30 Minutes NetWorking
No.RT31

30Minutes NetWorking

BSCI

第31回再配布(2) 再配布の設定

■ コアとエッジ

スーパーインター博士

さて、再配布の話だが。
どのような場合に再配布が行われるか、という話をしておこう。

ハイパーネット助手

1つのルーティングプロトコルでは駄目な理由、ですね。

スーパーインター博士

うむ。いくつか考えられる。

  • IGPを変更する。移行途中では再配布が必要
  • 新しいIGPを使いたいが、システム上(ルータが対応していないなど)以前のものがどうしても必要
  • ベンダの問題。Cisco独自(IGRP・EIGRP)と、他のルーティングプロトコルを併用せざるを得ない場合
スーパーインター博士

まぁ、大雑把に言うと、こんな感じだな。
これらの共通点として。

ハイパーネット助手

共通点?

スーパーインター博士

本来使用したいプロトコルが存在するが、それ以外がどうしても必要、という状況だ。

ハイパーネット助手

ははぁ。このルーティングプロトコルを使いたいんだけど、他のがどうしても必要って場合ですか。
確かに、3つともそういわれればそうとも言えますね。

スーパーインター博士

だろう? 多い例は、よりよいルーティングプロトコルを使用したいのだが、古いプロトコルが存在するっていう状況だな。さっきの1つ目と2つ目がコレに当てはまる。

ハイパーネット助手

移行途中で古いのが残っている。新しいのに変えたいけど、一部のルータが対応してない…。
例えば、RIPだったネットワークをOSPFに変える、とかですか?

スーパーインター博士

EIGRPを使いたいが、Ciscoルータではない一部のルータはOSPFを使う、という場合もある。
この本来使いたい側をコア、もう一方をエッジという。

ハイパーネット助手

こあ、えっじ。

スーパーインター博士

コアプロトコル、エッジプロトコル。コアAS、エッジAS、という区別だな。
普通、コア側はEIGRP、OSPF、BGPなどだ。

ハイパーネット助手

え〜っと、新しいルーティングプロトコルだからですか?

スーパーインター博士

そうだな。先ほどの項目からすれば、やはりコアは新しいプロトコルや、AS間で使われるプロトコルが入るからな。

ハイパーネット助手

ふむふむ。

■ コアプロトコル・OSPFの設定

スーパーインター博士

では、OSPFがコアプロトコルの場合の設定を説明しよう。

  • Router(config)#router ospf process-id
  • Router(config-router)#redistribute protocol process-id [metric metric-value] [metric-type metric-type] [route-map map-tag] [subnets]
ハイパーネット助手

うわ、長い。
ちなみに博士、[ ]ってなんですか?

スーパーインター博士

[ ]で囲まれているものは任意のパラメータということだ。
まずポイントはコアプロトコルのルーティングプロトコル設定モードで実施する、という点が1つ。

ハイパーネット助手

最初に、router ospfってやってますね。

スーパーインター博士

うむ。各パラメータは以下の通り。

protocolエッジプロトコル。connected、bgp、ripなど
process-idAS番号またはOSPFのプロセスID
metric-valueシードメトリック。デフォルトは20
metric-typeOSPFの外部リンクタイプ。1か2を入れる。デフォルトは2
map-tagルートマップを使用した場合のタグ
subnetsサブネットも再配布する場合はこのパラメータを入れる

[TableRT31-01:OSPF再配布コマンドのパラメータ]

ハイパーネット助手

う、う〜ん。

スーパーインター博士

何かね、ネット君。

ハイパーネット助手

protocol、process-id、metric-valueはわかりますけど、metric-typeってなんですか?
外部リンクタイプ、1か2って?

スーパーインター博士

おや、OSPFのところで説明してなかったか?
……してないな。

ハイパーネット助手

博士〜。

スーパーインター博士

ま、まぁ。ネット君。猿もおだてりゃ木に登るというじゃないか。

ハイパーネット助手

猿が木に登ってもめずらしくもなんともないです

スーパーインター博士

う、うむ。そうだな、確かに。
ともかく、OSPFには外部ルートを通達するLSAが2種類あるのだよ。

ハイパーネット助手

LSA Type5にですか。

スーパーインター博士

そうだ。外部タイプ1(E1)と外部タイプ2(E2)の2種類だ。
ASBRが外部ルートをアドバタイズする場合、どちらかを指定する

ハイパーネット助手

どう違うんですか?

スーパーインター博士

AS内にASBRが複数あるならE11つならばE2を使う。
違いはこうなっている。

[FigureRT31-01:LSA Type5のE1とE2]

ハイパーネット助手

途中のメトリックを加算するかしないか?

スーパーインター博士

そうだ、ASBRが2つ以上ある場合、どちらのASBRを使うか判断するために、E1を使いメトリックを加算していく。
一方、1つならば、どちらにしろそのASBRを使うのでメトリックは加算されない。

ハイパーネット助手

でも、上の図だと、E2の場合でも上のパスか、下のパスか判断する必要があるじゃないですか?

スーパーインター博士

その場合は、ASBRへのベストパスを使うわけだ。
どっちにしろ外部AS宛のデフォルトルートになるわけだから、メトリックはあまり関係ない。

ハイパーネット助手

う〜ん、そういうものなのかな。

スーパーインター博士

E1ならばシードメトリックを上手く変えれば、使うASBRをASごとに変えることも可能になるわけだしな。
あともう1つ、subnetsキーワード。これがないとサブネットを再配布しない

ハイパーネット助手

サブネットを配布しない?

スーパーインター博士

そうだ。例えば、RIPで10.1.1.0/24というネットワークを使っていた場合、subnetsキーワードがないと、そのネットワークは再配送されない。

ハイパーネット助手

へ〜。なんか経路集約っぽいですね。

■ コアプロトコル・EIGRPの設定

スーパーインター博士

もう1つ、コアプロトコルとしてEIGRPを使った場合の設定を説明する。

  • Router(config)#router eigrp as-number
  • Router(config-router)#redistribute protocol process-id[metric metric-value] [route-map map-tag]
スーパーインター博士

OSPF以外をエッジプロトコルとした場合は上のようになる。
基本的にはOSPFの場合と変わらないな。

ハイパーネット助手

OSPF以外を? OSPFの場合違うんですか?

スーパーインター博士

うむ。OSPFをエッジとした場合は以下のようになる。

  • Router(config)#router eigrp as-number
  • Router(config-router)#redistribute ospf process-id[metric metric-value] [match internal | external 1 | external 2] [route-map map-tag]
ハイパーネット助手

まっち?
いんたーなる、えくすたーなる1、えくすたーなる2?

スーパーインター博士

うむ。意味はこうだ。

matchinternalOSPFのASの内部ルートのみを再配布
external 1OSPFのASが持つ外部ルート(E1)のみを再配布
external 2OSPFのASが持つ外部ルート(E2)のみを再配布

[TableRT31-02:EIGRP再配布コマンド・matchパラメータ]

ハイパーネット助手

内部のみ? 外部ルートのみ?
どういうことです?

スーパーインター博士

つまり、こういうことだ。

[FigureRT31-02:EIGRP再配布コマンド・matchパラメータ]

ハイパーネット助手

あぁ。エッジプロトコルのOSPFが知っている外部ルートをどうするか、っていうことですか。

スーパーインター博士

そういうことだ。internalではなく、external 1 external 2を使えば、OSPF-AS内のルートを知られることなく、OSPF-ASの向こう側と接続できるわけだな。

ハイパーネット助手

なるほど。

スーパーインター博士

このmatchのキーワードはBGPをコア、OSPFをエッジとした場合も使用する。
さてさて、ネット君。EIGRPの話を思い出してくれたまえ。

ハイパーネット助手

EIGRPの話? どこです?

スーパーインター博士

BSCI第11回だ。

ハイパーネット助手

11回っと…。
あ〜、「ルート自動再配送」なんて話をしてますよ。

スーパーインター博士

うむ。EIGRPの再配送ポイント1。
同じAS番号を持つIGRPとは自動的に再配送を行う

ハイパーネット助手

手動設定がいらないんですね。IGRPとEIGRPは仲がいい、と。

スーパーインター博士

うむ、そしてもう1つ。
通常は同じプロトコルスイートのルーティングプロトコル同士でのみ再配送可能なのだ。

ハイパーネット助手

えぇ〜っと。ということは、普通、IPX-RIPとOSPFでは再配送できない?

スーパーインター博士

うむ、だがEIGRPでは設計次第でIPX-RIPかAppleTalk RTMPと再配送可能だ。

ハイパーネット助手

は〜。さすがマルチルーティングプロトコル。

■ シードメトリックの設定

スーパーインター博士

さて、再配送する場合のシードメトリックだが、redistributeコマンドで一気に行うことも可能だが、個別で設定も出来る。
まず、IGRP、EIGRPがコアプロトコルの場合。

  • Router(config)#router eigrp as-number
  • Router(config-router)#default-metric bandwidth delay reliability loading mtu
スーパーインター博士

帯域幅、遅延、信頼性、負荷、MTUの値をそれぞれ決めておかなければならない。

ハイパーネット助手

あ〜、そうそう。IGRPとEIGRPは5つの値からメトリックを計算するんでしたよね。

スーパーインター博士

そう、K値を使ってメトリックを算出するな。
一方、それ以外のプロトコルの場合は、こうなる。

  • Router(config)#router prtocol as-number
  • Router(config-router)#default-metric number
スーパーインター博士

そのプロトコルで使われるメトリックにあわせて決定される。
RIPならホップ数、OSPFなら帯域コストなど、だな。

ハイパーネット助手

なるほど。

スーパーインター博士

うむ。
今回はこれぐらいにしておこう。

ハイパーネット助手

あら? はやいですね。

スーパーインター博士

うむ、次の話は長めになりそうなのでな。
別の回にしてまとめて話そう。ではまた次回。

ハイパーネット助手

はい。
30分間ネットワーキングでした〜♪

コア
[Core]
芯、中心。
エッジ
[Edge]
端、へり。
BGPをコア
BGPをコアプロトコルとした場合、matchキーワードがなければ再配布されません。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • メインとして使われる側をコア、もう一方をエッジという。
  • コアはOSPF、EIGRPなどが多い。
  • OSPFへの再配布には外部タイプ1(E1)、外部タイプ2(E2)の指定が必要。
  • OSPFへの再配送でsubnetsキーワードがないと、サブネットを配送しない。
  • OSPFをエッジにするばあい、internal、externalの指定が必要。
  • EIGRPは自動再配送機能がある。

30 Minutes NetWorking No.RT31

管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp