ナイトメア・・・悪夢








神の都





















次に目を開けたのは昼前だった。
オズが心配そうに顔を覗き込んでいた。

「姉さん・・・・・・。」
「オズ・・・」
「大丈夫?」
「ああ・・・、心配かけたわね・・・・・。おまえ早くガリウスに帰りたかったのに・・・、わたしのせいで遅れてしまって・・・、悪いわね。」
謝る姉に勢いよく首を振る。
「姉さんのせいじゃない! オレが・・・オレがどじったばっかりに姉さんが!オレの方こそごめん。」
しっかり姉の手を握り締めオズが言った。
「おまえは大丈夫なのか?」
「・・・ン。」
「そうか・・・、良かった。」
「良かったじゃない! 何であんなことしたんだよ!? オレがそうされて嬉しいと思うのか!?大体姉さんは・・・」
駄々をこねる子供のように次から次へと姉の行為に対して大声で文句を連ねるオズにオズマは大きくため息をつきながら彼の名を呼んだ。

「・・・・・・オズ。」
「・・・・・・何だよ・・・・・・・・・。」
「・・・・・・暑苦しいからその顔離せ・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

自分が横になったままの姉の耳元でわめいているのに気が付いたオズはあわてて姉から離れた。顔が赤い。椅子を蹴飛ばした。

照れを不貞腐れた態度でごまかした弟に苦笑した。
身体を寝台においたまま上半身を起こそうとしたオズマにオズが手を差し伸べて手伝った。

目が合った。姉と弟は暫し声を出して笑いあった。
久しぶりに笑ったような気がした。



様子を見に来た元クレリック見習の女がヒーリングをかけようとしたのを断ってオズマは水を頼んだ。すぐに冷たい水が入った瓶が運ばれてきた。

オズマがコップに水を注ぎ、姉に手渡す。
一息に飲み干す姉の白い喉下に視線がいくのを慌てて逸らした。

感情をごまかすようにオズが姉に再び尋ねた。
「何で・・・、あんなことしたんだよ、姉さん」
「おまえをかばったこと?」
「ああ。」

オズマは少し考えて口を開いた。

「・・・ブラックプリズン・・・・・・」
グリフォンとの戦いの時、全然決まらなかったオズの必殺技だ。

「おまえ、ことごとく外しただろう?」
「・・・ん・・・・・・。」
「おまえは昔から精神が不安定な時は成功したためしが無かったから・・・。」
まずいと思いながらおまえに気を配っていたから、おまえの危機に身体が勝手に動いていたというわけよとことも無げに言う。

「・・・・・・・・・。」

オズが黙り込んでしまったから、姉は話題を変えた。

「グリフォンはどうなった?村人たちも頑張ったのか?」
「・・・・・・あいつらオレたちを見捨てて逃げやがった・・・・・・。」
忘れていた怒りがまたムクムクとオズの胸によみがえった。ここをでる時、半殺しの目にあわせてやると物騒なことをこっそり思う。

「おまえ一人で残りの2匹を?」
驚いて姉が尋ねた。
「・・・ブラックプリズンが決まって・・・・・・。」

オズマが弟にちょんちょんと手招きをした。何だと背中を丸めて姉の前に顔を出す。

姉が弟の赤い頭をゴンと殴った。
「馬鹿!何で最初に決められなかったの! おまえがさっさと決めていれば面倒にならなかったのに!!」
頭を抱えながらオズが言った。
「だから・・・ごめんって・・・・・・。」

「村人たちを集めて。」
オズマが弟に命令する。
「仕返しするのか、姉さん?」
「・・・男たちに弓の使い方を教えるのよ。」



嫌だとオズは思ったが、姉に逆らえるはずも無く。
頭をさすりながら教会から出て行った。














 

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