オズは闇の中を走っていた。
足元に忍び寄るナイトメアから逃げようと・・・・・・
悪夢に飲み込まれたら最後だとわかっていた。
闇雲に走って走って走って・・・・・・
助けを求めて叫びたいのに声が出ない。
大切な人の名を呼びたいのに
名前が出てこない
赤い髪、自分と同じ顔の・・・・・・
「オズ!」
夢から覚める。
自分の部屋の自分のベッドの中、姉が心配そうに自分を見ていた。
「・・・姉さん?」
「どうしたの?随分うなされていたけど・・・、怖い夢でも見たの?」
「・・・ん・・・・・・」
優しい目で自分の顔を覗き込んでくる姉の顔を見てオズは安堵のため息をついた。
「まだまだ夜中よ。怖い夢など見ずに寝てしまいなさい。」
そう言って自分のベッドに向かおうとした姉をオズは呼び止めた。
「姉さん・・・!」
「・・・?」
「・・・一緒に寝たい・・・。」
「・・・・・・・・・」
「駄目か?」
「・・・・・・おまえもう十歳だろう?」
「姉さんと一緒なら怖い夢を見ない気がする。」
ベッドの端によって姉の寝る場所をあけ、必死な目で自分をみつめる弟にオズマは仕方が無いと言いながら弟のベッドにもぐり込んだ。
オズが姉の目の前にすっと左手を差し出した。
握れということだ。
オズマはぺちっとその手をはたいて甘えるなと一言。拗ねたオズはごそごそと姉に背中を向ける。
「オズ・・・」
「・・・・・・・・・」
「オズ・・・」
「・・・・・・・・・」
「今すぐこっちを向いたら手を握ってあげる。」
オズマが言い終わる前にオズが姉の方を向いた。
弟の仕草にオズマが笑った。姉の笑顔につられてオズも笑う。
手をつないだ。
「姉さん・・・」
「何?」
「愛している・・・・・・」
「わたしもだ・・・」
「姉さんだけだ・・・・・・」
「わたしもおまえだけだ・・・・・・」
「姉さん!」
女の上で果てた時、オズは思わず低く呻いていた。
身体がすうっと冷えていく。
はあはあと荒い息を吐いて快楽の余韻に浸っていた女が驚いた顔をした。オズをまだ中にくわえ込んだままオズの首に手をまわしオズの顔を自分の顔に寄せた。
耳元でささやく。
「あたしを・・・姉さんのつもりで抱いたんだ・・・?」
笑いを含んだ口調だった。言いながら腰を揺らす。
「本当の姉弟なのに・・・?」
オズの耳朶を噛んで舌を這わした。ねっとりとした舌が首筋を下りていく。
「・・・・・・ローディスの騎士様が?」
無表情で黙って女のなすままにされていたオズが女を剥がした。
月光に長い髪が微かに金に光ったのがわかった。
髪は赤じゃないのか・・・とオズは漠然と思っていた。
赤じゃない・・・。
自分に貫かれあさましく嬌態をさらしていた女。
赤い髪ではない。
姉では無い・・・・・・。
辺境で見ていた夢。
赤い髪ではないけれど・・・・・・
ほら、飲み込まれる。
|