前の家さ、いつまでも好きなだけ居ればいい。

 ・・・さ、顔を洗って来いよ。 それで 角のあのアントワ−ヌの店で綺麗にしておいで。

 久振りにデ−トしようぜ? 午後はお前の専属になってやるからさ。 」

くしゃり、と兄が撫ぜてくれた髪は すぐにぴんぴんとてんでな方向を向いた。

「 ・・・ うん! 」

勢いよく立ち上がり、フランソワ−ズは手で頬の涙をはらった。

バスル−ムへ行こうと部屋の戸口で振り返り、フランソワ−ズは低く呟いた。

「 ・・・・・ ありがと ・・・ お兄ちゃん ・・・ 」

「 ( ・・・ばか・・) 」

新聞から顔を上げた兄は 黙って妹のオデコを弾く仕草を返した。

「 いったぁ〜い ・・・! お兄ちゃんがぶった〜〜 」

兄妹の笑い声が扉の両側で 響いていった。

 

 

 

今年は 秋が早いのかしら・・・

フランソワ−ズの足許には とりどりの色をみせマロニエの葉が散り敷いていた。

レッスン帰りの火照った肌に 弾んだこころに 吹き降ろしてくる風が心地好い。

だいぶ行儀のよくなった短い髪が すこしだけ風に靡いた。

 

・・・やだ。 今頃のこの街ってこんなカンジのはずよね。 ・・・あそことは違うのよ・・・

 

急な石の階段を降りながら、彼女はほろ苦い笑みを浮かべた。

すっかり感覚が あの国に、あの街に馴染んでしいまっている。

ヒ−ルの下で高い音をたてる石畳の路を かたい、と感じている自分がおかしかった。

そういえば・・・ 四六時中聞こえていた波の音を耳が自然に探していたりする。

 

ここは、パリ。 わたしの生まれ育った街。

 

立ち止まって、深呼吸をひとつ。

さやさやと梢はゆれ またひとひら、茜いろに変わった葉が舞い降りてきた。

 

・・・ちょうど 今頃? ううん、もう少し寒かった・・・ わたし、スカ−フをしていたもの。

パリに寄るよって連絡をもらって すごく嬉しかった・・・ 

とんでもない事に巻き込まれちゃったけど、でも。

<わたし>のこと、見分けてくれたわ。 

あの時。 

・・・撃たれてもいいって思ったのよ。 あなたに撃たれるなら・・・いいわって・・・

そうね、こんな風にマロニエの枝がゆれていたっけ。

季節は いつもちゃんと巡ってくるのに。 秋には きっと綺麗に葉が染まるのに。

・・・どうして。 どうして こんなことになっちゃったんだろう ・・・

 

ひとりでに歩みはとまり、フランソワ−ズはまだ半分は葉がのこっている梢を見上げていた。

 

「 ・・・ フランソワ−ズ? 」

「 え・・・? ・・・あ? 」

ぽん・・・と肩を叩かれ びっくりして振り向いたその先にはどこか見覚えのある

青年が ほほえんでいる。

 

「 ( ・・・ あ・・・ えっと・・? ) ・・・・フィリップ・・? 」

「 あたり。 よく覚えていてくれたね。 」

相変わらず顔を半分は覆う金髪をゆらして 青年は屈託のない笑顔を向けた。

「 ・・・あなた・・・ こっちに来たの・・? 他のヒト達も・・・」 

思わず少し身を引いたフランソワ−ズに 青年はあわてて手を振った。

「 ああ、何もしないよ、安心して・・・ 」

「 ・・・・ でも、どうして。 」

「 なんとかね、少しづつだけどあの時間の澱みから抜け出せるようになったんだ。

 全員がってわけには行かないけど。 少人数でならこちらに来られる。 」

「 まあ、そうなの?! よかったわね! 」

「 ただ、僕らは本来ならこちらには存在しないモノだから・・・その、いろいろと、ね・・・ 」

「 ・・・・また ・・・ 闘っているの・・・? 」

「 ・・・いや、君は気にしなくていいんだ。 もう忘れてください。 ね?」

「 フィリップ ・・・・ 」

差し出された右手に フランソワ−ズはこわごわ自分の手を預けた。

「 ねえ? この街は君の生まれ育ったところなんでしょう? 案内してくれますか。 」

「 え・・・ええ! 勿論。 よかったわ・・・パリは今が一番綺麗な季節なの。 」

「 綺麗・・・・ 空は君の目にも拡がっているし 光の束は君の髪からも零れているね・・・ 

 君は この街そのものみたいな人ですね、 綺麗だ。 」

「 まあ? あなたこそ生まれてからずっとここで育ったヒトみたいよ、お上手。 」

面と向かって大真面目でお世辞を言われ、さすがのパリジェンヌもクスクス笑ってしまった。

 

「 ほんとうですよ! ・・・あれ、そういえば一人ですか? あの・・・ 」

「 ・・・ええ。 相変わらず兄と一緒に住んでますけど。 

 さ、カフェにでも行きましょう。 こんな日には熱いキャフェとクロック・ムッシュウがいいわ!」

「 お任せします。 」

低くなってきた午後の陽射しが 二人の髪にやわらかく纏わった。

ごく自然に腕をとり、肩を並べて。

懐かしい想いさえ擁いて フランソワ−ズはゆったりとフィリップに寄り添い歩んでいった。

 

 

「 ・・・なんだ? 今朝は随分とめかし込んで。 」

「 あ、お早う! お兄さん。  うん、今日ね、お友達とランチの約束なの。

 ほら、カルチェ・ラタンのあのお店、案内しようかなって。 ボ−ジョレ・ヌ−ボ−の時期だったら

 よかったのに。 」

「 ああ、まだ早すぎるな。 ま、楽しんで来いよ。 」

「 うん! あ、そうだ、ねえ、今度その人をウチに呼んでもいい?晩御飯、ご馳走したいの。 」

「 ああ、勿論。 そのラッキ−・ボ−イを連れておいで。 」

「 メルシ♪ う〜〜ん、何を作ろうかなぁ・・・? 」

へえ、じゃあアイツは見事に振られたってわけか? 

まだ時々好き勝手な方向にはねる髪を気にしている妹の でも明るい顔を

兄はちょっと複雑な気持ちで眺めた。

 

栗色の髪をした照れ屋の 日本人、ジョ−・シマムラ。

ジャンは彼に何回か会っていたし、彼の側に自然に寄り添う妹をみた時、

すぐに二人の深い絆が わかった。

ちょっとシャクだけど。 まあ、いいか。 コイツならフランソワ−ズを預けられる・・・。

過酷な運命に翻弄された妹のそばに 彼が居てくれることがせめてもの救いだと思っていた。

 

結局、妹は帰って来た事情をいまだに話してはくれていない。

でも。以前のように彼女がほほえみ、昔とたいして変わらない日々を送っているのを見ると

ジャンは強いて尋ねる気持ちにはならなかった。

 

 − まあ・・・時間( とき )が解決するってこともあるし、な。

 

秋の日に映えそうな ベ−ジュのニットに金の細い鎖が胸元に揺れている。

このまま、穏やかな日々が過ぎていってほしい、とジャンはこころから願っていた。

 

 

 

「 − だからね、もう少しデ−タを送ってほしいんだ。 」

「 O.K. でも流石に君だねえ、ピュンマ。 ぼくはあの時の件と結びつけてもみなかったよ。 」

「 いや・・・ ほんの偶然なんだ。 こちらでも政府の優秀なブレ−ンの一人が倒れてさ。

 その原因究明に当たった医師がかつての同志で・・・ 僕に成分の照合をしてきたんだ。 」

「 なるほどね。 うん、じゃあ、こちらからも出来るだけ詳しいデ−タを送るよ。」

「 頼むよ。 ・・・・あ、ジョ−? あ〜あの、え・・・フランソワ−ズ・・? 」

「 あ、うん・・・。 パリにいるはず、だけど。 ・・・じゃあ、ピュンマ。 メ−ル入れるから・・・ 」

「 あ、ああ。 じゃ・・・ 」

 

ふう・・・・

かちり、と受話器を置いて ジョ−は何と無くリビングを見回した。

がらんとして そのせいかますます埃っぽくなった気もする・・・。

暮らすヒトが一人でも欠けると 家はその分だけ余計にはやく朽ちるのだろうか。

ふう。 溜息をもうひとつ。 

ジョ−は 思い切り良くリビングのドアを開けた。

 

博士とイワン。 そして 自分。

静かだが なんとも彩りに乏しい男3人の生活にももうかなり慣れてきた。

しかし そんなギルモア邸の日々とは裏腹に 世間は次第に騒がしくなり始めた。

多種にわたっての業界で その主だった人々が突然倒れる。

そして なにか申し合わせたように

<奇跡的に一命を取り止め・・・ これから生まれ変わった気持ちで頑張ります>

という結末に 終わっている。

周囲は口をそろえて、本人の復活を歓迎するのだ・・・

 

− ええ、まるでヒトが変わったようですね。

 

 

「 ピュンマが? ・・・ほう、流石だな。 」

「 はい。 」

ジョ−からコトのあらましを聞いたギルモア博士は 得心して頷いた。

「 それで ピュンマからのデ−タは? 」

「 はい、このCDに。 」

「 ありがとう。 ふむ・・・と、なるとだな。 この前のクスリ工場、あれも怪しいな。 」

「 この前のって 例の南アジアの、ですか? 」

「 そうじゃ。 なぜあんなに簡単に工場を放棄したのか。資金源にするつもりなら

 そうそう簡単には潰せまい? 」

「 それは・・・ 」

「 まあ、そろそろイワンが目を覚ます時期じゃろう、詳しい探索はそれからじゃな。」

「 はい。 一応みんなに連絡をいれておきます。 」

「 それがいい。 ・・・・ おい、みんなに、だぞ? 」

「 ・・・・ はあ。 」

ちょっと笑いを含んだ博士の視線が 照れ臭い。

ジョ−は 大きく息を吸った。 

また 闘いの場に身を投じるのも 遠い日ではない・・・ジョ−は密かに拳を固めた。

 

その時。

「 ・・・・ ? 」

ポケットで携帯が鳴った。 この番号は・・・・

「 ・・・はい? 」

「 ・・・島村君・・・? あ・・の・・・しゅ、主人が・・森山が・・・ 事故で・・!」

 

 

 

 

「 フランソワ−ズ! おい、しっかりしろ!!」

「 大丈夫です、このまま眠って・・・明日は普通に目覚めますから。 」

「 大丈夫って・・・君! 君がフィリップか・・? 」

「 はい。 初めまして、ジャンさん。 」

 

帰りの遅い妹が そろそろ心配になりだした時、兄妹の部屋をひとりの青年がそっと訪れた。

訝しげにドアを開けたジャンの目に飛び込んできたのは 

青年に抱かれてぐったりとしている妹の姿だった。 

あわてて もぎ取るように受け取った妹は顔色も悪くなく寝息も穏やかだ。

 

「 ・・・僕は。 僕にはできない。 できません!

 僕の我儘で<みんな>に迷惑をかけてしまうけど・・・ でも。 

 すみません・・・ 彼女には・・・僕は急に故郷へ帰った、と伝えてください・・・ 」

「 君・・・? 」

「 彼女は・・・この街がよく似合う。 こちらに居るべき人なんです。

 ・・・・さようなら。 あ・・・ありがとうって・・・僕が・・・ 」

言葉を呑み、青年は手を伸ばすとそっとフランソワ−ズの頬に触れ くるりと踵を返した。

 

「 ・・・・・・・・ 」

遠ざかる足音を耳に、ジャンはしっかりと妹の身体を抱えなおした。

 

 

Last updated : 11,14,2004.                    back   /    index    /    next

 

 

****  ひと言  *****

フィリップって新ゼロのカトリ−ヌの彼氏じゃありません〜。

原作『 時空間漂流民編 』 ACT1.に出てくる未来人?の坊やです。

一応原作設定ですので ジャン兄さまは健在・青年の姿でイメ−ジして下さい。