「ヴァイス!」
デニムが松明を振り回しながらヴァイスの方へ来ようとする。
「バカ!おまえは逃げろ!!」

ヴァイスは使い物にならない自分のショートソードは捨てて敵から奪ったタワーシールドで防御する。敵が自分とデニムを勘違いしているなら命が危ないのは彼の方だ。敵がデニムにも襲い掛かってくる。いくら祝福の聖石を装備していても限りなくヤバイ状況だった。

ヴァイスは瞬時に策をめぐらせると叫んだ。

「ゴリアテの英雄だろう!? こんなところでおまえが捕まってみろ。ウォルスタ軍の士気にかかわるだろうが、おまえだけは逃げろ!!」

その声を聞いたガルガスタン兵が顔を見合わせた。いったいどっちが本当のゴリアテの英雄なのだろう?
「どっちとも生け捕れ!」
隊長が叫んでヴァイスに切りかかってくる。
ヴァイスはにやりと笑うと彼に言った。
「おい、本当のことを教えてやろうか…」
「何だ?」
「本物はあの中だよ。」
と燃えさかる小屋を指す。
「…!!」
「生け捕らないと枢機卿に怒られるんだろう。飛び込めよ。」
「クソガキが!!」
ヒゲをプルプルと震わせながら怒りにふるえる隊長の表情がわかった。月はいつの間にか雲から出ていた。

「ヴァイス!」
デニムがヴァイスの横に来た。松明を剣代りに構えた彼にヴァイスは冷たく言った。
「おまえだけでも逃げれば良かったんだよ」
「でも君が…」
心配だから…とデニムが答える。ちいっと舌打ちしてヴァイスは敵を見た。
「武器がこれとそれじゃ…」
松明とタワーシールドじゃどうしようもねえな…とヴァイスは呟く。敵に身構えながら無意識に何かを捜そうとズボンのポケットに手を突っ込むと何かが手にあたった。
「…?」
ポケットから出す。
「それは…?」
「ああ、さっき小屋で拾った。」
「見せて。」
デニムも敵に身構えながらヴァイスからそれを受け取った。
「これ…オーブだよ。ヴァイス!」
「オーブってあれか?」
「しかも…水だ。ヴァイス、属性は水だろう。君が使うんだ。」
そう言ってデニムは再びヴァイスにオーブを手渡した。が、ヴァイスはデニムに言う。
「使い方がわからねえ。」
「グルーザに祈ってオーブを翳すんだよ!」
「オレは無神論者だ!」
「馬鹿言ってないでグルーザに祈って!」
「何て?」
「何でもいいから早く祈れ!敵がほらっ!!」

2人がもたついているとガルガスタン兵が一斉に襲い掛かってきた。






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