■ IS-ISの基本設定
CiscoのCCNPの対策講座と言っておきながら、IOSコマンドをほとんどやらない「30 Minutes Networking」だが。
今回は一味違うぞ。
そういえば、IOSコマンドの説明ってあまりないですよね。
うむ。今回はコマンドの説明メインでいこう。
まず、Integrated IS-ISの設定だが、NSAPを決定しエリアの計画ことから始まるわけだ。
IntegratedでもCLNSが必要、でしたっけ。
そういうことだ。そして次は、IS-ISの有効化だな。
- Router(config)#router isis
これは他のルーティングプロトコルと変わらないのですね。
そうだ。ネット君、次は何かね?
普通のルーティングプロトコルで、例えば「router ospf 1」とやったら次は?
networkコマンド?
うむ、よしよし。だが、IS-ISではnetworkコマンドは使わない、次はこのコマンドだ。
- Router(config-router)#net NSAP
net?
そうだ、ルータのNSAPアドレスを入力する。もちろんそのNSAPはNETになる。
NSELが0x00のアドレス、デバイスのNSAPアドレスでしたよね。
そうか、OSIプロトコルではインタフェースにアドレスを割り振るわけじゃないんだ。
そういうことだな。通常のIPルーティングならルータのインタフェースにIPアドレスを割り振る「ip address」コマンドを使うが、IS-ISはこの「net」コマンドを使う。
ルータコンフィギュレーションモードで、ですか。
普通はインタフェースコンギギュレーションモードなのに。
インタフェースのアドレスではないからな。
そして、Integreted IS-ISを有効化し、NETを入力したら、次はインタフェースの設定だ。
- Router(config)# interface serial 0
- Router(config-if)#ip router isis
なんです、これ?
いままで見たこともないコマンドですよ。「ip router」?
うむ、そのインタフェースでIS-ISによるIPルーティングを可能にするコマンドだな。
他のルーティングプロトコルでは使わないコマンドだ。
は〜、さすがOSIプロトコル。普通見ないコマンドが出てくるなぁ。
このコマンドは先ほども言ったが、IPルーティングを可能にするコマンドだ。
もし、CLNSルーティングが必要ならば、こっちのコマンドも行っておくこと。
- Router(config-if)#clns router isis
CLNSルーティングを行うから、「clns」ですか。
そういうことだな。
さて、他にも設定が必要だ。
- Router(config-router)#is-type level
見てわかると思うが、ルータのレベル設定だ。
「level-1」「level-1-2」「level-2-only」が入る。
ハイフンがややこしいですね。
そうだな、ないほうがすっきりしていいと思うが。まぁIOSコマンドにケチつけてもしょうがない。
そうだ言い忘れていたCiscoルータのデフォルトはLevel1-2ルータだ。
レベル1-2ルータってことは、OSPFでいうところのABRですよね。
そうなる。
さて、もしレベル1-2ルータの時、このような状況があったとする。
[FigureRT29-01:レベル1-2ルータ]
中央のレベル1-2ルータだが、eth1はともかく、eth0は対向はレベル1、s0の対向はレベル2のみ。
例えばeth0でLevel2 ISHを行うのは無駄だろう?
無駄と言えば無駄ですね。
対向はレベル1ですから、Level1 ISHだけでいいですからね。
だが、レベル1-2ルータを設定すると、インタフェースで両方の隣接を取ろうと、両方のISHを送信してしまう。
これを設定するコマンドが、次のコマンドだ。
- Router(config-if)#isis circuit-type level
さーきっとたいぷ。また変なコマンドだなぁ、もう。
levelのところはさっきと同じですか?
同じだ。「level-1」「level-1-2」「level-2-only」だな。
さて次の設定。ネット君、IS-ISのメトリックはどんなものだ?
メトリック? ナローメトリックでしたよね。
インタフェースを通過する際に足されていくという。なんかホップ数みたいなの。
うむ、インタフェースでメトリックが決まるというのがポイントだ。帯域や遅延じゃない。
なので、インタフェースにメトリックを設定してやらなければならない。
- Router(config-if)#isis metric metric level
レベル?
このレベルってなんですか?
レベル1とレベル2でメトリックを変える場合だ。省略してもよい。その場合は同じ値が使われる。
例えば。
[FigureRT29-02:2つのメトリック]
左のルータで、「isis metric 10 level-1」「isis metric 5 level-2」と設定してやるわけだな。
そうすれば、各レベルのSPFツリーの構成の際、違うメトリックが使用される。
2つのSPFツリーがあるから、異なるメトリックをそれぞれ使うことができるんですね。
うむ。
さて、IS-ISでもOSPFと同様に経路集約が可能だ。
OSPFですと、「area range」コマンドでしたよね。
IS-ISの場合は以下のコマンドになる。
- Router(config-router)#summary-address address mask level prefix mask
levelの部分には「level-1」「level-1-2」「level-2」が入るが。
意味はこうだ。
- level-1 … レベル1に配布されるルートを集約
- level-1-2 … エリア内のレベル1ルートを集約してレベル1とレベル2に配布
- level-2 … レベル1の集約ルートをレベル2で配布
覚えておいて欲しいのは、OSPFでもsummary-addressコマンドを使うが、それはASBRで設定する外部ルートの集約ということだ。
一方、IS-ISは内部ルートもsummary-addressコマンドを使うということですか。
area rangeコマンドを使わずに。
そういうことだな。
さて、最後の基本設定を説明しよう。DISの優先度設定だな。
- Router(config-if)#isis priority value level
優先度には7ビット、0〜127までの数値が入る。デフォルトは64だ。
またまたlevelって項目があるってことは、レベル1のDISとレベル2のDISの優先値を別々に設定できる?
そういうことだ。
つまりIS-ISの設定はレベルごとの設定が必要になることが多いということだな。
そうですね。レベルを設定したり、レベルごとに値を決めたり。
うむ、マルチエリアOSPFとの最大の違いはここだな。SPFツリーがレベルごとに設定されており、まったく別のルーティングを行うという点だ。
なるほど。
■ ISO-IGRP
IOS設定はこれぐらいにしておいて、さてネット君。
IS-ISはIGPだったな。
です。
OSIプロトコルではEGPsとして何を使う、と説明した?
IDRPです。
うむ。だがしかし、Cisco IOSではIDRPはサポートされていない。
うわ。なんですか、そりゃ?
なのでCisco IOSでOSIプロトコルのEGPsとしてISO-IGRPを代わりに使う。
あいそ・あいじーあーるぴー。
ってことは、やっぱりあのIGRP?
そうだ。Cisco独自のルーティングプロトコル、IGRPをベースとしたOSIプロトコル用のルーティングプロトコルだな。
へ〜。でも、本来のIGRPって、IGPですよね。
それをEGPsとして改良したってことですか?
そういうことだ。ベースがIGRP、つまりディスタンスベクタ型なので、ISO-IGRPもディスタンスベクタ型だ。なのでIPルーティングでのディスタンスベクタ型の欠点を持ち合わせている。
コンバージェンスが遅い。
その通り。そうそう。言うまでもないことだが、あくまでもIS-IS、つまりOSIプロトコルのEGPsとしてISO−IGRPを使う、という話だ。
もしIntegrated IS-ISでIPルーティングを行う場合、そのIPのEGPsとしては。
やっぱり、BGP4?
そういうことだな。AS(ドメイン)間のルーティングプロトコルとして、IS-ISを使っているからISO-IGRPというわけではない、ということだ。
CLNSかIPか、どちらを運ぶかで決めるってことですね。
うむ。
さてさて、ISO-IGRPの説明だが、基本はIGRPなのであまり説明することがない。
そうなんですか?
違いはアドレスだな。
もちろん、ISO-IGRPはNSAPを使う。
ですよね。
だが、IS-ISで使用されていたNSAPとは一味違う。
こうなる。
NSAP | AFI | IDI | HODSP | SID | NSEL |
---|---|---|---|---|---|
IPアドレス | ネットワーク部 | サブネットワーク部 | ホスト部 | プロトコル | |
IS-IS | エリアID | システムID | NET | ||
ISO-IGRP | ドメインID | エリアID | システムID | 無視 |
[TableRT29-01:ISO-IGRPのNSAPアドレス]
IS-ISのエリアIDをドメインIDとエリアIDに分割した?
そうだ。IS-ISはIGPなので、同一ドメインが前提だ。なのでドメインIDの部分もエリアIDとして運用していた。
だがISO-IGRPはドメイン間ルーティングに使用するので、ドメインIDが必要なのだ。
なるほど。
ドメインIDはIPルーティングで言うところのAS番号にあたるわけだな。IPアドレスにはASを示す部分はないが、NSAPにはAFIとIDIがある、ということだ。
あと、NSELの部分は「無視」とありますが?
あぁ、特に必要ないから、何がはいっていても無視する。
さて、以前使った例でIS-ISとISO-IGRPの違いを見てもらおう。
- 39.0001.1111.2222.3333.00
- IS-ISの場合
- エリアID … 39.0001
- システムID … 1111.2222.3333
- Nセレクタ … 00
- ISO-IGRPの場合
- ドメインID … 39
- エリアID … 0001
- システムID … 1111.2222.3333
- Nセレクタ … 無視
- IS-ISの場合
- 39.1234.5678.aaaa.bbbb.cccc.00
- IS-ISの場合
- エリアID … 39.1234.5678
- システムID … aaaa.bbbb.cccc
- Nセレクタ … 00
- ISO-IGRPの場合
- ドメインID … 39.1234
- エリアID … 5678
- システムID … aaaa.bbbb.cccc
- Nセレクタ … 無視
- IS-ISの場合
つまり、ISO-IGRPではエリアIDは2バイト固定長なのだよ。
2バイト、16進数4ケタですね。
IS-ISではエリアIDは1〜13バイトの可変長でしたっけ。
うむ。
さて、IS-ISの話もこれでお終いにしよう。
長かったッスね、IS-IS。
そうだな。やはりTCP/IPプロトコルと全く異なるOSIプロトコルだったからな。
ちょっと異色といえば、異色だな。
ですよね。こう、聞いたこともない英略語が大量にでてきましたものね。
うむ。ただIS-ISはやはりOSPFの原型となっただけあって、やはり似ている部分が多い。
特にリンクステートのやりとりなどは、そっくりだと言ってもいい。
データベースからSPFツリー、そこからルーティングテーブル、ですね。
そうだ。だが決定的に違うのはレベルによる階層ルーティングという点だな。まったく異なるルーティングがレベル1とレベル2で行われるということを忘れるな。
え〜っと、IS-ISのエリアは基本的にはOSPFのTSAってことでしたっけ。
そう考えるのが簡単だな。確かに。
では今回はここまで。
はい。
30分間ネットワーキングでした〜♪
- ハイパーネット君の今日のポイント
-
- IS-ISのIOS設定はちょっと特殊。
- OSIプロトコルのEGPsはIDRPだが、Cisco IOSではISO-IGRPを使う。
- IS-ISとISO−IGRPのNSAPはちょっと違う。