それは、風のような



 ここは、鬼の住まう場所。
 ここは、復讐を望む者たちの村。
 ――彼らは、そう言う。
 だけども、私はまた、知っている。
 彼らもまた、紛れもなく人であると。復讐の中に、平穏を望んでいる事を。
 それは、私が、さらに異質であるために…


 私は、大地に走る全ての源《龍脈》から生み出された存在。
 大地の氣の流れが乱れたときに、それを正すために生み出される…そう、薬みたいなものだ。
 初めはそうとは知らなかった。だけども、長じるうちに、《龍脈》から教えられた。
 だから、私は…生き物と同じ、人と同じ肉体を持ってはいるけれど、違う。
 《龍脈》を整える。そのために、乱すものを排除する。
 それが、私なのだ。


 ……。
 風のように時は流れ、時には逆風になり、全ては…少なくとも、私の時代では終わった。
 そして、私は変わった。
 私は、何も知らぬ人形に過ぎなかったのだ。命がそこにある以上、逃れられないものから目を背けていただけだったのだ。

 ――<想い>。
 形はどうあれ、生き物全てが持つもの。
 私もまた、想いを抱いている、と教えられたのだ。
 皆に…あの人に。
 …あの人は、多分そんな事には気付いていないだろうけれど。
 あの人たちは、私に世界を教えてくれた。
 喜ぶこと。怒ること。哀しむこと。楽しむこと。
 …そして、愛することを…



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弐:特別では、なく