5.オーストリア入国

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 飛行機を降りた私は、英語の案内に従って荷物受け取りの場所へと進んでいった。とにかく外に出たい一心だったから、中のことはあまり見なかった。
 まずは入国手続き。パスポートコントロールと書いてある窓口には、「EU域内」と「非EU」の2種類が設けられている。「非EU」窓口には長蛇の列が出来ているのは言うまでもない。
 窓口にはなんだかあまり目つきの良くないお姉さん。私の前にいたアラブ系の人がごちゃごちゃやってたから、これはやばいかな、と思ったが、何一つ聞かれることなく、渡したパスポートにハンコを押してあっさり返してくれた。発行したてのまっさらなパスポートを持っている日本人など、疑う意味もないのだろう。
 さらにしばらく通路を行ったところには、ベルトコンベヤがずらっと並んでいた。そしてちょうど目の前に、私のバックパックが転がって流れているではないか!トランジットの時のことが心配だったが、無事だった。

 とりあえず現地通貨、オーストリア・シリングを手に入れなければならない。空港の両替所は手数料が高いと言われていて、普通は小銭を変えるぐらいで済ませるところなのだが、あいにくと到着したのは日曜で、アメックスの支店はもちろん、銀行もみな休みである。しかたがないので、1日目の予算と少し色をつけて両替したのだが、いくらになるか確かめもせずに替えたのが間違いだった。10%以上の手数料が引かれている……。まぁしかたない。今度からは毎回いくらになるか聞いて回ろう、と心に決めた。
 外に出た途端、肌を刺すような寒さ。日本の秋とシンガポールで油断していた体にはかなり寒く感じた。
 観光案内所に向かうと、係の人がいない。呼び鈴を押してもなかなか出ない、と思ったら、空港内の内側の方が正規の窓口だったようだ。「ウィーンカード」という、3日間ウィーン市内の鉄道乗り放題で、いくつかの観光施設が割引になるカードがあるということを知っていたので、それを購入。一緒に案内所の人は、日本語の市街地図を出してくれた――やはりあちらの人には私はちゃんと日本人に見えるらしい。説明書きが英語で読むのにかなり苦労したが、なんとか使い方を理解する。

 さて、ヨーロッパの鉄道には改札というものがない。券売機と改札の機械があるだけ。券売機で券を買い、機械に挿入して検印を押す。空港はウィーン市からはずれているので、市内までのキップは買わなくては行けないのだ。
 しかし、券売機の使い方がわからない。英語でも少し書いてあるのだが、それでもわからない。そこで他の人が券を買っているのを見て、マネをして買うことにした。まず、大人1枚のボタンを押す。それから目的地のボタンを押し、最後に金を入れる。日本の場合は、今はどちらでもできるが、昔は「金を入れてからボタンを押す」式だったので、そっちに慣れてしまっている。全く逆の手順である。
 問題は目的地がどこか、である。市内がどこまでだかよくわからなかったので、とりあえず「ウィーン市中心部」と英語で書いてある券を買ってみた。横に料金表が張ってあるのだが、日本のように地図式になってなくて、なんとアルファベット順に並べただけの表である。わかりにくくて仕方がない。
 キップを買って検印の機械に通したとき、ちょうど電車がやってきた。プラットフォームは日本に比べてかなり低いが、そのかわりに小さなタラップが電車の方についている。
 電車に乗り込むとき、ちょうどそこに、いかにもヨーロッパ人、という顔と体格の車掌がいたので、「ウィーン市内行き?」と英語で尋ねると、そうだと答えた。どうやら英語が簡単に通じるのは本当らしい。車掌に検札を受けてから、適当な場所を見つけて座った。

 最初の目的地は今日の宿となるユースホステル。とにかく荷物を置く場所が欲しかったのである。途中のウィーン・ミッテ駅で迷い、最寄り駅というハンデルスカイ駅でも迷ったあげく、なんとか住所の「フリードリヒ・エンゲルス広場」に着いた。ガイドブックによると地名と住所が一致している仕組みになっているから、この広場の周囲のどこかにあるいはずである。
 しかしこれがまたとてつもなく広い広場だった。そばの公園自体も広いが、そこに市電の駅がくっついていてさらに広くなっている。広場をぐるっと回ってみたのだが、どうしても見つからない。途方に暮れて、広場の最後の一角に向けて歩いていると、おばあさんが急に話しかけてきた。もちろんドイツ語である。「ユースホステル」と言っても通じないので、「ユーゲントヘアベアゲ」と言ったら、ようやく通じた。おばあさんは目の前の緑色の建物を指した。早速「ダンケ・シェーン」を使う機会ができた。
 さて、ユースの前にはとても若い人たちがたくさん集まっていた。顔の幼さから考えると中学生に見えるが、男は私より背の高いのがほとんどである。かなり怖い物があったので、とりあえずこの人たちが処理を終えるまで待つことにした。修学旅行か何かだったらしく、先生らしい人が話をしていたのだが、どうもゲルマン系の言語ではないらしい。ラテン系、それもイタリア語らしい。
 ほどなく、イタリアンたちが建物の中に入っていったので、私もようやく中に入ることが出来た。予約の紙とユース会員証を提示し、手続きをする。宿泊表を書いてユースの窓口のお姉さんに渡す。キーは普通のカギではなく、変なプラスチックの板だった。その先端をキーの位置に当てると、ドアが開くしくみだという。
 手続きの間、例のイタリアンが何かカードめいた物を買っていった。なかなかきれいな子たちである。ついでに宿の手続きをしているお姉さんもきれいだな、と思っていたら、私の部屋がある離れを案内してくれようと席を立ったお姉さんが、全てにおいて私よりひとまわり大きいことに気がついた……ヨーロッパの女性ってみんなそうなるんだろうか??

 問題の離れは、なかなか見つからなかった。そのブロックをたっぷり2周して、ようやく居酒屋の裏の建物だとわかった。日本なら建物と建物の間に必ず隙間があるものだが、こちらにはそれがない。目的のユースホステルの入り口を、私はずっと居酒屋の通用口だと思っていたのだ。ユースホステルのマークのあるひさしを見て、ようやくそれだと気がついたのだ。
 ところが、困ったことにドアが開かない。しばらく迷っていると、同じくそこに泊まっているらしき人がやってきて、そばの板にキーを押しつけ、鍵を開けて入っていった。どうやら早速この不思議なキーが役に立つらしい。教えられたとおり、カードキーのふくらんでるところを目標の所に押しつけて――ぴっ、と緑色のランプがついたと思うと、カギの開く音。今度はすんなりと建物の中に入れた。
 部屋は広く、清潔だった。2段ベッドが2つ、ロッカーが4つ。カギはついていないが、南京錠でカギがかけられるしくみになっていた。部屋の奥にはシャワーとトイレ。こちらも広い。
 ともかく大荷物を降ろし、これからの計画を考えることにした。すでに時間は午後2時、つまりここまで来るのだけに4時間もかけてしまったことになる。しかも日曜だから大したことはできない。そこでガイドブックのすすめに従い、まずは山の上からウィーン市を眺めてみることにした。ウィーン市北部・カーレンベルクの丘、これがウィーン観光最初の目的地となった。

(00/11/23)
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