第二章



 冬が近づいて、めっきり寒くなってきたあの日、私は順の家へ行った。テスト前だったから、勉強をしに。あの日、順はお昼が遅かっ

たのか、私が行ってからお昼 を食べに下りて行った。あの時、前々から、順が手術の為入院していた頃に、みんなからどんな励ましの

手紙やなんかをもらっていたのか気になっていた。 これから誰か励ます時、どんな事を言ってあげたらいいのか、少し参考になるかも

とも思っていた。でも、順は少しも見せてくれなかった。



 部屋に私一人になった時、ここぞとばかりに、その引き出しを開けてしまった。その時から、私が順に対して持っていた、信頼、愛

情、ひとつひとつのものが少し ずつ崩れていきそうになるとは・・・。そこで、女の子からの手紙で、「抱きつく」「ドキドキする」「私の気持

ちは・・・」など恋愛に関するような事が書かれた ものを見つけてしまった。ショックだった。信頼が・・・愛情が・・・私だけを愛してくれて

いるという信頼が音を立てて崩れそうだった。私は思わず泣いた。 順に裏切られた、と思いたくなかったし、順が私に内緒で他の女の

子を抱いていると考えたくなかったから。私だけ順だ。順だけの私だ。といつも思っていたし、 もう、順の全てを知っていると思ってい

た。

 

 だけど、一年と少し経って、また新たな順を知ってしまった。しかもそれは知らなくてもいい所だ。順は昔、交通事故で亡くした元彼女

の言葉、多分「次に彼女に なる人は大切にしてあげるんだよ」とか「次に彼女になる人とはいつまでも仲良くするんだよ。」とか、そうい

う言葉だと思うけど、その言葉が忘れられなくて、 私と付き合っているのか・・・と思った。でも、順に「私の事好き?」と聞くと、「好きだ

よ」と言ってくれる。いつもなら素直に喜べるのに、この時は素直に喜 べなかった。また、嘘ついてるんじゃないの?とか思ってしまって

いた。どこまで本当で、どこから嘘なのか、また、全て本当で、全て嘘なのか・・・。

 

 死んでしまった人を大切に思う事を悪く言うんじゃない。いいと思う。でもそれが元彼女だと言うから、また不安になる。今でもその子

の事好きなんじゃないか。 私とその子を重ねてるんじゃないか。果てには、私なんて本当はどうでもいいんじゃないか!と思ってしま

う。そこで私は悩んでしまった。この悩みが後の私の人生 を大きく変えた。悩んで悩んで悩んで・・・。


  その日の夜、順とメールをしている時、ずっと泣いていた。悩んだけど、どうすればいいかわからなかったし、だからと言って、順と別

れたくない。今まで一年 数ヶ月、ずっと好きで、愛していた。もう、私の人生でいなくてはならない人になっていたのに、今、気づいたの

だ。なら、どうすればいい?他の人はどうするんだ ろう?死んだ人より、自分を愛してもらう方法・・・。私はずっと考えていた。その事を

考える事で日が暮れていった。何日も何日も。そして、最悪の結果かもし れない。頭の隅っこの方でこれはダメだってわかっていた。

でもそうするしかなかった。


《戻る》
《つづく》