「くそったれ!フィダック城に行く前にこんなところで足止めかよ」
ヴァイスが言う。
「先を急ぎすぎたんだ…。もっと僕ら自身が力をつけないと、ガルガスタンやバグラムには勝てない…。ましてあのロスローリアンには…!」

ゼノビア人たちの力を借りてアルモリカの指導者であるロンウェー公爵を救出出来たのは幸運だったとデニムは思っていた。ゼノビア人5人のうち、今も行動を共にしてくれているのは、有翼人のカノープスだけだ。彼に頼らず、ウォルスタ人のレベルアップが今後の課題だ。

「で…、これからどうする?」
ヴァイスが一応デニムに意見を求めた。
「遠回りだが、ゴルボルザ平原を迂回してアルモリカに戻ろう。」
「…しかねーな、やっぱ」
ちっ、山越えかよとヴァイスが舌打ちする。おそらくアルモリカへの街道はガルガスタン兵がおさえている。そこを通って見つからずにアルモリカへ戻るのは至難の技だろう。

デニムが藁のベッドに歩み寄る。そして藁を整え出した。
「おいデニム、おめー何をしている?」
デニムはヴァイスに背を向けたまま答えた。
「寝床つくり。眠れる時に寝ておこうと思って…」
のんきにそう言うデニムにヴァイスは大声を出す。デニムにつかみかかる勢いだ。
「バカか!?てめーは。寝込み襲われたら即刻あの世行きだろーが!!」
整えた藁の上にデニムは座りヴァイスに言った。
「夜明けにここを出る。休んでないと身体がもたないぞ。」
「オレは眠らん。眠るんだったらてめー一人で眠ってろ。敵が来たら置いて行くからな」
「後で交代しよう、ヴァイス。君もちゃんと休めよ…」
そう言って、藁の上に横になりあっという間に眠ってしまった。





・……本当に寝ちまいやがった
どーゆー神経してんだか……

繊細な神経のオレ様には真似できねー……





実際ヴァイスは部屋に死体があるのが嫌だった。自分が殺しておきながらなんとなく気味が悪かった。デニムをたたき起こして死体を外に出してもらおうかとも思ったが、怖いと思われるのが癪だったのでそのままにしておいたのだが…。自分で外に出すという考えまでには至らなかった。

使い物にならないショートソードを抱きかかえるようにしてヴァイスは座って背中を壁に預ける。

ぐうぅ〜と腹の虫がなった…。



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