左:ベトナム物語(F20油 1970)
上2点:そのエスキース(紙に鉛筆、インク等)

一連の抽象大作群の後に多数のエスキースの果てに描いたのが左の作品で、これが大型の油絵の最後の作品となる。

この後体調の悪化から病床でも描ける小品を日課として描き続けることになる

 小品群の内容は多様で、広瀬川畔などの近郊の風景の描写や地面の小石や砂礫あるいは草花や蝦蟇や小鳥などを克明に描写したものや、古いスケッチブックの旧作スケッチを単純化構成化してリライトするかと思うと、病舎の窓から見える風景や空の月や夕日などに目を凝らし構成的な線描の中に描写したりしている。

 多くの作品のサイズは2種類くらいに決められており18px13pのものが最も多く、ついで14px9pなどである。紙は相変わらずありあわせの広告の裏などで、それを一回り大きい台紙に貼り付けている。台紙もカレンダーや古絵葉書などの厚紙が用いられており、ものによっては台紙まではみ出して描かれているものや消しゴムで何度も描きなおしたために台紙まで突き破ってしまっているものなどがある。鉛筆で下書きをし推敲を重ねた後ペンで決定線をいれ、多くは色鉛筆で着彩している。

 なくなられた直後にお宅に伺って見せていただいたものが約300点と記憶しており、それ以外にも相当数あるようだ。
 
以下にその一部を紹介する。
 


病舎から望む泉が岳

木の根

崩壊地の表面か
滝壺
構成化された波
以下月と太陽

この辺りはスケッチブックの旧作によるもの
太白山と蔵王連峰
北上川の河口付近か

若い頃登った
吾妻連峰一切経山

広瀬川の岸だろう

八木山辺りからの
太白山

広瀬川畔
渡波 山腹の残雪と滝

岩と波

抽象以前の作品


自画像(20台前半)
キャンバスに油
F10
以下の作品は第2次大戦前後のものと思われる
いずれも水彩
B4サイズくらいの画用紙
タンク車のある風景
P40油

加藤正衛の具象作品

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