オズマが運び込まれたのは小さな教会だった。
巡回の神父が月に一度祈りを捧げに来るだけの粗末な教会だ。
ローディスの聖像が祭壇に飾ってある。
祭壇の裏にある小さな部屋に寝台が置いてあった。
そこにオズマは寝かせられた。
時々、昔クレリックの修行をした女が様子を見に来ては貧弱なヒーリングをかけていった。
しないよりはいくらかまし程度のものであったが。
貧乏な村にとってはキュアリーフでさえ貴重なものであった。
たが、女騎士が治らなかったら彼女の弟は本気で村人を皆殺しにするのが判ったから、村人は貴重なそれをオズマに使った。
キュアリーフを使う度に傷が目に見えて薄くなっていった。
「姉さん・・・・・・。」
オズマはずっと眠ったままだった。
「目を覚まして・・・・・・。」
そっと頬に手をやる。その温かさにオズは少しだけ安堵した。
食事は村の女が時間になると運んできた。
かたい黒パンとスープ。不味かったが、オズは口に入れた。
いかなる時でも食べられる時に口に入れておくのが習慣だった。
寝台の隣りの床に腰を下ろし、オズは武器の手入れをした。
天空の火山ムスペルムで作られたという炎の斧、グラムロックの刃を研ぐ。燃え滾る溶岩のような色の刃がますます赤くなった。
長老の孫がそっと盗み見て、自分たちを殺す準備をしていると皆に告げ、村人たちはぞっとした。彼らは女騎士が早く良くなってさっさと出て行って欲しいと切実に思った。
オズにしたって自分の顔色を伺い卑屈な態度で接してくる村人たちの面など見たくもなかった。一刻も早く出て行きたかった。
都合のいい時に神の名を出す者に吐き気がする・・・・・・。
何の努力もせず、ローディスの教えなど実践せず、ただ生きている底辺の人間・・・・・・。
夜がきた。
ローディスの聖像が天窓から差し込む月の光に浮かび上がる。
オズは聖像をじっと見つめていた。
彼は自分を哀れんでくれるだろうか・・・?
「オレは・・・・・・・・・・・・。」
オレは何を祈ればいいのだろう・・・・・・?
姉を愛している・・・・・・
生まれた時からずっと、
姉だけが欲しかった・・・・・・。
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