10.シュテファン・ドーム

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 ウィーンの中心を挙げるならば、まさにこの「シュテファン寺院」である、と言えるだろう。旧市街のほぼ中心部に位置し、寺院の前の「シュテファン広場」からは、広場と言えるほどの大きな通りが3つほど延びている。広場には夕方ともなると人通りも多くなり、大道芸人がいたり、弾き語りがいたりと大変にぎやかになる。この近辺にはカフェも多く、自家製ケーキを供するカフェ・コンディトライと呼ばれる店も軒を連ねている。
 しかしこの日、カフェには結局入らなかった。時間の問題もあったし、何しろ勝手がよくわからない。店に入っても日本みたいに「いらっしゃいませー」的なものはなさそうだし、勝手に適当な席に座って注文して、というのはかなり難しいように思える。そもそもドイツ語に自信がない。英語で何とかなるもんじゃないだろう、と不安になっていたから、とても入る勇気は起きなかった。
 シュテファン寺院の建物は14〜15世紀に改築されたもので、面白いのは屋根がギザギザの幾何学模様になっているところである。北と南と1本ずつ、対になる塔があるが、南塔のほうがずっと背が高い。なんでも北塔を作っている途中で財政難になるわトルコはせめてくるわで工事が中断したせいらしい。

 さすがに大聖堂(ドーム)の名を冠するだけあって、呆れるほど巨大である。柱が何本も立ち、天井までずーっと続いている。正面奥には豪華なステンドグラスがあり、その前に祭壇がある。
 内部空間が広く、人々もたくさん来ている分、ミノリーテン教会ほどは圧迫感がない。しかし日本の寺院と比べるとやはり重苦しい、深刻なイメージをまとっている。
 時間の関係で、内部見学はそこそこにして、私は南塔の階段に挑戦することにした。入り口のおばさんに料金を払い、登る。
 しかしこの階段が狭い上、やたらと半径の狭い螺旋階段である。勢いをつけて登り始めたのはいいものの、ほとんどその場でくるくる回っているようなもので、だんだん目が回ってくる。途中何度か人とすれ違ったが、挨拶などしている余裕もない。
 ところどころ切ってある窓から外を眺めると、結構高いところまで登ってきているように見えるのだが、階段はまだまだ続いている。天井も決して高くないし、見通しはすこぶる悪い。いくら登っても狭い石造りの螺旋階段が続いている、その景色しか見えない。一体どこまで登ればいいんだろうか……。
 いい加減にしてくれ、と絶望仕掛けたとき、急に階段が切れた。ついに頂上か、と大喜びで歩いていったら、狭い通路の向こうにまたらせん階段が……それも同じタイプの狭い奴。おいおいまたかよ、とため息をつくしかない。
 それでもさらにがんばって登ると、小さな木の扉があった。これが時代を経たもので、いかにもヨーロッパの古城にありそうな、雰囲気のある扉だった。その扉を抜けた向こうが、展望台になっていた。

 展望台、と言っても塔の内部で、対して広くない。小さな窓が2つばかり切ってあるだけ。そして土産物屋がこんなところにも……。机だのイスだのという備品はどこから運んだんだろう。あの狭い階段を必死に持ち運んだんだろうか。その努力は賞賛に値する。これで面白い物でも売っていれば、と思ったが、どこの土産物屋にもありそうなもので、期待はずれだった。
 窓からの眺めは、残念ながら改修工事のための足場が組まれてしまっていて、あまりよく見えなかった。しかしカーレンベルクに続き、ウィーンの街を上から眺められたのはよかった。

 この日の夕食も、ユースで安く済ませることにした。市電N号線沿いにいくつかスーパーがあって、そこで買い物をしても良かったが、ユースの夕食が安いので、そういう努力をする必要はない。
 このあと「王宮庭園」・「フォルクス庭園」の2箇所を回り、街の夜景を眺めたい、とのんびりしていたせいで、ユースに戻るのがぎりぎりになり、あやうく食事にありつけないところだった。それにゆっくり食べていたら、早く食べてくれとさいそくされるし……結構忙しかった。
 ウィーンが、というよりヨーロッパの空気は乾燥しているので、とにかくのどが渇く。出先でもジュースを買ったり、ホルダーを取り付けた500ミリペットボトルの中に例の炭酸水を入れて持ち歩いていたのだが、炭酸水がとにかくまずい上、せっかく日本から持ってきたアウトドア用水筒が使えないのが痛い。中学の頃から使っているすぐれもので、1リットル入る割に薄く、体にフィットするので持ち運びやすい。
 そこで、前日出かけたガソリンスタンドに、また水を買いに行くことにした。今度はエビアン。簡単な買い物なので、無言で出来る。レジに人が一人いたが、店員の人がどうぞ、というようなことを言って、私のを先にチェックしてくれた。店員が「ありがとう(Danke)」と言ってくれたので、試しに私も「Danke」とぼそりと返してみたら、大変店員が喜んだらしく、「Danke shoene, Bitte!!」と何度も言ってくれた。しかしドイツ語がそれしかわからない私は、逃げるように店を出てしまった……それ以上レベルの高いドイツ語はわからないのだ。

 部屋で書き物をしていたら、年は私よりは上だろうか、相部屋となる人が一人入ってきた。ハロー、と緊張しながら挨拶をする。
 机の上のシーツをさして、「これは私のシーツ?」と聞くので、そうですよ、と答えた――英語での意志疎通など、案外と簡単な物である。外人だ、と身構えるから失敗する。
 この人、ついてすぐにシャワーを浴び、さっさと寝てしまった。私も眠かったし、この人の邪魔をしてもいけないので、早めにプランニングを済ませ、寝てしまうことにした。

(00/12/13)
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