30 Minutes NetWorking
No.RT29

30Minutes NetWorking

BSCI

第29回Integrated IS-IS(7) IS-ISの設定

■ IS-ISの基本設定

スーパーインター博士

CiscoのCCNPの対策講座と言っておきながら、IOSコマンドをほとんどやらない「30 Minutes Networking」だが。
今回は一味違うぞ。

ハイパーネット助手

そういえば、IOSコマンドの説明ってあまりないですよね。

スーパーインター博士

うむ。今回はコマンドの説明メインでいこう。
まず、Integrated IS-ISの設定だが、NSAPを決定しエリアの計画ことから始まるわけだ。

ハイパーネット助手

IntegratedでもCLNSが必要、でしたっけ。

スーパーインター博士

そういうことだ。そして次は、IS-ISの有効化だな。

  • Router(config)#router isis
ハイパーネット助手

これは他のルーティングプロトコルと変わらないのですね。

スーパーインター博士

そうだ。ネット君、次は何かね?
普通のルーティングプロトコルで、例えば「router ospf 1」とやったら次は?

ハイパーネット助手

networkコマンド?

スーパーインター博士

うむ、よしよし。だが、IS-ISではnetworkコマンドは使わない、次はこのコマンドだ。

  • Router(config-router)#net NSAP
ハイパーネット助手

net?

スーパーインター博士

そうだ、ルータのNSAPアドレスを入力する。もちろんそのNSAPはNETになる。

ハイパーネット助手

NSELが0x00のアドレス、デバイスのNSAPアドレスでしたよね。
そうか、OSIプロトコルではインタフェースにアドレスを割り振るわけじゃないんだ。

スーパーインター博士

そういうことだな。通常のIPルーティングならルータのインタフェースにIPアドレスを割り振る「ip address」コマンドを使うが、IS-ISはこの「net」コマンドを使う。

ハイパーネット助手

ルータコンフィギュレーションモードで、ですか。
普通はインタフェースコンギギュレーションモードなのに。

スーパーインター博士

インタフェースのアドレスではないからな。
そして、Integreted IS-ISを有効化し、NETを入力したら、次はインタフェースの設定だ。

  • Router(config)# interface serial 0
  • Router(config-if)#ip router isis
ハイパーネット助手

なんです、これ?
いままで見たこともないコマンドですよ。「ip router」?

スーパーインター博士

うむ、そのインタフェースでIS-ISによるIPルーティングを可能にするコマンドだな。
他のルーティングプロトコルでは使わないコマンドだ。

ハイパーネット助手

は〜、さすがOSIプロトコル。普通見ないコマンドが出てくるなぁ。

スーパーインター博士

このコマンドは先ほども言ったが、IPルーティングを可能にするコマンドだ。
もし、CLNSルーティングが必要ならば、こっちのコマンドも行っておくこと。

  • Router(config-if)#clns router isis
ハイパーネット助手

CLNSルーティングを行うから、「clns」ですか。

スーパーインター博士

そういうことだな。
さて、他にも設定が必要だ。

  • Router(config-router)#is-type level
スーパーインター博士

見てわかると思うが、ルータのレベル設定だ。
「level-1」「level-1-2」「level-2-only」が入る。

ハイパーネット助手

ハイフンがややこしいですね。

スーパーインター博士

そうだな、ないほうがすっきりしていいと思うが。まぁIOSコマンドにケチつけてもしょうがない。
そうだ言い忘れていたCiscoルータのデフォルトはLevel1-2ルータだ。

ハイパーネット助手

レベル1-2ルータってことは、OSPFでいうところのABRですよね。

スーパーインター博士

そうなる。
さて、もしレベル1-2ルータの時、このような状況があったとする。

レベル1-2ルータ

[FigureRT29-01:レベル1-2ルータ]

スーパーインター博士

中央のレベル1-2ルータだが、eth1はともかく、eth0は対向はレベル1、s0の対向はレベル2のみ。
例えばeth0でLevel2 ISHを行うのは無駄だろう?

ハイパーネット助手

無駄と言えば無駄ですね。
対向はレベル1ですから、Level1 ISHだけでいいですからね。

スーパーインター博士

だが、レベル1-2ルータを設定すると、インタフェースで両方の隣接を取ろうと、両方のISHを送信してしまう。
これを設定するコマンドが、次のコマンドだ。

  • Router(config-if)#isis circuit-type level
ハイパーネット助手

さーきっとたいぷ。また変なコマンドだなぁ、もう。
levelのところはさっきと同じですか?

スーパーインター博士

同じだ。「level-1」「level-1-2」「level-2-only」だな。
さて次の設定。ネット君、IS-ISのメトリックはどんなものだ?

ハイパーネット助手

メトリック? ナローメトリックでしたよね。
インタフェースを通過する際に足されていくという。なんかホップ数みたいなの。

スーパーインター博士

うむ、インタフェースでメトリックが決まるというのがポイントだ。帯域や遅延じゃない。
なので、インタフェースにメトリックを設定してやらなければならない。

  • Router(config-if)#isis metric metric level
ハイパーネット助手

レベル?
このレベルってなんですか?

スーパーインター博士

レベル1とレベル2でメトリックを変える場合だ。省略してもよい。その場合は同じ値が使われる。
例えば。

2つのメトリック

[FigureRT29-02:2つのメトリック]

スーパーインター博士

左のルータで、「isis metric 10 level-1」「isis metric 5 level-2」と設定してやるわけだな。
そうすれば、各レベルのSPFツリーの構成の際、違うメトリックが使用される。

ハイパーネット助手

2つのSPFツリーがあるから、異なるメトリックをそれぞれ使うことができるんですね。

スーパーインター博士

うむ。
さて、IS-ISでもOSPFと同様に経路集約が可能だ。

ハイパーネット助手

OSPFですと、「area range」コマンドでしたよね。

スーパーインター博士

IS-ISの場合は以下のコマンドになる。

  • Router(config-router)#summary-address address mask level prefix mask
スーパーインター博士

levelの部分には「level-1」「level-1-2」「level-2」が入るが。
意味はこうだ。

  • level-1 … レベル1に配布されるルートを集約
  • level-1-2 … エリア内のレベル1ルートを集約してレベル1とレベル2に配布
  • level-2 … レベル1の集約ルートをレベル2で配布
スーパーインター博士

覚えておいて欲しいのは、OSPFでもsummary-addressコマンドを使うが、それはASBRで設定する外部ルートの集約ということだ。

ハイパーネット助手

一方、IS-ISは内部ルートもsummary-addressコマンドを使うということですか。
area rangeコマンドを使わずに。

スーパーインター博士

そういうことだな。
さて、最後の基本設定を説明しよう。DISの優先度設定だな。

  • Router(config-if)#isis priority value level
スーパーインター博士

優先度には7ビット、0〜127までの数値が入る。デフォルトは64だ。

ハイパーネット助手

またまたlevelって項目があるってことは、レベル1のDISとレベル2のDISの優先値を別々に設定できる?

スーパーインター博士

そういうことだ。
つまりIS-ISの設定はレベルごとの設定が必要になることが多いということだな。

ハイパーネット助手

そうですね。レベルを設定したり、レベルごとに値を決めたり。

スーパーインター博士

うむ、マルチエリアOSPFとの最大の違いはここだな。SPFツリーがレベルごとに設定されており、まったく別のルーティングを行うという点だ。

ハイパーネット助手

なるほど。

■ ISO-IGRP

スーパーインター博士

IOS設定はこれぐらいにしておいて、さてネット君。
IS-ISはIGPだったな。

ハイパーネット助手

です。

スーパーインター博士

OSIプロトコルではEGPsとして何を使う、と説明した?

ハイパーネット助手

IDRPです。

スーパーインター博士

うむ。だがしかし、Cisco IOSではIDRPはサポートされていない

ハイパーネット助手

うわ。なんですか、そりゃ?

スーパーインター博士

なのでCisco IOSでOSIプロトコルのEGPsとしてISO-IGRPを代わりに使う。

ハイパーネット助手

あいそ・あいじーあーるぴー。
ってことは、やっぱりあのIGRP?

スーパーインター博士

そうだ。Cisco独自のルーティングプロトコル、IGRPをベースとしたOSIプロトコル用のルーティングプロトコルだな。

ハイパーネット助手

へ〜。でも、本来のIGRPって、IGPですよね。
それをEGPsとして改良したってことですか?

スーパーインター博士

そういうことだ。ベースがIGRP、つまりディスタンスベクタ型なので、ISO-IGRPもディスタンスベクタ型だ。なのでIPルーティングでのディスタンスベクタ型の欠点を持ち合わせている。

ハイパーネット助手

コンバージェンスが遅い。

スーパーインター博士

その通り。そうそう。言うまでもないことだが、あくまでもIS-IS、つまりOSIプロトコルのEGPsとしてISO−IGRPを使う、という話だ。
もしIntegrated IS-ISでIPルーティングを行う場合、そのIPのEGPsとしては。

ハイパーネット助手

やっぱり、BGP4?

スーパーインター博士

そういうことだな。AS(ドメイン)間のルーティングプロトコルとして、IS-ISを使っているからISO-IGRPというわけではない、ということだ。

ハイパーネット助手

CLNSかIPか、どちらを運ぶかで決めるってことですね。

スーパーインター博士

うむ。
さてさて、ISO-IGRPの説明だが、基本はIGRPなのであまり説明することがない。

ハイパーネット助手

そうなんですか?

スーパーインター博士

違いはアドレスだな。
もちろん、ISO-IGRPはNSAPを使う。

ハイパーネット助手

ですよね。

スーパーインター博士

だが、IS-ISで使用されていたNSAPとは一味違う。
こうなる。

NSAPAFIIDIHODSPSIDNSEL
IPアドレスネットワーク部サブネットワーク部ホスト部プロトコル
IS-ISエリアIDシステムIDNET
ISO-IGRPドメインIDエリアIDシステムID無視

[TableRT29-01:ISO-IGRPのNSAPアドレス]

ハイパーネット助手

IS-ISのエリアIDをドメインIDとエリアIDに分割した?

スーパーインター博士

そうだ。IS-ISはIGPなので、同一ドメインが前提だ。なのでドメインIDの部分もエリアIDとして運用していた。
だがISO-IGRPはドメイン間ルーティングに使用するので、ドメインIDが必要なのだ。

ハイパーネット助手

なるほど。

スーパーインター博士

ドメインIDはIPルーティングで言うところのAS番号にあたるわけだな。IPアドレスにはASを示す部分はないが、NSAPにはAFIとIDIがある、ということだ。

ハイパーネット助手

あと、NSELの部分は「無視」とありますが?

スーパーインター博士

あぁ、特に必要ないから、何がはいっていても無視する。
さて、以前使った例でIS-ISとISO-IGRPの違いを見てもらおう。

  • 39.0001.1111.2222.3333.00
    • IS-ISの場合
      • エリアID … 39.0001
      • システムID … 1111.2222.3333
      • Nセレクタ … 00
    • ISO-IGRPの場合
      • ドメインID … 39
      • エリアID … 0001
      • システムID … 1111.2222.3333
      • Nセレクタ … 無視
  • 39.1234.5678.aaaa.bbbb.cccc.00
    • IS-ISの場合
      • エリアID … 39.1234.5678
      • システムID … aaaa.bbbb.cccc
      • Nセレクタ … 00
    • ISO-IGRPの場合
      • ドメインID … 39.1234
      • エリアID … 5678
      • システムID … aaaa.bbbb.cccc
      • Nセレクタ … 無視
スーパーインター博士

つまり、ISO-IGRPではエリアIDは2バイト固定長なのだよ。

ハイパーネット助手

2バイト、16進数4ケタですね。
IS-ISではエリアIDは1〜13バイトの可変長でしたっけ。

スーパーインター博士

うむ。
さて、IS-ISの話もこれでお終いにしよう。

ハイパーネット助手

長かったッスね、IS-IS。

スーパーインター博士

そうだな。やはりTCP/IPプロトコルと全く異なるOSIプロトコルだったからな。
ちょっと異色といえば、異色だな。

ハイパーネット助手

ですよね。こう、聞いたこともない英略語が大量にでてきましたものね。

スーパーインター博士

うむ。ただIS-ISはやはりOSPFの原型となっただけあって、やはり似ている部分が多い。
特にリンクステートのやりとりなどは、そっくりだと言ってもいい。

ハイパーネット助手

データベースからSPFツリー、そこからルーティングテーブル、ですね。

スーパーインター博士

そうだ。だが決定的に違うのはレベルによる階層ルーティングという点だな。まったく異なるルーティングがレベル1とレベル2で行われるということを忘れるな。

ハイパーネット助手

え〜っと、IS-ISのエリアは基本的にはOSPFのTSAってことでしたっけ。

スーパーインター博士

そう考えるのが簡単だな。確かに。
では今回はここまで。

ハイパーネット助手

はい。
30分間ネットワーキングでした〜♪

ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • IS-ISのIOS設定はちょっと特殊。
  • OSIプロトコルのEGPsはIDRPだが、Cisco IOSではISO-IGRPを使う。
  • IS-ISとISO−IGRPのNSAPはちょっと違う。

30 Minutes NetWorking No.RT29

管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp