尽きぬ悲しみ

『夜ごと、眠っているあいだに、頭の中の奥深くでいったいどんなことが起こっているのだろう? そこでは、自分の知らないなにかしら微妙
ヴィオラ・フレックス
Freckles (ソバカス)が日本では
間違ってこの名前になったとか
なことが繰り返し起こっているにちがいなく、それが、毎朝の眼覚めを、言いようもなく悲しいものにさせている大きな原因ではないか 』 これは詩人清岡卓行の「朝の悲しみ」の冒頭です。そこには病で逝った妻への思慕が語られています。

   眼覚めることがどんなに悲しいか
   おお それとは無縁な花々が
   明るく眩しい光線の海の底で
   さりげなく開いている 朝の窓べの
   新しい太陽のように。
           ―清岡卓行「朝の悲しみ」より―

誰しも似たような思いに、直ぐには寝床から起き上がれない朝があると思います。この悲しみは何からくるのだろうと、暫く考えてしまいます。私の場合は多分、加齢に伴う健康の不安、最近起こった身の周りのストレス、直前に見た夢の残像や心の動きなど、茫漠とした捉えようのないものですが。

アリアケスミレ
白地に紫の条だったのが
今年はピンク色に咲きました
最近そんなことをしきりに考えていたら、25日(月)の朝発生したJR西日本の尼崎脱線事故は、死者90人以上、負傷者400人以上の最悪の列車事故となりました。幼い子供達は「お母さんはどこへいったの?」と聞き、心の支えだった明るい妻は? 頼もしい夫は? 父は? 笑顔で友人と海外旅行に向けて発った娘は? 息子は?  兄は? 妹は? 残された遺族の悲しみは朝の眼覚めと同時に始まり尽きることがないのです。
一瞬の不注意が取り返しのつかない大惨事を引き起こしたことに大きな怒りを覚えます。

05. 4. 27


レンゲ田

オオバ黄スミレ
オオバ黄スミレの蕾は2日後にはもう開いていました。葉に比べて花が小さく、タチツボスミレと比べてみました。

昨夜のTVニュースでは西日本は初夏の5月、6月の陽気だったそうで、一面のレンゲ田で子供連れの家族が花を摘んでいる長閑な風景が映し出されました。レンゲを摘んで花輪を作った思い出は誰にでもあると思います。「このあとレンゲを田に鋤き込みます」というアナウンサーの言葉で思い出した事があります。

2人の子供が幼かった頃、住んでいた社宅のアパートの周りは田圃(たんぼ)が広がっていました。夏は農薬散布の臭いに慌てて窓を閉め、実りの秋は早朝から雀脅しの音に悩まされましたが、春になると赤紫の絨毯を敷き詰めた美しいレンゲ田に変身しました。或る日、隣の家の幼稚園児と一緒にレンゲ田で遊ぶ我が子の姿を遠くに見ながら、メルヘンチックな季節の幸せに浸っていたところ、
白花コモロスミレ
翌朝、隣の子のお母さんから思いがけないことを聞きました。
レンゲ田の持ち主から苦情を持ち込まれたというのです。肥料にするためレンゲの種を蒔いて咲かせているのだから草が潰されてしまうので子供を田に入れないでくれと言われたのだそうです。それまで田圃や野原に咲く雑草だと思っていたので、「へぇ〜、そうだったのぉ〜!」とビックリしてしまいました。今その一帯は住宅や商店が密集してその頃の面影は何処を探してもありません。

05. 4. 19


高齢者になったら

オオバ黄スミレの蕾
古希を迎えると市から「高齢者優待乗車証」なるものが発行されます。それまでは「年令」なんてべつに♪どうでもいいですよ〜♪だったのが市から呼び出し状が届いて福祉センターに出向くと、「あなたは70歳になられましたのでこれを発行します」と宣言され、上記のカードを戴きました。「これを貰うとなんだかガックリきたぞ〜」と夫がつぶやいたので、あ、私だけじゃなかったのだと思ったのでした。

一足お先に私が貰ったときはそれまで何ともなかったのに、それから毎月のように転倒して歩行恐怖症みたいになってしまいました。高速道を走るときは「枯葉
肥後スミレと錦スミレ
マーク」を付けた方がいいんじゃないかと迷ったり、次の運転免許証の更新はシミュレーションみたいな事をするのかしらと俄かに不安が心に暗い影をさします。

この仰々しい名称のカードを市営バスの運転手さんに見せると、料金はどこまで乗っても1回100円です。目的地への交通機関が少ない当地では皆がマイカーを使っているのでその有難さはイマイチ、普段すれ違うバスに殆ど乗客の影はありません。 最長距離の通常料金は約1000円。私が乗った夜の乗客6人のうち半数がこのカ−ドの利用者でした。100円硬貨が音を立てて3回続けて料金箱に落ちると、つい運転手さんの顔を見てしまいました。

05. 4. 14


白木蓮

お彼岸が過ぎてもわが地方の桜はまだ固い蕾のままなのに、暦が変わった途端2、3週も先の陽気になってしまいました。昨日、テレビで東京の上野公園のお花見のニュースが
お彼岸の白木蓮(ハウステンボス)
流れました。満開でした。
桜前線は北上するものと思っていた常識がこの数年狂ってしまっています。今朝やっと我が家の近くのソメイヨシノは2分咲きです。

近所の家の白木蓮の大木が青空に映えて、そこだけ ハッと目を見張る景色です。葉が出る前に一斉に咲き誇る圧倒的な純白の豪華さは見事というほかありません。お終いは茶色に変色して 1枚 1枚、花びらが枝から離れ落ちて行き、いつまでも同じ姿をとどめていないのは、日本の風土に合った花の宿命なのでしょう。暫くすると樹は青々とした大きな若葉に覆われてしまいます。

木陰に置いていたクロユリの1鉢に
クロユリの芽
芽が出ていました。3日程前までは何もなかったのに、この陽気で慌てて芽を出したような感じです。昨日は洗濯物を干した後、暖かくて一日中、庭の草むしりで過してしまいました。おそろしく伸びたハコベやノゲシ、ホトケノザ、タネツケバナを引くとタチツボスミレの沢山の蕾を付けた茎が直立しています。見ればあちこちに雑草に覆われて地に這うようにスミレが蕾を抱いています。今月の日記のタイトル画像はスミレに変えてみました。(^o^)

05. 4. 6

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