戸口のところに白っぽい服の男が、その向こうにもう一人が倒れている。
隊長とおぼしき男が松明を取り上げて、戸口に倒れている男に屈みこんだ。顔を覗く。
「…!死んでる……」
ヴァイスを調べた兵が隊長に告げる。
「こっちの男は気を失っています!」
「こいつがゴリアテの英雄でしょうか?」
「わからん…、森番の話では小屋には仲間がもう一人いるはずだ。捜せ!」
「はい!」
兵たちが狭い小屋の中を松明を持って捜し始めた。
「こいつとそっちは外に出せ…」

男とヴァイスが引きずられて小屋の外に出された時、



「きゃあああーっ!」
突然響いた女の甲高い声にまわりの者は驚いてその声の方を向いた。



引きずられてきたヴァイスに気を取られたデニムは、森番の妻が自分の方へ走ってきたのに気がつかなかった。彼女はデニムに飛びついて、彼が夫でないことに気がついたのだ。
「……!!」
「デニムはとっさに女の口を塞いだが、女は口を押さえるデニムの手に噛み付いた。女にもヴァイスなら手加減はしなかっただろうが、本来女性に対してフェミニストの彼はどこかで力を抜いたのだろう。
「うわっ!」
デニムが手を離した隙に女はヴァイスたちの方に走っていき松明を兵から取り上げてヴァイスたちの顔を照らした。

「うわあああーっ!!」
そう叫んで夫に取りすがる。
「あんた あんた!! 」

その瞬間気絶していたはずのヴァイスが飛び起きて叫んだ。
「デニム!! やれ」
虚をくらったガルガスタン兵の隙をついてヴァイスはショートソードで切りかかった。
「うわああーっ!」

「デニム…!早く火を!!」

「駄目だよヴァイス、呪文が出てこない!」
そう叫んだデニムにヴァイスは舌打ちしてガルガスタン兵を押しのけ地面の松明を拾い上げて小屋に投げ込んだ。小屋が爆発して燃え出した。悲鳴を上げて、中から何人かの兵がころがり出てくる。

ヴァイスたちはゼノビア人から貰った“燃える粉”を常に持ち歩いていた。硝石、硫黄などを混合し、熱などによって爆発させる粉だ。これを小屋に撒いてガルガスタン兵を吹き飛ばす…予定だったのだが、少し狂った。

少しどころかかなりだ。何が起こったかわからなかった敵が現状を理解する。

「ゴリアテの英雄だ。生け捕れ!」
そう叫びながら…敵はヴァイスに襲い掛かってきた。




あれ…?な展開


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