3 Minutes NetWorking
No.18

3MinutesNetWorking

第18回レイヤ2 スイッチ

■ スイッチとブリッジとハブ

インター博士

ブリッジに続き、今回はスイッチだ。

ネット助手

スイッチって、例えば電気のスイッチとか、そういうスイッチですか?

インター博士

うむ、そのスイッチだ。

[Figure18-02:スイッチ]

インター博士

切り替え、という意味のスイッチ、そのものだ。

ネット助手

ん〜っと。
あるレールからきたものを、違うレールに切り替える。電車の切り替えポイントのようなものですか?

インター博士

なかなかグッドな表現だ。
ネットワークの場合、切り替えられる列車がデータ。レールがメディアもしくは回路ということになるな。これをスイッチングという。

ネット助手

なるほど。
スイッチングする機器のことをスイッチと呼ぶのですね?

インター博士

いや、ルータもスイッチング機能を持っている。
ルータはスイッチング機能とルーティング機能の2つを行うデバイスだ。

ネット助手

はぁ。じゃスイッチというのは?

インター博士

スイッチング機能のみを有するデバイスのことだな。
今回説明するのは、レイヤ2で動作するレイヤ2スイッチだ。

ネット助手

え〜っと、わざわざ「レイヤ2」ってつけるということは、「レイヤ3スイッチ」とか、「レイヤ4スイッチ」とか、あるってことですか?

インター博士

ある。
レイヤ2スイッチは一般的にはスイッチング・ハブと呼ばれる。

ネット助手

ハブって、レイヤ1のハブですよね?
スイッチングする、ハブって意味ですか?

インター博士

確かにその通りといえば、そうなのだが。
どちらかといえば見た目がハブそっくりなのが、そう呼ばれる原因だろう。実際は同じレイヤ2デバイスであるブリッジに近い

ネット助手

そうなんですか。

インター博士

そうだな、ちょっと間違った言い方かもしれんが、マルチポート・ブリッジというのが一番機能を表している呼び方かもしれん。

ネット助手

ハブはマルチポート・リピータでしたよね。スイッチはマルチポート・ブリッジですか。
やっぱり似てますね。

インター博士

そういわれれば、そうだな。似ているだけで、機能的には全然違うが。
まるで私とネット君が似ているのは絵だけなのと同じだ。

ネット助手

ぐぅ。

■ スイッチの機能

インター博士

さて、スイッチは機能がブリッジと似てるといったな。

ネット助手

えぇ。

インター博士

ブリッジの機能はどんなだった?

ネット助手

どんなって、え〜。MACアドレスで、フィルタリングするんですよね。
ブリッジを通過するフレームか、通過させないフレームか判断して。

インター博士

ふむ。それで?

ネット助手

それで、宛先が送信元と同じ側にあれば、他には送らない。
違うならば、他すべてに送る。

インター博士

ふむ。最近のネット君は覚えがいいな。
やはり調教師の腕だな。

ネット助手

僕はペットかなんかですか

インター博士

ペットというには可愛げのないことおびただしい
ともかく、スイッチもブリッジ同様、MACアドレスによるフィルタリングを行う。

ネット助手

はぁ。

インター博士

異なる点は、マルチポートというところだ。
ブリッジは、通すか通さないかの二択しか行わなかったが、ポート密度の高いスイッチは、どのポートに送るかまで判断する。

ネット助手

なるほど、だからマルチポート・ブリッジとでもいうべきものなんですね。

インター博士

そうだ、動作は以下のようになる。

[Figure18-02:スイッチの動作] 

インター博士

ブリッジとの違い、わかったか?

ネット助手

ポートとポートを直接つなげてしまう形になるんですか。
ブリッジが通すか通さないかの関所でしかなったのに、スイッチは何処に行けばいいか、の案内所までやってくれるんですね。

インター博士

そうだな、そういう事になる。
ただ、アドレステーブルの作り方はブリッジと同じだ。

ネット助手

ということは、え〜っと。
最初はまったく白紙の状態で、フレームを受信したらその宛先とポートを覚えていくって形ですか?

インター博士

うむ。さらに、先ほどの図でもわかるように、複数のデバイスが同時に送信可能だ。
送信元と宛先が1対1で接続されている形になるからな。

ネット助手

1対1で接続されている形、っていうと。
前に出てきたこんな形ですか?

UTPによる接続

[Figure15-01:UTPによる接続]

ネット助手

スイッチが間に入ると、どんな形になるんです?

インター博士

うむ。
上の動作では省略して書いたが、スイッチはこのように接続する。

[Figure18-03:スイッチによる接続]

インター博士

上の図の例の場合、例えばAがC宛に送信した場合、フレームを受け取ったポートの受信機と、C宛に送信するポートの送信機とが接続される。
送信機と受信機、別々に接続が可能ということだ。

ネット助手

なるほど。
送信元の送信機と、宛先の受信機が直接接続されている形になるわけですね。

インター博士

そうだ。だが、以下の様な場合はダメだ。
AとBは、ハブがあるので直接接続はされなくなる。

ハブがある場合

[Figure18-03:ハブがある場合]

ネット助手

ははぁ、ハブが間にはいっちゃったら、ダメと。
ちなみに1つのポートに2つのデバイスがある場合、スイッチの動作はどうなるんですか?

インター博士

たいした違いはない。スイッチは、AとBの2つのMACアドレスと1番ポートと対応させることになるだけだ。
アドレステーブルは以下のような形になる。

ポートMACアドレス
A
B
C
D

[Table18-01:ハブがある場合のMACアドレステーブル]

ネット助手

なるほど。

インター博士

要約すると、スイッチは宛先が繋がっているポートだけしかフレームを送信しないということだ。

■ ストアアンドフォワード

ネット助手

でも博士。
こんな場合はどうするんです?

同時に送信があった場合

[Figure18-04:同時に送信があった場合]

ネット助手

同じ宛先に送信しちゃう場合です。
やっぱり衝突が発生しちゃうんですか?

インター博士

ほほぅ、なかなかいい所に気がついたな。
その通りだ。普通に送っていたのでは衝突が発生する。

ネット助手

普通に送っていたのでは?

インター博士

うむ。スイッチはバッファメモリを持っている。
これに一時保存して、伝送路が空くのを待つのだよ。

ネット助手

ばっふぁめもり?

インター博士

そうだ。
つまり、先ほどの例の場合こうなる。

[Figure18-05:バッファリング]

ネット助手

つまり、空くのを待ってから送信が行われるわけですね。
確かにこれなら衝突が発生しないですね。

インター博士

うむ。ただのハブと大きくことなる点だ。
ハブにはバッファメモリは存在しないから、一時退避ができないのだよ。

ネット助手

なるほど。

インター博士

このようにバッファリングを行う方式のことを、ストアアンドフォワード方式という。

ネット助手

すとああんどふぉわーど?

インター博士

あるポートから、宛先に接続されているポートへフレームを送ることをフォワードという。スイッチ内部でのフレームの移動を指す言葉だ。
ストア(貯める)して、フォワード(送る)という方式だ。

ネット助手

貯めて、送る…。

インター博士

現在のスイッチはこの方式が多い
理由は、ファストイーサネットの下位互換性だ。

ネット助手

ファストイーサネットの下位互換性?
通常のイーサネットの機器と、ファストイーサネットの機器が混在できるって奴ですよね。

インター博士

下位互換については、大体その解釈でいい。つまり、ポートによって10Mbpsと100Mbpsが混在するわけだ。
そうすると、10Mbps側がボトルネックとなる。

非対称スイッチング

[Figure18-06:非対称スイッチング]

インター博士

ファストイーサネット側から100Mbpsで送られてきても、イーサネット側で10Mbpsしか通らない。
なので、送りきれない90Mbps分を一時貯めておく必要があるのだよ。

ネット助手

ははぁ。10倍もスピードに差がありますものねぇ。

インター博士

ストアアンドフォワード以外にも、カットスルー方式フラグメントフリー方式がある。
ストアアンドフォワード方式は、フレームを一時記憶するための遅延時間が必要だからな。

ネット助手

ブリッジと同じように遅延が発生するんですね。

インター博士

うむ。ただし、記憶する時に同時にエラーチェックも行うので、エラーの転送がなくなるがな。

ネット助手

ははぁ。

■ 全二重イーサネット

インター博士

スイッチは、スイッチング機能により事実上1対1の通信を行うという話をしたな。
かつ、ストアアンドフォワード方式だ。つまり、衝突が発生しない

ネット助手

そうなりますね。送信元の送信機と宛先の受信機が接続されるわけですし。
同じ宛先に送ったとしても、ストアアンドフォワード方式で衝突が回避されるわけですから。

インター博士

うむ。つまり、スイッチを使えば送信しながらでも受信ができるのだよ。
さて、これをなんと言った?

ネット助手

送信しながら受信ができる…。
…。全二重通信!!

インター博士

そうだ。スイッチを使えば全二重通信が可能になるのだ。
全二重通信になると、送受信が同時にできるため、効率があがる

ネット助手

そうですね。
半二重通信のトランシーバで話すのは、全二重通信の電話より面倒くさいですよね。

インター博士

理論値では、100Mbpsで送信、100Mbpsで受信、つまり200Mbps使えることになる。

ネット助手

ですか。

インター博士

まあ、あくまでも理論値だ。
日経NETWORKの実験室のコーナーで試していたところ、約20%上昇していたな。▼ link

ネット助手

たった20%ですか。

インター博士

数字の亡者め。そのたった20%を引き出す方法は他に何があるとおもっているのかね?
だいたい、常に送受信を同時に行っているわけではないだろう。

ネット助手

そういえばそうですね。
常に送信と受信を同時に行うわけじゃないですものね。

インター博士

そうだ。どちらかといえば、この20%は衝突を回避した分だともいえるな。
スイッチをつかえば全二重が可能だが、かならずできるわけではない。条件がある。

ネット助手

条件ってなんです?

インター博士

1つ目は、スイッチのポートとデバイスが1対1でない場合だ。
上のほうででてきた、これだな。

ハブがある場合

[Figure18-03:ハブがある場合]

ネット助手

ハブが間にある場合ですね。
ハブは送信用の伝送路と、受信用の伝送路の2本を持ってませんものね。

インター博士

うむ。
CとDの間では全二重通信が可能だが、AとBは行えない。

ネット助手

なるほど。
1つ目ってことはまだあるんですか?

インター博士

もう1つはNICが対応してないとダメだ
最近のNICはほとんどが対応しているが、昔のNICだと半二重通信しか行えないものもある。

ネット助手

へへぇ。
ちなみにどうやったら対応してるかどうかわかるんです?

インター博士

デバイスマネージャを見たまえ。
そこで、ネットワークアダプタのプロパティに表示されているはずだ。

NICのプロパティ

[Figure18-07:NICのプロパティ]

インター博士

Full Duplexが選択可能ならば、それは全二重通信に対応したNICだ。
ちなみに言っておくが、スイッチだからといって必ず全二重通信にしなければならないわけではないからな。

ネット助手

了解です。

■ スイッチの利点

インター博士

まとめてみよう。
スイッチは、宛先が繋がっているポートだけしかフレームを送信しない。送る先を限定できるということだ。

ネット助手

えぇ。
送信元と宛先が1対1で接続されているような状態になるんですよね。

インター博士

うむ。さらにくどいようだが衝突が発生しない
つまり、衝突ドメインを区切ることができる

ネット助手

ブリッジと同じですね。

インター博士

うむ。だがブリッジと異なる点はマルチポート、つまりポート1つ1つが衝突ドメインという点だ。 なので1ポートにつき1デバイスしか接続しなかった場合、そのメディアを独占できる

コリジョンドメインの分割

[Figure18-08:コリジョンドメインの分割]

ネット助手

デバイスとスイッチのポート間のメディアは、そのデバイスしか使わないですものね。

インター博士

つまり、そのメディアの帯域幅を効果的に使用できるということだ。

ネット助手

ふむふむ。

インター博士

さらに、スイッチを使った全二重通信の場合、CSMA/CDを無視できる、という点もスイッチの利点だ。

ネット助手

CSMA/CDを無視できる?

インター博士

CSMA/CDは衝突を前提としたアクセス制御方式だ。
全二重通信ならば、必要ない。なので、CSMA/CDであったいらない手順を行う必要がない。例えば、キャリア検知にかかる時間、多重アクセスのための待ち時間などだ。

ネット助手

1人が連続して送信できないようにするための待ち時間でしたっけ。
他の人が送信できるチャンスをあげるために、送信する前に必ず待ち時間が必要なんでしたよね。

インター博士

そうだ。
さらにさらに、複数のデバイスが同時に送信が可能だ。

ネット助手

そうでしたよね。
なんか、利点ばっかりですね。

インター博士

もう1つ付け加えると、ハブと簡単に交換可能という点だ。
特に設定をしたり、トポロジを変えたりする必要がない。なので、ネットワークの効率を上げたい場合、単にハブをスイッチに変えるだけでよい。

ネット助手

ははぁ。ほんとにいい事ずくめですねぇ。

インター博士

うむ。現在のLAN設計にはスイッチは必需品なのだよ。
さらに、VLANにもスイッチは必要だ。

ネット助手

ぶいらん?

インター博士

VLANについては長くなるので、いずれ機会をみて話す。
もちろんスイッチにも欠点はある。同じレイヤ2デバイスのブリッジと同じ欠点をもっている。

ネット助手

ブリッジの欠点というと…。
フレーム読み取りの時間分だけ遅延が発生することと、ブロードキャストを止めることができないことでしたっけ?

インター博士

そうだ。それはそのままスイッチの欠点にもなるのだよ。

ネット助手

ははぁ。

インター博士

今回もずいぶん長かったな。
次回からはレイヤ3だ。ますます重要になるから、気合を入れておけよ。

ネット助手

いぇっさ〜。
3分間ネットワーキングでした〜♪

スイッチング
[switching]
ルーティング機能
[routing]
宛先までの道筋を探す機能のこと。
詳しくはルータの説明で。
スイッチング・ハブ
[switching hub]
ポート密度
ポートの集約度。簡単に言えばそのデバイスが持つポートの数。
スイッチは8〜48のポートを持つ。
MACアドレスは長いので、デバイスAのMACアドレスは「A」と省略しました。
バッファメモリ
[buffer memory]
バッファは緩衝、クッションの意味。
一時的にデータを退避しておくメモリのこと。
ストアアンドフォワード方式
[Store and Forward]
ストアは蓄積、貯める、記憶の意味。
ボトルネック
[bottle neck]
瓶の首。
処理が遅い一部分のこと。この部分のため全体の処理が遅くなる。
カットスルー方式
[cut through]
バッファせずに、宛先を確認した時点で送る方法。
遅延はないが、エラーフレームの送信の可能性がある。
帯域幅の違うメディア同士では使えない。
フラグメントフリー方式
[fragment free]
基本はカットスルーだが、64バイトまでバッファしエラーチェックする。
イーサネットで一番多いショートフレーム(64バイト以下のエラーフレーム)を除去できる。
日経NETWORK
大変お世話になってます。
サイトは参考リンク参照。
デバイスマネージャ
WindowsNT系列ならば、デバイスマネージャ(マイコンピュータのプロパティ、ハードウェアタブ)で見ることができます。
Windows9x系列ならば、ネットワークコンピュータのプロパティで、NICのプロパティで見てください。
ポート1つ1つが衝突ドメイン
マイクロセグメンテーション[Microsegmentation]と言います。
VLAN
[Virtual LAN]
仮想LAN。
物理的な配置でなく、論理的な配置でLANを設計する技術。詳しくは先の回で。
ネット助手ネット君の今日のポイント
  • スイッチはスイッチングを行うデバイス。
  • ブリッジと同様にアドレステーブルを作成する。
  • 宛先が繋がっているポートだけしかフレームを送信しないため、送信元と宛先を直接繋ぐ形になる。
  • 複数のデバイスが同時に送信が可能。
  • ストアアンドフォワード方式により、衝突が発生しない。
  • 全二重通信が可能になる。
  • スイッチは衝突ドメインを分割することにより、利用効率を上昇させる。
  • フレーム読み取りの時間分だけ遅延が発生する。
  • ブロードキャストを止めることができない。

3 Minutes NetWorking No.18

管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp