ナイトメア・・・悪夢








神の都






















早朝、二人は村を出た。
長老と数名がグリフォンを退治してくれた神都の騎士を見送った。
何か事件があったらしく村はあわただしかったが、長老はそのことに触れず、またオズマたちも聞こうとはしなかった。

ローディスの騎士に栄光を。
暗黒騎士団に何かあったら村人たちを引き連れてガリウスに馳せ参じると長老は神妙な顔で述べていた。

オズは心の中でじじいの戯言など信用できるかと悪態をついていた。
早くこの村から出たかった。

―――姉に知られる前に。隠したものが綻ぶ前に。

姉の顔をちらりと見た。その横顔からは感情は何も見えない。








目が覚めると教会の部屋の寝台に一人で寝ていた。
何故ここに寝ているのか記憶がなかった。
昨日のことは途中から覚えていない。
二日酔いで調子は最悪だった。








夢を見た。

オズ・・・

夢の中で姉が言った。

オズ・・・、これは夢だと・・・・・・。








姉を抱いた夢だ・・・。
辺境の駐屯地でいつも見ていた夢―――
ただ違うのは
最後まで姉は姉のままでいたことだ。

足元に見知らぬ赤い髪の女が冷たく横たわることもなく
途中で夢から覚めることもなく
姉の身体に溺れた・・・・・・。

リアルに残っている姉を抱いた感触にオズは不思議な気がした。
耳に残る姉の吐息に身体が熱くなる。

まさか・・・?と思ったとき、姉が部屋に入ってきた。

「オズ。」

「うわあああ〜!!」

よほど大きな声だったのだろう。オズマが両手で耳を押えながら言った。
「朝からわめくな!」
「姉さん・・・!」
やましい事を考えていたオズは動揺を隠そうともせず口をパクパクさせていた。そんな弟を一瞥すると姉が冷たい口調で言った。
「さっさと起きて。出発するわよ!」
「あ・・・、うん。」
オズマは荊の鞭を手にとり不具合がないか調べ始めていた。オズはあわてて寝台から降りると服を着始めた。

脱いだ記憶は当然なかった。姉に聞く。

「姉さん・・・。」
「何だ?」
「俺・・・、昨日何したんだ?」
「覚えてないのか?」
「・・・・・・全然・・・・・・。」

オズマは大げさにため息をつくとオズが落ち込むことをいっきに述べた。

「ベロベロに酔って教会に入ってきて、ローディスの像に悪態をつき、わたしに多大な迷惑をかけ、わたしが寝るはずだったベッドを占領した。」
「・・・・・・・・・。」
「おかげでわたしは床に寝る羽目になって身体中が痛くて仕方ないわ。」
「オレをベッドからたたき落とせば良かったのに!」
「おまえは前の日、わたしを看病してろくに寝ていないだろう?おあいこだわ。」
「・・・ごめん・・・・・・。」
オズが素直に謝った。
「・・・おまえは・・・・・・。」
「?」
謝ってばかりだという言葉を飲み込み、オズマは弟に顔を洗ってきと命じた。
「ん・・・・・・。」
鎧を着けて部屋を出て行こうとしたオズが振り返る。
「どうした?」
「姉さん、・・・胸触らせてくれ。」
「はあっ!?」
「確かめたいことがあって・・・、少しでいいから胸。」



オズマは弟の願いを聞き入れず、手にしていた荊の鞭を彼にお見舞いした。



「畜生・・・・・・」
新しく増えた傷が冷たい水にしみた・・・。

つくづく自分が馬鹿だと思ったオズだった。



手に残る姉の柔らかな胸の感触。
確かめたら夢か本当かわかる気がしたのだ・・・・・・。












 

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