7.イタリアン

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 6時にもなると、見所はたいてい閉まるし、日も落ちて暗くなってしまう。もはや街にいてもほとんど意味がないので、ユースに戻ることにした。夕食は食堂で安いのを食べることにしたのだ。
 さて、夕食は65シリング(S)だったが、持ち合わせが500Sという巨大紙幣しかなかった。これを会計で差し出すと、不機嫌ながらもおつりを返してもらえたが、100S足りないような気がする。まぁ700円ぐらいのことだから、と思ったりもしたのだが、あえて申し出てみることにした。すると、私と全く同じことをしたヨーロッパ系の初老の男がいて、全く同じ文句を言っていた。渡りに船、と交渉はその人に任せてしまった。さすがネイティブ、完璧な英語で文句を言ってくれる。
 すると奥からチーフ的な人がが出てきて、なんだかんだと話をしていた。するとチーフは、釣り銭の小銭の方から足し算をするように、会計のお姉さんの前で検算を始めたのだ。釣り銭は5Sが1つ、10Sが1つ、20Sが1つ、100Sが3枚。
「65(夕食),(+5S=)70,(+10S=)80,(+20S=)100,(+100S=)200,(+100S=)300,(+100S=)400……100S足りない」
 こうして無事に足りない100Sは手に入ったのだが、全くよくわからない計算のしかたをする人たちである。そもそも釣り銭が入っているのは計算のできるレジなのに、なぜ使おうとしないんだろう。
 こんなところでCMバッシングをするのはどうかと思うが、どこかの学習塾か何かの宣伝で、日本では「1+4=5」という教え方をするが、欧米では「?+?=5」という教え方をするんだという。つまり答えがたくさんあるわけで、それだけ考える力が付く――という説明をしていたが、これは単に欧米の人たちがそういう数の数え方をするから、というだけのように思える。彼らは「65+?=500」と考えて釣り銭を出す人たちなのである。
 食堂には、くだんのイタリアンの一団がいた。彼らは私がさまよっている間、すぐ側のバス停でバス待ちをしていたのだが、どうやらさまよう私を目撃した奴がいるらしく、こっちをみてげらげら笑っていた。何かイタリア語でしゃべっているようだ。どうせわからないと思ってのことだろう。私だってわかりたくもないし、イタリアンとつきあうためにウィーンに来たわけではない。かわいい女の子たちもいて、せっかくのチャンスなのにちょっともったいない気がしたが、自分の英語能力に自信がないのでやめておいた。そもそも相手が英語使えるかどうかもわからない。

 この夜、相部屋になる人は誰もいなかった。つまり4人部屋を一人で占拠できるわけで、これほどいいことはない。自分の好きなようにシャワールームを使い、トイレを使い、テーブルを引っぱり出して書き物をした。まったくもって、運がいい。
 ヨーロッパの乾いた空気に喉が辛くなってきた私は、ジュースを飲むのはなんだから、と水を求めて外に出た。といっても、むろんコンビニなんて便利な物はない――と思ってふらふら歩いていたら、ガソリンスタンドを見つけた。もしやと思って近づいてみると、やはり売店があるではないか!中を見ると、まるでコンビニである。早速そこでミネラルウォーターを購入。1.5リットルのペットボトルで、エビアンの他にもう一つあり、エビアンより安かったのでそっちにした。幸い料金はレジに表示されたので、難なく買い物が出来た。
 ユースに戻ると、イタリアンの女の子が1階のラウンジにいた。こっちを向いてにやにや(にこにこではなかったと思う)している。余裕のある時なら「こんばんは」とでも言うところだが、残念ながら私にはそんな精神的な余裕はない。さっさと部屋に引き上げた。今考えれば非常にもったいないことをしたと思う。年齢と共に巨大化するイタリアンとはいえ、かなり可愛い子であることに間違いはなかった。せめて友達になっておけばよかったのに。惜しいことをした。

 さて、買ってきたペットボトルのふたを開けると、いきなり水に泡が立ってあふれたではないか!一体何なんだこの水は。
 飲んでみると、味のしないコーラ。いや、なんか味はするのだが、変なにおいというか、変な舌触りである。そう、私はよりによって「日本人にはヤバい」と噂のガス入りミネラルウォーターを買ってしまったのだ!
 私はそういうヘンな飲み物は好きな方で、自動販売機を見るとヘンなのがないか必ず捜す方である。しかしさすがに明らかに「まずそう」なのには躊躇する方で、ガス入りミネラルウォーターの試飲もパスしようと思っていたのだ。しかしここまで見事に当たるとは。そして予想通りまずいとは!!
 水自体は何の問題もないと思う。単なる水。問題は炭酸にある。ひりつくような感じ、炭酸の妙なにおいと舌触り。酸っぱいとも苦いとも、なんとも表現できない独特の味がする。炭酸とはこういう味がする物なのか、と改めて気づかせてくれた。
 あらためてぐびっ、と飲んでみると、今度は少しましだった。やはり他の炭酸飲料と同じく、これものどごしを味わって飲むものらしい。しかしおいしくないことにはかわりがない。とにかくこの炭酸をさっさと抜かないといけない。
 そこで書き物をしながらさんざん振り回したのだが、なかなかガスが抜けてくれない。それどころか中途半端に気が抜けて、妙な味が鮮明になってきてしまった。もはやこれは完全に水ではない。味もにおいもおかしいのだ。

 午後9時まで、この「海外ぶっこ」の記事を書いていたのだが、慣れない土地を歩き回った疲れか、それとも時差の影響か、体が言うことをきかなくなってきたので。寝ることにした。広い部屋の、下の段のベッドを使い、就寝……。

(00/12/8)
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