第三章


やっとわかったのだ。死んだ人に勝つ方法。最後にいっぱい愛情を注いで、そして・・・自分も死ぬ。考えて悩んで出た答えがそうだっ

た。もうこれ以上頭をひね った所で、良い考え、行動が思い浮かばない。順に愛してほしいから。



「私のこれまでのたくさんの愛、これからも順だけを愛していくという誓いも込めて私は死にます。バカだと思うかもしれない、あきれる

かもしれない、 何も変わらないかもしれない。でも、もし、生きていて順に愛されないなら、それ以上の苦痛はない。もし、順が他の人

を好きになったら。そんなのもっと もっと苦痛!私が順の一番になりたい!死ねばきっと順の心に、順の一番になれると思う。だから

死にます。


今まで仲良くしてくれた友に告ぐ。今までありがとう。君達が良い恋愛をし、良き人の妻になる頃、きっと私は空高く、上の方から見守っ

ていると思います。 きっと祝福の花びらを舞わすでしょう。私は今からみんなより一足早く、少し違った幸せの中へと旅立ちます。本当

に今までありがとう。


そして、お父さん、お母さん、今までの人生、育ててくれてありがとう。


順。愛してる。誰よりも。私、順の一番になれるよね?きっと一番にしてね。


順。大好きだよ。世界で一番。私、順の一番になれるよね?きっと一番にしてね。


順。永遠に 私、多岐川菜緒に    めいっぱいの愛情を・・・!」


それから数日後、菜緒は風呂場で手首を切って死んでいた。その死に顔はとても幸せそうだった。まるで・・・


ー私の死は幸せな死です。私は嬉しいのですー


と、言わんばかりに。


  あの引き出しさえ、開けなければ・・・。菜緒は今でも順と幸せそうに手をつないで歩いていたかもしれない。知らない方がいい事もあ

ると言う事を誰もが知って いるだろうか。いや、そんな事ははい。また誰か、他の人が他の場所で開けていけない引き出しを開けてい

るかもしれない。その時、どう対処するか、常に考えて おいたらいいのではないか?ふと、思いたったら、書き留めておくのもいいかも

しれない。本当の幸せにたどり着いた時、それは本当の幸せではなくなるような気 がする。常に何かを求め、何かを満たそうとする。

だけど、なかなか満たせない・・・。その「何か」がわかっていて、満たない時、 それが本当の幸せなのかもしれない。


 

千里の処女作です。実際にあった事を題材に書いているけど、でももちろん、フィクションです。恋愛の仕方なんて千差万別、いろん

な愛し方や、 表現の仕方があると思います。そのいろんな表現の中から、この菜緒は「死」を選んでしまった。本当に恋をした、そし

て、「自分だけを愛して!」っと独占欲が 強すぎた結果かもしれない。でもその菜緒の考えを否定する事は誰にも出来ないと思う。

千里は否定する側の人間でなく、むしろ賛成する側の人間なのでは? と思う時がある。(でも、千里には死ぬ勇気がないのだけ

ど・・・。)自殺できる人は本当の勇気がある人だと思う。世の中にはリストカットと言うもの、 自傷行為を繰り返す人がいます。その

人達は「生きている」ということを実感する為に自傷行為をしてしまう。そうやって生きてる事を実感する人がいるのだから、 自殺を

して愛情を表現する人がいてもいい、と、千里は思った。但しそれは本当に最後の・・・最後の選択・・・・・。

 

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