■ ネットワーク
ネット君、ネットワークとはなんだ?
ネットワークですか? ネットワークってぇと、…。
なんか既視感のある質問ですね。
うむ、第0回でそういう話をしたな。
え〜。「何かと何かが、何かによって網状に繋がっていて、何かを運ぶ」
それがネットワークです。
うむうむ。それはネットワークそのものの説明になるな。
実際コンピュータ・ネットワーク内で使われる「ネットワーク」という用語は、その意味も含んでいるがちょっと違う意味になる。
どのように違うんですか?
うむ。簡単に言うとな、コンピュータや各デバイスをメディアで相互に接続した論理的なグループのことをネットワークと言うのだよ。
論理的なグループ?
うむ。例えば、住所でいこう。
A市B区C町1番地2丁目3番、という場所にネット君が住んでいるとする。つまりA市というネットワークが存在し、ネット君はそのネットワークに所属していることになる。
ふむふむ。
つまりネットワークとは、パソコンが所属している場所のことなんですか?
そうだな、そう考えるのが早い。
ただし、先ほどの例でいえば、ネット君はA市というネットワーク内の、B区というネットワーク内の、C町というネットワーク内の…。
1番地というネットワーク内の、2丁目というネットワーク内の、3番に住んでいることになる、わけですね。
そうだ、ネットワークの中にネットワークが存在することもある。
インターネットなどはその典型だ。あれは大〜小規模のネットワークを接続して巨大なネットワークを作り上げている形だからな。
ははぁ。
レイヤ2はそのネットワーク内での相互通信の方法だったわけだ。
これから話すレイヤ3はネットワーク間の相互通信の方法になる。
ネットワークを相互通信して、より大きなネットワークを作り出す、ということですね。
そうなるな。
このような相互通信したネットワークのことをインターネットワークという。
いんたーねっとわーく。
■ インターネットワーク
先ほども言ったとおり、今世界を繋いでいるインターネットというものは、世界中数百万個の小さなネットワークを繋いだインターネットワークだ。
では何故小さなネットワークにわける必要があるのだ?
えぇっと。
先ほどの例でいえば、A市というネットワークの中に、さらに小さなB区というネットワークがあって、さらにC町というネットワークがあるんですよね。
そうだ。世界は1つ。1つのネットワークでいいじゃないか。
例でいえば、A市だけで十分だろう?
でも。小さな市ならいいですけど、大きな市だとより小さく分けないと大変じゃないですか。
例えば、住所だってA市B区C町1番地2丁目3番が、区とか町とかがないと、いきなり番地になって、A市12345678番地とかになっちゃいません?
そうだ。その場合、番地が多すぎて大変なことになってしまう。より小さく分けることによって、制御を容易にする必要があるのだ。
ネットワークの場合、主にトラフィックの制御のためだ。
トラフィック…、交通量の制御ですか?
うむ。大きな単位で制御してしまうと、トラフィックは膨大な量になる。
なので、小さい単位で、外に出さなくてもいいようなものを外に出さないという制御が必要だ。
なんか、ブリッジの機能みたいですね。
ブリッジもトラフィックを制御するネットワーキング・デバイスだからな。
ともかく、大きなネットワークのみの制御はその規模故無理がある。
なので、小さく分割して、それぞれである程度のコントロールが必要ってことですね。
よって、その数多のネットワークを相互に接続するインターネットワークが必要になるわけだ。
これこそがレイヤ3の機能だ。
え〜っと、つまりネットワークを分割して、それを相互に接続するってことですよね。
そうだ、なのでインターネットの技術の話をした場合。
そのほとんどがレイヤ3の話になる。
へへぇ、そうなんですか。
うむ。
まずレイヤ3で重要なのは、論理アドレスだ。
MACアドレスの時にでてきた、もう1つのアドレスですね。
■ 論理アドレス
うむ。
ネット君、MACアドレスの欠点は覚えているかね。
アドレスと実際の機器の場所が無関係ってことでしたよね。
うむ。アドレスを見ただけでは、実際の機器の場所がわからない。
そうなると、何処に誰がいるか、という管理が大変になるわけだ。
誰が何処にいるかという場所と、MACアドレスの対応表が必要になるわけですね。
全世界規模だと大変そうだ。
よって、レイヤ3の論理アドレスはその辺をカバーしている。
階層型アドレッシングという方式だ。
階層型? 積み重ねて層になってるってことですか?
そうだ。
論理アドレスは、何処のという情報と誰という情報の大きく2つの情報から成り立っている。
何処の、誰?
つまり、こういうことだ。
[Figure19-01:階層型アドレッシング]
ネットワーク1に属するAというPCの論理アドレスは、「1のA」。
ネットワーク2に属するXというPCの論理アドレスは、「2のX」となる。アドレスに、どの場所と誰かという情報が両方入っているのだ。
ははぁ。なるほど。
MACアドレスを思い出してもらおう。
MACアドレスが持っている情報はなんだったかね?
え〜。
作ったベンダと、その製造番号、かな?
うむ。つまりMACアドレスは確かに世界中でユニークなアドレスだが、「誰?」しかわからない。
「何処の?」がないのだよ。
そうなりますね。
だから、それがMACアドレスの欠点だ、ということなのだよ。
さらに論理アドレスは、より細かく分けることも可能だ。
より細かく?
「ネットワーク1」内部の「ネットワークあ」内部の「ネットワーク¥」内部の「Z番」と、複数のネットワークの情報を持つことができる、ということだ。
はわ〜。
っていうことは、その場合アドレスは、「1のあの¥のZ」ってことになるんですね。
そうだ。
この論理アドレスを使うことにより、「何処の、誰」という宛先が明確になりインターネットワーク内でのデータの転送が可能になるのだ。
なるほど。
そして、この論理アドレッシング、階層型の利点は経路探索がしやすいということだ。
経路?
通過する道筋ってことですか?
■ 経路選択
そうだ。インターネットワークは複数のネットワークが接続されている。
となると、宛先に届けるために複数のネットワークを経由していく必要がある。
[Figure19-02:経路選択]
「あ」から「い」へデータを転送するには、「A」〜「F」の6つのネットワーク、そして12本のリンクをたどっていくわけだ。
この通る道筋のことを、経路という。
はぁ。まさしく経路なんですね。
うむ。ここで先ほどの論理アドレスが生きてくるのだ。
例えば「い」は「Yのい」なので、まず「ネットワークY」に運ぶ経路を考えればいい。
そうですよね。
これがMACアドレスだった場合、まず「い」が何処にあるか、という点から考えなければならないわけだ。
これはかなり骨の折れる作業だろう。
そうですね。
「い」が何処にあるかってのを、XとYを含めた8つのネットワークの中から探しだす必要があるんですよね。大変だ。
うむ。だが論理アドレスならば、すでに「Yネットワークの」という事がわかる。
その時点で、宛先までの経路を容易に検索することが可能なのだよ。
ははぁ。
身近な例でいこう。電話番号は論理アドレスのような階層型の番号だ。
例えば、012-345-6789という電話番号の場合。
ちなみに0123は北海道千歳市付近、あとは夕張市とか歌志内市、岩見沢市、美唄市とかですね。
012という市外局番はなくて、すべて012なんとかですけど。▼ link
やかましい。わかったわかった。0123-45-6789でいこう。
もしネット君が、0123-45-6789へ電話をした場合、NTTの局はどう考える?
え〜。市外局番が0123なんですから、千歳市付近だな、と。
うむ。千歳市付近の局と接続するわけだ。
次は市内局番が45だから、千歳市付近の45局だということが判明する。
で、千歳市付近の45局の、6789番の電話機と接続するわけですね。
うむ。
これをネットワークに置き換えると、0123-45-6789というアドレスは、「0123番ネットワーク(千歳市)」の「45番ネットワーク(45局)」の「6789番のデバイス」となる。
なるほど、アドレス自体が位置情報そのものになっているから、何処にあるか、が簡単にわかる、と。
そうだ。結果、どうやって運ぶかもわかりやすい。
そして、そのどうやって運ぶか、というのを考えるのがルータだ。
リピータ、ハブ、ブリッジ、スイッチ、の次のネットワーキング・デバイスですね。
■ ルータ
ルータは宛先への最適な経路を選択する能力をもつ。
最適な経路?
うむ。
宛先への距離、使用するメディアの転送速度、トラフィック量(混み具合)、信頼性などを考慮して、よりよいルートを探し出すのだ。
へへぇ、賢いですね。
そうだ、賢いのだ。ブリッジやスイッチよりも1段上のデバイスなのだ。
このように、経路を探し出すことを、ルーティングという。
るーてぃんぐ。
ルートを決めるから、ルーティングですか。
うむ。
そして、ルータはデータを受け取ったポートから、探し出した最適な経路にしたがって、適切なポートから送り出す。
なんか、スイッチみたいですね。
そうだな。スイッチがMACアドレスに基づいてスイッチングを行うのに対し、ルータは、レイヤ3の論理アドレスに基づいてスイッチングを行う。
ははぁ。
インターネットワークでの通信、つまりネットワーク間の通信にはルータが必要なのだ。
逆説的にいうならば、ルータがなければネットワーク間の接続は不可能だ。
ルータはネットワークとネットワークを繋ぐ経路を探し出す。
つまり、ルータがないとその経路ができないから、ということですか?
そうだ、例えば下図だ。
[Figure19-03:ルータのないインターネットワーク]
ネットワークとネットワークがハブで接続されていたとしても、「ネットワークAの1」と「ネットワークBの2」は相互通信できない。
何故です?
確かにネットワークとネットワークを繋ぐ経路を探し出すルータがいないから、通信できないように思えますけど。でもハブだから信号は流してしまうでしょ?
うむ。最初でいったが、ネットワークとは論理的なグループだ。
同じグループ以外からはルータを経由しないと相互通信できない。そういうルールだ。
そういうルールなんですか?
そうしないのならば、ハブですべてを繋いでしまえばいいだろう。信号さえ届けば、それでオッケーとするならばな。
だが、それではトラフィックの問題が発生する。
ハブは信号を増幅して、すべてに送りだすだけですから、ハブで繋げばすべてと通信できてしまいますよね。
でも、台数が多いと、通信量が増えて大変ということですか。
そのために、ネットワークという小さい単位に区切る必要があったのだったな。
よって、異なるネットワークにはルータがなければ相互通信できなくなっているのだよ。
ははぁ、ルールなんですね。
うむ。
トラフィック量を減らすためのルールだ。これについてはまた先でやる。
はい。
というわけで、だ。
今後レイヤ3について話していくぞ。
了解。
3分間ネットワーキングでした〜♪
- 既視感
-
[Deja Vu]
反概念は[Jamais Vu]。
- インターネットワーク
-
[internetwork]
ネットワークの集合体。インターネット[internet]ということもある。
このインターネットは一般名詞なので、インターネット[Internet]とは違う。そちらは固有名詞。
- 階層型アドレッシング
-
[hierarchical addressing]
アドレスの方式が段階的になっている方式。
反対にMACアドレスのような物理アドレスは平面型[flat]アドレッシングと呼ばれる。
- 経路
-
[route]
ルート。パス[path]と言う場合もあります。
- 市外局番
- 気になる人は総務省で調べてください。参考リンクを参照。
- ルーティング
- [routing]
- ネット君の今日のポイント
-
- ネットワーク間の、インターネットワークでの接続をレイヤ3は担当する。
- 膨大なトラフィックを制御するため、小さなネットワークにわける必要がある。
- レイヤ3は論理アドレスを使う。
- 論理アドレスは階層型アドレッシングで、何処の誰、という情報をもつ。
- 論理アドレスを使って経由するネットワークを探索する、ルーティングを行う。
- ルータがネットワーク間を接続する。
- ルータは最適な経路を選択し、スイッチングを行う。
- ルータがなければネットワーク間の接続は行えない。