舞い散るそれは百合の花
―It which dances and breaks up is the flower of a
lily―
第一草「SAKURAドロップス」
第十ニ幕〜Spring breeze〜
土手を駆け降りて、水面が干上がったそこに足をつけると、ジュブッという音と一緒にリリーの足が少し沈んで、靴の中に少しずつ水が浸入してきた。しかし、そんな事お構いなしにジュブッジュブッと音を立てながらその人の側まで歩み寄った。 「夜魅さま。お言いつけを破って探し出してしまいました」 どのくらいそうしていただろう。風が少しだけ冷たくなっていた。太陽が少しだけ西に傾いていた。ジュブッという音と一緒に夜魅がリリーの方を振り返る。一瞬交差した夜魅の視線は、プロンテラ南郊外で暴漢に見せたあの視線以上に冷たかった。 (もしまたテレポートでどこかに飛んでいってしまわれたら、もうわたしには追いかける力がありません。お願いです。夜魅さま。またいつものように微笑んでください。お願いです・・・) 土手を登った所にちょうどあった桜の木の根元に、まるで繰り手を無くした人形のように夜魅は腰を降ろして幹に寄りかかり、茜色に染まり始めた空をじっと見つめていた。リリーはその傍らに立ち、泣きたくなるのを必死で堪えながら無理に微笑んでそっと夜魅に尋ねた。 二人の間を再び永遠とも思えるほどの沈黙が訪れた。リリーはまた微笑み合える時が来ることを信じてじっとうつむきながらこの沈黙に耐えていた。 太陽は西へと傾き空には星が瞬き始めた。さあぁと吹いた春の風がリリーの肩下で切りそろえられた金色の髪と戯れた。乱れを直そうと頭に手を伸ばしたその時、それより先に違う手がリリーの頭に置かれてそっと優しく撫でた。 「も、もう。おかしなコ。ほら」 「・・・何も言わないの?」 (わたしにそんな重荷を背負う事が出来るのかな。不安。でも、大好きな人の荷物ならば一緒に持ちたい。もし、重過ぎて歩けなくなったとしても、きっと手を差し伸べてくれる。わたしもきっとそうするから。だから恐がる事は無いの。むしろ誇りに思わなくちゃ。憧れの夜魅さまの荷物をわたしなんかが半分持てるんだから) リリーは瞬間視線を外した後、再び夜魅の視線と向き合った。ついさっきまでとは違う夜魅も驚くくらいの覚悟を決めた視線。一呼吸した後、リリーの唇が静かに動いた。 ふぅと一息ついた後、夜魅は表情を引き締めて話を始めた。 「
『
2003年8月2日 公開 協力
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Base story:gravity & gungHo