神都から遠く離れた駐屯地に突然その人物は現れた。
後任の守備隊長が着いたという報告を受けたオズが城砦の門に行くと、ガナン光帥団で顔なじみのその彼の隣りに、黒と赤を基調にした鎧を身に着けた女性が軽やかに馬から降りた。
「オズ!」
「・・・姉さん!?」
あれほど会いたいと願っていた姉は生き生きとした笑顔で彼に笑いかけてくる。
突然のことにその後の言葉を失っているオズに新しい守備隊長も笑いながら彼の肩をたたいた。
「久しぶりだな、オズ・モー・グラシャス! 元気だったか?
オズマとつもる話もあるだろうが、
まず引継ぎをとっとと終わらせてからだ。
俺もそっちの方がゆっくりできていい。
砦に入るぞ。」
乗ってきた馬を兵士に預けて男は顔なじみの気さくさでオズの前を歩いていく。
その後姿をちらりと見たオズはまた姉の方を向いた。姉もまた馬を兵に預けているところだった。
3年ぶりに目の当たりのした姉の何と輝いていることだろう。肩までだった髪は少しだけ伸びていた。
その髪を手にとり口付けたい衝動に駆られる。
「変わりないな、おまえは。」
姉がオズに言う。
「懐かしい姉弟の再会は後でだ。
明日にはここを出てガリウスに出立するぞ。
サルディアン様がお待ちだ。
さっさと引継ぎをしてしまえ。」
すたすたと弟を置いて歩いていく姉に遅れまいとオズがあわてて後を追いかける。
「姉さん!」
「何だ?」
「・・・化粧・・・・・・、濃くなった?」
姉はじろりと弟を睨んだ。
その夜、オズはあの悪夢を見ることはなかった。
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