けむるような金の髪のばら色の頬をしたその女性は
古都ライムと同じ名の名門ライム家の一族だった
幼い頃に出会った少年にずっと恋をして
コリタニの地で彼に再会した時
運命だと思ったのに・・・
彼のよこにはオクシオーヌという
竜使いの少女がいた
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第2夜
エレオノラ・ライムはオクシオーヌがジュヌーンと城に戻ってきたと聞いて心の底から良かったと思った。酷い事を言ったと思う。ジュヌーンの横に当然のような顔をしている彼女に嫉妬していた。彼女の淋しさも悲しみも孤独な心も苦しみもわかろうとせず。
「あなたといる限り彼は幸せになれないわ」
思い上がりもはなはだしいと冷静になればわかるのに、
あの時は必死だった。
「彼を解放して欲しいの。あなたという罪の意識から、彼を自由にしてあげて」
ジュヌーンのために精一杯おしゃれして着飾った少女のいじらしさがわかるからこそ、彼女へずっとおさえていた感情が堰をきってあふれてしまった。
決して傷つけたかったわけではない。
彼女がジュヌーンを一人の男性として意識したら勝ち目がないと思ったから
そうなる前に結婚という形で彼を自分のものにしたかったのだ。
でも、彼ははっきりと言ったのだ。
「二人きりではもう会わない」
初めて会った時からずっと彼に恋していた。
ライムにいても彼の噂は聞こえてきた。ガルガスタン最強の竜騎兵団団長・・・。バルバトス枢機卿の片腕。バスクの惨劇に彼がかかわったという時も彼を信じた。そして枢機卿との対立と幽閉、ウォルスタ解放軍との出会い・・・。ハイムは解放され、新しい国が出来た。
コリタニで彼女はジュヌーンに再会した。
昔からの知り合いということもあり、ジュヌーンにとって彼女といる時間は居心地の悪いものではなかった。彼女の穏やかな物腰、豊かな教養、どれも好ましいと思ったが、それはあくまで友人としてだ。彼は無意識のうちに恋愛感情に発展する事を押さえ込んでいたのかもしれなかった。
オクシオーヌさえいなければ・・・、何度思ったことだろう。
ジュヌーンはオクシオーヌが大人になるのを待っているのかと思うとどうかなりそうだった。
けれどもう・・・、わかったような気がする
彼の気持ちが・・・
彼自身さえ気がついていない少女への本当の想い・・・
確かな予感
今までの恋を諦めるのはつらいけど、ジュヌーンに告げようと思った。
ライムに帰ると。
心のどこかでジュヌーンが反対してくれるのを望んでいる自分を哀れみながら・・・
オクシオーヌの魔法で出来た腕の凍傷がまだ痛んだ。