ナイトメア・・・悪夢








神の都
















オズマは弟の戦斧が狂気を帯びているのを感じ取っていた。

肉が焦げる匂いが
地中から呼び起こしたガスの匂いに混じる。

剥き出しの岩肌が続く荒地を、
神都目指して黙々と馬を走らせていたら突然夜盗団に襲撃された。
たった2人の騎士を見て、多勢に無勢で襲い掛かってきたのだ。
彼らはすぐに己らの甘さを思い知る。2人の騎士の魔法を組み合わせた圧倒的な攻撃力の前に彼らは赤子も同然たった。

すぐに戦意を無くして逃げて行った。

オズマは逃げていく相手を追いかけてまで戦おうとしなかった。
が、オズは・・・・・・・・・・・・

殺すこと自体を楽しむかのように、グラムロックで相手を屠っていった。逃げる相手を魔法で麻痺させる。
わざと急所を外す。
断末の苦しみに呻く相手にゆったりととどめを刺す彼の顔に笑みが貼り付いていたのを姉は見た。

「オズ!」

思わず叫んだ。
もう止めろと。何人殺す気だ。

姉の声に動きを止める。足元で慄く男を見つめた。
その目にはっきりと浮かぶ色は恐怖。

吐き気がした。
弱いくせに数に頼り襲ってきた愚かな者どもに。
骸となり横たわる仲間の所へ行けと戦斧を振り下ろした。
叫び声をあげる間もなく男は絶命した。

オズマが深紅の薔薇から作られたイバラの鞭をしまう。

深紅・・・、その薔薇は人の血を吸ったのだろうか?
岩肌に血が染み込んでいく。
血の匂いに正気が保てなくなる・・・・・・

姉の顔を見る。
子供のころはそっくりだった二人の顔も、成長するにつれて変わっていった。身体もだ。自分は固いままなのに、姉の顔も、肩のラインも、腰も、胸も丸みを帯びて柔らかくなっていった。

それを自覚したのはザナムに入る前の年の春、湖に落ちた姉のずぶ濡れになった姿を見た時だ。
身体にはりついた薄い服の上からわかるかすかな胸のふくらみから目をそらせなかった。髪の長さも背の高さも・・・、力も同じだったのにそこだけが自分と違っていた。

合わせ鏡のように一緒だったのに・・・、
これからだんだんと違ってくることにわけもなく苛つくようになった。

同じだったのに、
母親の胎内にいる時から同じだったのに・・・・・・。

苛ついた気持ちで姉と剣の稽古をしていた時、姉に傷を負わせた。
足を滑らせた姉が弟の剣を避けきれずに。

「姉さん!」
肩口に血がみるみる広がる。

その血に・・・・・・
オズは欲情した。








己を律せよ
ローディスは説く








決して姉に知られてはならない。











 

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