ナイトメア・・・悪夢








神の都





















弟の身体から鎧を剥がすのがまた一苦労だった。
「こら、オズ!起きろ・・・!せめて自分で鎧を外せ・・・。」
何度もオズマが耳元で大きな声を出してもオズは「ん〜〜〜っ」と言うだけで起きなかった。外した鎧で頭を殴ろうかとも思ったが、これ以上弟が馬鹿になるのはご免だったのでそれは止めた。

一つしかない寝台を弟に譲り、オズマは弟の寝顔をまじまじと見た。
皆がそっくりだと言う、自分と弟。小さいころはそれこそ身近な者でさえ、間違うことがあった。

だが、オズマは小さい頃から弟を含め皆が言うほど同じだとは思っていなかった。グラシャスの血を色濃く映す髪も、目に宿る光の強さもオズの方がずっと赤く濃い・・・・・・。

オズマにとってグラシャスであることこそ、全てにおいて優先すべきものだった。

グラシャス―――。

ガリウス魔道院を陰で支える魔道の一族。
古い血を持つ名門。

その名を持つにふさわしいグラシャス家の双子の姉は優秀だった。魔力も頭脳も剣の扱いも。
弟の方は能力は今一だと言われていた。姉の後を追い、姉が横にいないと癇癪を起こす問題児・・・、それがオズの評価だった。

一人を除いて。

弟をザナムへ進ませるために自ら出向いて説得した―――
教皇サルディアン。

ローディスの支配者に認められたのは姉ではなく弟だった。



弟を見るオズマの目に暗い焔が宿る・・・・・・。
オズが姉を見る時に見せる同じ焔だった。



「オズ・・・・・・、起きろ・・・・・・。」
姉がオズの耳元で呟くように弟の名を呼ぶ。

オズマの白い手がオズの唇にそっと触れる。

「オズ・・・・・・。」

「姉さん・・・・・・?」



「オズ・・・・・・、これは夢だ・・・・・・。」
そう言って姉は弟の唇に自分のそれを重ねた。












 

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